ガンダムビルドファイターズAMBITIOUS Alternative 天翔ける夢 作:八咫ノ烏
では第四話どうぞ。
だだっ広い宇宙のフイールド。そこを2つの光が交わり、火花を散らしながらながら飛翔する。
「反応が遅い! 機体のスピードについていけてないぞ!!」
シナンジュからの怒鳴り声。それを聞いたエクシアのパイロットエリヤは
「そんなこと!!」
と叫び返し、シナンジュから少し距離を取ると、GNソードをライフルモードに切り替えてシナンジュに向かってビームを放ち牽制する。
「離れたところから狙撃しようが、当たらなければどうということもない!!」
言葉の通りビームをするするとかわしながらエクシアに肉薄するシナンジュ。エクシアはリアスカートからGNミサイルを発射して、シナンジュから逃げるようにある程度の距離を取り様子を見る。
煙に包まれたシナンジュ。エリヤは堕としたか?と少し油断して、コーヒーを飲みながらその戦いを見守るアオイの方を見た。
「まだ堕ちていないというのに油断するとはッ!!」
その一瞬の隙をついて再びエクシアに接近し、ビームソードアックスを振りかざす。エクシアはGNソードで応戦しようとしたが時すでに遅く、左腕をバッサリと切断されてしまった。しかしそれで終わるほどエリヤも弱くない。
「ちぃっ!!」
悪態をついてGNソードを突き出し、まぐれかはわからないがシナンジュの右腕を貫きそれを爆散させる。そしてその勢いのままに胸部にドロップキックをしてから再び距離を取ろうと背中を向けた。しかしシナンジュは近くに漂わせていたビームライフルを掴むとその背に向かって射撃する。
エクシアはちらりと背後を振り返りそれをひらりとかわすと、再びGNミサイルを射出し、シナンジュのシールドとビームライフルを破壊し、再びシナンジュの周囲を煙が覆った。しかしその煙の中を突っ切ってエクシアのいた方向へと飛翔して、
「いない…!?」
だがその方向にエクシアの機影はなく、アカサカのコックピット内に後方から何かが来るというアラートが響く。それに反応して振り返ると
「トランザムッ!!」
その叫び声と共に機体を紅蓮に染め上げるエクシア。スピードを上げてシナンジュに瞬く間に接近する。シナンジュはエクシアがトランザムを発動したのを見るやすぐさまビームソードアックスを引き抜いてそれを構える。
目と鼻の先まで肉薄した二人。ほぼ同時に得物を振るい、そして━。
「あともうちょいだったのに…」
部屋の隅で体育座りをして沈むエリヤ。負けたのはエリヤの方とはいえ、アカサカのシナンジュも相当なダメージが入っていた。あと一歩で撃墜できていたの感じるのも無理はない。
アカサカは沈むエリヤを見てにっこりと笑うと
「トランザム中の動きが単調すぎるね。もう少し派手に動き回っていいと思うよ」
と言ってシナンジュをショーケースに大事そうに仕舞った。バトルが終わったのを察したのかレンは梯子の降りている穴からひょっこりと顔を出すと
「え? アカサカお前、まさかとは思うがもう少しで落とされるところだったりするのか?」
なあなあと言いニタァと気持ち悪い笑みを浮かべる。大方、煽るためのいいネタが出来たな、なんて考えているのだろう。アカサカはそれを見るや近くに落ちていた雑紙を拾い上げ、くしゃっと丸めてレンの顔目掛けて投げつけた。レンは顔を引っ込めてそれを交わすと、再び穴から顔を出して怒鳴る。
「うおぉいあっぶねぇだろ!! 当たってたらどうするつもりだ!」
「お前相手ならどうすることもないだろ。ほら、さっさと店番に戻れ」
手をひらひらと振りながらそう言って置いてあるソファに座り込むアカサカ。レンはそれを見て呆れたかのように小さくため息をつくと
「バトル終わったんだったらお前がやれっての。店主がサボってんじゃねえよ」
「言いますけど先輩も同じこと部室でやってるの忘れてます?」
「あー知らね知らね。記憶にございませんわ」
アオイからの追及をひらりと交わしてヘラヘラと笑うレン。そんな彼のズボンから着信音が鳴り、ん?と言って震えるスマホを取り出して電話をかけてきている相手の名前を見るなり、うわと言って顔をしかめる。
「電話の相手最悪すぎだろ…出るのが心底嫌だ。めんどくさい」
