PSO2ロールプレイセッションリプレイ「変わらぬ日々の出来事」   作:月見城郭

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   登場人物一覧
イツミ:123chan‘s BARのオーナー兼アークス。HQ所属

ノーリ:123chan‘s BARのバーテン兼アークス。HQ所属

蒼音:アークスの少女。

エリューシア:アークスの少女。

オニキス:アークスの種族キャスト。

ルクスリア:アークスの女性。異世界の能力を行使できる。

風間霊華:アークス。狐と人間のハーフの容姿。

先生:イツミの先生



ある日の少女(innocent little girl)

Intro

 

 

「――私ね。お母さんがわからないんだ」

 

 

「うん、会ったことがない。というか、知らないの」

 

 

「でも、私がここにいるっていうことは、きっとお母さんから生まれてきてるんだと思う――」

 

 

「だからね、もし願いが叶うなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――お母さんに会ってみたいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene1 「いつものBARで」

 

地球暦 2020年3月8日。

 

惑星間航行船団「オラクル」。

母艦「マザーシップ」を中心とした数百の宇宙船からなる巨大船団。

そして、そのうちの一種「アークスシップ」に、惑星調査団「ARKS(アークス)」が存在する。

アークスは惑星探索・調査とともに、宇宙の敵性存在である「ダーカー」との闘いの日々を過ごしている。

そんなアークスシップ内。寂れて隔絶されたような区画にそのBARはあった。

 

BARに立つ一人の男性。名はノーリ。

普段は少ない客でささやかな賑わいを見せるこの店には、普段は掛けられない「閉店中」の看板。

そこへ一人の客がやってくる。

「いらっしゃい」

ノーリは簡素に挨拶をする。

「こんばんはなのですよ〜。座ってもいいですか?」

入ってきた深い蒼髪の少女。名は蒼音(アオネ)。このBARの主人である「イツミ」の友人である。

「えぇ、こちらに」

ノーリはカウンター越しに椅子へ蒼音を招く。

「はいなのです!」

そう言って小さな少女には少し高い椅子に飛び乗るように座る。

「まだ少し時間があるので、何かお出ししましょうか」

「おねがいしますなのです!」

「では、少々お待ちを」

そして厨房へ向かい、暫くしてノーリがグラスを持って戻ってくる。

「どうぞ。地球の日本で仕入れたみかんのジュースになります」

綺麗なグラスに入った甘いみかんの香りがするジュースを出す。

「これがみかん……!いただきますなのです〜」

蒼音は目を輝かせながら受け取ると、早速飲み始める。

ジュースは酸味は少なく、甘いみかんの味が口に広がる。

「んっ……美味しいのです〜!」

蒼音は大きな笑みを浮かべる。

「それはなによりです」

ノーリは笑みを浮かべて、蒼音はそのまま小さな喉を鳴らしてグラスを置く。

「ぷはぁ〜。おいしかったのです〜」

「良い飲みっぷりですね」

「えへへ〜。ありがとうだよ〜」

ノーリはその笑顔にある人物を重ね、そっと目を閉じる。

そっと、店の扉が開く。

「こんばんは……」

明るい碧色の髪の少女がやってきた。

「いらっしゃいませ」

「あ、エリューシアちゃんこんばんは〜♪」

蒼音は振り返り、エリューシアと呼んだ少女を見て笑みを浮かべる。

「直に集まると思うので。しばし待機を」

その後を追うようにまた一人。

「きちゃった///」

「あれれ?オニキスだー!」

紫を基調とし、黒いマントを羽織った機械型のアークス「キャスト」と呼ばれる種族のオニキスがやってきた。

「こんばんは……」

「物騒なもの抱えて言う台詞じゃあなかったな」

任務から戻ったばかりなのか、オニキスは何事もなかったように武器をしまいながらノーリの文句には答えず挨拶をする。

「青いのじゃんやっほ^ ^」

「うんうん♪やっほー!」

オニキスと蒼音が互いに手を振り合う。

「そろそろ集まる頃だから、座っててくれ」

「邪魔するよ」

「お、開店しとる。邪魔するぞ、ノーリ殿」

「霊華さんにルクスさんだ〜こんばんは〜♪」

大柄な女性のルクスリアと、狐と人間のハーフの容姿をした霊華がやってくる。

「うむ、こんばんはじゃ。蒼音殿、エリューシア」

挨拶をしてる頃にはエリューシアは既に霊華の尻尾をモフモフとしている。

「本当に、エリューシアは妾の尻尾が好きじゃなぁ……♪」

「エリューシアにシャルのフォックスフォームを見せたら凄いことになりそうだな……」

エリューシアの様子にそれぞれが反応を見せる。

「さて、これで揃ったな」

かくして、全員の入店を確認したノーリは、備え付けのボードの前へ移動する。

彼ら5人は、ノーリから受け取ったメールを頼りに、ここ「123chan‘s BAR」に集まった。

全員がそれぞれに席についたのを確認して、ノーリが口を開く。

「突然の召集にも関わらず集まってくれてありがとう、みんな」

「ううん……気にしないで……まさか、『夢』を使ってミストお姉ちゃんからお願いされるとは思わなかったけどね……」

「いえいえなのですよー」

「どういたしましてー。ま、ぶっちゃけ暇だったからな」

「願望機ってのも気になるし……なにより、たまにはこうして体を動かさないとなまっちまうからな。気にするな」

エリューシア、蒼音、オニキス、ルクスリアがそれぞれ応えたのち、霊華が口を開く。

「ノーリ殿、イツミの行方が特定できたとメールにはあったが、本当かえ……?」

「霊華さんの質問に答える前に、まずは状況の説明をしよう」

事情を知らない人もいるだろうと、ノーリは付け加えるように言うと、霊華は頷く。

 

「最近、アークスシップ内で偶発的なダーカー出現が確認されてる。それも市民区で、だ」

「ふむ……フォトナーによる攻撃とは別のものなのか?」

ルクスリアがノーリに問う。

「フォトナーについては現状シャオが予測できる。それを考えれば、おそらく把握し切れていないことだと思われる」

全員に緊張が走る。

マザーシップを失いながらも、今のシャオはフォトナーの襲撃を予測できる演算能力を有する。

それゆえに、今起きている事件がどれほどのことか。

「なるほどフォトナーによる攻撃とは別でアークスが把握しきれない事象となると……まぁ、異能やらなんやらが絡む案件だろうな」

「現在公安部主導の元、各組織で警戒に当たっているが、被害状況は収まる様子を見せてはいない。そして」

「そこに絡んでくるのが、願望機と呼ばれる物だ」

「願望機……」

霊華が呟く。

「まさか、バルムンク殿が探しているアレかえ……?」

ノーリは頷いて見せる。

「その名の通り、持ち主の願いを叶えてくれる代物、だったか?私は詳しくは知らないんだが……」

ルクスリアがそういうと、ノーリが応える。

「公安部の調査で、この願望機と言うものが如何なるものかは判明してる」

「曰く、世界を呼び出す召喚の媒体だと」

「世界、か……」

エリューシアが一人呟き、霊華は唇を噛みしめる。

「ほー……?つまり「金が欲しい」と願えば、金がある世界の一部をこの世界に無理やり展開すると」

「おそらくな。だが、現在報告で上がってきてるのはいずれもダーカーの被害ばかりだ」

「じゃが、もちろん代償もあった。そうじゃろう……?」

「代償と言えるかどうかはわからないが、犠牲者の中に願望機を持った人物が確認されてる」

「ふぅむ……」

「願望機を使えば死ぬ可能性のあるのか、願望機で展開した世界が影響して死んだのか、難しいところだな」

「ひとまず、願望機についての説明はこれくらいだ」

「あー、少し気になったんだが良いか?」

ルクスリアが挙手をして、ノーリは質問を促す。

「願望機は無限に存在する世界の中から、所有者が願った世界をここに展開する。そこまではわかった。なら、展開された範囲に元々存在しているはずの『この世界』の部分はどうなるんだ?上書きされて消えるのか?」

