ガンダムビルドファイターズAMBITIOUS Alternative 天翔ける夢 作:八咫ノ烏
もう休暇は十分に楽しんだだろう…?
となったので投稿しました。第三話です、どうぞ。
それはレンの一言から始まった。
「なぁ。ちょっとバトルしに行くからお前らも来いよ」
「え?」
「言っとくがお前らに拒否権はないぞ」
「えぇ…」
そんなわけでアカツキの面々は電車に揺られながら市街地に向かっている。
「それにしても急にガンプラバトルだなんてどうしたんですか先輩」
「バトルでもして機体の改善点でも洗いざらい吐いてもらおうかと思ってよ」
「今から改造したとしても予選までもう2週間切ってるんですよ?間に合います?」
エリヤがそう聞くと、は?と言って
「んなもん予選で使うわけあるかバーカ。そもそも塗装だのデカールだのちまちまやってたら間に合わんだろ」
最近雨も多いしなと返して軽く頭を叩く。頭を擦りながら痛いとボヤくエリヤに変わって、アオイがじゃあなんでなんです?と聞いた。
「ただの気分転換だ。ここ最近ずっとこいつの改造案考えてんだけど、一向に浮かんで来なくてイライラしたからストレス発散も兼ねてな」
そう言ってクロスボーンを取り出して窓際に置いた。一年前に組んでから大した改造や塗装をしていないというのもあって、よく見ると関節部やシザーアンカーなどの塗装が剥げつつあるのがわかる。
「あれで十分通用してるじゃないですか。改造するって言ったって予選には間に合いませんて」
「予選じゃ通用するかもしれんが全国大会だと無理だ。前回で俺がクロスボーン使って戦ってる動画はネットで漁ればホイホイ出てくる。あのまま行けば対策されるだけだ」
そう言い切って難しい顔をするレン。
彼にとって、今回の大会はチームアカツキの一員として全国トップを狙える最後のチャンス。今回こそ優勝したいという気持ちと、なんとしても二人をあの舞台まで連れていかないといけないというリーダーとしての責任、そしてこれが最後のチャンスというプレッシャーを抱くのも無理はない。
「これが最後のチャンスなんだ。一度たりとも負けるわけにはいかねぇ…。いつまでも善戦マンでいられるかっての」
拳を握りしめて呟くレン。エリヤたちは思いつめた表情をしている彼を見て思わず息をのむ。普段のふざけたことをやっていることしか知らない彼らにとって、レンのこういう側面を見るのは珍しいのだろう。
「…なんだよ俺の顔ジロジロ見やがって。そんなに俺のことが好きなのかよ」
「一瞬でも見直した僕がバカでした」
「左に同じく」
「一体どこに見直す要素があったのか逆に聞きたいし勝手に持ち上げといて勝手に幻滅すんなよ…」
首を横に振りながらため息を吐く。どうして後輩からの当たりがキツいのかとたまに悩むが、これはこれで楽しいのでまぁ良しだろう。と、そんなことを考えながら電車に揺られる。
「…そういえば先輩って中学の時バトルしてなかったんですよね?」
ふと思い出したようにレンに尋ねるアオイ。レンはそれに対して
「は?頻度はそんなに高くなかったけどちゃんとやってたぜ?」
と返して首を捻る。その言葉にアオイとエリヤはえ?と声を出すと
「でも大会で名前聞いたことないですけど…。高一で全国行ける実力あるなら中学の頃から目をつけられててもおかしくないじゃないですか」
アオイがそう言って首をかしげる。アオイたちは中学の頃からバトルを始めているので、全国のことはもちろん、県予選のことをその時にチームを組んでいた先輩たちから聞かされていても何ら不思議ではない。しかし、その二人が名前を聞いたことがないのは一体どういうことなのか。
「そりゃ聞くわきゃないだろ大会に出てねぇんだから。バトル部なんてもんに入ったのは高一で始めてだわ」
「じゃあやっぱりバトルしてなかったってことなんじゃ?」
「あー、悪かった。言い方を変えるわ。俺の通ってた中学にバトル部なんて
