ガンダムビルドファイターズAMBITIOUS Alternative 天翔ける夢 作:八咫ノ烏
そんなことは置いといて第一話です。どうぞ!
『す…っすめねぇ!』
赤い髪の少年が叫び、それに呼応するかのように白い巨人━スタービルドストライクガンダムが前に進もうとした。しかし黄色い物体から放たれる粒子の嵐に押し返されてしまった。
『いいや!』
青い髪の少年が操るビルドガンダムMk-Ⅱのバックパックを切り離し、スタービルドストライクに接続させた。
『二人なら進める!』
『よし!』
二人の少年の叫ぶのと同時に機体が青く光る。RGシステムという機体の性能を上げるものを発動したのだ。
白い機体が粒子の嵐に逆らって、黄色い物体に向けて飛翔する。
『ハイパー!!』
『ビルド!!』
二人がそう叫び、機体は右手を握りしめてそれを黄色い物体に向かって突き出す。
『『ナック━』』
そこでブツリと消えた画面。それを見ていた一人の青年はしばし放心した後、仰々しく両手で頭を抱える。
「き、消えた…だと!?なんてこった!!」
「なんてこったじゃないですよ何やってんですかレン先輩!また顧問に怒られますよ!部長なんですからしっかりしてくださいよ!」
リモコンを握りしめて部長であるらしいレンという青年を叱りつける少年。
「大体先週怒られたばっかでしょう!?なんで部室でビルファイ見てんすか!!」
「いーのいーのガンプラバトルの参考に見てただけですって言えばいいんだから。ほら、公式大会にあるだろ?エキシビジョンとかでさ」
「確かにあるのは知ってますけど、それとこれとは話が違うでしょう!先生怒らせたら俺らまで巻き込まれるんですから少しは自重してください!」
全くもう、とため息をつく少年。レンはどっこらせと言いながら立ち上がり、にっこりと笑うと
「俺を制御できないお前らが悪いんだ。ガハハ」
「いい加減にしないと本気でぶっ飛ばしますよ先輩」
「まだアオイに負けたことは一回もないはずだが」
レンがケラケラ笑いながらそう返すと、アオイはそのうち絶対ぶっ飛ばしてやりますからね!とレンを指差しながら宣言する。
ガンプラバトル。
ガンダムのプラモデルを動かすことの出来るプラフスキー粒子が開発されてからというものの、世界中で爆発的な流行を見せている。
日本もそれの例外ではない…というか日本発祥のものだから流行っていて当然なんだけども。
レンも、アオイも、それに激しく取り憑かれ、日本一を目指して頑張っているファイターの一人である。
そしてこの少年も。
「アオイの叫び声が聞こえたかと思ったら…どうせまーたバカなことやって怒られたんでしょ先輩」
開いたままの扉から入ってきた少年が呆れながらレンに尋ねる。レンはいや?と首を振ると
「よっす。いや聞いてくれよぉエリー!ビルファイの最終話で結晶体ぶっ壊すシーンあるじゃん?」
「誰がエリーだ誰が。僕はエリヤですから。…アーバーワクーみたいな名前の要塞に突っ込むやつですか」
首を傾げるエリヤにレンはあー、と少し考えると
「それを言うならアー・バオア・クーな。そのシーン見てなんかに活かせねぇかなと思って見てたんだよ。したら途中で切られてよ」
「先輩が使ってんのスタビルじゃなくてクロスボーンじゃないですか。いくらなんでも無理あるでしょ」
「無理はないだろ別に。お前らのバックパック引っぺがして骨に付けるとかいくらでもやりようはあるってもんよ。ほら、メイジン・カワグチもガンプラは自由だって言ってるし」
その言葉を聞いたアオイとエリヤは二人揃ってやれやれとため息をついた。
「メイジンの名言汚さないでくれます?それにそんなことされると俺たちのガンプラの性能落ちるんでやめて欲しいんですけど?」
