試合当日 ~第三アリーナ~
さて、試合当日まで特に準備などもせず、強いて言うなら真面目に授業を受けてた、と思う。
控え室で待機しながら、その時を待つ。
ヤバそうだったら止めてくれるよう一夏には頼んだけど、彼今日までに一度でもIS動かしたのかな……?
「名瀬、準備は良いか?」
「あ、はい」
無線で織斑先生の声が聞こえる。
「試合中は私達との無線は切れますので、質問などが出来るのはこれで最後ですが、大丈夫ですか?」
「はい。一応大丈夫です。ありがとうございます」
試合は一体一の総当たり戦、俺とモルモットさんがやった後は一夏とモルモットさんの試合らしい。
制限時間15分で、シールドエネルギーを削り切るか、タイムアップならその時点でシールドエネルギーの残りが多い方が勝ち。
「では、オルコットさんの準備が出来ましたら通信が入りますので、ISを起動してお待ちください」
「了解です」
そう言われて、ネックレスに視線を向ける。
「よろしく。
俺の専用機に付けられた名前。ソロモンの悪魔から取られたその名を呟くと、身体に機体が装着されていく。
見た目は多分、とあるアニメの機体に造られているのだと思う。全体的に白いカラーリングで、頭には黄色い角のような飾り、背面にはスラスター、地面を踏みしめる為に造られた大きな足。どっからどう見てもガンダム・バルバトスをモデルに造ったとしか思えない。
俺はあのアニメ好きだけど、商標的に大丈夫なのだろうかこの見た目は。
そう言えば、前に授業で山田先生が、ISには意識に似たものがあるとか言ってたような……。
「話しかけたりしたら応えてくれるのか?」
そう言ってみるものの、機体には特に変化が見られない。単純に使用時間が短いからあんまり分かり合えてないって事なのか?
「まあ、とにかく、これからよろしく」
俺の体に装着された相棒に挨拶をして、その時が来るのを待つ。
そして、目の前のゲートが開き、光が差し込む。彼女の準備が出来たのだろう。
足下にはカタパルト。これ使って射出される感じになるのかな。
「……いや、良いか」
射出されて出撃直後に墜落じゃカッコつかないし……。
鉄? 製のカタパルトを踏み締め、力任せにゲートに向かって跳び出す。
バキりともグシャりとも取れる音が背後から聞こえ咄嗟に振り向く。
「あ゛ぁ! ごめんなさーい!!」
踏み抜いた部分はひしゃげて、カタパルトとしては恐らく使い物にならない状態になっていた。
身体はゲートから出ているため、墜落しないように、身体の体勢を整える。背中と腰に着いたスラスターからは推進剤が噴出し、空中に留まっていられるようバランスを取ってくれている。
本当に自分の体にスラスターが着いたような不思議な感覚だ。
「ごめんなさいって言ってた?」
「出る直前に何かあったのかな?」
客席がザワついている。出来たら聞かなかったことにしてほしい。
「さて、始めようか」
「……先程の言葉の説明を」
「諸事情だ」
聞くな。詳細を聞かないでくれ。
「まあ、そうですわね。先程の言葉を、私に向けての言葉としてもう一度発するのであれば、あまり痛めつけないであげますわよ」
「……謝る理由がない。さっきのは、多分謝らないといけない事だし、後でちゃんと織斑先生に怒られるやつだから」
「そうですか。でしたら」
細めた左目の前に標準が現れる。
ーー敵IS操縦者の左目が射撃モードに以降。セーフティの解除を確認
「地獄を見せて差し上げますわ」
ーー警告、敵IS射撃形態に移行。トリガー確認、初弾エネルギー装填。