「あぁ、そうなる」

「それは当然、有機物も無機物も例外無く?」

「現段階では、触れられるものは全く別物に書き換えられたようになっている。と言った具合だ」

「そして、バルムンク殿の話では『上書きされた世界は元には戻らない』とも言っておったな……」

ノーリがルクスリアに答えると、霊華がそう付け加えるように言う。

「家のあった場所が次の瞬間にはダーカーがのさばる平野になっていた。といえば伝わるかな」

「そんな……なんだか怖い話なのですよ……」

「怖いか?夢が現実として叶うって話だぜ?もっとロマンがある話じゃねえか」

蒼音が怯えるのを見てオニキスが横槍を入れる。

「……そこにいた人たちは、存在ごと消えちゃうってことになるのかな……」

「巻き込まれればそうなるかもしれないな」

「わかりやすい例えをありがとう。あと気になる点で言えば、所有者を含む範囲に展開したら所有者はどうなるかくらいかな」

「少なくとも現状、被害者が出てると言う点で見れば書き換えられる対象になっていない、といえるが、書き換えようとしていないだけかもしれないがな」

「ふぅむ……所有者への影響は依然わからないままじゃな……」

「それでも願っちゃうと……うぅ……なるほどなのです……」

「成程……なら今の所は願望機の所有者は世界改造の影響を受けない例外ってことか」

各々が反応を示す中、エリューシアがふと呟く。

「……でも、なんでダーカーが絡んでくるんだろう……」

「被害者の身辺調査を公安部が行なったところによれば、その多くは人間関係のもつれが発端になってるそうだ」

「……いや、『願望』だからそこ、なのかな……」

エリューシアはその言葉に一人思案する。

「願望機の所有者にあたる被害者も、相手方にたいして怒鳴り散らしていたという報告はある。もしかすると、制御しきれなくなったか、そもそも制御不能だったか」

「まぁ……『願いを叶える』なんてものは、何の代償も対価も無しにポンとできるものじゃない」

「人間関係のもつれ、それによる『願望機』の出回り……」

「そもそも、どうしてそんなものがオラクルにあるのかもわかってないんだよね……?」

ルクスリアと霊華の発言の後、エリューシアが発言する。

「出処については依然不明なままだ」

「いずれにしろ、まともな代物じゃないのは確かだ」

「そして、ここから今回の任務の本題だ」

ノーリが姿勢を正してから、口を開いた。

「イツミちゃんが、この事件の前後で失踪した」

「イツミちゃんが!?」

蒼音がいち早く声を上げる。

「付き合いの浅い子だ。どんな子なんだ」

「この店のオーナーですよ」

ルクスリアの問いにノーリが答えて、ボードに触れる。

そう言ってモニターにイツミちゃんの写真が映る。

「……ミストお姉ちゃんの『神秘の空間』から帰った後、かららしいね……見つからなくなったの……」

「……イツミ……」

霊華が小さく呟く。

「ここ一ヶ月、あの子の精神状態は不安定なままだった。特に、『母親』と言うものへの執着は著しかった」

「ミストお姉ちゃんにも聞いてたらしいね……でも、何にも力になれなかったって悔やんでた……」

「イツミは……母親に会いたがっておったんじゃ……」

「執着による不安定な精神状態か……経験上ろくなことには」

「あっ!」

蒼音が何かに気づいて声を上げる。

「そういえば、イツミちゃんからメールをもらってたのです!」

「なんじゃと!?」

「それはいつ頃の話だ?」

霊華とノーリが蒼音へ視線を向ける。

「えっと……四日前だったかな?」

「四日前……失踪中に?」

蒼音の言葉に霊華が疑問を口にする。

「うん、確か内容は……そう、私にとってのおかーさんはどんな存在かって内容だったのですよ!」

それを聞いて、ノーリと霊華は一瞬だけ固まる。

「……少なくとも、失踪中に送る内容じゃないよね……まあ、そこもイツミちゃんらしいかな……」

エリューシアはそう言ってイツミの表情を思い浮かべて小さく笑う。

そして、ノーリは軽く息を整えて口を開く。

「ちょうどその頃だ。こちらでイツミちゃんの足取りがつかめたのも」

「そうなのです!?」

「そのメールかはわからないが、発信場所の特定ができた」

「本当かえ!?」

「いったいどこなの!?」

霊華と蒼音が身を乗り出す。

「ウォパルだ。それも地表、浮上施設の付近だ」

惑星ウォパル。惑星の表面に浮かぶ僅かな大地と複数層に分かれた「海」で構成される惑星である。

「ウォパルなのです……?でもなんでウォパルにイツミちゃんが……?」

「なぜウォパルに……あそこは、ルーサーの研究施設跡があるくらいじゃが……」

「お母さんから呼び出しでもくらったんじゃねーの?」

「馬鹿な……呼び出すなら市街地でも良いじゃろう!?」

「真相については分からない」

オニキスに対して声を荒げる霊華を制するようにノーリが言う。

「まぁ、だよねー」

オニキスは相変わらずな様子で話を聞く姿勢に戻る。

「オニキスの意見がかなり的を射ている気もするが……」

ルクスリアも複雑そうな表情を浮かべる。

「だが、現状分かっていることがあるとすれば、ウォパルから出た特定箇所の逆探知が今はできなくなってることだ」

「……四日前……だもんね」

「だね……」

「ジャミングか?大まかな範囲の特定もできないのか?」

ルクスリアの問いにノーリは首を横に振る。

「そして、四日前の輸送機の利用者に彼女の名前はない」

「謎だらけなのです……」

「ウォパルへの移動手段も謎だね……イツミちゃん、自分でパイロットできたっけ……」

「少なくとも、ぱいろっとめんきょを取った話はないな」

「もし出来たとしても、キャンプシップの発進記録に残るじゃろ……」

「まさかぼくたちじゃあるまいし……」

エリューシアはそっと蒼音とルクスリアを見た。

「ふーむ……」

そのルクスリアは相変わらず何かを考えている様子で。

「さっきのオニキスの意見に近い話だが、こうもキナ臭いと悪意ある第三者がイツミの『母』と偽って彼女を呼び出した、なんてのも考えられるな。転移持ちでもあるまいし」

「考えすぎだな」

「まぁ、推測の息を出ん話だしな。すまん、ありえるかもくらいに留めておいてくれ」

「世界改編自体は、私には咎めることはできんな……」

オニキスの言葉でルクスリアは小さく首を振る。

「じゃが……人間関係のもつれから、この事件が発生したとするなら……その犯人は、人を嘲笑うような事を……人の絆を侮辱するような事をしている。妾は、そう思う…」

「侮辱、か」

「そんなの……ゆるせないのです!」

「そもそも『犯人』と呼べる存在がいるかどうかも今の段階では確定できないし……」

「……じゃが、もし犯人がいるとすれば……妾は…そやつを許すことはできん」

霊華が肩を震わせる。

「……でも、ひとつだけ言えるのは……」

エリューシアは霊華を見て呟く。

「イツミちゃんはぼくの……ぼくたちのお友達だから……」

「もう一度会いたい……それだけかな…」

「っ、そうじゃ……イツミは、妾達の友であり、家族なんじゃ……」

各々が煮詰まりつつある中、オニキスが体を起こす。

「分からない事だらけの中で、わかってることはイツミちゃんの居場所くらいでしょ?」

「そうだな」

ノーリはオニキスへ応える。

「兎にも角にも、私達はわかる範囲でできる事をやっていくしかねぇわな」

「じゃあ、しらみ潰しに探すしかないな」

「あぁ。そしてそれを、今回の任務としてみんなに頼まれて欲しい」

ノーリが姿勢を正す。

「この依頼はHQ経由の正式な依頼になる。よって強制にはならない」

「『HQ所属の構成員の捜索、ならびに保護』受けてくれるだろうか」

「HQの身柄を保護する重要な任務だ。成功報酬はたっぷり有りそうでたまらねぇな!俺は受けるぜ」(ま、面白そうだしな)

オニキスは手を鳴らして嬉しそうに言う。

「乗り掛かった船だな。きっとこういう在り方を選ぶ方が……シャルも喜んでくれるだろうしな」

ルクスリアも覚悟を決めた様子でそう言う。

「頼まれんでも妾は行くつもりじゃったよノーリ殿。答えはもちろん『YES』じゃ」

「断らない理由がないのです!だから行くのです!絶対にイツミちゃんを連れて帰るのです!」

霊華と蒼音も続く。

「HQってなんだっけ……もちろん、それがどうであっても断るわけじゃないけど……」

「それについてはまた時間のあるときに、だな」

エリューシアに思わず気が抜けそうになるノーリ。

「うん、わかった……ぼくはできることをやるだけだよ……」

「もちろんじゃとも……」

「ありがとう、みんな。オーナーを……イツミちゃんを、よろしく頼む」

ノーリは深く、頭を下げた。

「もちろんだよ……」

エリューシアはノーリへ静かに返事をする。

「はいはーい!それじゃ行ってきまーす!」

オニキスは一人先んじて準備のために店を後にする。

「探し物はそれなりに得意だし。あいよ、了解だ」

(寂しい生き方はしないさ。そうだろう?)

ルクスリアは緋色のネックレスを握りしめて転移、その場を後にする。

「ノーリ殿、妾たちに任せるのじゃ」

「うん!まかせてよっ!!」

霊華の言葉を追うように、蒼音が自分の胸を叩いてみせる。

「準備が出来次第、ロビーから出撃を頼む」

「わかったの!!」

蒼音は聞くや否や駆け出して店を出る。

「妾も準備に入ろうぞ」

霊華とエリューシアも、追って店を出る。

「必ず……連れ戻してやるからのう……」

霊華は覚悟を決めるように呟き、ロビーへ走る。

「……アークス統括指揮発令本部『Headquarters』か……ま、なるようにしかならない……そうだよね」

店を出て、エリューシアは一人、誰かに語りかけるように呟いてからロビーを目指す。

こうして、イツミの捜索が開始されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene2「変わらぬ任務」

 

