PSO2ロールプレイセッションリプレイ「変わらぬ日々の出来事」   作:月見城郭

4 / 5
願望機事件の幕引き。

それは、かつてあった事件。
経年による記憶の風化は著しく、それは無常なる日常の中で駆けぬける光のよう。

かつてあったBARは忘れ去られていき、
友と呼んだ人たちもまた、日常へと帰依する。

これは、彼女たちが残していったわずかな光の残滓。

誰にも届くことのなかった。過去のお話。

細く伸びる光の糸は、少女の首を優しく締めつけていく。

Phantasy Star Online2を題材に、ロールプレイをセッション形式で行い、リプレイを小説風にまとめた本作の第四話。

どうぞお楽しみください。

――それが、明日へつながる道になるのなら。


明日につなぐ過去(The future connected by the past)

Scene14「かなうことのない今」

地球暦 2020年3月31日。

 

オラクル周辺宙域に出現している異世界空間に存在する惑星オメガ。

その中に幻惑の森と呼ばれる地域で、一人のアークスがとある任務に就いていた。

名はカナデ。彼もまた、「守護輝士」の称号を持つアークスであった。

「……随分と手を焼かされた」

軽く体をほぐしながら、カナデがひとり呟く。

オメガで確認された異常反応。

カナデは一人、これの対処を行なっていた。

今、オラクルは新たに出現したフォトナーと呼ばれる、アークスとダーカーの創造主と称している存在との戦争の最中にあり、確認されている惑星での治安維持も目下継続されるため、アークス単独での任務が増加の一途をたどっている。

カナデのように実力を伴うアークスであれば、駆り出されることはそう珍しくなかった。それによるアークス全体の士気の安定化もあったのやもしれないが、カナデ本人にしてみれば、任務であれば気にすることはなかった。

「次の任務は……」

とはいえ、一人で数百の敵性存在を相手にするのも、片手間にできるようなことではなく、思わずため息が出る。

端末を操作していたカナデ。

そこへ肉のちぎれるような音が耳に届く。

カナデが一歩後ろへ跳ぶと、目の前を赤黒い物体が横切った。

遠くの茂みの奥で、何かが動く。

カナデがそれに気づくと一息に駆け出し、それを追う。

(地の利の差がある……?だが、これなら)

体を低くし、加速をつける。

再び何かがこちらへ飛んでくる。

武器を出さず、そのまま最小限の動きでカナデが避けつつ、距離を詰める。

そうして、カナデが相手の姿を確認する。

(人か?)

原生生物、という様子ではなかった。

だが、これ以上逃げられるわけにはいかない。

逃げる相手へ、カナデがライフルを出して牽制射撃を行う。

相手もそれに気づき、こちらへ再度射撃が行なわれた。

「!」

違和感を覚えたカナデが横へ跳ぶ。

着弾した相手の弾が地面に当たると爆発した。

転がるもすぐに姿勢を整えたカナデが、ライフルを構えて相手を捕捉する。

「……はぁ」

逃げ切れないと悟ったのか、相手は足を止めてこちらへ姿を見せる。

「最初ので亡くなっていて欲しかったのですけれど。うまくいきませんね」

口を開いた女性。薄いブロンドヘアーに青黒い肌。

そして、左手に生えている赤黒く肥大化した腕。

(……アークス、か)

フォトンの反応を、僅かだがカナデは検知できた。

(最後に放ったものは、ブレイバーのフォトンアーツと判断できるが……)

「残念だが、そう簡単に死ぬわけにはいかないからな。とはいえ、諦めろと言っても無駄だろうが」

カナデがライフルを構えたまま、女性に告げる。

「こちらとしても、守護輝士の暗殺などと大それていると思いますよ。尤も、成せぬことではないと判断しています」

「ほう……そんな依頼をもちかけるとは、裏の組織か。なんにしろ、退屈な連中だな」

「クライアントの事情はうかがい知れませんね」

興味もありませんが、と女性は続ける。

「とはいえ、貴方の意識を数刻でもいただいた時点で、私の任務は完了するので、ご協力くれれば」

そういうと、女性の左腕が肉のちぎれるような音を立てて、左右へ広がる。

(まるで弓だな)

「動かないでくださいね?」

カナデがトリガーを引く。

それを見た女性は左手を振り、横へ跳び射線から逃れる。

首を傾けて弾を避けたカナデの後ろに生えていた木にそれが突き刺さる。

(結晶……?)