露骨に嫌がって電話に出ず即刻ブチっと切ったレン。しかし、彼の端末がまた震えた。相手はどうしても彼と話がしたいらしい。震えるスマホを見るやしつけぇんだよカス野郎!と怒号を上げ、ソファに向けてその端末を投げつけた。完全に癇癪を起こしている。
「うおっあぶね!? …電話くらい出てやれよ」
アカサカはレンにそう言ったが、レンは首が千切れるんじゃないかと思うくらいに横に振って、
「ぜっっったい出たくねえ!! ソイツの相手だけはしたくねえ!! 嫌だああああ!!」
とカウンターに覆い被さって叫ぶ。相当嫌な相手なのだろうか。まさか模型部の連中が…?そう思ったエリヤはレンのスマホを拾って相手の名前を見たが、模型部にいないどころかエリヤの知らない名前だった。アオイにもその画面を見せて知っているか尋ねたが、アオイも知らないらしい。ゆっくりと首を横に振った。じゃあ誰なんだろうか、考えたがエリヤにはわからなかった。
「先輩。出たくないのはわかりましたけど、これ多分出んと一生鳴り続けますよ」
そう言って梯子を上り、うーと唸っているレンのそばにスマホを置いた。レンは一度スマホを見て、止まりそうな気配がないのを理解したのかはぁぁ、と大きくため息を吐いてそれを手に取る。
「…外、出てくるわ」
「頑張ってください」
エプロンを脱いでとぼとぼと歩き出し、店のドアをくぐる際にもう一度大きくため息を吐いて外に出て行った。エリヤは若干温もりの残るエプロンを持ち、それを元あった場所に戻すと誰も使っていないものを取り出してそれを身に着ける。
「意外と様になってんじゃんそれ。いっそここで働けば?」
「そんな軽いノリでバイトするとこ決めちゃダメだろ。しかも電車で十数分とはいえ結構遠いし」
「えぇ〜。いいと思ったんだけどなぁ」
「レンだ。…わかりきってることだが聞いておく。一体何の用だ」
怒気を込めて言い放つ。電話の相手は落ち着いて聞いてくれよ、と言って話し出した。
『今回で俺も君も高校生部門最後の大会になるわけだ。そこで前々から言ってきた提案をもう一度するよ。俺たちとチームを…』
組まないか、電話の相手がそう言い切る前にレンは口を開いた。
「あ? 俺があいつらを捨ててお前らとチームを組むだぁ?んなことするとでも思ってんのか」
それを聞いてそう言うと思ったよ、と言って、しかし諦めた様子もなく言う。
『お前だって日本一を目指してるわけだろう? 実力だって申し分ない。だがそこまで辿り着けないのは何故か?それは仲間のレベルが低いからだ。お前についてこれていないからだ』
過去のチームメイトを馬鹿にされ、静かに怒りのボルテージを上げるレン。スマホを握る手が震え、顔が真っ赤に染まっていく。しかし、電話の相手はそれに気付く風もなく言葉を続ける。
『今年のうちのチームのレベルはかなり高い。そこに何度も全国の強豪と競っている君が加われば日本一なんか簡単に…』
「は?」
威圧するように言葉を遮るレン。握った拳を苛立ちのままに喫茶店の壁にぶつけると口を開く。
「黙って聞いてりゃあふざけたことばっか抜かしやがってこの野郎!!」
『ふざけてはいない、至って真面目さ。今の君のチームメンバーに比べて絶対レベルは高い。そのチームで全国に挑むよりうちに来た方が日本一を取れる可能性は高くなるだろう?』
その言葉に大きくため息をついてあのなぁ、と言うレン。全国大会出場者を舐めているとしか思えない発言で、
「言っとくけどな。全国の連中をあんまり舐めない方がいいぜ。俺ごときが加わってどうにかなるってんならお前らはとっくの前にもう全国出場してるはずだろ。でもお前らは全国に行けていない。ここの予選で手こずってる時点でな、お前らの実力なんざたかが知れてんだよカス野郎!!」
思っていることを全て吐き出し、息切れしたのか肩で息をするレン。しかし相手はため息を吐くと諭すように言う。
『なぜわからない?俺と君が組めば最強のチームが出来上がる。君の実力は言うまでもなく全国レベルの逸材だ。そして君に並び立つことのできる俺。その二人が合わされば…』
それを聞いたレンは間髪入れずに
「その前提条件として俺がチームに入ることを承諾するってのがあると思うんだが? 俺はお前みたいな野郎と組みたくなんかないね。それにかわいい後輩を捨てるなんてこと俺にはできないんでな」
