PSO2ロールプレイセッションリプレイ「変わらぬ日々の出来事」   作:月見城郭

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アークスの活躍により、願望機にまつわる事件解決の糸口を見つけられた。
だが、それはあまりにむごい現実を彼らに突き付けた。

急遽HQに呼び出されたアークスたちに伝えられた任務。
それは同輩であるアークスの討伐であった。
「ディセット・ファテルマ」。HQに所属するアークスの一人であり、研究部の特別顧問であった彼に、犯罪組織「ブラックペーパー」との内通の疑惑が浮上したのだ。

アークスたちがたどり着く、事件の先にあるものとは――。

Phantasy Star Online2を題材に、ロールプレイをセッション形式で行い、リプレイを小説風にまとめた本作の第三話。

どうぞお楽しみください。

――それは、いつも通りの明日に向かうために。


何でもない一日(The past never returns)

Scene10「いつもの日常」

 

地球暦 2020年3月28日 夜

 

ARKS統括指揮発令本部。通称HQの要請により、6人のアークスが集った。

緊急の要件であるとされた任務。

「諸君。よく集まってくれた」

マスク越しの声は機械地味ている。

サモナーの沼口冴。レンジャーのルルナナ、ハイブリッド。竜人のナナ。ヒーローのロラン。

そして、全身が宇宙空間を模様したタイツに漫画のような肉を頭に乗せたオニキスが寝っ転がったまま、マスクをつけた人物の前に並ぶ。

「私はHQの主任を務めるセッツァーである。今回、各位に集まってもらったのはほかでもない。昨今、アークスシップを騒がせている願望機に関わる事件の終息。これを君たちに頼みたい」

セッツァーがそういうと、マスク越しに一同を一瞥する。

「事態のシューソク?って何すんの?」

「ガンボー機っをぶっこわすのかなぁ」

あっけらかんとした口調でオニキスが言うと、冴がそれとなく答えてみる。

「願望機……あぁ、あれね。ま、いいわよ」

ロランは何か思い至った様子で小さくつぶやきながら頷く。

「OK。主任、続けて?」

ルルナナが物怖じすることなく、セッツァーに詳細を促す。

「今回、守護輝士の活躍によりナベリウスで発見された鉱石。それが願望機にあつわる事象を再現することが可能だと、研究部から情報が下りてきた」

「先日、アークスシップに突如発現した第六使徒。あの襲撃事件の際に確認された事象を引き起こす媒体となりえる虞もあると」

「あぁ……あれね」

「バカでかい、幻創種の類でしたか」

ハイブリッドとロランが思い出した様子を浮かべてる隣で、ナナが興味のなさそうな表情で口を開く。

「あのよー分からんヤツか」

「そうだ。あのような災害。これ以上市民を巻き込むわけにはいかない」

「そりゃそうだわなぁ」

セッツァーの発言に冴がうんうんと頷く。

アークスシップにはアークスの他に、アークスの生活を支える市民が別区画で生活をしていて、その区画を市民区と称していた。

当時の事件は市民区から離れた場所であったため、直接的な被害はでなかったものの、事件の経緯を知るアークスからすれば、「船に住む市民の統一意識でたまたま生まれてしまったもの」であるため、頭痛の種でもあった。

「そして、今回の任務はこの鉱石を悪用としている対象の討伐となる」

「ディセット・ファテルマ。アークスであり、HQ補佐官だ」

「ちょいちょいちょーい!」

セッツァーの言葉にオニキスが声を上げる。

「意義があるぜお偉いさん!」

「発言を許可しよう」

「ディセットを殺す~?何かの間違いじゃあないのか?」

先日ともに任務を遂行したばかりの人物の名前を聞き、オニキスがセッツァーに食ってかかる。

「討伐……自分の組織の、補佐官を」

「彼には既に組織的犯罪に関与している疑いがある」

ハイブリッドの疑念を払うように、セッツァーが言葉を続ける。

「それの証言として、異世界からの来訪者や異能力者をアークスとしての身分登録をせず匿っているとの情報がある。犯罪行為に加担させている虞もある」

「うーむ……これはなぁ……」

冴は端末を操作して、情報をまとめていた。

(あのディセットが悪いことしてたようには思えないが……ま、いっか!)

オニキスは秒で考えることをやめていた。

「また、数刻前にとあるアークスが集中治療に入った。そのアークスは容疑者の人体実験の犠牲者と目されている」

「そして極めつけに、ブラックペーパーとつながりがあることも」

その言葉で、アークスたちに緊張が走る。

「先日のHQ所属のイツミの事件についても、奴が手引きをしたために起きたとの疑いもある」

「主任さん」

冴が手を挙げる。

「なんだ」

「その治療に入ったアークスってのは?」

「スイップという少年だ」

「なんだってー!?」

冴が驚きのあまり声を上げる。

その隣で、オニキスは「私が保護しました」と看板を立てていた。

「あ、あちきのダーリンが愛しに愛しまくってるスイップくんかよ……」

冴の夫である浅利良二は人柄も恰幅もいい男性で、偶然にも適性が認められてアークスとなっていた。その際の研修に、スイップも参加していた。

余談ではあるが、当時の研修の管理官として、オニキスが同行していた。

「スイップは総務部に先日着任したばかりであったが、彼は研修の身であったため正式な配属は決まっていなかった。容疑者はそれらの情報を改ざん、手引きをしていた痕跡も発見されている」