視界に入った弾は、血を固めたような鋭い結晶が矢のようだった。

続き、2,3と放たれた矢を避けながら、カナデがカタナへと持ち替えて接敵を図る。

一瞬の間に距離を詰めてカナデが切り上げると、女性が左手で刃を受け止める。

「さっきも言ったが、断る。そう簡単に死ぬわけにはいかんのでな」

振りぬこうとするも、つばぜり合いで押し抜くことができない。

「ちっ」

嫌な気配を感じて左へと跳ぶカナデ。自分置いた箇所へ、宙に浮かんだ術式から矢が放たれ、自分のいた場所へ着弾していた。

「流石は守護輝士。といったところでしょうか」

カナデが離れるとさらに間合いを離す女性。

(厄介な腕だ、隙を見つけるしかないか)

「よそ見はいけませんよ」

カナデにひときわ早い矢が向かう。

(この感覚!)

カナデは浮遊体(ビット)を出現させ、放たれた矢へぶつける。

瞬間、ぶつかった衝撃で爆発により煙幕が発生する。

そして、爆発を逃れた浮遊体の一つが女性へと向かう。

「っ!?」

矢で浮遊体を撃ち、無力化させたところへ、煙幕の中からカナデがカタナを構えて距離を詰めてきていた。

「見切った」

ローゼシュヴァルト――渾身の力を込めたカナタの一突きを放つフォトンアーツ。

「くっ」

女性は左手で受け止めるも衝撃を殺しきることはできず、そのまま吹き飛ばされて背後の巨石へ打ちつけられる。

「かはっ」

「フッ」

カナデが追い付き、倒れる女性の左手を踏みつけ、首元へ刃を突きつける。

「く、ぅ」

「さて、何か言い残したことはあるか?」

「……殺せ!」

「別段殺す気などない。それに、一言もそうはいってないだろう?喧嘩を吹っかけてきたのがそっち、というだけだ」

「……つくづく、この世界の人間は甘いですね」

「なんだ。お前も別世界のやつか」

地球の発見、そして今いるオメガの発生において、アークスにも様々な人種が流れ込んできている。

同志として歩む者もいれば、敵として相対する者もいた。

カナデはそういった輩との因縁も浅くはなかった。

「貴方に、語ることなどありません」

「そうか。なら、あとは俺の仕事だ」

カナデはそう言って、カタナの柄で女性の頭部を打ち、意識をとばす。

「……悪いな。クライアントには失敗したとの報告にさせてもらおう」

武器を納めて、気絶した女性を担ぐ。

(ひとまず、どこに連れていくべきか)

片手で端末を開き、アークスカードの照合を行う。

「イシュルーナ……HQか」

「まずはそこへ連れていくか」

そう言って、カナデはキャンプシップへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、カナデは後日、自分の名前がニュースに載ることなど、微塵も考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Information 「調査報告書-file05-」

・守護輝士暗殺未遂事件

2020年3月31日。

惑星オメガにおいて任務中だった守護輝士「カナデ」が、アークス「イシュルーナ」の手による暗殺未遂事件が起こる。守護輝士の活躍により犯人は確保されている。

 

・獄中での死

ナベリウスで発見された鉱石をめぐって、「ディセット・ファテルマ」容疑者が密輸入していたとされ、それに加担していたアークス「ギャラエ」氏が、留置所で亡くなっていたと、管轄のアークスより報告された。

「ギャラエ」氏が亡くなったことにより、ナベリウスでの鉱石の件が途絶されることとなった。

死因は出血多量。心臓部を撃ち抜かれていたとのこと。

 

・イシュルーナについて

HQに所属していたアークス「イシュルーナ」は、「ディセット・ファテルマ」によりアークスに登録、以後はディセットの暗部として活動を行なっていた。今回の暗殺未遂事件で、一連の事件を守護輝士に擦り付けようと画策するもこれに失敗。現在は取り調べを受けている。

なお、彼女も「人工守備計画」の被験者であったとされており、左腕の生体兵器についての研究に協力していたとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「変えたい明日」

「っ、く……」

熱い。

焼けつくような痛みが左腕を襲う。

(まただ)

イシュルーナは一人、左腕を抑えるようにベッドの上で体を折る。

左腕のとげがシーツを引き裂く。

「はぁ……はぁ……いつっ」

グジュリ、グジュリと、左腕の肉の中がうごめく。

「くそ……くそ……」

右手を左腕に食い込ませるように握る。

――いつからだっただろうか。

物心ついたころには、すでに左腕にそれはあった。

彼女の住んでいた地域において、「シャドウ」と呼ばれた種族の中で生まれた彼女は、常に好奇の目にさらされていた。

左腕にとりついた化け物。悪魔を宿した忌み子。一族の恥さらし。

そんな迫害を受けた彼女にとって、唯一の助けが、この左腕だけだった。

(殺してやる……いつか、必ず……)

