「ねえ、織斑君、名瀬君。あ、あとセシリアも」
クラスメイトからSHR前に声をかけられる。
「わ、私をオマケのように……」
「はいはい、いちいち突っかかるなよ。どしたの?」
突っかかると言うよりは驚きに近い反応のセシリアを遮り、声をかけてきた生徒に要件を聞く。
「二組に転校生が来たんだって」
「転校生? この時期に?」
一夏が怪訝そうな顔で聞き返す。四月という早い時期に入学ではなく転校してきたというのは確かにおかしな話である。
「うん。なんでも中国の代表候補生らしいよ」
「あら、私の存在を危ぶんでの転入かしら?」
「どういう自意識してんだよ。本国から男性操縦者のデータ取りに送り込まれてきたって話だろ」
「そういう事か」
暁の言葉に一夏が納得したように頷く。今まで前例のなかった男性操縦者二人だ。どの国もそのデータは喉から手が出るほどに欲しいものであり、その為に操縦者を送り込むというのは有り得ない話ではない。
「全くあなたという人は……人が気持ちよく話そうとしてる時に毎回邪魔をしますわね」
呆れたように暁を睨むセシリアこういった流れにも慣れてきたのだろう。
「まあでも良かったじゃんセシリア」
「何がですの?」
「念願の中国人だ。アヘンが売れるぞ」
「売りませんわ!」
「持ってませんわって言っとけよそこは」
「持ってませんわ!」
「もう遅いよ」
漫才のようなやり取りをする二人にクスリと笑うクラスメイト達。この光景もこのクラスでは日常茶飯事である。
「それはそれとして、一夏さん!」
「え? 俺?」
唐突に話に巻き込まれた一夏がキョトンとした声で反応する。
「そうですわ! このクラスの代表は貴方なのですから! 転入生などに気を取られず、対抗戦の事を考えますわよ!」
「代表でもないのに一番盛りあがってるじゃん。まあでも、皆の期待もそうだけど、実戦てのはいい経験だし。優勝目指してみるのもいいんじゃない? 目標は高く行こうよ」
「そう簡単に言ってくれるなよ……俺はまだまともに模擬戦すらした事ないんだから……」
二人、と言うよりはクラス全体からの過度な期待に肩を落とす一夏。
「そ・こ・で! 私達との実戦形式の訓練をしませんか! という話ですの!」
「そ、それなら私も参加するぞ!」
セシリアの言葉に箒が反応する。ここまで基本的にはセシリアと暁のみでやっていた訓練に、一夏も参加する形になると聞いて声をかけてきたのだ。
「あら箒さん。構いませんが、量産機の貸出許可は降りてますの?」
「これから取ってくる! だから構わないな! 名瀬! セシリア!」
「いや俺も構わないけど」
「俺の意見はどこに行った……?」
当人の意見はよそに進んでいく一夏訓練計画に呆れたような諦めたようにため息をつく一夏。
「まあそうは言っても、専用機持ちは一年だと一組と四組だけだし、そんなに気張らなくても平気だと思うよ」
転校生の話をしにきたクラスメイトがそう言うと、クラスのドアが勢いよく開く。
「その情報古いよ」
開いたドアの前に大きく肩を出した制服のツインテールの少女が立っていた。
「二組の代表も専用機持ちになったの! そう簡単に優勝は出来ないから!」
ドアの前に立つ少女を見て、一夏が驚いたような顔をしている。
(知り合いか?)
「鈴……? お前、鈴か?」
「そうよ。中国代表候補生、
「何格好つけてるんだ? すげぇ似合わないぞ」
「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタは!」
「おい」
「なによ!?」
振り返った鈴の頭に出席簿が落ちる。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」
「ち、千冬さん……」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入口を塞ぐな。邪魔だ」
「す、すみません……」
明らかに織斑先生を恐れている様子で肩を落としながらドアの前をどく。
「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏!」
「さっさと戻れ」
「は、はいっ!」
猛ダッシュでクラスへと逃げ帰っていく鈴。その姿はまるで小動物のようだった。
「一夏君さぁ……ああいう思春期のカッコつけには触れないのが優しさだよ」
「ですわね。大人気ないですわよ」
「同い年なんだが……」
二人から言われて困惑する一夏。その後鈴の事について一夏に詰寄る箒が織斑先生に叩かれるのは暁とは関係の無い話。
今回こそサブタイ通り鈴登場