「……だー。ここで我を忘れてもしょうがない。私は行く」

冴が頭を掻きむしってから顔を上げる。

「それで、討伐でいいのね。捕まえる必要はないの?」

ルルナナがセッツァー質問をとばす。

「抵抗の可能性がある。その際は生死を問わぬ。プラックペーパーとのかかわりがあるとなれば、ダーカーに加担する輩だ。生かすこともない。我々はアークス。宇宙の平和を守るのも役目の一つだ」

「りょーかい」

ルルナナはそれだけ言って口を閉ざした。

「奴は今、地球の東京へ視察として赴いている。各自、気を引き締めてかかれ」

「よし、じゃあいくか」

冴が一番に声をかける。

「ん、了解よ」

「んあ、終わった?」

ロランが冴に頷いた横で、ナナは眠気が残る頭を軽く振る。

「さんせーい!それじゃあせっつぁん、いってくるよ」

オニキスは肉越しにセッツァーへ投げキッスをして飛び出していく。

「軽い奴らなの。知り合いじゃないの?」

「マ、イイケド」

ルルナナは周囲の様子に呆れながら後ろからついていった。

「それでは、行って参ります」

「より良いアークスの未来のために」

ハイブリッドがセッツァーに敬礼の姿勢を見せると、セッツァーも敬礼を返す。

「より良いアークスの未来のためにー!!!」

遠くからオニキスの声が響いていた。

それを聞いた冴の表情は、険しいものであった。

「より良い、ねぇ」

ロランは冴の様子に気づいて、そっとつぶやく。

「誰にとっての?」

「バカ野郎!アークスの敵だぜ!それにイツミちゃんをあんな目に遭わせた野郎だ!バチボコにいわせたる!」

冴の言葉を遮るようにオニキスがまくしたてる。

「フン……なの」

一同はぎこちなさを伴いながら、東京へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「導きたい明日」

――。

明かりが消えた部屋の中、一人の男が窓から星空を眺める。

その瞳は赤く、星空を照らす星々が映り込んでいるようだった。

「もう、充分でしょう」

男はひとり呟く。

「そろそろ、お別れをしないと、かな」

部屋は静まり返っており、男の声だけがむなしく響く。

「私もそろそろ限界です」

「でも、きっとこれでいいんですよ」

「……頼みましたよ、より良い未来のために」

――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene11「泣きたいほど笑いたい日」

アークスたちが動き出していたそのころ。

一組の男女が、静かになった東京の公園にいた。

「いやぁ。こんな時間まで東京へ連れ出すことになって申し訳ない」

季節外れの和装をまとった男が、ベンチに座る女性へ苦笑いを浮かべながら謝罪の言葉をかけつつ、飲み物を差し出す。

男の名はディセット。

そして、まるで事態に気づいていない様子のディセットの前に、一人の女性がベンチに座っている。

アークス登録名称「ハク」。竜族の生まれであるが、アークスの登録上では戦闘に特化した有角種族の「デューマン」としている。彼女は現在、ディセットの専属ボディーガードとして任務に随行していた。

本来であれば、アークスが地球に降り立った際、任務遂行時の被害を防止するため、民間人の意識を外に向けることで侵入を防ぐ隔壁が発生するのだが、今回の二人はディセットが用意していた戸籍を用いての日本の視察であり、主にアークスでの研究に役立てるものを、日本の技術力から見出すための、ディセットが研究部経由で依頼した任務だった。