さらっとそう言うレン。いくらあちこちの学校でバトル部が設立され、全国大会を開くほどになったとはいえ、田舎の方の学校にはバトルするための設備が整っていないことの方が多い。レンはたまたまそういう学校に通っていて、全国大会に出場するどころか、それ以前に県予選に参加する権利すらなかった。ただそれだけのことだ。
それを理解したアオイは申し訳なさそうに謝る。
「すいません…こんなこと聞いて」
「いいよ気にしねぇで。お前にそういうことされると何故だか知らんが背中が痒くなる」
「人が心の底から謝ってんのに失礼すぎません?」
ムッとしてレンに言う。だがレンはそれを気にする風もなく続ける。
「俺のいた環境がそういうのだったからお前らを妬むとか、羨ましがることをしたつもりはないぜ? むしろ面白がってるくらいだ」
「面白がる…ですか」
エリヤが流れていく窓の外の景色を眺めながら問う。レンはそれを聞くとあぁそうさ、と返した。
「なんせ少なくとも俺よりはやり込んでるであろう連中を片っ端からぶっ飛ばしてんだからよ。模型部どもに言った通り、下を見て満足するつもりは毛頭ないがこれほど面白いことはないだろ? 一年の時はそこはかとなく主人公感もあったしな。なんてったって無名だったやつが全国まで行ったんだから」
まぁ準々決勝で負けちまったけどよ、と言って恥ずかしそうに頬をかく。準々決勝まで行っただけでも相当すごいんじゃないか、と二人は思ったがそれを口に出すことはしなかった。もし口にしていたら
「そうだろぉ?? 俺ってすごいんだぜぇ??」
などと調子に乗るのは目に見えてわかっている。レンは褒めたら褒めただけ調子に乗る人間なのだ。
「…なんか言いたいことあんなら言えよ」
二人の顔を見たレンがそう聞くと、二人は口を揃えて断った。
「「言ったら絶対調子に乗るから言えませんね」」
「お前ら俺が先輩だってこと忘れてない? 口揃えてそんなこと言われたら俺泣くよ?」
そう言って鼻を啜り、懐から目薬を取り出すレン。それを見た二人は嘘泣きしたら別人の振りしますからね、と荷物をそそくさとまとめ出す。
「あ、そういえばそろそろ降りなきゃいけねえんだった。下り過ごすとこだったぜ危ない危ない」
「ちょっと…。ったく、しっかりしてくださいよ…」
そして降りた駅から歩き続けること十数分。一向はとある喫茶店の前で立ち止まっていた。
「喫茶閃光…?なんで喫茶店なんですか?」
ひっそりと佇む喫茶店を見ながら首をかしげるエリヤ。するとそれを聞いたレンは彼の頭にポンと手を置いて
「入ればわかる」
とだけ言って店内に入る。閃光という名前だが店内はそれほど眩しいわけではなく、かなり落ち着いた雰囲気を漂わせている。
レンが開けっ放しにした扉から中の様子を伺い、おずおずと店内に入る二人。
「おいーっす!! 来てやったぜおっさーん!!」
そう叫んで椅子にどかっと座るレン。それを見て二人はレンになんて態度を取ってるんですか!!と口を揃えて怒る。
が、おっさんと呼ばれたこの店の店主はレンの言葉に憤慨するでもなく、むしろ彼が怒られている姿を見てははは、と言いながら
「後輩に怒られるリーダー、ねぇ。頼りないにもほどがあるんじゃないかぁ坊主?」
「るせぇ!! そんなことよりもいい加減あれ取り寄せたんだろうな。もう一ヶ月近く待ってんだぞこっちはよ」
机をバンバンと叩きながら催促するレン。あれとは一体、と首をかしげる二人に店主は座りな、とカウンター席を指差してからゴソゴソと何かを取り出してレンの座る机の上に置いた。
「お前さんが欲しがってたペーネロペーだ。遅れた詫びにクスィーもつけてやっからハサウェイのワンシーンでも再現したらどうだ」
「ようやくご対面だぜぺーネロペーさんよぉ。…あと俺がクスィー持ってんの知ってて付けたろ。あんなでかい機体二つもいらんわ」
そうぼやいてペーネロペーのパッケージをジロジロと眺めるレン。なかなか在庫なかったんだよなぁ、と申し訳なさそうに頬をかく店主。それを聞いたレンは思わず叫ぶ。