アークスシップに備え付けられてる各惑星への移動手段となるキャンプシップ。

それに乗り込んだ5人はウォパルに向かい、イツミの場所が特定された浮上施設付近へ降り立つ。

そう、ウォパルにたどり着いたはずだった。

「あれ、ここは……?」

最初に蒼音が口を開く。

「なんじゃ、ここは!?」

「……ちょっと待て。どう見たってここウォパルじゃねえだろ」

彼らが降り立った地点は、彼らの知るウォパルの風景ではない。

「オメガの森に、似てる……?」

「どうなっとるんじゃ……?」

「これがイツミと連絡が取れない原因か」

ひと目見てオニキスは状況を察したように言う。

「共闘阻害はまだ大丈夫か……なら少し見てみるか」

そう言って、ルクスリアは自らの能力である魔眼を行使して現在地を確認しようとした。

だが、ルクスリアの眼には異様な光景が広がった。

確かにウォパルなのだ。だが目が受け取った情報はまるで別のものだった。

テクスチャを乗せ忘れたような、白黒でポリゴン状の地形が辺りに広がる。

それもつぎはぎのようになっていて、まるでゲームを作っている最中のような。

「あらら、可愛い声が聞こえるじゃないの」

「こえ?」

そんなルクスリアの様子などお構いなく、オニキスは楽しそうに言うと蒼音が首を傾げる。

「妖精さんかしら!」

「オニキス、どうした?」

「あっちからだ、行くぞ」

そう言って一人オニキスは歩き出す。

「ま、待てオニキス!まったく……」

「あっ、オニキス待ってー!」

霊華と蒼音はオニキスを追いかけ、エリューシアは警戒しつつ後ろを歩いた。

「座標は合ってる、魔眼に問題はない、って。おい!声なんて聞こえねぇぞ!」

慌ててルクスリアも後を追いかける。

「俺はキャストだぜー?お前らよりなにか聞こえやすいっての」

「ぼくも耳良いんだけど……何も聞こえなかった……なにか、阻害されてる……?」

エリューシアは一人思案するその後ろで、ルクスリアが霊華に近寄る。

「……霊華、お前にこの空間はどう見える?」

「不自然極まりないのぉ、オメガの幻惑の森にも見えるが……」

「私の目には、もっと歪な……白黒の格子、んでもって、継ぎ接ぎの世界が映ってるんだが……」

「……ルクス、とりあえず様子見じゃ。警戒を怠らんように」

「あぁ……わかっている。だがこりゃ……世界が創られてる……?」

ルクスリアは一人、魔眼でこの世界を睨みつける。

「だが……この質の悪いポリゴン、目に悪いな……」

5人が進むにつれて、声が聞こえ始める。

「……それでね、私ね」

「ん?何か聞こえ……」

「やっほー!!妖精さん俺と一緒にお茶しなーい!?」

蒼音が何かに気づいた瞬間、オニキスは声を上げる。

まるで知り合いに冗談めかすような、確信めいたものを持って。

座り込んだ少女はオニキスの声に驚いた様子だが、すぐに口を開く。

「あれ、オニオニだ!」

少女は振り向かないものの、顔を上げて応える。

その能天気な返答にオニキスは拍子抜けしてしまう。

「イツミ……ちゃん?」

「……!」

蒼音の呟きに霊華が反応する。

「こんなところにいたのかてめー。みんな心配してたぞ」

「みんな?」

振り返ったイツミ。

「……っ!?」

だが、その表情は一変する。

霊華を視界に捉えたイツミは声を出せず驚く。

いや、ゾッとしたような表情を浮かべた。

「ちがう、ちがうもん」

ぶつぶつと呟き出すイツミ。

「イツミ……!?どうしたんじゃ……?!」

「お母さんだよ、お母さんだよ」

口調は早く、そう繰り返す。

「……イツミちゃん……?」

エリューシアが声をかける。

「お母さんだもんおかあさん」

「お母……さん……?」

「霊華さんは私のお母さんじゃないもん」

「イツミ……?何を言っておるんじゃ……?ほら、一緒に帰るんじゃ……」

「やだ、やだ、やだ。お母さんといるもん、お母さんいるもん!」

「……イツミちゃん……」

霊華とエリューシアはイツミへ声をかけ続ける。

「DFさん……これって……」

蒼音は一人、周囲に気づかれないように呟く。

「お母さんはね、普通だけど優しくて強くて子供が何をしても許してくれて」

「背中を押してくれて、心強くて、憧れる存在なの」

イツミは独り言のように話し続ける。

「……憧れ、かぁ……」

反芻する蒼音。

「……っと、探し人は見つかったのか?」

少し遅れて、ルクスリアが到着し、イツミを見る。

その時、彼女は直感した。

イツミの前にいるそれが、この世界にあるべきものではないものであると。

「ッ!お前ら、今すぐ下がれ!”それ“は間違いなく、ここにあってはならない物だ!」

言うや否や、紫色の煌めきを纏うと装備を形成するルクスリア。

「ルクス……何を!?」

「あ、ばかっ、そういうことでかい声で」

「なにするの……?」

霊華が驚き、オニキスは嫌な予感を察して止めに入るも、既に遅かった。

イツミが立ち上がる。

「……お母さん、か……」

そう言いつつ、止む無しと、エリューシアはカナタギアを解放する。

「お母さん、なにもしてないよ……?」

「それは……」

蒼音がその言葉に戸惑いを見せる。

「そうだぞ!お前ら!お母さんなにもしてないだろ!」

オニキスはイツミの前に立って4人へ告げる。

「オニキスまでなにを言っとるんじゃ!」

「見えちまったんだ……仕方ねえだろ」

ルクスリアは構えたままオニキスへ応える。

「おいおい、もう実力行使?ちょっと手が早いんじゃないのー?」

「違う。なにもしてないからって……あっていいものと、そうじゃないものは存在するんだ……」

「もうちょっと様子見てからでもさぁ――」

「やめてよ……お母さんいじめないでよ……」

イツミがたまらず泣き出した。

「イツミ……!」

「……イツミちゃん」

「そんな!いじめるつもりなんて」

蒼音が声をかけたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズチュルル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソレが、動き出した。