「んまぁ、最近オーサカ?とかいう場所にも連れていかれたし、そこはどうでとでもな?」

ベンチの背もたれに腕を乗せた状態で、差し出されたジュースを受け取ったハクは、蓋を開けると中身を流し込むように一息に飲み干す。

その様子を見てから、ディセットはハクの隣に腰かけた。

「先日のデートは急な仕事が入ってしまい、途中になってましたからね。今日はこのあと、奮発しますよ」

「あー……なんかメンドクセーのだっけな?ウエってのは大変だな。変なのが多いと」

「あっはっは。まぁそれも仕事なので大丈夫ですよ。ああそうだ」

ディセットは思い出したように言葉をつづけた。

「さきほど出店を見つけましてね。たい焼きというやつを見つけてきたんですよ。しっぽの先から餡がはみ出るくらいはいってて」

そう言いながらハクへたい焼きを一つ差し出した。

そんなとき。

「ん?」

たい焼きを受け取りながら、ハクがこちらに近づいてくる音に反応する。

「ウオオオオオオオ!」

突然、空から二人めがけて降ってきたのは。

「天誅でござる―!」

見るも立派な漫画に出てきそうな肉だった。

すさまじい勢いで二人に迫るも、突然のことに呆気にとられるディセット。

「うぉあ!?なんだあのよくワカンネーの!?あれか!?最近出たラッピーネズミの親戚か!?」

あまりの事態に慌ててハクが横に避ける。

すさまじい勢いで肉は呆気にとられたままのディセットへ衝突した。

ボヨン、と柔らかい音を立てて。

「へ?おわわわわ」

拍子抜けした声を上げて、ディセットがベンチから転げ落ちる。

「あいたたた……な、なんですか急に……って、なんて格好ですか、貴方」

体を起こしたディセットは、端末の信号で目の前の肉がオニキスであることに気づく。

オニキスが扮した肉は力なく地面にへたり込んでいる。

「へぇ、デートかよ」

オニキスは淡々という

「オイ!大丈夫か!?咄嗟とは言え避けるくらいしろよ!腐ってもアークスなンだろ!?」

ディセットに駆け寄るも、かける言葉がボディーガードのものとは思えない。

「い、いやいや、結構な速度で来てたのを見てから避けろなんて無茶苦茶な……」

ディセットはベンチに手をかけながら立ち上がる。

「いちゃつきやがってぇ!!」

嫉妬の炎で熱が入り始める肉。

「あぁ、それと。今はデートではないです。お仕事の報酬の支払いついでです」

「で、なんだあれ?まさかオマエの知り合いか?トモダチはよく選んだ方がいいぞ?」

服についた土を払うディセット。ハクがオニキスを一瞥してから、ディセットを不安そうに見る。

「さすがの私もアレをトモダチとは言いたくないですねぇ……」

「ええい!おまえたち、やっておしまいなさい!」

まるで怒ったように声を上げるオニキス。

「えぇ……」

「いやこっちに振るなよ」

遅れて合流した5人が一部始終を目撃していて、オニキスへ困惑の色を浮かべる。

「ルルナナはお肉の部下になったつもりはないんだけど?」

「あぁん、そこ骨付き肉だから」

なんなのこいつ、と一層険しい表情を浮かべたルルナナ。

ハイブリッドは一同の様子に思わず口を開けたまま絶句していた。

「あー……ハクさん」

「おう?」

「(恥ずかしいので)逃げますか」

そういうや否や、どこからともなくライドロイド――アークス製の搭乗型、空域高機動フレーム――を呼び出した。

「……そうだな」

ハクはディセットの手を取り、二人は大空へと飛び出していった。

「お前らああああああああ!」

オニキスのむなしい叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、おかしいだろ!?」

二人が飛び去った後、冴がオニキスへ突っ込みを入れる。

「何なの?この茶番?」

不信感を募らせるルルナナが険しい表情でオニキスを見る。

「確かにせっつぁんの言うことが正しければ、ディセットさんは容疑者かもしれない。けどさ」

「おい!!おーい!!」

「うるさいぞオニキス」

冴が未だに叫んでいるオニキスを制する。

「あれが逃亡しようとした犯人の様子かって言われたら、あちきはうんとは言えないぞ」

情報を扱う職に身をやつしている冴も、今の状況には困惑していた。

「お肉、アンタ何か事情知ってんの?」

ルルナナは腕を組んでオニキスへ視線を送る。

「ルルナナはね、騙されるのがこの世で一番むかつくの」

「それはルルナナだけじゃないからな」

冴はそんなルルナナの意見に同意する。

「あー、だったらよ」

そんな中、体をほぐしていたナナが口を開く。

「直接聞きゃ早いだろ」

「はぁ、しかたねぇな……」

指を鳴らす彼女に、オニキスが立ち上がる。

「知ってるなら?教えてよね?」

そう言ってルルナナがオニキスの話を待つ。

「ディセットとは長い付き合いがあるわけじゃないけど、容疑をかけられるようなタチとは到底」

「あっち側か、先に行くぞー」

オニキスの話を聞かず、ナナはディセットたちの逃げた方向へすさまじい速度で駆け出した。

「あ!?もう!んたく単細胞なの!」

たまらずルルナナが地団太を踏んで、ナナの後を追い駆け出す。

「……とりあえず、私たちも追ってみることに越したことはないんじゃないかしら」

「……だな、俺も追おう」

ロランはそう言って、我に返ったハイブリッドとともに二人の後に続いた。

「……ま、いってみるか」

「とにかくこの任務はきな臭い!」

「それについては肉と同意見だ」

冴とオニキスもディセットたちを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene12「いつか来る明日」

「それにしても、いったい何が何やら……」

ライドロイドに乗りながら、ディセットがつぶやく。

「アタシがしりてーよ全く……」

「あっはっはっはっは」

困り顔のハクの表情に、状況を忘れたように笑うディセット。

「でも……そうですね」

ライドロイドのエンジンが弱まり、街中の川の横に着陸する。

「あなたを、いらない面倒事に巻き込んでしまったかもしれません」

ライドロイドを降りて、ハクを降ろすと、ライドロイドが粒子になって消える。

「お得意の召喚だったか?便利なもんだな」

ハクはもらっていたたい焼きを左手に持ちなおしてかじりながら、自分に与えられた契約の証を思い出す。

ディセットは研究部の特別顧問であり、アークスが作業を行う際の根幹となるアイテムパックの技術と、サモナーのペット召喚の技術を応用した独自の召喚を行える、と聞いていた。