自分を迫害した一族だけではない、元凶となったこの左腕も、いつか必ず報いを受けさせる。

その一心で、彼女は必死に生き続けた。

「良いものを持ってますね。素質もいい」

そんなある日、一人の男が彼女を訪ねた。

「いいでしょう、貴女に仕事を与えます。今以上には、生活もしやすくはなるものかと」

飄々としている男に不信感はあるが、仕事があるなら食い扶持もつなぐことができる。

「それに、その腕。お困りのようですね。こちらにくれば、何かわかるやもしれません」

なにより、初めてこの腕への展望が開けた。

(どうせ、断る理由などないのだから)

そういった諦観も含んで、彼女は男の誘いに乗った。

それ以降は、想像以上に平和ボケした世界だった。

誰も私の姿に言及はしない。それどころかまるでいつものような反応までする。

別世界に来たのだと、痛感させられた。

だが、やはりうまくいくことは少なく。

「申し訳ない。今のままでは、貴女への後遺症なしでの切除は不可能です」

左腕は、深く神経にまで根付いているという。

(そうか、どうせだめだと思った)

「ですが、現在の進行のまま、食い止めることはできます。その間に、こちらで研究を続けて、必ず自由にさせられるよう、努力します」

理想を語る男の目は青く輝いていた。

その理想に、付き合うのも悪くはないと、その時思ったのだ。

――。

痛み止めを左腕に打ち込む。

しびれが走ると、徐々に痛みが落ち着いてくる。

「……お前は、本当にそれでいいのか」

あの少女を生かすことに、それほどの意味があるのか。

「あの子こそ、私たちの理想です。彼女を死なせるわけにはいきません」

あいつはそう言った。そのうえで、今の仕事を続けるようにと私に言った。

「……そのための犠牲が、お前のいうより良い未来なのか……?」

犠牲のない成功はない。

だが、犠牲を良しとする男ではなかったはずだ。

「なにが変わった。ディセット……」

時計を見る。標的がそろそろ出発する頃合いになっていた。

「……いいだろう。どうせ行く当てなど、ないのだから……」

体を起こし、支度を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「望まなかった今」

……。

――意識が覚める。

暗い部屋の中、体が動かない。

そうして、全身が拘束されていることに気づく。

「なんだ、これ……どうして」

わけがわからなかった。

どうしてこんなことになっているのか。

「なにがあった……確か、ルーナが……店に」

「気が付いたか、ノーリ」

俺を呼ぶ男の声が聞こえる。

「っ!セッツァー……!」

「ほぅ、元気はあるようだな」

「くそ、どういうことだ!」

「騒ぐな、傷に障るぞ」

そう言って、セッツァーがスイッチを押す。

「っ!ミル!」

奥の壁に、磔にされたミルフィーアの姿が見える。

拷問の跡か、痛々しい傷跡が全身に刻まれている

「おいミルに何をした!ミルは関係ないだろう!」

「用が済んだから処分しようというだけだ」

「処分……処分だと?」

拳を握り締める。

「ふざけるな!ミルと、イツミちゃんには手を出さないとの約束のはずだ!」

「あぁ。もちろん。お前が約束を守る限りはそうしていた。だが反故にしたのは、貴様だ。ノーリ」

「なんだと……?」

「お前のおかげで情報が出すぎた。良い陽動であったから見逃していたが、少しばかりやりすぎたな」

「ふざけるなよ……お前が仕向けておいて、都合が悪くなったら手のひら返しか!」

体の拘束がほどけない。フォトンを練ることも……。

(フォトンを……?)