奇怪な音。

肉と汚泥を振動でぶつけ合うような醜悪な音が響く。

イツミの前に立つオニキスの背後で、音の元凶はいつの間にか佇んでいた。

見上げるほどの巨体。形容し難いその容姿は、あまりにも非現実的で。

芸術と呼ぶのもおこがましいものであった。

「さて、何かいうことはあるかな皆」

「オニキス、少し乱暴にするぞ!」

何事もなかったかのように話すオニキス。

ルクスリアはすかさず光の帯を形成して、オニキスへ巻きつけて力任せに引き寄せる。

「アーッ!!」

地面を転がるオニキス。

「な……に、これ……?」

「――――ッ!!」

言葉を失う蒼音と霊華。

「言うこと、か……」

エリューシアは眼前のそれを見ながら、無意識に呟く。

「イツミちゃん、もしぼくの声が届かないなら……無理やりにでも聞かせるからね」

そう言って、エリューシアは弓を番える。

「不愉快極まりねぇな……常人なら発狂物だぞ」

「なんで、なんでみんなそんなこと言うの……?」

イツミは泣きながら言葉にする。

「……お前らにはどう写ってんだ?私の目には、異形の怪物しか居ねえんだが」

「……よくわからないもの、かな……」

ルクスリアを「模倣」してエリューシアがそれを見る。

「よくわからないもの、まぁそれが一番正しいだろうな……形容できねぇよこんなん……」

「妾にも……みえておる……。あれは……」

「そらもうお母さんよ」

オニキスが口を開く。

「多分、イツミのな!」

「そんなわけ……そんなわけないじゃろう!あれが、母親などとッッ!!」

霊華が怒りと困惑の色を露わにしながら声を荒げる。

「発狂してんじゃねぇか……おい、誰か一発オニキスぶん殴って正気に戻してやれ」

「冗談だよ、冗談!よしそれじゃあ仕事しよっか!」

「オニキスはこれが平常運転な気がするけどね……」

ルクスリアに煽られるオニキスを、エリューシアのつぶやきが襲う。

「お母さん……」

イツミは不安そうに、それを見上げる。

「イツミちゃん!みんなのところに帰ろっか!」

あっけらかんとした態度で言うオニキス。

「イツミ……これが母親じゃと……?目を覚ませ、イツミッ!」

「無駄だよ……たぶん、声で届くものなんて限界がある……」

霊華の説得に、エリューシアは悲しげに応える。

「みんな、ひどいよ……ひどいよ……」

絶望し、イツミはついにしゃがみ込んでしまう。

「そんな……」

蒼音は、イツミを見つめながら言葉を探す。

「こんな異形、魔界でも見たことがない……」

「イツミちゃん……?ぼくの声は、まだ届かないのかな……?」

霊華が呟き、エリューシアの声に怒気が混じる。

その時だった。

ソレは動く。

「あ、そーれ!!」

すかさずオニキスがカタナをなげつけるも、5人の頭上から突如熱源が発生した。

「皆、上じゃ!気を付けろ!!」

「霊華、防壁!縛れ……≪セイクリッドヴェルト≫ッ!」

無数の光の帯がルクスリアから伸びて、ソレを縛り付ける。

「え、上?」

オニキスは見上げた。

頭上には隕石のような物体が落ちてきていた。

オニキスのカタナがソレに当たり、座標がずれたのか頭上から落ちてきた熱の塊が5人からそれるも、爆発して5人を襲う。

「模倣障壁「ATフィールド」展開……!」

「私も……いって、ノクス!」

「『リンゲージ・ベール』ッ!」

3人はそれぞれに飛散する欠片を防ぐ。

「……イツミちゃん、あなたの『お母さん』は、あなたの『友達』にこんなひどいことするひとなのかな……?」

エリューシアの声に怒りが混じる。

「さて、抑え込めるか……?」

ルクスリアに制御された光の帯で、ソレは拘束されて身動きが取れない。

「強化式無しのヴェルトで十分……単純なパワーは大した事無いか……」

「とは言え……ディスペルはまだ組めてないからな……能力で暴れられたら面倒なのは変わらず、か……」

ルクスリアは拘束を続けながら分析を行う。

「イツミ、どうして……どうしてじゃ!」

霊華の悲痛な言葉にも怒りが混じり始める。

「はぁどっこいしょ」

そんな中、オニキスは地面に刺さったカタナを回収する。

「お母さんを、苛めないでよ……」

それでもなお、イツミは泣きじゃくりながら訴えかけ続ける。

そんなイツミへエリューシアが近づき、

手を差し出した。

「……エリー、さん……?」

「イツミちゃん……」

それを見て、堪らず蒼音も駆け寄る。

「イツミちゃん、この手を取ってくれないなら……」

「ぼくは無理やりにでも引っ張っていくよ……あなたは、どうする……?」

イツミは俯いた。

「……、で……」

ボソリ。

「イツミちゃん……今なんて……?」

蒼音がそっと問う。

「なんで、お母さんと一緒にいちゃいけないの……?」

イツミがそういうと、ソレがエリューシアをミタ。

「――ッ!エリューシア、離れよ!迂闊じゃ!」

「……」

霊華が叫ぶも、エリューシアは悲しい表情を浮かべるだけだった。

エリューシアと蒼音を巻き込むように、黒い光の帯が降り注ぐ。

「クッ……!『シール』……!」

霊華が術式を展開したその時。

「我が心と共にあれ……模倣創世器『蒼翼シャンゼリゼ』!」

無数のアセラクタがエリューシアと蒼音の周囲に展開される。