ハクがボディーガードとして契約した際に、同じようにその召喚用の証を与えられていた。

これにより、有事の際にディセットがハクを召喚することが可能であった。

だが、実際にそれが使用される事態など起こることはなく、それどころか専ら社会勉強と称されて、ディセットの仕事に随伴させられていた。

腹はいっぱいになるし、出不精である身としては、決して悪いことではないと、ハクも別段文句は口にしてなかった。

「まぁ、ボディーガードだしな。それはいい」

そう言って、ハクはディセットに向き直る。

「んで?あの謎肉とゆかいな仲間たちはなんだ?知ってる顔もいたよーな気はするが」

「彼らの人選については、私には何とも」

ディセットが言葉をつづけようとした時。

ハクが勢いよく振り返り両手を構える。

「よ」

ビルの屋上から、二人の前にナナが降り立った。

「追いつかれましたか、この距離を」

6人のアークスが来たことにより、東京内に民間人の立ち入りを制限する隔壁が張られているとはいえ、ライドロイドの最短距離に追いついてきたナナに、ディセットは評した。

「逃げないほうがいいぞ、なぜなら――」

「まってよ~」

ナナが指をさして口を開いたとき、冴の声が耳に届く。

冴は両手を広げてすさまじい足の回転速度でで飛んでくるように走ってきていた。

「って、うわわっ」

だが

「うわああああああ!」

止まることができずにナナの後ろをすり抜け、柵にふくよかなおなかをクッションにしつつ乗り上げ、そのまま川へ落ちていった。

「――ああなるからな」

「あらぁ……」

しまらない空気が三人を包む。

「冴!?なにしてるの!」

「んたく世話が焼けるんだから」

いつのまにか冴に抜かされていたルルナナとロランが合流し、ルルナナがワイヤーで冴を引き上げようとする。

「ガボガボ」

溺れていた冴が川から引き揚げられた。

「さ、冴さーん。大丈夫ですかー?」

冴の見知った顔であるディセットが、たまらず声をかける。

「た、たすかった……」

「……あれ追っかけてきた側だろ」

「そのはずなんだけどね……」

「なんなのなの……」

口から水を噴水のように噴出した冴を見て、呆れ顔を隠せないハクと、頭を抱えるロランとルルナナ。

「……んで」

「端っこに追い詰めたところで、本題に入ろうか」

ナナが口を開いたところでオニキスが前へと出る。

「……あんたがディセット、で、間違いないんだな?」

オニキスを一瞥してから、ナナがディセットへ問いかける。

「えぇ。間違いありません」

「よー分からんが、アンタを殺せって指令が出てる。どういうことだ?」

「あっはっはっは」

ナナの質問に突然笑いだすディセット。

「事情を教えて……って言うワケはないか」

「いやはや、どこから教えたものか……」

「そもそもよぉ」

冴の呟きにディセットが逡巡していると、ハクが口を開く。

「話し合いの前に仕掛けてきたのはソッチだろう?そんでこんなところまで追い込んで尋問とはなぁ」

「ディセットはもうお尋ね者なんだよ?わかってる?デッドオアアライブ、なわけ」

ハクに対してルルナナがまくしたてるところへ。

不意にオニキスがディセットめがけてカタナを投げた。

足元を狙っていたそれを、ハクが素手でつかんで受け止める。

「それに。そこのニクヤローは殺る気マンマンみたいだぜ?」

「事態は急を要してる!事情の説明は完結、尚且つ的確に頼むぜ」

ハクは無造作にオニキスへとカタナを投げ返す。

「……とまぁ、少々話を伺いたく」

「話をするのはいいんですが、如何せん物騒なものですね」

ハイブリッドに対してディセットが苦笑いでそう言いながら、冴と視線が合う。

「……みんな、いったん落ち着こう」

「フン」

冴に対してルルナナは不満そうにしながらも腕を組む。

「えーまじ?こっから楽しくなりそうなのに?」

「いいから!」

「ひえぃ、おゆるしを」

冴の言葉にオニキスもそんな様子でカタナを納める。

「我々は、HQからしか話を聞いてないんだからな」

不意に冴の口調が厳かになる。

「……んで、どうすんだよ」

ハクが小声でディセットに声をかける。

「何にしろ、会話する余地があるのなら、状況の整理ですかね」

(とはいえ、疑いのある身、というのだから、どこまで信じてもらえるか……)

