IS ~悪魔の名を持つ機体~   作:湯呑み茶碗

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 ようやく初の戦闘シーン。



試合開始

 瞬間、閃光が身体を掠める。レーザーライフルによる射撃を回避した不安定な体勢のまま、滑腔砲を展開し反撃を行う。

 さすがに不意打ち気味の先制攻撃に反撃されるとは思っていなかったのか、回避のために向こうも若干体勢を崩す。

 その間にこちらは体勢を立て直し、崩れた体勢の彼女にもう一発撃ち込むが、彼女の撃ったビーム弾によって相殺される。

 相殺、とは言ったものの、こっちは実弾二発リロードで向こうは何発撃てるかも分からないビーム弾。

「クソッ。中距離での撃ち合いじゃあ無理か……!」

 二発撃ち切りで空になった滑腔砲を投げ捨て、腕部に追撃砲、目の前にメイスを展開する。

 どこかのタイミングで距離を詰めないとこっちに勝機はない。

 

「初撃を避けた上で反撃とは、口だけではないようですわね」

「……どうも」

「本っ当に愛想のない方ですわね!」

「そりゃあ悪かった……な!」

 両腕に展開した追撃砲で砲撃を行い、彼女の回避方向を予測してメイスを構えながら突っ込む。

 

(中距離では勝てないと悟って近距離戦に持ち込もうとする選択、悪くないですわね。けれど)

 

 砲撃を躱す方向までは予想通り、後はメイスを横薙ぎにするだけで相手に当たる。そんな距離まで後一歩というところで、別方向からビームが飛んでくるのを感じ身体を捻る。

 『ブルー・ティアーズ』彼女の機体の名前の由来でもある遠隔操作型兵器。そのビットが、敵機体を引き離そうビームを放ってくる。

 中距離特化な戦闘スタイルなだけあり、ビームの撃ち方は完璧で、回避すればするほど、相手からは遠ざかる。遠ざかるようにしか回避が出来ないのだ。

 

(シールドバリアー頼りに無理やり正面突破するのが正解なんだろうけど……)

 そうは考えていても、逃げ道があれば飛び込んでしまうのは生物の性。完全に逃げ道を塞げば正面突破されると分かってるのだろう、だからこそ自分からは遠ざかる向きに逃げ道を作る。そして本能的にそこへ回避させ、意図せず後退させる。

 近距離戦に向かない機体での中距離を保ち続けるためのスタイル。近距離戦が得意かつ、中長距離では実弾しか放てないバルバトスにとっては、非常に戦いづらい相手なのは明白だった。

 

 (バリア越しでも熱やら衝撃やらは伝わるみたいだし、突っ込んでも体勢を崩した所を狙われる。エネルギーの限界値まで一気に削られたら終わりだし、攻撃を喰らうのは諸事情あって不味い)

 ビットによるビーム射撃を回避しながら脳を回す。

「私の射撃をそこまで回避できるのは褒めて差し上げますわ! でも、逃げてるばかりでは何も始まりませんわよ!」

「言われなくても……!」

 ビットでのビーム射撃が途切れたタイミングで攻撃を仕掛ける。

 

(ビットは4基がビーム、残り2基は実弾ミサイル。それなら)

 

 迎撃のために撃ったミサイルごとメイスでなぎ払い、脇腹辺りを叩く。

「かはっ……!?」

 ミサイルに当たり威力が落ちてたとはいえ、鉄の塊での殴打。バリアの上からでも、体勢を崩させるには十分な威力となる。

 (崩れた! 追撃を!)

 よろけたセシリアに追撃を加えようとメイスを振りかぶるが

「くっ!」

 二発目はマズイと判断したセシリアが咄嗟にビットでのビーム射撃を繰り出し追撃を止める。

(マジ? そこから止めに来るのかよ)

 メイスを振りかぶった勢いそのままに宙返りし、ビームは回避したもののまた距離を離されてしまう。

(また向こうの得意な距離に戻された。マズイな)

 攻め込もうにもビットは迎撃のため近い位置に浮遊している。

(今の一撃、ミサイルで威力が落ちてなければ一気にシールドを削られていましたわね)

 痛みの残る脇腹に視線を向ける。

(機体のそのものの膂力に加えて、ミサイルにあたる瞬間のスラスターを使った推進力での威力増加……初めての戦闘でここまで出来るとは、恐ろしい才能ですわ……)

 

 お互いが考えを巡らせた事による、少しの膠着状態の後セシリアが口を開く。

 

「……私はどうやら、貴方を見くびりすぎてたようですわ」

「そうかい……そういう事ならそろそろ降参してくれても良いんだけど」

「いえ、ここまでの非礼と侮辱については謝罪を、そしてここからは、私の全力を以て、閉幕(フィナーレ)とさせていただきますわ」

 

 ライフルを構え、ビットが再度動き始める。様子見感覚だった先程までとは明らかに雰囲気が変わる。

(まず何から来る? ライフルか? ビットか?)

 

 瞬く間にビットに頭上を囲まれるが、初弾はまだ来ない。単純な射撃では回避されると分かっているのだろう。

 

(右上……いや逆だ!)

 僅かに動きを見せた右上のビットに視線を移した瞬間、後ろのビットからビームが放たれる。

(こんな初歩的なミスするわけないよな……!)

 ビットからの射撃に前動作はない。複数のビットを同時に操作した際に意図せず動いてしまう事はあるが、セシリアに限ってそんなミスはありえない。だとすればデコイと考えるのは必然であり、分かっていれば回避は可能である。

 

(やはり初弾は回避しますわね。それでも無理に回避を続ける事は想定済み。であれば)

 

 回避した先にもビームを飛ばし、無理な体勢での回避を強いる。今のセシリアの狙いは回避を続けた先にあった。

 

(クッソ、さっきまでは油断して雑に撃ってたからビームが途切れてたけど、これはマズイ……!)

 確実に仕留めようという意識がビットの動きに反映されている。回避した先で再度ビームに狙われ、息を着く間も、反撃のタイミングも見当たらない状態であった。

 

(は? 地面? いつの間に?)

 ビットを無理に回避していった結果、最早着地せざるを得ない程に地面との距離が近くなっていた。

 

(マジか……! 着地を狩るのが狙いかよ!)

 分かってはいても、既に回避は不可能。接地した事による一瞬の硬直に狙いを定め、セシリアの撃ったライフルのビームが迫っていた。

 

「残念ですけど、終わりですわ」

 初段の直撃を皮切りに、4基のビットが暁を囲み、一斉にビームを放つ。

 砂埃に暁の姿が砂埃に包まれ、誰もが完全に試合の終了と思っていた。しかし、

 

 

 

 

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