鋼鉄の咆哮_AZUR BREAKER   作:Bligh_Drunk

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~~~と、言う訳で...

『百獣の王』と呼び例えられるライオンは、単体で強い力を持つ存在というわけでは無く、
百の同族を従えているように見える様から、ある種の"カリスマ性"を持つ動物として人々からそう呼ばれるようになったということなのかもしれないのじゃなぁ...


->なるほどですねぇ...

->皆さん、いかがでしたでしょうか!!

->さぁて、次回はそんなライオンとは真逆の存在となる動物、
 『トラ』の生態について専門家を交えて迫っていきたいと思います。
->"恐怖の象徴"とも云われるトラの真実とは...!?

->お楽しみに!!!


―古い録画用ビデオテープ―

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A-7.獅子か虎か

~南太平洋 洋上補給基地

 第一ブリーフィングルーム

 

 

「ほ、本当なんだって!! その鏡面海域で見たんだよ! "大きな怪物"と物凄い数のセイレーンが!!!」

「本当に本当だよ! 私も一緒に見たから、間違いないって!!」

 

南極海の鏡面海域へ2度目にして緊急の出撃となった部隊が帰還してすぐの事、仮の母港として造られた洋上基地内は"ある情報"が持ち込まれたことにより騒然としていた。

 

 

時は丁度、緊急出撃部隊が南極海方面へ向かった直後のこと...

 

太平洋方面に哨戒に出ていたアルバコアの潜水艦隊は、突如として出現した鏡面海域の発生に巻き込まれたと言う。

鏡面海域内部は既にかなりの不安定な状態で、無数に展開されたセイレーン艦群が『何か』と戦闘している様子が見て取れたらしい。

いつも以上に通信機器等の調子がおかしくなっていたが、彼女らはセイレーンと戦闘していた"見たこともない存在"を目撃したのである。

 

---曰く、通常の空母が運用する航空機量の約3倍以上を繰り出していた巨大空母、のようなもの...

---曰く、アイオワ級の戦艦すら軽く超える巨体の潜水艦...

---曰く、2隻の大型艦がくっついたような特異な形状の戦艦、のようなもの...

---曰く、光学兵器と思われる閃光でセイレーンを悉く貫く巨大艦...

 

 

……本来ならこのような絵空事、アルバコアによる嘘情報と捉えられてもおかしくない話である。

 

 

「…私には、カヴァラまで嘘をついているようには見えない。指揮官、彼女達を信じてやってはくれないか?」

「エンタープライズの言う事はもっともだし、俺も彼女らを疑ってるわけじゃない。だが...」

 

 

もしも、これが南極海の『不明艦』との繋がりがあるとすれば、[余燼]という例外はあるものの信憑性はだいぶ出てくる。

しかしながら、現状はその確固たる証明となるものが何一つ無い。

 

 

先の緊急出撃による南極海鏡面海域の調査結果、結論から言ってしまえば何も情報は得られなかったのだ。

 

いや正確には、調査をすることが出来なかったと言うのが正しい。

その鏡面海域は、内部へと入ろうとすること自体は可能だった、だが何度試しても航空機も量産艦艇も,KAN-SENでさえも内部へ入ったかと思えば気がつけば鏡面海域の外側の別位置に出てしまっているのである。

結果的に、"内部に入れない"ということ,鏡面海域内のエネルギー反応が急激に沈静化してしまったこともあり、何もわからぬままに部隊はその場を後に引き返してくる他はなかったのだ。

 

せめて、彼女達が見たという"怪物"についての詳細情報があれば検証も可能なのだが...

 

「…そういえば... アルバコアは海の上に何か浮かべてなかったっけ...?」

「あっ! そうだ、ブイにくっつけたカメラで撮ってたの忘れてた!!」

 

なんと彼女は、海中に潜伏する前に海上に撮影用水上ブイを浮かべていたらしい。

…もっと早くに気づいてほしかった...

 

「すぐに再生しよう! …どうしよう、物凄いノイズが走ってて全然映らない...」

「……ちょっとそれ、貸してみなさい。」

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~極南基地_外周

 エリア:3305 フリーエリアB

 

 

静かな波の音が陽の昇り始めた南海に響く。

大陸のような巨躯に、男は一人で佇む...

時間の流れすら感じないかのような、この瞬間こそは彼にとって最も"無我"でいられる重要な時である。

 

 

初回となる鏡面海域の探索から帰還したアレスとその部隊。

しかし、予想に反して内部の探索時間は想定の5倍以上に掛かったという事実、さらに転移先が意図的にすり替えられている可能性があるという算出結果から、今後の作戦における鏡面海域対策などの攻略シミュレーションに多少の時間が必要になるという結論に至った結果、しばらくの間は『穴』や他の海域におけるセイレーン出現を警戒しつつ待機状態を維持することになった。

 

過剰な戦力を持っている上でなお過剰といえる程の警戒さに思えるだろうが、本来この[アレス]という男は[過激な攻撃]よりも[狡猾な防御]にこそ重きを置いている。

 

鏡面海域という完全なアウェイに対して、対応策を考慮するのは当然の帰結だった。

 

 

それに、彼は今1人で在る時間が必要だった。

本当のところ、これが何よりも最大の理由である。

 

 

 

かつての、その記憶とも言える記録の奥底に今も燻り続けている黒い意思...