冴とオニキスはまだ話せそうな余地がある。だが他の4人は情報として知ってはいるものの、実際に会うのは初めてだった。

「ひとつ。答えろ、ディセット」

「何でしょう」

ナナが切り出す。

「あんたは白か、黒か」

「ん~……そうですねぇ」

ナナの質問に困った様子を浮かべるディセットが、右手の腕時計を見やる。

「まぁ、黒でしょうね」

「なるほど」

「まぁまぁまぁ」

今にも飛び出さんばかりのナナと、あまりにあっけらかんと宣うディセットに対して冴が割って入る。

「話を聞く前にそんなの答えられても分からんだろう?ディセットさんの話を聞いて、それから我々で判断しよう」

混濁としている空気をなんとかしようとする冴。

「ちなみにアタシはハクだから、名前の通り白なんだが、コイツのせいでグレー判定食らってるよーだな」

「時間稼ぎ?気に入らないの」

「あっはっはっは」

ハクの愚痴に、ルルナナの険しい表情。変わらず笑うディセット。

「おいおい!アークスの未来のためだぜ!」

「ちがうぞ肉。より良い未来だ」

「あ、そうだった><」

ディセットの様子を茶化すようなオニキスに、真面目に付き合う冴。

「わかった」

ナナは小さく息をつく。

「あんた、なんも関わってねぇな」

緊張感のないディセットの様子に、気迫をそがれたナナがめんどくさそうに言う。

「あぁ、いえ。失礼を」

「関わっている関わってない、という話であれば」

「そうですね。全てに関わっているかと」

ディセットは変わらない様子でそういうものだから、一同が困惑の色を隠せずにいた。

「全部って……そう言われてもなぁ」

「残念だったんな冴。俺たちはここに推理ゲームをしに来たわけじゃないんだ」

「考えんのもメンドクサイし、全部潰せば早いんだけどな……そうもいかないみたいだからな」

未だディセットを疑いきれない冴をたしなめるオニキス。その横で、ナナはめんどくさそうに欠伸をし始めた。

「正直、ルルナナはアンタの討伐に来てるわけで、仕事して懐があったかくなるのがより良い未来なんだけど?」

「じゃあせめてそういう理由を教えてもらえます?」

苛立ちを隠さないルルナナの言葉に、冴はディセットを信じたい思いで聞く。

「理由?それはもちろん、より良いアークスの未来のために。ですよ」

「ほらな?」

ディセットの答えに冴はそうだと思ったんだといった様子を浮かべる。

「どんな立場でも言えるんだ。より良い未来ってな」

「わけがわからん……あとは任せた。終わったら起こしてくれ」

ナナはめんどくさくなり、その場で寝ころび始めてしまった。

「じゃあそれは誰の未来のためなの?」

「それはもちろんアークス、ひいては市民のためですよ。あとは、そうですね……」

ディセットは視線をハクに映す。

「なんだかんだいって付き合ってくれる人のためじゃないですか?」

「じゃ死んでもらおうかな!!!」

オニキスがいつ用意して潜ってたかわからないロッカーの扉を開けて出現する。

「はぁ……紳士の時間は終わりかしら?」

オニキスに呆れながら、ロランも構え始める。

「まてまてまてまて!」

「なんだよ!」

冴が無理やり二人を制止させる。

「なんだかアンタらも一枚岩ってーわけじゃねーみたいだな」

「まぁ、組織ですから」

「あぁ、事情が事情だからな!」

ハクとディセットのやり取りにオニキスが割って入ろうとする。

「……さて、すっかり予定が狂ってしまいましたね」

ディセットが口を開く。

「煮詰まってきてるので、一度状況の整理と行きましょう」

「すんません、お願いします」

ようやく口を開く気になったディセットに冴が低姿勢になる。

「早くしないとあわてんぼうが襲い掛かっちゃうぞー」

「やめなさいって」

オニキスが手をワキワキとさせてると冴がつっこむ。

「いいですか?まずあなたたちは私を討伐しに来てるはずです。であれば、任務は遂行されるべきかと」

「でもそうは問屋が卸さないんだろう?」

「それはどうでしょうねぇ。とはいえ、命の危機にさらされるなら、抵抗はしないと。人間なので」

相変わらず進まない話にオニキスが震え始める。

「ま!ここで死んでもらった方が面白そうだよな!」

「肉、ディセットさんを甘く見るなよ」

「冴、俺に考えがある」

「わかった。それなら手出ししないよ」

「いうたな^^」

オニキスと冴のやり取りの横で、ディセットは続ける。

「少なくとも、ここにきてるということは最近の状況により、証拠が出てきている。スイップ君の件にしろ、ギャラエの件にしろ、ですね。そして、それらがおそらく、願望機がらみ、ひいてはブラックペーパーとも紐づけられた、といったところでしょう」