「在庫がないっつったってお前なぁ!! 俺と違ってあっちこっちに行ける身だろ!! 一ヶ月も何やってたんだよ!!」
「んー、店の経営?」
「不定期休業とかふざけたこと言って、一ヶ月以上店空けて世界大会見に行ったり富士山に登りに行ったりするやつが、今更何まともなこと言ってやがる」
不機嫌そうに返して腕を組み店主を睨む。怒るレンを宥めようとアオイが立ち上がったが、気にしないでいいよと店主が笑う。
「で、その子たちが前に言ってたチームメンバーの子かい?」
「あぁ。俺の大事な後輩で相棒だ。もし変なこと吹き込んでみろ。俺はお前を本気で殺しに行くからな」
「ああ怖い怖い。俺をなんだと思ってるのかねぇ。仮にも40超えた大人だぞ?お前以外にそんな話はせんよ」
「俺にそういう内容話してる時点でアウトだからな? 忘れてんのかなんなのか知らねぇけど、俺まだ一応高三だからな?」
そう言ってメニュー表を開いて何を注文しようか悩み始めるレン。二人もレンに倣ってメニュー表を眺める。
「…先輩。この喫茶店に何があるっていうんです?」
首を捻ってそう聞くエリヤ。店内には店主の自作であろうガンプラがいくつか飾ってあるのみで、特にこれといって変わったところは見受けられない。
レンはそれを聞いてあぁ、忘れてたやと言うと席から立ってアカツキの二人のことを紹介する。
「紹介する。手前のがエクシア使いのエリヤで、奥のがアストレイ使いのアオイだ」
レンによる紹介で二人はぺこりと一礼して店主の目を見る。
「そんで…ここは中学ん時の俺の溜まり場で、こいつは見ての通りここの店主の…おい。自分で名乗れバカ」
「やぁガンプラに夢を見る少年たち。僕はアカサカ・ミキオっていうんだ。知ってるかもしれないけど何年前かの世界大会の準優勝者だよ」
よろしくね、とにこやかにそう言い放つアカサカ。二人はしばし固まったあと、驚愕の声を発する。
「えぇ!? 嘘でしょ!?」
「な、なんでそんなすごい人がこんなクソ田舎に…」
「流れるように三重を貶すんじゃねぇよバカ」
レンはクソ田舎と形容したエリヤを軽く小突くとコーヒーを注文し、二人にも注文するよう急かす。
「喫茶店に来たってのに何も飲まずに帰るわけにゃいかんだろ? お前らもなんか頼めよ、多分まけてくれるぜ」
「未来のお得意さんには優しくしないとだからな。あとレン、お前だけは払ってもらうぞ」
アカサカがそう笑いながら言うとレンは机をバン!!と叩いて立ち上がる。
「はぁ!? んだよこのケチ野郎!! 二人まけるんだったら三人まけたって変わらんだろ!!」
「なに言ってんだバカが!! お前今まで何回もまけてやってんだろ!! 今料金請求してもいいんだぞこっちは!!」
「過去のこと今更掘り返すんじゃねえよ!! そんぐらい水に流せ!!」
ぎゃあぎゃあと言い合うレンとアカサカ。二人はそれを見て胃が痛くなるような感覚を覚えたという。
先ほどまでの静かで穏やかな雰囲気から一転し、一気に騒がしくなった店内。どうこの場を沈めたらいいのか分からないのか、固まってそれを眺める二人。いつもの調子で諌めていいものなのか判断に困っているんだろう。
五分ほどあれこれ言い合った後、二人は懐からガンプラを出し、それを相手に突き付けて叫ぶ。
「「ガンプラバトルだコラァ!!」」
「二人って意外と仲良かったりしません?」
「「それは絶対にない!!」」
「まさかこんなところにバトルシステムが置いてあっただなんて…」
梯子を下りながら呟くアオイ。店のカウンターの内側の床に隠されたその梯子を降りた先にバトルシステムが七基も置いてあるのだから、驚くのも無理はないだろう。
「なんで大会レベルのバトルシステムを…」
エリヤがそう尋ねると、アカサカは大会レベルだからこそさと返してバトルシステムを叩く。
「世界大会の本戦はこれよかもっとデカいけど、県予選ならこの大きさだからな。練習するにはもってこいだ」
「一基だけで事足りるのでは?」
「本番と同じ状況で練習して損はしない。そうだろう、少年?」