そして降り注いだ黒い光の帯を切り刻むように霧散させていく。

「……!あ、あぶなかったの……エリューシアちゃん、ありがとうなの……」

思わず地面にへたり込んでしまう蒼音。

「……イツミちゃん、やっぱりこの手は取ってくれないんだね……」

そういうエリューシアに呼応するように、アセラクタも悲しげに光る。

「アシャラさんだって……なんにも言ってくれなかった」

イツミは寂しそうに呟く。

「二人とも、一旦下がれ!!」

ルクスリアが叫ぶ。

「……蒼音ちゃん、いったん下がるよ」

「イツミちゃん……うん」

エリューシアが差し出した手を蒼音が握り、二人がルクスリアたちのもとに向かう。

「縛るだけじゃやっぱ大した制限にはなってくれねぇか……吹っ飛べ、≪ハイレイド・セイクリッドバースト≫ッ!」

ルクスリアが術式を紡ぎ終わる間際、ソレが放った電撃で帯が消失する。

「チッ……やっぱり出力制限じゃ強度もたかが知れてるか……なら」

ルクスリアが次の手を撃とうとして、イツミが口を開く。

「おーりゅーちゃんみたいに、おかあさんにあいたいって……」

「私の、おかあさんに、会いたいって思うのも、ダメなの……?」

「……イツミ……」

涙ながらに訴えるイツミに今にも泣き出しそうな霊華。

「……イツミちゃんには、どう見えてるのかな……『それ』……」

エリューシアは問う。

「……その思いを否定させたりはしないよ……同じ『母親』として……」

「まぁ……未来の話だけど……」

「でも……でもね……」

「そんなものを、イツミちゃんの母親とは認めない……!」

エリューシアが力強く、言葉にする。

「イツミ……言っても聞かぬなら……多少強引にでも、おぬしを連れ帰るぞ……!」

霊華も覚悟を決め、ソレを睨みつける。

「やっぱり……こうならなきゃだめなの……?」

蒼音が今にも泣き出しそうになりながらも、自ら所有するノクスシリーズを周囲に解放する。

「ううん……絶対連れて帰るって約束したから……!だから、本気で行くよ!」

覚悟を決めた直後、蒼音の身体から闇が迸る。

「じゃあ教えてやるよ!」

オニキスが叫ぶ。

「テメェが母親と会っちゃいけない理由なんて単純だろ!!」

「お前のお母さんはとっくに死んでんだよ!!」

「ッッ!」

ハッと、イツミが顔を上げた。

そしてルクスリアが指輪を煌めかせる。

「今だ。こいつはどうだ?」

虚空から小さな缶を取り出しソレへ投げつける。

投げられた缶へ黒い光の帯が突き刺さる。

「だからいつまでも、お母さんお母さんって――!」

オニキスが愛刀を振りかざしてソレで飛びかかる。

「私のコア、ちょっとばかり耐えろよ……≪リベレイドカース・グレイシャルバースト≫ッ!!」

貫かれた缶が弾け、中から溢れ出した紫色の粒子が煌めくと同時に体力を奪い取る極寒の衝撃波が放たれる。

「――泣いてるんじゃあ、ありません!」

怯むソレへ、オニキスが全力で振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欠片の割れる音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「先生とのお話」

 

……事件の2週間程前。

「あっ、先生だ」

イツミは私服で腰掛けた椅子を回しながら暇を持て余していると、入室した男性へ声をかける。

軽く挨拶をする先生にイツミは笑顔を浮かべた。

「えへへ、最近は先生のおかげで調子いいよ」

そう語るイツミも、すぐに表情を曇らせる。

「……でも、やっぱり不安だよ」

前に言ってたやつだね。と先生が言うとイツミは力なく頷く。

「ノー君やミルが話してくれたから、わかるけど……」

「やっぱり私ね。お母さんがわからないんだ」

会ったことがない、だったかな。と先生が聞く。

「うん、会ったことがない。というか、知らないの」

覚えていないとも言ってたね。

「でも、私がここにいるっていうことは、きっとお母さんから生まれてきてるんだと思う」

「それとは別にね。もうお母さんと会えないって思うの」

どうしてかな?

「だって、もしお母さんって言われても、私信じられないもの」

「私の中にはみんなにあるお母さんもお父さんもなくって」

「家族はノー君と見るだけだもん」

「でもねでもね。私なりにお母さんっていうの考えてみたんだ。お友達からもいっぱい聞いたんだよ」

そう言ってメモを出すイツミ。

「まずマウジュさんはね。お母さんを普通の人って言ってた。でも言いづらそうだったからもしかしたら何かあったのかも」

「次にちゃまね。ちゃまも普通のお母さんって言ってたけど、母親は難しいんだって。これはよくわかんないけど、母親は子供がなにしても許してくれて心の拠り所になってくれる人で、尊敬してるんだって!すごいよ、ちゃまが尊敬できる人だもの!そして母親は大事にするものって言ってた!あ、でも親の話は恥ずかしいんだって。これ、内緒ね?」

「それとエデンちゃんにも聞いたんだ。お母さんがナハトさんって言うんだけど、不安にもするけど、友達みたいに遊んだり、すごく頼りになる時もあるんだって。すごいわかる。あとね、世界の全てが敵になっても守ってくれる人だって言ってた。これもすごいわかる」