「……なんでそんな状況を理解してるうえで出頭しないんだ?」

「出頭したらその場でアウトですよ」

この状況ですよ?と言わんばかりのディセット。

「まだなにか……そう、任務は完全に遂行できてないんだな」

「えぇ。途中と言えるでしょう」

「途中……」

冴とディセットのやり取りに、ロランはつぶやく。

「そう、こうして話している間も、既に事態は動いています」

「最終目標はアークスの少数精鋭化か?」

ディセットの言葉に、寝ころんでいたナナがそこらへんに落ちていた空き缶をかじりながら言う。

「それもより良いアークスの未来だわな」

「まさか」

冴とナナへ、ディセットは首を振る。

「逆ですよ。いずれ民間人でさえ戦場に出なければならない時が来る。そのために、必要なことです」

「日本アークス化計画……」

「あっはっはっはっは。いやはや、ずいぶんとまぁ。いやたしかに、規模は大きいでしょうか」

冴の言葉にディセットが笑う。

「あぁ、イツミちゃんがああなったのも、スイップがああなったのも――てめぇのせいだ!」

オニキスが飛び出しカタナをディセットへ向ける。

「させないぞ」

ハクが間に割って入り、オニキスのカタナを右腕で受け止め、はじき返す。

「アタシは別にお前を同行するって気はないんだがな……」

破れたジャージを脱ぎ捨てるハクに、オニキスが構えなおす。

「俺もだぜぇ……でも今ディセットに死んでもらった方が都合がよさそうなんでな!」

「物騒なことを言いますね。別に死にたがりを自称したことはないんですが」

「……ここにいるのはサエとかいうのを除いてほとんどがオマエをぶっころしたほうがいいって思ってるようだぞ?」

「なかなか切羽詰まってますね」

オニキスの気迫に変わらないディセットに若干呆れ気味になるハク。

「黙ってそうできればいいんだけれど、わからないことだらけだし」

「こちらもわからないことだらけですよ」

ルルナナの言葉にディセットも苦笑いを浮かべる。

(……だめだ、とてもじゃないが今の状態で戦うのは……でも)

冴がタクトに手をかけられない。

「んで?このピンチを打開する策はあんのかアクダイカンサマよ」

「まさか。それこそ死んだふりでもしなければ」

「もういいわ」

ハクとディセットのやり取りを遮るように、ロランが口を開く。

「仕方ないから、一度静かにしてもらう。これも任務だから」

そう言って、武器に手をかける。

「おおっと」

それを見てディセットが両手を上げて一歩後ずさる。

「てめぇ!!」

ハクが叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene13「待ち遠しい明日」

(本当なら、追いつかれた時の予定だったのですがね。まぁ、時間としては問題ないでしょう)

ハクがディセットへ駆け出し、

 

「おらぁぁぁぁ!」

 

そのままつかみ掛かり、

 

「鳥になってきやがれええええ!」

 

無造作に川向うへとディセットを投げ飛ばした。

 

「おわあああぁ」

「!」

情けない声を出すディセット。それを見て、ハイブリッドが動く。

(隔壁はアークスが民間人への被害を出さないための隔絶装置であり、我々の存在に対しての保全にもあたる。対象である我々は隔壁を超えることはできないが、彼らは今日本人として視察に来ていたはず。仮に隔壁を超えられれば、対策はとれない。できれば避けたかったが……!)