50億もの生命を喰らい尽くしてなお、彼の中には"人間への憎悪"が渦巻いている。

 

それは彼の心の臓たる超兵器機関を激しく唸らせ、おどろおどろしい強大な力をさらに引き出させる"トリガー"でもある。

 

だが、それは同時に彼の過去...最たる苦痛でできた"古傷"を開くことでもある。

戦い、憎悪に駆られるたびに、陰は苦痛を伴い蝕んでくる。

 

 

この1人で在る時とは、その"古傷"に向き合うためだけに必要な時間だった。

 

 

鉄十字の描かれた甲板にぽつり立つ、彼の"本来"の乗艦である[ムスペルヘイム]を足に、陽の昇る水平線をただただ言葉なく見ているだけだった。

 

 

 

……もっとも、その静寂も彼女が現れたことによって意味はなくなったが。

 

 

「こんなところに1人で何してるわけ...?」

「…U-47か... お前らには自由行動を認めた。俺に護衛は必要無いのも分かってる筈だが?」

「別に... 勝手に来ただけだし。」

「そうかよ...」

 

シミュレーションが完了するまでの間、彼女らKAN-SENには自由に行動するための権限を与えた。

どうもKAN-SENという人に限りなく近い感性を持った存在ゆえ、俺の存在が影響しているといえど彼女らの自我からくる好奇心は、本来の型では触れることさえなかった"未知への接触"に興味を惹かれるらしい。

 

こちらの意に従うという宣言があるとはいえ、俺も全て管理する程の面倒を受け持つつもりは毛頭無い。

というよりも、見た目が女性であるために扱いが分からず、適当にあしらっただけである。

 

 

「……静かな場所...」

 

U-47... 過去の軍艦の歴史に詳しい方ではなかった俺だが、データベースの記録ではあのスカパ・フローへ侵入して戦艦を撃沈したなどUボートの中では上位の戦果を上げているようだ。

 

彼女は他のKAN-SEN同様に俺に臆している様子は全く無く、かといって他のKAN-SENより積極性のようなものは感じ取れない。ようは、『日陰者』である。

そんな彼女は、俺の気も察していないのか、間を空けて横の方に来るなりそこへ腰を下ろして足を組んでいた。

 

普段、1人であることを好む俺からすれば彼女という存在は純粋に邪魔者として見えるはずだ。

 

…だが、不思議なことに俺は彼女が居ることに対して特に嫌悪感のようなものを抱くことはなかった。

 

 

 

「………ヘッドはさ、"今"が辛くはならないの?」

 

不意に彼女から投げかけられた問いは、思わず口を零してしまうほどに率直だった。

 

「…お互いさまだろ。」

 

生きていたというのは、俺にとっては間違いなく苦痛だった。

だが、俺は"この世に在る"ことが苦痛だとは今も思ってはいない。

むしろ、その問いは"彼女ら"にとって重要なものであると俺は考察する。

 

傍らに座る彼女でさえ、栄えある戦果を残しながら最後は行方知れずとなっている。

果たして彼女らが本当に当時の記録を知る"遺物からの生まれ変わり"なのかは定かではないが、その"過去"を知りながら"今"に在る彼女らの心中は想像よりも遥かに複雑なものがあるだろう。

 

過去を忘れられたなら... 過去を消せたら... なんて言う奴はいるが、あいにくとそう簡単に切り離せないのが過去という呪いだ。俺もまた...

 

拭い、飲み干していくしかない。

そんな考えをまとめつつ、喉奥へとその苦痛を流し込んだ。

 

 

「それって、何?」

 

U-47は、俺の左手に持つ缶が飲料物だったことが分かり、まじまじと見ていた。

 

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[ベルギー THE-カカオBLACK 100%]

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生前の苦痛と共に過ごした、今この現世で唯一の飲食物。わざわざ、ラベルまで元の物に似せて作ってある。

 

当然ながら、機装の躯体となった俺には飲み食いなど必要ない上に感覚機能も意味が無い。

それでも、感覚の有無を変える機能はある。この苦みさえ分かるようにするのは、生命への憎悪を忘れないための"習慣"だ。機械の頭脳に"忘れる"もなにも無いがな。

 

 

俺は、新たに転送した同種の缶を手にすると、それをU-47に向けて投げつける。

 

U-47は器用にそれを右手でキャッチしてみせた。

 

「やるよ。」

 

 

一言、それだけ。

あいにくと、味の好みを聞いてやるほど気の利いた事を言うような性質であるわけもなく...

そのまま、彼はその場を後にした。

 

 

「…………苦っ...」

 

おそらくそれは、こらから彼女が経験するであろう中でも最も『苦い』と、感じたものとなっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

 

 

ppp.p...p.p.pp.ppp...p.p.ppp.p.p.pp. . .

 

「…どうだ、ヒッパー? 修復出来そうか?」

「たくっ... あんな"ノイズ"まみれの映像をポンっと渡されてすぐに直せるわけないでしょ? グリッドレイ達にも手伝ってもらって、ようやく一枚絵だけは修復できそうだけど... よし、こ・れ・でっ!!」

 

 

……………

……………

 

 

「……これ、マジなわけ...?」

「アルバコア達の証言と一致する以上、ほぼ間違いないと見ていいだろうが...」

 

 

「かなり厄介な事になるな、これは......」




自分語り系の話、長くなりがち問題。(実際それほど多くもない)

Aエリアパートは、9か10辺りになるはずの超兵器戦で1区切りつける予定。
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