「そもそも俺たちのガンプラお互いにブースターの規格合わないでしょ。俺の機体そもそもブースターないし…。まさかクロスボーン使えとか言うんじゃないでしょうね」
「あぁその手があったか。でかしたエリヤ。さぁ、そうと決まればお前らさっさと電気屋行ってクロスボーン買ってこい」
ケラケラと笑いながら親指で外を示すレン。二人は口を揃えてそれを拒否し、レンの手からビルドファイターズのDVDを取り上げた。
「冗談のつもりなのに本気にしなくともいいだろう!!」
「そんなことばっかやってるから全国行けるレベルの実力はあるのにまともな評判聞かないんですよ…模型部には舐められてるし」
アオイがお願いですからちゃんとしてくださいよ、と頼み込む。
レンという少年、実はそれなりに実力のあるファイターで、高一の時には先輩たちと共に全国の強豪チームとしのぎを削っているほどだ。性格がこのように残念なので舐められがちだが、ガンプラバトルに対しては意外にちゃんと真面目なのである。
初出場した全国大会で試合ごとに機体を変えて戦ったがために舐めプ野郎とSNSでちょっとした批判も出たが、それでベスト8まで上り詰めたのだから大したものだ。ちなみに二回目から機体をクロスボーンに絞ることにしたらしい。
「遠征とか練習試合とかマジでどうするんですか…県大会予選まで割と近いんですから本当にちゃんとしません?」
エリヤが机に荷物を置いてそう問いかける。夏の全国大会の予選まであと一ヶ月もないのだ。本来なら部室でのんびりアニメを見ているような暇などない。ガンプラの調整をしたり、チームで戦術を固めたりとやるべきことは色々あるはずだ。
しかし、レンは苦い顔をすると、
「いやぁ…その辺の弱小共を相手にしてこっちの戦力を曝け出す暇あったら、俺が毎日死ぬまで相手するわ。その方がよっぽどいいだろ。ちゃんとした実力のあるとことやるなら先生を通じて俺が申し込むし、そもそも三重の代表争いで苦戦するようなら全国優勝なんざ夢のまた夢だ。さすがに決勝まではストレート勝ち出来るだろ」
それにこんなところで躓いてちゃ全国の壁は壊せねぇからな、と言い拳を握る。
「…しかし遠征なぁ、どうせなら名古屋辺りに繰り出してもいいかもな。何だか知らんが仮面かぶったレディが暴れてるって噂も聞くし一度手合わせ願いたい。ま、移動費は自腹だが」
天井を見上げてそう言うと続けて岐阜に行くのもありかもしれんな、などと言いPCで何故か店のレビューサイトを開く。岐阜のどっかにめっちゃ強いファイターのいるカフェがあったはずなんだよなーどこだっけな、などと呑気に言うレンに、ぽかんと口を開けて放心していたアオイたち。
はっと気がつくと東京のこの双子も強いな、沖縄のガンプラヤンキーなる輩も気になるところ、などとメモ用紙にあれこれ書き込んでいる。そのメモ用紙にはそのうち練習試合したいねリスト、などという明らかにふざけた題名が付けられていて、最重要欄に移動費宿泊費は自腹と書いてある。
「えっ嘘でしょ自腹ぁ!? 名古屋までの往復だけで三千円は飛ぶじゃないですか! 愛知岐阜大阪くらいならわかりますけど東京って何ですか東京って!? おまけに沖縄まで行くのに自腹とかふざけてんですか!? 普通部費とかから出すもんでしょう!?」
そう抗議の声を上げてその紙をビリビリに引き裂くアオイ。
この高校は三重は三重でもかなり南にあるので、県庁所在地である津まで行くのにも割と時間がかかるのだ。ましてや名古屋に行こうものなら移動だけで半日が軽く消えていくだろう。移動費にしてもかなりかかる。いくら隣接している県とはいえ、場所が場所なだけにお金がそれなりにかかるのだ。沖縄など論外である。