「他にも蒼音ちゃんっていう子にも聞いてるとこなんだ!どんなお話になるか楽しみ!」

「でね。これらを踏まえた上での私のお母さん像はー」

「普通だけど優しく強く、子供が何をしても許してくれて、背中を押してくれる心強い存在なの」

「だからね、もし願いが叶うなら」

「嘘でいいから、そんな風にしてくれる、お母さんに会ってみたいな」

「……怒られちゃうよね、こんなの」

そんなことないですよ。

「……本当に?」

願うことは誰しも持つものです。

「……えへへ。先生はやっぱり優しいね」

そんなあなたに、これを。

「何これ?水晶?」

お守りですよ。願いが叶うようにとね。

「すごーい!そんなのあるの!?」

あなたが願いを忘れなければ、きっと。

「うん!それじゃあ、大切にするね!ありがとう先生!」

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene3「変わらない思い」

割れた音と共にソレは崩れ落ちる。

崩れ落ちる最中、その手がイツミの頭を撫でたように見えた。

「――終わった?」

霊華が言葉にした直後。

「ッ……!」

「うぅ〜〜〜〜!!ぶえっくしょーい!!」

ルクスリアが纏っていた装備が霧散し、放った衝撃波をもろに受けたオニキスがでかいくしゃみをして縮こまる。

「はは……すまなかったなオニキス。大丈夫か?」

虚空から毛布を取り出し、オニキスへ投げ掛けるルクスリア。

「よいしょっと」

衝撃波を防いだ蒼音が様子を見ると闇が消えていく。

イツミは崩れ落ちたソレを見つめていた。

「……うっ」

イツミが残った亡骸である布切れを手に取る。

「……イツミ」

霊華は武装を解除して、イツミの様子を見る。

「うぅ……」

イツミが布切れを顔に当てて泣き始めると、おもむろにエリューシアが近づき。

イツミの胸ぐらを掴んで顔をあげさせる。

「まだやる……?」

エリューシアはイツミの顔をじっと見つめる。

「……なんで、こんなことするの……?」

知っているエリューシアではないと言ったように、イツミは怯えた目でみる。

ルクスリアは警戒を続けたまま、そっと距離を離し、オニキスも光の当たるところで毛布にくるまるように暖まりつつもふもふしている。

「……ぼくは、イツミちゃんに戻ってきてほしいだけ……」

そう言って、エリューシアは手を離す。

蒼音も心配そうに駆け寄る。

「……ぼくが、みんなにそうしてもらったように……」

その表情は悲しみを帯びている。

「……先生だけは、お母さんにあってもいいって、言ってくれたのに……」

「――先生に、会ってもいい、じゃと……?」

「先生……って?」

「……だれ、それ……?」

イツミの言葉に霊華が反応すると、蒼音とエリューシアが問う。

「誰も、誰もお母さんにあっちゃダメなんて、いわなかったのに……」

「イツミ、それは一体どういう――」

霊華に、イツミの手から崩れた水晶が落ちるのが見えた。

割れた水晶を拾い上げる。

「霊華おねーさん、それって……!」

「妾が知っておるモノよりも、大きい」

蒼音がそれを見て驚き、霊華がイツミへ向き直る。

「イツミ、教えてくれ……。これを、どこで手に入れたのじゃ……?」

「……先生が、くれたの、お守りだって……」

「その『先生』と言うのは……?病院の医師か……?」

「うん……」

「霊華、それは……?」

様子に気づいたルクスリアが霊華へ近づく。

「……『願望機』、と見ていいじゃろうな。そして……これを受け取った場所は、イツミが通う病院じゃった、と」

「ふむ、これがその……ちょっと貸してみてくれるか?」

霊華はそっとルクスリアへ水晶を渡す。

「とはいえ、鑑定できるかどうかはわからんがな……何かわかるといいんだが」

そう言ってルクスリアが魔眼でそれを見始める。

「イツミちゃん」

蒼音が口を開く。

「前に私にメールをくれたよね……お母さんについて」

「……うん」

「あれはやっぱり、お母さんに会いたい一心で書いたのかな……?理由を……聞いてもいい……?」

少しだけ間を開けて、イツミが呟く。

「……お母さんが……お母さんがどんなのか、わかんなかったから……」

「……『お母さん』、か……」

「じゃから、あの時……」

エリューシアはイツミから視線を外し、霊華は何かに気づいたように呟く。

「母、か……」

「マウジュさんに、ちゃまに、エデンちゃんにも聞いて……」

イツミは言葉を続け、次第に泣き声が混じり始める。

「それでわたしに……」

蒼音が静かに涙を流す。

「お母さんに、会えれば、それでよかったのに……」

「イツミ……」

「ぼくも……ぼくのお母さんのことは、なんにもわからない、まま……だな……」

「うっ、うぅ……」

「イツミちゃん」

蒼音がイツミに声をかけ、霊華とエリューシアが蒼音の脇、そしてイツミの前へ座る。

「お母さんに会いたいのも、確かに分かるよ……でも、イツミちゃんには、待ってる人がたくさん居るんじゃないの……かな……」

幼いなりに、精一杯の言葉をイツミに伝える蒼音。

「――心配したんじゃぞ」

霊華も優しくイツミへ伝える。

エリューシアはそっと、イツミの頭を自らの胸へ抱く。

「…………ぐすっ…………」

エリューシアに抱かれて、一つ鼻を啜る。

「母親か……会いたいと願うのは、人として当然だろうな」

ルクスリアが水晶を睨みつけながら呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そんなに物欲しそうに見つめても、願いは叶わないと思いますよ」

