IS ~悪魔の名を持つ機体~   作:湯呑み茶碗

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メインヒロイン登場


代表候補生

 1時限目。山田先生の驚愕の声が響く。

「えぇ!? 織斑くんほとんど全部分からないんですかぁ!?」

 織斑君よ……いきなり入学の形になったとは言えそれはさすがに?

 

「まあ、さすがに全部では無いけど……俺も半分くらいなんだが……本音さん参考書の内容全部覚えてる?」

 小さめの声で後ろの本音さんに聞く。

「覚えてるよ~。私達は入学決まったのが結構早かったから、参考書も早めに渡されてたんだ〜」

「なるほどね」

 半分覚えられてれば上等か。

 

「織斑、入学前に渡された参考書には目を通したか?」

「いや、間違えて捨てました」

 出席簿で殴られてる。仕方ない、アレは俺が同じ立場でも殴りたくなると思う。実際に殴るのは問題な気もするけど……

「再発行してやるから、一週間で覚えろ」

「いや、一週間であの厚さは……」

 さすがに無理そうだけど今の立場で口答えは……

「やれと言っている。いいな」

「ひっ……!?」

 自分に向けられて無いとはいえ、女性のああいう目は苦手だ……怖すぎる……

「どしたの?」

「いや、気にしないで、ちょっと悪寒が……」

「そっか〜。大変だねぇ」

 うん、そうだね。結構大変……いやまあ今の状況だと彼が一番大変なんだろうけど。

 

 

 授業後。

「お疲れ」

「え? あ、ああ、えっと」

「暁だよ。名瀬暁、君じゃない方の男子生徒」

「そっか。悪いな。自分の事で手一杯で覚えてられなかった!」

「気にしないで。大変そうだね。はい。参考書、重要そうな部分は覚えたから再発行までの間使って。俺は知り合いが見せてくれるって言ってるから」

「本当か!?」

「うん。ほら」

 そう言って親指で自分の席の方を指さす。そこでは袖の余った腕を小さく振る本音さんがいる。

「ありがとう! この恩は一生忘れない!!」

「そんな重く捉えなくていいよ。授業始まるから戻るね」

「おう! 後でなんか奢るよ!」

「期待しとく」

 そう言って自分の席に戻る。

 

「あっきー優しいね〜」

「まあ、唯一の男友達になれそうな子だし、仲良くしたいから」

「そっか〜」

 のほほんとした話し方と表情が癒しをくれる。この子のぬいぐるみとかあったら結構売れそうだ。

 

 

 そして休み時間。

 

「いや助かった! 本当にありがとう!」

 授業が終わり真っ先に織斑くんが俺の席の方に来た。義理を重んじるタイプなのだろう。真っ直ぐで気持ちのいいタイプの男だ。

「そんなに頭下げなくていいよ。礼は受け取るけど、ちょっとやった事に対して感謝の量が多すぎるから」

 参考書貸しただけでこの感謝のされ方はなんかこっちが申し訳なくなる。

「いやいや、ホントに助かったよ! あ、改めて俺は織斑一夏。ちょっと色々あってこの学園に入ることになった。千冬姉、あ、織斑先生の弟だ。女の子が多くて不安だったけど、男友達が一人いるだけで不安が解消されるよ」

「よろしく織斑くん。俺は名瀬暁。割と早めに友達認定してくれたようでありがたいよ。あー、俺も色々あって学園に入ることになっちゃった身だから、仲良くしてもらえると嬉しいよ」

 さっきまで後ろにいた本音さんは友達と昼食を食べに行ったのでこの場には男二人。この学園でこんな状況が出来た事はとてもありがたい。

 

「あ、そうだ! さっきなんか奢るって言ったし、昼飯まだだろ? 食堂行こうぜ。俺が出すよ」

「ありがとう。そういう事なら今日は頼むよ」

「それじゃあ「少々よろしくて?」」

 遮られた……腹減ってたんだけど……。金髪縦ロール、お嬢様って感じ、タレ目で可愛らしい美人系だ。

「何か用?」

「まあ!? なんですのそのお返事は!? (わたくし)に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度を」

「ごめん。君誰?」

 さっき織斑くんの話遮ったし、こっちだって良いでしょ別に。

「私を知らない!? セシリア・オルコットを!? イギリス代表候補生の私を!?」

「うん。知らない。俺も織斑くんも」

「あぁ、知らない」

 名乗られたって知らないものは知らない。そもそも何故この子はこんなに偉そうで高圧的なのだろう。本音さんを見習ってほしい。

 

「信じられない……! 信じられませんわ……! 極東の島国というのはこれほどまでに未開の地なのかしら」

 イギリスってそんなに栄えてたっけ? そもそも同じ島国じゃん。

 

「それで? イギリス代表候補生の子がなんの用? 俺達はアヘンは買わないし、奴隷にもならないよ」

 イギリスの事なんてそのくらいしか知らないし、多分この子も俺達を中国人と間違えてアヘンを売りに来たのだろう。だとすればちゃんと教えてあげないと

「な!? 貴女私の祖国を馬鹿にしてますの!?」

「いやそんなつもりは。とりあえず落ち着いて、あんまり大きい声出されると怖いから」

「これが落ち着いていられるわけが――」

 そこまで言いかけた所で昼休み終了のチャイムがなる。

「っ……! またあとで来ますわ! 逃げない事ね! よくって!?」

「あー、うん」

 そう答えると、イライラとした様子で自分の席に戻っていく。

「ゴメンね。織斑くん。なんか巻き込んじゃった」

「気にするなよ。飯はまたそのうち奢るから。改めてよろしくな。あ、俺の事は一夏でいいから」

 良い奴だ。そう言えば昼食……腹減った……

「あ、ところで代表候補生って何?」

「一夏それはさすがに……」

 分からなくても単語から想像しようよ……

 

 

「ただいま~」

「おかえり本音さん」

「何かあったの~? 疲れた顔してるよ~」

「うん。色々とね」

「お疲れ様~」

「ありがと」

 心配してくれた本音さんに礼を言ったところで次の授業のチャイムがなった。




 イギリス人にこの作品が見つからない事を切に祈ってます
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