しかし、レンははぁ?と声を上げると
「しょうがねぇだろ。三重にパッとする相手がいねぇ上に決勝戦の対策も立てれねぇんだから。決勝に出てくる高校の名前検索してみ? 毎年バラッバラやぞ? 去年は青陵とウチ、一昨年はウチと一重高、三年前は…どこだっけな。うちじゃないどっかとどっかだ。こんなん見せられて今年はここが勝つやろなんて予想できるか? 無理だろ?」
と言い放つ。まるで県予選など無いも同然だとでも言わんばかりの言いようだが、実際彼がガンプラバトル部に入ってから県予選で敗退した経験はないため、そんな舐め腐った態度になるのも仕方ないのかもしれない。
だが、アオイが怒っている原因はそこではなかった。
「いやそれはいいとしてなんで移動費が自腹なんですか!! どう考えてもおかしいでしょ!!」
「いやそこかよ…。移動費を部費で出せねぇ原因がそこに鎮座してっからそんなに自腹が嫌なら撤去するんだな。顧問の話じゃそいつの維持費だけで部費の五割が消えてんだぞ」
まぁ動かすのは絶対無理だと思うが、と言い切ってピシッと部室の中央に置いてある六角形のバトルシステムを指差す。それがなければガンプラバトルが出来ないが、何しろ物がデカい上にれっきとした精密機械なので値段がかなり張っているのだ。ただでさえ重たい上に地震対策のために床に固定されているため、一人ではびくともしないだろう。
そういうことですか…と肩を落とし嫌々ながらも納得したアオイ。納得したんなら大人しくガンプラの手入れでもするんだな、俺は昼寝すると言って部員共有のソファに寝転ぶと数学の教科書を日除けに使って寝息を立て始める。
「…あれが二年連続全国大会出場者って本当なのか?」
「お前去年一緒について行っただろ。そう言いたくなる気持ちはわかるけど」
はぁ、と二人揃ってため息をつく。何でこんな人が全国に行けるのか不思議で不思議で仕方ないが、話を聞くところによると全国レベルのファイターには変人気質の人が多いらしい。まともな人はいないんだろうか…。二人が声を出さずに口にしてバックからガンプラを取り出した。
「とりあえず一発バトルしとくか?」
「そうするか」
二人がそう言ってバトルシステムを起動しようとした時。バァン!という音が響いた。誰かが乱暴にドアを開けたからだ。
「…模型部のモヤシどもがバトル部になんの用だ」
昼寝を邪魔されたイラつきを隠さずに挑発するレン。おまけに何故か異様に模型部との仲が悪いのだから手に負えない。最悪のタイミングで来たな、と二人が悪寒を感じるのも束の間、
「これはこれは部長さんよぉ。部員が頑張っているのにもかかわらずお昼寝するなんて。相変わらずとんだお調子者だな」
「脆いガンプラしか作らねぇお前らなんざに興味はねぇわ。さっさと部室に帰ってエアブラシのメンテでもしとけ。そういえばそっちの施設借りてるこいつらから聞いてるが、お前らかなり乱雑に扱ってるらしいな。それでもお前ら模型部か?あぁ、作りたいもん適当に組んで終わり。それで満足して大会に出そうともしねぇバカどもにメンテなんて概念はねぇか。コイツァ失敬」
「ちょっ…失敬なのはどっちですか! 火に油注ぐようなこと言わないでくださいよ!」
エリヤが必死にレンを宥める。実際レンの言っていることは間違いではないが、ここで言うべきことではないのは明らかだろう。模型部員はそれを聞いてんだとォ!と叫び、レンの胸ぐらを掴んで激昂する。
「言わせておけば!! 全国常連になりつつあるからって調子乗ってんじゃねぇぞ! そんなんだから優勝できやしないんじゃねえか! 身の程を弁えろや!」