「何しろ、それ……壊れてますし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、何者かの声が聞こえる。

「ッ……誰じゃ!」

霊華が声を上げ、全員がそちらを向く。

男が一人、そこに立っていた。

「先生……?」

「なに……!?」

イツミの発言に霊華が驚き、蒼音とルクスリアが構える。

「もうちょっと安心させてあげたかったけど、そうも言ってられなさそうだね……」

エリューシアはイツミを離してイツミを守るように前に出る。

「先生……?あなたが……?」

男を視界に入れ、蒼音から再び闇が溢れ始める。

「チッ……ここで連戦はかなりキツイな……」

ルクスリアは一人ボソリと呟く。

「ルクス、おぬしもさがっておれ」

「バカ言うな。守護者が護られてどうする……死ぬ事はねぇんだ。問題ないさ」

ルクスリアの言葉には応えずに霊華が一人、前に出る。

「先生、なんで、ここに……?」

「……ハーイ。ああ、こういうでしょ。噂をすれば影がさすと」

動揺しているイツミに向けて、周囲の様子など目に入らない様子で力なく言葉にする先生と呼ばれた男。

「――それで、願いは叶いましたか?」

男の言葉に、イツミは俯き黙ってしまう。

「貴様が『先生』とやらか。『願望機』をどこで手に入れた。事と次第によっては」

武器を向けて言う霊華に対しても特に興味を示す様子もない男。

「事と次第によっては許していただける――と。私、そんなに悪いことしましたかね?」

「逆じゃ」

「事と次第によっては……ここで処断する!妾の家族を弄びおって!」

男の態度と所業に怒りを露わにする霊華。それに呼応するように蒼音もノクスシリーズを展開して臨戦態勢に入る。

「あまり怒りに飲まれるなよ。ただでさえ増幅掛かってんだから」

周囲の様子にルクスリアが口を開く。

「そうは行かぬ、答えよ!願望機はどこで手に入れた!」

「……何処でと言われましても、その辺のショップで売ってるモノ。私が手慰みに改造したものですよ、それ」

霊華の剣幕にため息を吐きながら、男は面倒くさそうに答える。

「改造、改造じゃと!?つまるところ……」

「ふむ……?」

「貴様が……『願望機』を作った『黒幕』……!」

「ええ。そうなりますね……それがなにか?」

「やっぱり、あなたが……!」

「何故じゃ!何故人の絆を愚弄するようなことを……!」

「絆……ですか……まぁ、そうですね」

首をひねり考えるようなそぶりをして見せる男。

「……絡んで首が締まるような絆を結んでる方が悪いのかと思いますが……」

毛布に包まったまま聞き耳を立てていたオニキスがその言葉に思わず頷く。

「何じゃと……?」

「私の目的は一つですよ。アナタの願いを叶えましょう。と」

「神にでもなったつもりか!?」

「それが私の願いに通じてるワケです。どうしようもない善人ですよね。私って……」

「善人?あなたが?」

そう言って男は自嘲するように笑う男に蒼音が口を開いた時。

男の横を、炎が掠める。

「もう一度言ってみろ、人間……」

霊華が冷たく言い放つ。

炎が掠め、男の体が揺らめき、その様子に一同が驚く。

「ええ。どうしようもない善意なる存在でしょうね」

「霊華、悪く思うなよ……!≪リベレイト・スティールカース≫ッ!」

咄嗟にルクスリアが霊華の杖に掴みかかると、そのまま杖を媒介に霊華の感情を奪い取る。

「あの、あの……盛り上がってるところ申し訳ありませんが、私はココには居ませんよ」

男は戸惑った様子で言う。

「……私の友人が言ってました。アークスは悪役を見ると、奇声を上げて斬りかかってくる蛮族だ。と」

蒼音が堪らず武器を飛ばすも、影が揺らめくだけであった。

「っ、ノクス、戻って!」

男は構わずに言葉を続ける。

「そんな子供のような蛮族相手に、自ら出てくるような真似を。危険を冒すことをするとお思いですか?まぁ、思われてたんでしょうけど」

「……別に私はお前とどうこうしてやりたいわけじゃねぇ。んなことよりも、仲間の安全が最優先だ――!」

ルクスリアはそう言って振り返る。

「テメェ……!」

嘲笑する男の前にオニキスが勢いよく立ち上がり躍り出る。

「お前、ブラックペーパーか!」

オニキスの言葉に霊華がオニキスを見る。

「ええ。そうですね。『元』ですが」

オニキスは思い出していた。

テロ組織「ブラックペーパー」

それはノーリの恋人である小花衣燈を陥れ、

アークスシップを乗っ取った挙句に「絶対令(アビス)」を用いてアークスの同士討ちを計った組織であり、

オニキスのあだ名が「叙々苑」と呼ばれるようになってしまった元凶である為、オニキスと因縁浅はかならぬ存在であった。

「……貴様が何処にいようと、関係ない。探し出して、必ず報いを受けさせる」

「テメェ、何考えてやがる」

オニキスの問いに頭を抱える男。

「先程から言ってるじゃあないですか。どうして蛮族は人の言う事を素直に信じようとしないんですかね……」

「うるせー!テメーのせいでこっちは被害被ってんだよ!!」

男の態度に逆ギレするキャスト。

「アナタの願いを叶えましょう……と。それが神、全知へ至る道であるのだから。そうしてるに過ぎませんよ」

「ルーサーのような事を……!」

「誰がお前の言葉そのまま信じるかバーカ!!」

オニキスは怒りのあまりそこら辺に落ちてた石を投げつける。

「神様なんていない。おかーさんはそう言ってたよ……」

蒼音の怒りのこもった言葉も、男は聞き流す。

「相当悪感情が溜まってるな……撤退すべきか」

「あぁ!とっとと帰るぞ!」

ルクスリアの言葉にオニキスが応えて振り返る。

「良いんですか?」

その時、男が口を開く。

「あぁ、何だよ……」

全員が男へ視線を向ける。

「だから、私は先ほどから繰り返し申しております。アナタの願いを叶えましょう。と」

「そのような戯言、誰が聞くと思うんじゃ」

「私は生まれた世界が消える瞬間を観察に来たに過ぎませんが……」

「今すぐここに引っ張り出して欲しいのかな……?」

蒼音が男に向けて応えるように言う。

「叶えたい願いがあるのでしたら、新しいそれを用意できる……と」

「生憎と、叶えたい願いなら既に掴んでいるし、テメェの不完全なポンコツ願望機なんかよりも頼れる立派なスキルがあるんでね」

「そうじゃな。望みならある……貴様にふさわしい報いを与える事じゃ。妾自らの手で、な」

霊華とルクスリアがそう男に言い放った時。

 

キンッと、金属の割れる音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side「微睡みの夢のようで」

 

「……イツミちゃん、つかまってて」

霊華たちが先生と呼ばれた男と対峙した時。

エリューシアはイツミを背負おうと促していた。

イツミをもたれかからせると力なく寄りかかり、その体重は異常なほど軽く、柔肌はすっかり荒れており体温も冷たくなっていた。

「イツミちゃん、安心してね……この『身』に代えても、あなたを守るから……」

エリューシアはイツミの表情を見る。

その表情は苦しそうに、息も細かった。

「それが……勝手だけど、『彼』への、ぼくなりの贖罪……」

力なく垂れた手を包むように握り、自らのフォトンをイツミへ注ぐ。

「これでどうにかなるか……願望機の代償が、本当なのかもわからないけれど……」

「でも、ぼくは……ぼくにできることをするだけ……イツミちゃんが、また笑ってくれるように……」

それは、今はいない彼の口癖だった。

脳裏に姿が浮かぶ。

ふと視線をあげると、霊華がフォイエを放つのが見え、そしてルクスリアがこちらを気にしている様子にも気づいた。

「……イツミちゃん、ぼくの声は届いてるよね」

久々に見た彼女に、今日伝えてきた言葉を改めて呟く。

すると、包んでいた彼女の指が一瞬だけ掌を押し返す感触がした。

「良かった……」

疲労の様子を隠せないままでも、それに笑顔を浮かべるエリューシア。

「――エリューシア!」

ルクスリアの声が聞こえる。

「ダメ……!」

「それは聞けない相談だな……!私の前では絶対逝かせない!」

ルクスリアが手をエリューシアに伸ばす。

「リベ……ッ、く、≪アフェクションヒール≫……!」

絞り出すように術式を紡ぐ。

「ルクス、ダメだよ……ルクスだって、無理してる……」

咄嗟にルクスリアの術式を模倣してルクスリアに返す。

そして、自らのヘアピンへ手を添える。

それは彼女なりの友と認めた証であり、所有している対象と心を交わすことが出来るアイテム。

 

(ねぇ、イツミちゃん……ぼくたち、直接お話しすることはあんまりなかったし……)

(お互いのこともあんまり知らないままだったけど……)

(ぼく……お友達だって、思って良いんだよね……?)