「っ……おい、イツミちゃんはどうした」

「私のほうで保護をしているさ。最も、彼女からすでに了承は得ている」

「外道が!イツミちゃんを騙すのはやめろ!」

「これ以上の問答は不要だ。私にも時間が残されていない」

セッツァーはおもむろにノーリに左胸に手を置く。

「最期だ。恋人への手向けにこれだけは流用してやる」

「やめろ、それに、触るな……!」

「役立ってくれることを願うぞ、永久機関」

ノーリの左胸を開ける。

フォトンの青緑色の発光がまばゆいリアクターコアがむき出しになる。

「やつの研究成果。なんとおぞましい。人体の叡智をこんな形にするとは……さぁ、楽にしてやる」

「セッツァー……!」

「安心しろ。お前の姉も、しっかりと研究に役立ってもらうさ」

「……ミル……イツミちゃん……すまない」

「……燈」

……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「忘れたくない思い出」

彼からメールが届いた。

ここ最近ずっと忙しかったみたいで、ほとんど連絡を取ってなかった。

仕事とか、家族のこととかになると、周囲に目が向かなくなるのは、いつものことではあるのだけれど、心配になる身にもなってほしいといつも思う。

「……ま、心配かけてるのは、私も同じか」

隣人である(パブロ)の頭をなでながら、ひとり部屋で呟く。

……。

3月に、とある集団に拉致された。

情報がどうとか話していたのが聞こえたが、ほとんどわからなかった。

ただ、そいつらは私を見せしめにしようとしていたようで、手ひどくやられた。

おかげで、目と大事な尻尾を奪われてしまった。

機械製の獣人として実験開発された身であるから、別段痛みなどはそこまでではなかったが、お気に入りだった尻尾が二度とつけられないと聞いたときには、すごく悲しくなったのを覚えてる。

そんな顔で彼に会ったからだろうか。

彼は私を抱きしめると、すまない、すまない。と、何度も繰り返していた。

「俺は、どこまでも無力だな」

「そんなことない」

そう、彼が無力なんてことはないのだ。

私は、彼に救われた身だ――。

私には、妹がいた。

可愛い妹で、私と同じように生まれた妹は、私以上に過酷な実験を重ねられていた。

逃げ出した私を、彼女は恨んでいると思っていた。

だが、そんな妹と、私を、彼は一人で助けようとしてくれた。

おかげで、妹が私を心配してくれていたことも知ることができた。

実験でボロボロになっていた妹に、悲しい思いをさせる前に、彼は看取ってくれたのだ。

――。

「だから、そんなこと言わないで」

今にも泣きだしそうな様子の彼の――キャストが涙を流すことなどないのだが――震える肩をそっと抱きしめる。

「貴方が生きていてくれるだけで、私はそれで、良いの」

この言葉がすべてだったのだが、彼にはどうもうまく伝わらなかった。

でも、私を思ってくれての言葉だったからこそ、悪い気など起こることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そのメールを、見るまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燈へ

突然こんなメールを送ることになって申し訳ない。

燈にだけは、伝えておきたいことがある

俺は、イツミちゃんをなんとかして戦いのない場所へ送りたい。

彼女が無事に過ごせるためにも

だから、俺の勝手を許してほしい。

こんなことしか俺にはできなかった。

すまない、燈。

どうか、忘れないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに、これ」

震える手で通信を送る。

何度も、何度も。

でも、彼は一度も応答することはなかった。

「ふざけないでよ……」

気づけば、拳を握り締めていた。

「どうしていつもそう、勝手なことばっかり」

そう言って、同じことを、彼が私に言ったことを思い出す。

思わず、笑いがこみあげる。

「良いよ、それなら、私にだって考えはある」

私はそうして、既に手遅れになっていることなど知らず、事件の足跡を追った。

いや、どこを調べても、彼の最期につながる情報は出てこなかった。

だから、まだ私は、彼を信じることにした。

 

 

 

そして、それから一カ月がたち、あの人から連絡をもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude「私にできること」

暗い部屋の中。

私は一人で流れゆく星空を見上げる。

何も考えたくない。

それでも、やっぱり思い出してしまうことはあって……。

……。

 

――1年前。

 

その時は、友人の恭ちゃんの家で、生まれたばかりの子どもの面倒を見ることになっていた。

 

私は一人、遅れてそこにやってきた。

 

「うわー。かーわいぃ~」

 

生まれたばかりの女の子「おーりゅー」ちゃんは、本当にかわいくて、寝顔は安らかな表情を浮かべてた。

 

(いいなぁ)

 

その時は、本当にそう、羨ましかっただけなのだ。

 

「恭ちゃんがお父さんかぁ。なんか想像できないなぁ」

 

そんなことをふと口にして、近くにきていたちゃまに質問をした。

 

「ねぇちゃま。ちゃまのお母さんってどんな人なの?」

 

「ん?私の?」

 

そうだなぁと、ちゃまは少し考えて。

 

「強い人だよ。優しくって、温かくて」

 

「へぇ~」

 

それから、ちゃまはお母さんとの思い出を話してくれた。

 

(私は……)

 

私には、ないものだった。

 

――半年前。

――2年前。

付き合っていた■が私の部屋を訪ねてきた。

付き合っていた■は私を一人にした。

久しぶりに出会えて、私はとても胸が高鳴った。

いつになったら、会いに来てくれたの?