「だからってお前らみたいな井の中の蛙になる気はないな。俺はお前らみたく校内トップになりたいわけじゃなくて、全国トップを狙ってるんでね。下の奴らに付き合ってる暇なんてないのさ」
「んの野郎…ッ!」
手を上げてレンを殴ろうとした模型部員。こんな形で暴力沙汰を起こして予選にすら出られなくなっては困る。アオイとエリヤは急いで二人を引き剥がすと、バトルシステムを起動させて必死に提案する。
「バトル! バトルしましょう! 暴力だめ! 予選出れなくなる! オーケー?」
「それはいいんだけど何でそんなカタコトなんだ? もしかして実は外国から来たって設定で芝居中だったり?」
「しませんよ! というか模型部来るなり挑発し始めるのやめてくださいよ! 仲悪いにも程があるでしょ!! 前々から思ってたんですけど彼らとの間に一体何があったんですか!」
アオイが怒鳴りながらレンにそう問いただす。レンはそれ聞いちゃう?と
「あー、先々代の模型部部長とガンプラバトルしたら相手さんのガンプラがあまりに脆くてぶっ壊しちまってよぉ。操縦技術も甘ちゃんだしで、バトルしてぇならもうちょっと鍛えた方がいいぜってアドバイスしたらえらい怒ってよ。すんごい罵られるわ喧嘩吹っかけられるわでうっとうしくなるだろ?それが三年間も続いたらこうなるのも仕方ねぇだろ」
「全部先輩のせいじゃないですか!ちょっとは反省してください!」
そう言うなりレンにヘッドロックをかけるアオイ。首が絞まるから!とアオイのペシペシ腕を叩いて抗議するレンに模型部員たちは
「ふざけてんのか! 早く用意しろ!」
「いい加減にちゃんとやれよ!」
と口々に怒鳴る。レンはアオイにマジで解放してくれと頼んで技を解いてもらい、カバンからクロスボーンとGPベースを取り出した。
《Please! Set your GP BASE!》
システム音声が響き、レンと模型部員三人ともGPベースをセットする。プラフスキー粒子が散布され、コックピットが形成される。
「フィールドは宇宙か。水中じゃなくてよかったわ」
「クロスボーンって水中戦いけるはずですよね?」
「いや、俺がただ水中戦が出来んだけだ。宇宙戦なら三と三で別にどうとでもなる」
そう情けない返事をすると再びシステム音声が響いた。それに従ってレンはクロスボーンを、模型部員たちはスサノオ、ケンプファー、キュベレイをセットした。
お互いの持つガンプラのカメラに光が灯り、コックピット内に形成された操縦桿に手を置き構える。
「…おい。何突っ立ってんだよ。お前らもやんだよとっとと用意しろ」
「はい?」
「え?」
急に話しかけられて思わず素っ頓狂な声を出すエリヤとアオイ。レンはそれに何を驚くところがあんだよ、と言って二人にガンプラバトルの用意を促す。
「あっちが三人で来てんだから当然だ。手加減してやる必要はどこにもないだろ?」
「一人で相手するんじゃないんですか?」
「いくら何でも三対一は無理があるだろ。そんなんどんな世界レベルのファイターでも負けるわ」
そう言い顎をしゃくって二人を急かす。二人ははいはいと言いたげな表情を浮かべて再びGPベースとガンプラをセットした。
アオイはアストレイレッドフレームの改修機を、エリヤはエクシアの改修機をセットし、操縦桿を手を置いて構える。
「ヤマト・レン! クロスボーンガンダムX1フルリボーン!!」
「コチヤ・アオイ! ガンダムアストレイバエル!!」
「クロカミ・エリヤ! エクシティウムエクシア!!」
三人がそれぞれ名乗り、最後にリーダーであるレンがチーム名を名乗り、三機同時に出撃した。
「チームアカツキ! 出撃する!!」
東海三県って移動しやすいようで実はしづらいんですよね