更衣室。
「一夏は先に着替えてアリーナに向かったみたいだね。俺らもちゃっちゃと向かっちゃおう」
そう言ってシャツを脱ぐ。
「うわぁっ!?」
「どうした? そんなに驚くような体してないと思うけど」
驚いたような声を出すシャルルと、話しながらも着替えを続ける暁。
「着替えないと遅れるよ。なんか見られたくないものでもあるの? 傷とか?」
「い、いやそういう訳じゃないんだけど……ちょっと恥ずかしいからあっち向いてて!」
「ふーん……まあいいけど」
極力気を遣いながら、シャルルの動向を探ろうとする。
「何?」
「うえっ!? い、いや、なんでもないよ!」
視線を感じた暁が振り返ると、着替えを終えたシャルルが暁の方を見ていた。
「着替え早いね。コツでもあんの?」
「そ、そうかな」
「まあいいや。俺も着替え終わったし、行こう」
「う、うん」
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第二グラウンド
「では、本日より実践訓練を開始する!」
「「「はいっ!」」」
織斑先生の言葉に相変わらず心ここに在らずといった様子の暁以外の一、二組の生徒たちが返事をする。
「今日は戦闘を実践してもらおう。ちょうど活力の溢れる十代女子もいることだしな。凰! オルコット!」
「「はい?」」
「呆けた声を出すな馬鹿ども。専用機ならすぐに始められるだろう。前に出ろ」
「なんで私が、めんどくさいなぁ……」
「完膚なきまでに叩き潰したりますわ」
乗り気ではない鈴と、唐突な呼び出しながらも血気盛んなセシリアでかなり対称的である。
「全くお前ら……凰、少しはやる気を出せ、アイツにいい所を見せられるぞ」
「んー……まあギリやる気だします」
今更感がある織斑先生の言葉になんとかやる気を出す鈴。
「オルコット。少し落ち着け、これは訓練だ」
「はっ! 私は一体何を!」
「無意識だったのか……」
呆れる織斑先生と、我に返ったセシリア。
「……今、織斑先生なんて言ったの?」
「わからん」
問いかけてくるシャルルに対して相変わらず素っ気ない暁。
「それで? 相手は鈴さんですの? クラス対抗戦の時から一度お手合わせ願いたいと思ってましたの」
「実力差をわからせられたいなんて珍しい事言うわね。私も構わないわよ」
「慌てるな馬鹿ども。お前らの相手は……」
そこまで言いかけたところで、ISのスラスター音に邪魔される。
「ああああぁぁぁぁ!! どいてくださあああい!!!」
凄まじい速度で落下してくる山田先生。落下地点を予測した全員が即座に避難するが、ただ一人その声にすら気づいてない男がいた。
「暁さん!」
最悪の事態を想定したセシリアが暁を突き飛ばした。
土煙を上げながら転がる山田先生とセシリア。
「セシリア!?」
突き飛ばされて我に返った暁が転がっていった二人の方へと向かう。
土煙が収まると、セシリアが山田先生を押し倒し、その胸を鷲掴みにしている様子が暁の視界に入った。
「そ、そのオルコットさん……困りますこんな場所で、いえ、場所というより、私達は女性同士で、いえ女性同士が悪いとかではなく、そもそも私達は教師と生徒という関係で」
「山田先生、私にそういった嗜好はありませんわ……」
「同性でもそういうのは場所を選んだ方が……」
「誰のせいだと思ってますの!?」
心配して駆け寄ってきた暁だが、無事だとわかりその状況を見てセシリアをいつものように煽る。
「まだやる気はあるかオルコット」
「もちろんですわ」
そう言って山田先生の上から立ち上がると、ISを展開する。
「そうか。では凰、お前もISを展開しろ」
「え? 二対一ですか……?」
「それはさすがに……」
「安心しろ。今のおまえらでは手も足も出ない」
その言葉に改めて気を引き締める。
そして模擬戦が始まったが、鈴とセシリアの連携は明らかに悪くないものであったにも関わらず、弾は当たらず剣は受け流される。
まずは、射撃で誘導された鈴がグレネードで落とされた、それによって上がった爆風で目標を見失ったセシリアが撃ち落とされた。
文字通り手も足も出ない結果となった。
「マジかー……ホントに手も足も出なかった……」
「指先くらいは出てた気がしますわ……」