そう言われてそれはそうかもしれませんけど、と申し訳なさそうに返してその部屋を見渡す。壁には今までアカサカが制作したのであろうたくさんのガンプラや、地方の大会でのトロフィー、そして世界大会の銀トロフィーが大切そうに飾られている。
「このスペースが俺のガンプラバトルの軌跡だよ。ずいぶんと長い道のりの、ね」
しみじみと言いながらバトルシステムを起動させる。
「もう世界大会に出るつもりはないけどね」
「なんでなんですか?」
アオイがそう質問すると、アカサカは優しく笑いながら答える。
「君たちみたいな若い芽を潰しちゃうわけにはいかないから。一回出れたら満足だったんだよ、そこの何回も全国行ってる大馬鹿野郎とは違ってね」
最後の言葉にピクリと反応したレン。生成されたコックピットから顔を出して
「おい聞こえてんぞ。誰が大馬鹿野郎だテメェ俺に散々負けてるくせしてなに言ってやがる」
「いや俺の方が勝利数圧倒的に多いからな? 何百戦したのか知らないけど」
アカサカはそう返してガンプラ…シナンジュをセットした。レンはいつも通りクロスボーンをセットする。
「ヤマト・レン!! クロスボーン!!」
「アカサカ・ミキオ!! シナンジュカスタム!!」
二人は交互にそう名乗り上げると、スゥッと息を吸うと
「「ぶっ潰す!!!」」
ほぼ同時に叫んで出撃した。
バトルが始まってから十数分後。
「だぁぁ!!負けたぁぁぁ!!」
罵詈雑言を浴びせ合うという、公式大会であれば間違いなく注意されていたであろう戦いを制したのはアカサカだった。
「これで何勝目だぁ? …数えんのめんどくさいな」
「最低でも500勝くらいしてそうだけどな…クソがよぉ」
クロスボーンを握りながら悔しがるレン。アオイとエリヤの二人はレンのその表情が珍しいのか、少し困惑した表情を見せる。
レンは二人の表情を見るやなんだなんとも言えない顔しやがって、と言って椅子にどかっと座ると続けてこう言った。
「…とまぁ、見ての通りこいつは強い。せっかくだしお前らも相手してもらえ」
「え」
「もしかしてこれが目的でここに?」
エリヤがそう聞くと、アカサカは頷いて言う。
「ここは喫茶店ではあるけど同時にバトル施設でもあるからね。知ってる人はほとんどいないけど、アカツキの子とそこのバカには結構利用されてるんだよね」
「まあ外から見たらただの喫茶店って感じですもんね」
「だからバトルしに来る人があんまりいないんだよね。アカツキの子とは付き合い長いからバトルシステムは勝手に使っていいよ。あれだったらレンの言う通り俺が相手するし」
そう言ってにっこりと微笑むと、アオイとエリヤに手を差し伸べる。
「こんなだけど一応世界ニ位の実力はまだ落ちてないと自負してる。その実力、見てみたくはないかい?」
「カッコつけんな気持ち悪りぃ」
「黙らっしゃいクソガキ!! …ゴホン、で、どうだい?望むならいくらでも相手をしてあげるよ」
その言葉を聞いた二人は、顔を見合わせて大きく頷くと、
「「お願いします!!」」
と息を合わせて頭を下げる。それを見たアカサカはニヤリと笑うと、パチンと手を叩くと
「よし来た!! そういうわけだ、店番やってくれレン」
「えっ嫌だよめんどくせぇ」
アカサカの頼みをきっぱりと断り、仕舞われていたガンプラをまじまじと見つめるレン。しかし、
「わかった。やってくれた時間分の給料とプラスアルファで好きなガンプラ一個買ってやろうと思ってたが、そういうことならこの話は無しだな」
とアカサカが言うなり目の色を変えて、
「おっマジで!? ラッキー!! そういうことなら喜んでやらせてもらうぜ!!」
ヒャッハー!!などと叫びながら梯子を上るレン。それを現金な奴め、と苦笑いしながら見送ると、アカサカは二人に向き直って言った。
「さぁ、やろうか少年!!」
「「はいっ!!」」
元気にそう答える二人の目はキラキラと輝いていた。
次回の内容は特に決めてません(迫真)
なるべく早く書き上げられるように頑張ります。