隠し持っていた拳銃でディセットを撃つ。

射線に入った銃弾がディセットを捉える。

だがディセットの目の前に出現したレドラン――サモナーが使役・召喚できるペットと呼ばれるサポートの一つ――が、銃弾を受け止める。

「くそっ」

ハイブリッドが撃ち切った銃を捨てる。

「チッ」

「んたく!」

ハイブリッドが替えの銃を抜こうとして、ロランとルルナナが後を追おうと駆け出す。

「いかせねぇ!」

大地をありったけの力で踏みつけ、気迫でロランとルルナナを制止するハク。

「逃がさねぇ!」

「させるかよ!」

柵を乗り越えようと飛び上がったオニキスへ、ハクが左手に持ち続けたたい焼きを投げつける。

「あづぅい!?」

中の餡の熱さにエラーを起こしながら、オニキスが川へ落ちていく。

そうして、ディセットは隔壁を超えて、通りがかったトラックの荷台に落ちていった。

「へっ。こりゃおりんぴっく?とかねらえそーだな」

遠くなるトラックを見て、満足気なハク。

「見事、逃げられたってわけだ」

空き缶を飲み込み、ナナがぼやく。

「おぼれる!おぼれる!しんじゃうー!」

「オニキス!」

ロランがオニキスを引き揚げる。

「ぶほおおうえええええ」

オニキスは落ちた場所が悪かったのか、ヘドロにまみれていた。

「はぁ……もう最悪。シャワーを浴びたいわ……」

手袋を外しながらロランが言う。

「はっ、多勢に無勢なんて真似すっから、バチがあたんだよ」

柵からハクがオニキスへ罵る。

「戦いにひきょうもらっきょうもねぇ!」

オニキスの声が遠く響く。

「くそぉ、これじゃあご自慢のオニキスセンサーもイカれてやがる……」

オニキスがディセットの行き先を突き止めようとするも、どうやら調子が悪い様子だった。

「んで?どうすんだよ?よければこのままアタシは家に帰りたいんだがよ?かえっていいか?」

「まぁ、あなたは元々対象ではないから……」

すっかり戦意の失せたハクに、川から戻ったロランが言う。

「あるいはあれか?腹いせにアタシを寄ってたかっていたぶってくか?」

「いいね!!!」

同じく上がってきたオニキスが今にも襲い掛かろうとしていた。

「んなことはしないよ」

「よくないってね!!」

冴の言葉に反射の如く続くオニキス。

「というか、なんでディセットさんといっしょにいたの?」

「んなのアイツに呼び出されたからに決まってンだろ?うまいもの食いに行くって言うから」

「……ごめんよぉ」

「そこのアンチャンは殺る気って感じだな」

冴の質問に答えたハクは、ハイブリッドへ視線を向ける。

「必要であれば、やるぞ」

「だーやめとけって。やるだけ無駄だもう」

そこへハイブリッドを制止するようにオニキスが声をかける。

「んで?結局どうなんだ?アタシこのあとバイトだからこれ以上時間ないんだが」

「……てっしゅ―!」

オニキスが声を上げる。

「なんなのなの……」

「そりゃアタシが聞きてーよ。ったく」

ルルナナの言葉を受けてハクがたまらずため息をつく。

「後でどれくらい怒られるかなー」

「は~……どうやって言い訳するつもりなの?」

「そんなの、邪魔が入ってダメでした。しかねぇだろ」

「ま、それしかないっか」

ルルナナとオニキスが動き始めると、4人も準備に入る。

「それに、あんな投げ飛ばされ方して生きてるとも思えないしな!」

「はぁ……ま、それもそうね」

「いざとなりゃ、何とかなるだろ」

オニキスの楽観視に、やれやれといった様子で付き合うロランと起き上がったナナ。

「あーあー!腹減った腹減った!飯食い行こうぜ!地球の飯はうまいぞー」

「怒られる前に腹ごしらえ?賛成なの」

「あ、それなら近くにウマいラーメン屋があるから」

「あ、いいっすね」

「あ、そうだ。ちょっと待って」

冴がオニキスとのやり取りでふと何かを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6人が撤収を始めたとき、ハクに通信が入る。

「無事……ですか……」

ディセットからの通信であった。

「ん?おう。生きてるか?骨とか逝ってないか?」

「ごふっ、えぇ……な、なんとか……」

ディセットの声に水っ気が混じっているように聞こえる。

「おいおい、しっかりしろよ。だから言ったろ?死ぬよりはマシかもしてないってな?」

「やられ、ましたね……まだ、他にもいたとは……」

「……おい、なんだそりゃ」

「気を、付けて……アナタは、どうか……」

「おい!しっかりしろ!聞こえてるだろ!」

それきり、ディセットからの応答がなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冴がハクに近づく。

「迷惑かけたし、一緒にラーメンでも」

「クソッ!」

声をかけようとして、ハクの様子に硬直する冴。

「七人目がいた……?なんだよそれ、イミわかんねーよ。だからどうしたんだって……」

「おーい、大丈夫か?」

ハクが冴に気づく。

「……いや、アタシは急用が入った。色々やらなくちゃいけなくなったみたいでよ」

ハクの表情は、先ほどと打って変わって険しい表情となっていた。

「お、おぉそっか。まぁ飴ちゃんでもなめてな?」

「おい冴ー!そんなアホほっておいてはやくいくぞー!」

「めんごめんご」

飴を握らせた冴がハクから離れて5人のもとへ行く。

「……何が正しくて、何がおかしいのか。アタシは結局、何も知らずに振り回されてばっかだな……」

握らされた右手の飴に、ハクは視線を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、任務を遂行できなかった6人に対して、覚えのない報酬が振り込まれたいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「伝えたかった明日」

トラックが走る。

街灯が流れていく。

振動が背中を押す。

「いやはや、もう少し鍛えてもよかったですね……」

ビニールシートの上にあおむけに横たわる。

投げ飛ばされた後、運よくトラックの荷台へと落ち、追手から逃れることに成功した。

もちろん、下調べはしていた。東京だけであれば情報はほぼ網羅できているつもりだ。

だが、イレギュラーなくこうして自分が無事であることは、本当に幸運であった。

(彼女には、申し訳ないことをしてしまいましたね……)