■に会うと、初めて出会った頃のお菓子の思い出がよみがえる。

今、■の顔を思い出すと、覚えのない記憶がよみがえる。

一人だった私に、■は声をかけてくれて、お菓子を分けてくれた、

私は、ただほめてほしかった。

それ以来、■を追いかけて、3カ月で彼とのお付き合いを始めた。

みんなに、■に、ほめてほしかっただけなのだ。

■は私が故郷に戻った後、わざわざ友人たちと追いかけてくれた。

それなのに、みんな怖い顔をして、私をいじめるのだ。

活動の一環と言ってたが、それでも私は本当にうれしかった。

そして■は、そんな私を躊躇うことなく斬り捨てたのだ。

だから、■が突然「結婚」の話をしたときは、困惑した。

だから、■は私の思った恋人ではないのだと、気づいた。

私は、あなたにとって「ただの女」という概念でしかないのかな。

私は、あなたにとって「ただの女」という概念でしかないだから。

――。

――。

先生と出会ったのは、そんな時だった。

 

……。

「もう、充分だろう」

部屋に男性が入ってきていた。

ノイズが走ったように、耳に届く。

あぁ、不快。

生まれた時から患っている耳の障害。

ヘッドセットを外してる今は、もう何も聞きたくない。

「もう、全部、いやなの」

怖かった。

ずっと、怖かった。

アークスになんてなりたくなかった。

戦場になんて出たくなかった。

家族を守るために私はアークスになったのに。

家族を守りたかったから、怖い戦場もいっぱい、いっぱい出たのに。

その家族は、ファー君とヴィヴは、もういない。

二人を、二人をそのまま生かしておくことなどできなかった。

ナハトさんを救うときだって、怖くて、怖くて。

さび付いてく体が痛くて、苦しくて。

喋れなくなった時も、本当に、苦しくて、怖かった。

でも、私が。

私がやらないと、ダメだったから。

それなのに。それなのに。

私を守ろうとして豹変していった■■■■を捨ててしまった。

私を好きだと言ってくれた■を捨ててしまった。

私は、私を守ってくれるものを裏切ってしまった。

その顔が、気持ちが、怖かったから。

こんな私は、もう、きっと、ここにいるべきじゃないんだと、思ってしまった。

だって、私のお母さんなど、いないのだから。

「イツミちゃん、あなたのお母さんは……」

「……だから、お母さんのことは忘れよう」

「な……に、これ……?」

「――無理やりにでも聞かせるからね」

「不愉快極まりねぇな――」

「あれが、母親などとッッ――」

「―-おまえ――母親――けない――だろ!!」

あのときも、みんな、怖がってた。

みんな、怖い顔をして、声が、すごく、ノイズにまみれてて。

全然、うまく、聞き取れなくて。

ただ、ただ、その顔がこわくて。

でも頑張って聞き取ろうとして。

それなのに。

どうして、だれも、認めてくれなかったの……?

(あぁ、そうか)

きっと、私も化け物なのだろう。

それなら、私なんて、もう……。

「私は、独りが、良いな」

「どこか静かな場所で、争いもなくて……」

「誰も、いなくならない世界が、いいな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Information「調査報告書 -file06-」

・除染装置の開発

地球暦2020年4月26日。

研究部より、戦場下でのダーカー因子の緊急除染装置の開発に成功したとの報告が入る。

ダーカーに襲撃を受けてダーカー因子を宿したアークスに対して装置を使用することにより、一定量の除染効果が期待できるとのこと。

なお、量産化において素材の確保が困難なため、現在も量産に向けての研究が進められている。

 

・アークスの外部装甲の研究について

フォトンを供給できない特定条件での作戦の遂行のため、フォトンを内部で保存・運用することによる外部装甲の研究が進められており、現在実験段階に進んでいるとされる。

また、テストケースの蓄積のため、一般アークスによるテスト参加者の募集も進められている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene15「彼女のいない世界」




ここまでお読みいただきありがとうございます。

守護輝士って存在は、すごいですね。
自分もあんなすごい素質とかあればいいのに。
などと考えていたのもいつまでか。

お話の中で出てきた人物紹介。またどこかでまとめてできればなと思います。

引き続きお読みいただければ、幸いです。

今回はこれくらいで。

それでは、次回またお会いできればと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。