 

エリューシアはそっと自らの心の内をイツミに打ち明ける。

それは彼女の抱えていた不安であり、願いであった。

このヘアピンをバレンタインの日に彼女へ送った。

受け取ってくれていれば、きっと応えてくれる、と。

 

……ふと。

エリューシアに流れ込む感情。

それは暖かく、笑顔になるような前向きな思い。

例えどのような状況であろうと前を向き続けていた少女の思い。

「――ファー君!あの可愛い人誰――」

「――エリューシアさんって言ってね――」

「――いいないいなー!髪の色そっくりだったね――」

「――髪型もそっくりだからね――」

「――絶対仲良くなるもん――」

「――イツミちゃんならすぐだよ――」

兄妹のような、他愛もない話。

だが、その会話は目の前に映るようで、

彼女と、彼のそんな楽しげな姿が心の中で溢れ出す。

(……あぁ、そうだったね……イツミちゃん)

(あなたはそう言う子だった……誰にでも明るくて、優しくて……)

(……前までの、意気地のなかったぼくみたいなのでも、お友達になって……)

「――エリーさん!」

二人で写真も撮った。

「――エリーさん……」

彼がいなかった時に彼女を優しく寄り添った。

「――エリーさぁん!」

BARが大変な時も手伝った。

走馬灯のように、思い起こされる彼女との記憶。

そして。

 

 

音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene4「そんなある日の出来事」

 

「……ごめんね、イツミちゃん……これ以上、内緒話……できない、みたい……」

エリューシアのヘアピンが消えて、前髪が顔を隠す。

「そうですか……?そちらのイツミさんはそうはいかないとは思いますが……それならそれで結構」

ルクスリアと霊華の反応を横目に男がイツミへと視線を向ける。

「……イツミちゃんに、話しかけないで……」

絞り出すように、エリューシアが怒りを込めて言う。

「では、どうぞ。皆様方の行く末が幸福でありますようにお祈りして、私は暫くこの消えゆく世界を眺めてることにしておきます」

男は完全に興味を失った様子で言う。

「エリューシアもイツミももう限界だ……お前たち、撤退するぞ。問題ないな?」

「うむ……」

「わかった。二人を運べば良い?」

「ケッ、次会ったら覚えてろ!」

それぞれが二人へ近づき、オニキスが捨て台詞を吐く。

男は軽く手を振り見送る。

「もうシップも待ってられねぇな……とにかく適当な座標……ここで良いか」

ルクスリアがオニキスと霊華を紫色の粒子で包み込アークスシップを座標に転移を開始する。

「必ず、貴様に報いを与えてやる……首を洗って待っておれ」

霊華とルクスリアは男を睨みつけたまま、転移でその場を後にする。

「あなたのこと、ゆるさないからね……」

蒼音はエリューシアとイツミに寄り添いながら、最後に男へ言葉を残してワープを行う。

 

こうして、5人の任務は終わりを迎える。

その後ろに、大きな影を残したまま。

そんな、ある日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Information 「調査報告書-file01-」

先日、公安部がとある事件において「願望機」なるアイテムを発見した。

それは所有者の願望を呼び寄せるものとして扱われ、調査が進められていた。

調査の結果が下記の通りである。

1.所有者の「願ったもの」が出現する際、周囲の状況を書き換える。書き換わったものは元に戻らない。

2.所有者の願望は如何なる形であれ出現する。

3.願望機を使用した場合、使用者は命を落とす。

また、願望機についての見解を下記に記載する。

 

・願望機について

願望機は現状ビー玉のような球体の水晶の見た目をしている。

 

・願望機による被害

最初の事件ではダーカーが予兆なく出現しており、その際に周囲がダーカーの巣のような様相になっていた。

 

・使用者について

使用者はもれなくダーカー出現に巻き込まれる形で死亡しているが、死因の特定に至っていない。

 

・予想される願望機での被害

願望機の使用で出現した際の度合いにより世界の書き換え範囲が異なると思われる。

そのため使用者の願望やそれにより出現するものの大きさが大きい場合、現実への被害は増大するものとの見解がされている。

 

・現状の対策

早期に発見した場合には被害は小規模で留められているため、迅速な対応が必要であると思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Information 「閉店」

イツミの事件から一週間が経った頃、「123chan‘s BAR」を訪れた客は一枚の広告を見つける。

 

「一身上に都合により123chan‘s BARを閉店することになりました。長らくご愛顧いただきありがとうございます」

 

BARの閉店の噂は友人たちの間に瞬く間に広まり、連日こぞって店を訪れていた。

オーナーであるイツミの姿はなく、ノーリがいつものように店に立っていた。

ノーリの口から、イツミが市民区に降りる準備を今進めていること、それに合わせて店を引き払うことにしたと告げられた。

当時、ニュースでイツミがウォパルの事件に関わっているとアークス内で報道されていた。

だが、その記事には願望機の記載は見受けられなかった。

イツミが所属していたHQは事件の関連もあり、

上司にあたるディセット・ファテルマがイツミのアークス辞任を受理していた。

そして、4/11付で、イツミを市民区へ移送することと決めた。

なお、その際イツミの身柄の安全を考慮して、市民区に移送後の彼女に今後について、ディセットはコメントを控えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side「とある人たちの独白」

 

 

……。

おかあさんたちが話してたことがあるBARが閉店しちゃうという話を聞いた。

BARなんて別の世界みたいな印象だったけれど、両親はお世話になってたらしい。

私の時代にはなかったから、やっぱり何かあったのかもしれない。

 

 

……。

主が足を運んでいた店がなくなるという噂を耳にした。

諸行無常。如何な理由であれ必然である。

 

 

……。

やった、やったぞ!総務部だ!ついに所属できたぞ!

研修もあるみたいだしな、これでようやく僕の実力が発揮できる!

見てろよ、バカにしてきたやつらを見返してやる!

 

 

……。

ミルの上司にあたるイツミという少女がHQを辞めることになった。

懲戒処分にならなかったことを喜ぶべきでしょうか。

それより、あのきな臭い男が何か企んでいないだろうか。

最近任務への派遣が多くなってきている。

まぁ、大したことではないか。

空いた時間にでも友人に差し入れを持って行こう。

 

 

……。

大家の店がしまっちまうらしい。

なんでも大家が大変なことになったせいで閉めざるを得なくなったそうだ。

霊華の方もしまってるみたいだったが、地元に戻ってる間に一体何があったんだ……。

気にはなるが、将来の生活がかかってるからな……今はやれることやるだけだぜ。

 

 

……。

イツミちゃんが始めたお店。

「みんなで一緒に何かできたらいいなって」

「それでみんな喜んでくれたらそれが一番じゃん?」

そう言っていた彼女の顔を思い出す。

「……あなたは、これで良いのね」

そう言って、ヘッドセットを手に取る。

あの頃の3人を思い出すように……。

 

 

……。

イツミちゃんの店。

本当であれば俺が守らなきゃいけないんだろうけれど……。

いや、本当に守りたいと思った男は既にいない。

今は組織の保全を優先しよう。

それに、イツミちゃんもゆっくり休んでほしい。

市民区のちょっとした離れにでも住んでみようか。

多分静かなところの方がいいだろう。

 

 

……。

私はいっぱい迷惑をかけました。

本当にいっぱいで。

自分でもなんでこんなことをしたのかわからない。

でも、約束は約束。

二人には迷惑をかけちゃうけれど。

私は多分、向いてなかったんだと思う。

 

 




ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。

今回、1年以上経過してしまったPSO2内で行ったロールプレイでのセッションを小説風にまとめさせていただきました。

投稿場所を探して踏ん切りがつかないまま時間が過ぎてしまいましたが、
ようやく一区切りとして一つ投稿までこぎつけることができました。

これでやっと1/3なので、はい……やりすぎました。
(誰だよ1カ月かけてネタ積みまくった馬鹿野郎は)

まだ書き起こし最中なので完結までなんとか駆け抜けたいと思います。

改めてになりますが、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

また、今回はロールプレイという企画で行っているため、参加者も非常に多く、チャット上の発言を書き起こし、校正をしたうえで、発言場所を独断でいじくりまわしてます。
参加者の方で見ている方がいらっしゃりましたら、当方までご連絡ください。
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