一番に浮かんだのは、白髪の女性。

最初は、竜族との交渉を円滑にするために、巫女として働く彼女へ接近していた。

竜族でも寄り付かない辺境の区域に住む彼女は、他の竜族と違い対話によるコミュニケーションが可能であり、完全な竜体となっていない分、こちらとしても都合がよかった。

ただそれだけのはずだったのだが。

……。

――2020年1月。

「あけましておめでとうございます」

「おう」

その日は契約の支払いということで、料理を振舞うことにしていた。

日本で小さなカフェを経営するディセットは、料理の腕前を披露しようと、ハクを自室へ招いていた。

テーブルの上には、手作りのおせちが並ぶ。

「今は地球で言うと、新年を迎えた大事な時期ですので、こうして豪華な料理を振舞うのですよ」

「へぇ。こいつは随分とがんばったな。安月給なンじゃなかったか?」

「まぁ、そこは出せるものは出す時にということで」

「オウそうかい。じゃ、好きに食わせてもらうぜ」

「あぁ。そうだ。たべるときは、こうして箸を使いましてね」

地球の文化などハクが知る由もないことを知っているディセットが、簡単な作法を教える。

「めんどくせぇ食べ方だな。素手でどうせ食う輩もいるんだろ?」

「ここではそういう人はいませんから」

「へぇへぇ。ま、別にいいけどよ」

そう言って、箸を持つハクは、ゆっくりとした使い方で食べ始める。

「ん。味はいいな」

「ありがとうございます。そういってもらえると奮った甲斐がありますね」

「あん?これ全部アンタが作ったのか?」

「えぇ。取り寄せよりはと思いまして」

「はぁ。腕がいいんだな」

「地球の日本で、お店を出させてもらってますから。小さな喫茶店ですが」

「なるほどねぇ」

喋りながら、ハクはどんどんと食べ進める。

「それにしても、いいですね。誰かと新年を祝うというのは」

「なんだよ。独り身で知り合いもいないってか?」

「あっはっはっは。いやいや、手厳しい」

苦笑いを浮かべるディセットに、ハクがため息をつく。

「まぁ、アタシでよければ飯くらい付き合うよ。それに飯をもらうのは契約で決まってるしな」

「えぇ。ありがとうございます」

「それにしても、ボディーガードってのはこんなに暇でいいのかい?」

「まぁ、基本外に出ませんからね。そうそうありませんよ」

「フーン。まぁアタシは飯が食えるならそれでいいけどな」

「そうですね……もしそんな時が来たら、あっという間にやられてしまいそうです」

「アンタ、アークスなのにアタシよりひょろっちぃからな。ま、そんときゃ何とかして助けてやるよ。死ぬよりはマシかもしれないしな」

「期待させてもらいますよ」

「おう。それよりおかわりはあるか?」

「えぇ。全部食べてもらって大丈夫ですよ」

「……あー、まぁ、折角だし、アンタも食えよ」

「おや、よろしいので?」

「飯食わずにポックリいかれても困るしな」

「あっはっはっはっは。では、ご相伴にあずかりましょう」

そうして、ディセットが箸をとる。

「ん。我ながらなかなか」

ハクはそんな様子を見て、ホッとした様子で食事をつづけた。

――。

「……また、食事が取れればいいですね」

ディセットが瞼を降ろす。

トスッ。

「ガ、ッ」

喉元に、鋭いものが突き刺さった。

視線を動かす。

ビルの屋上で、赤黒い左腕が目に入る。

(あぁ……ついに、来ましたね)

(これで、あとは、彼らが……)

(そうすれば、ようやく私の価値も……)

(……ただ)

(彼女だけは……)

(明日を、生きて……)

そうして、最期の演技を始めた。

作り続けたモノを最後まで果たせるように。

ディセットの生涯の中で、唯一自分を託した存在へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Information 「調査報告書-file04-」

・犯罪組織の内通者について

昨今で噂される「ブラックペーパー」との内通をし、犯罪組織の関係者を呼び込んでいたとされる「ディセット・ファテルマ」容疑者が、本日アークスの活躍により討伐された。

既に容疑者が行なった改ざん情報などの証拠が挙げられており、詳しい調査が現在も引き続き進められている。

 

また、容疑者は日本において独自の拠点を設けており、そこで規格外の兵器の製造を秘密裏に行っていたとされる。現在は封鎖されている。

 

人工守備計画(ガーディアンズ・プロジェクト)

「ディセット・ファテルマ」氏が行なっていた研究のうち、フォトンの技術に適性を持たない一般市民を兵士として運用しようとする計画があることを、HQが報告した。

「人工守備計画」とされたこの計画は、「守護輝士」の人造、ダーカー因子をフォトンとしての流用、ダーカー因子の非感染因子への改造・体内保存、フォトンを扱わない新エネルギーの研究、生体兵器の製造、具現武装により欠損部位の補填・生成などが記されていた。

既に実践段階まですすでいるとされたその計画は、氏が犯罪組織との関連があるとされ、現在は処分されている。

 

・計画の犠牲者

「人工守備計画」の実験体として登録されていた中に、イツミ、ノーリ、ミルフィーア、ギャラエ、クラエス、■■■■■■、スイップ、七七四の9名の名前が記されていた。

現在、イツミはHQにより保護されているが、ノーリ、ミルフィーア、クラエス、七七四の4名においては、現在消息が不明とされている。

 

 

 

 




なぜ文章は膨らむのか。それは詰め込みたいからだ。

こんばんは。ここまでお読みいただきありがとうございます。

8割ギャグ回。たまにはそういうのがあってもいいと思うんです。だってロールプレイだもの。
すみません!石は投げないで!

冗談はさておき、第一話、第二話と比較して毛色の違うお話となっているかと思います。
普段ギャグ路線での文章をかけない自分としては、ロールプレイの場でこういった新しい発見と刺激に助けられてきた場面が多くあります。

セッション中のGM(ゲームマスター)として参加者をリードしつつ、演者として物語に参加する。
最初は難しいと思われがちで、実際やってみるとうまくいかないことばかりではありますが、得られるもの、勉強できるもののほうが圧倒的に多いと感じます。
私事ながら、当時は持病を発症して精神面で限界状態のなか、よくここまでやったなと労ってあげたいです。
(撮影してる最中に映り込んだチャット欄に流れてきてた内容が、当時騒動やら何やらですごかったのを思い出す)

ロールプレイは、体調のいい時、心に余裕があるとき、盛り上げられるときにやる。
次に参加する機会があれば、心がけていきたいところです。

物語もようやく折り返し。
ここから真相に迫ることができるかどうか。
それは事件に相対するアークスたちにかかっている。
当時の緊張感を、少しでも皆さんに感じていただければ、幸いです。

長くなりましたが、改めて、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

できれば、明日……終わらせれたらいいなぁ(残り5時間分の録画データを見ながら)

それでは、次回お会いしましょう。


あ、作中で握っていたオニキス氏のカタナですが、ご存じの通り以前使用していたものは壊れてますので、予備のカタナで代用していた次第です。
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