「出てるうちに入んないわよそれ……」
落とされた二人が倒れたまま会話する。それを織斑先生が見下ろし、声をかける。
「山田先生はああ見えて元代表候補生だ。お前ら二人程度相手にするのは造作もない」
「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし」
「私達一応現役候補生なんだけどなー……」
「経験の差とは恐ろしいものですわ……」
倒れ伏せたまま嘆く二人であった。
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学生寮1026号室
「やっぱり君がルームメイトなんだね」
「う、うん。よろしく」
暁の部屋にルームメイトとして入ってきたシャルル。そんなシャルルと現在、お互いのベッドに座りながら向き合っている。
「そんなに畏まらなくていいよ。ただ少し、質問があるだけ」
「な、何かな?」
「お前ほんとに男?」
単刀直入に、朝から考え続けてきたことを尋ねる暁。
「え? な、何でそんなことを……?」
「いや、ホントに少し気になっただけ。俺は女が苦手だから、ちゃんと聞いておきたかっただけ。それで、どうなの?」
「と、当然だよ。僕はちゃんと、お、男だよ」
「ふーん。じゃあもういいや。変な事聞いてごめんね。あとこの後変な奴が来るかもしれないからそれも先に謝っとく」
そう言って、ベッドに寝転がり携帯をいじり始める暁。
「来ましたわ!」
「言ったでしょ?」
当然のようにノックもなしに部屋に入ってくるセシリア。
「ど、どうしたの、オルコットさん?」
「あらシャルルさんごきげんよう。セシリアで構いませんわ」
「ちょっとは驚け。昨日までいなかった人間がいることに」
携帯を置き、当たり前のように入ってきたセシリアの方を向く暁。
「男子生徒が増えた事ですし、一人部屋の暁さんの部屋に入るのは大体予想がつきますわ」
「じゃあ尚更ノックしろや」
「そうですわね。一人じゃなくなった以上、そういった気遣いも必要になりますわね」
「ぼ、僕の事は気にしないで。普段通りにしててもらえれば」
「いやシャルルそういう事じゃないよ。俺一人でも気を使えと言ってるんだよこのイギリス人に」
スタスタと部屋に入り暁側のベッドに腰掛けるセシリア。
「えー……と、二人は、その、お付き合いとかをしてるのかな」
「「そんな事はない(ありませんわ)」」
「そ、そうなんだ。不思議な関係だね」
「この方、デリカシーに欠ける所があるので、ご迷惑をかけることもあると思いますが、ルームメイトとして仲良くしてあげてくださいまし」
「親かお前は」
シャルルに対して丁寧に挨拶をするセシリアにツッコミを入れる。
「にしても、同じ男子だと言うのだからもっと交流を深めればいいのに。随分素っ気ないですわね?」
「別に普通に接してるつもりだけど」
ムッとしながら起き上がり反論する暁。
「僕、名瀬君に何かしちゃったかな? もしそうなら謝りたいんだけど」
「いえいえ、この方女性が苦手なんですの。だから中性的な雰囲気のシャルルさんとも上手く接する事が出来ないだけだと思いますわ」
「そ、そうなんだ」
申し訳なさそうな声で暁に話しかけるシャルルに対してセシリアがフォローを入れる。
「じゃあ大変だったんだね。女子しかいないIS学園だと。ぼ、僕でよければ仲良くしてもらえると嬉しいな」
「うーん……うん、まあそこじゃないんだけど。まあいいや、セシリア要らんフォロー入れるな」
「まあ、そういうの良くないですわよ。シャルルさんが歩み寄ろうとしてくれてるのに」
「い、良いよセシリア。気にしないで。僕は大丈夫だから」
「本当によくできた殿方ですわね。私はお付き合いするならこんなのより貴方のような方が良いですわ」
「告白?」
「違いますわ! 理想の話ですわ!」
告白じみたことを言うセシリアを煽る暁。
「ふふっ、二人は仲が良いんだね。少し羨ましいな」
二人の様子を見ながら笑うシャルル。
「とにかく、私も含め仲良くしてくださいましシャルルさん」
「うん、よろしくセシリア」
セシリアから差し出された手を取るシャルル。その様子を見ながら、モヤモヤしたものを抱えた様子の暁であった。