と返した。現状、チームアカツキの人数は最低人数である3人しかおらず、もし彼が抜けてしまえばアオイとエリヤは出場する権利が失われてしまう。それにレンとしても日に日に実力を上げている二人と、全国で共に戦う日を楽しみにしているのだ。こんなことでその機会を奪われたら困る。
『それでもし俺たちと組んでいればなんてことになっても知らないぞ』
「うちのメンバーを見下してるお前と組んで後悔するよりは断然いいさ!! じゃあお前なんかと話す時間がもったいねえしこれ以上何もねえんなら切らせてもらうぜ」
冷たくそう言い放ったレン。口元こそ笑っているが目は非常に鋭く空を睨み、通り過ぎる人を少し怯えさせてしまっている。しかしそれを気にかける風もなく近くにあった石を蹴り飛ばす。
相手はふむ、と言って少し考えると
『ならば不本意ではあるが君を倒さなくてはいけないらしい。今回、君が全国に挑める機会はないものと思った方がいいと言っておくよ』
と言って宣戦布告をする。それを聞いたレンは鼻で笑い飛ばすと
「言ってろ!! 返り討ちにしてやらぁ!!」
そう言って電話を切りため息を吐く。なんでこんな面倒なやつに絡まれるのやら、とボヤいたがボヤいてそれがなんとかなるようならもうすでに関係は断てているはずだ。とりあえず着信拒否にしておくくらいの処置しかできないのが悩ましい。
「はぁ…。どうにかなんねえもんかなぁ…ッアァ!! グゥ…!!」
突如胸を押さえて苦しみ出すレン。喫茶店の外壁にもたれて倒れ込むことは回避したが、しかしまともに歩ける状態ではない。歯を食いしばって胸の痛みに耐える。
「はぁクッソ…。このわけわかんねえ痛みもなんとかなりゃいいんだがなぁ!! というかアイツのことよりもこっちが先決なんだよな。あーいてぇ…」
息を荒げて地面に座り込んだ。その額には少し汗が浮かんでいる。何度か深呼吸をして息を整えて汗を拭い、勢いよく扉を開けると叫ぶ。
「おいアカサカァ!! ちょっとバトル付き合え!! ストレス発散させろ!!」
それを聞いたアカサカはえぇ…と言って顔をしかめる。
「またかよめんどくせえな」
「心の声聞こえてんぞ」
アカサカの口から溢れでた一言にジト目で返すと、どかっと椅子に座って肘をつき、
「別にいいじゃねえかちょっとくらい。二人の相手はもうやったんだろ? じゃあ次は順番的に俺だろ」
と言った。しかしアカサカは
「わけわかんねえよその理論。それに今から買い出しに行かなきゃだからなんにせよ相手は出来んぞ。そろそろタイムセールのお時間なんでな」
とあしらうと、店のエプロンを取り出してレンに向かって放った。レンは仕方ねえなぁと言ってそれに袖を通し、アオイとエリヤはその手慣れた着こなしに嘆息を漏らす。
「結構手伝ってたりするんですか?」
「ん、まあな。タダでフィールド借りてんだからそりゃ何かしら手伝うだろ。まあ接客し始めたのは高校に上がってからだけどな」
「常連さんにアルバイトとして働いてるって思われてそうだよなお前」
アカサカはそう言うと車の鍵を指でくるくると回しながら店の外へと出ていった。アオイとエリヤはその背を見送ると二人同時に
「「なんか先輩に似てません?」」
と言った。どこが似ているかと聞かれたらわからないが、しかしどこかが似ている。しかしそれを聞いたレンは不服だったようで、
「はぁ? どこがだよ」
と声を出して真っ向から否定した。
「俺をあんな自由人と同じにしないでくれ。それだけは嫌だ」
「えぇ〜? いいじゃないですか先輩だって自由人なんですから」
「自由にも程があるんだよアイツはな。少なくとも俺はあそこまで自由人だとは思ってないぞ」
そう言ってコーヒー豆を挽き始めるレン。ガリガリという音が静かな店内に響き渡る。数分ほどその時間を共有した3人。
「ところで先輩」
沈黙を破ったのはアオイだった。レンは何を聞きたいのかすぐに察したようで、
「どうせさっきの電話のことだろ?」
「あれって結局なんだったんです?」
アオイの問いに少し考え込む。しかし、二人に心配をかけるわけにはいかないな。そう思ったレンは
「話した方がいい時が来たら話すわ。今はお前らにいらん心配はかけさせたくない」
そう言ってお湯を沸かし始める。アオイはレンの様子を見て強がりですか?と言おうとしたが思い止まった。あまり踏み込んでいい話題ではないらしいことを察したのだ。
「県予選の参加チームの中で、絶対に負けられない相手ができたってことは言っとくわ」
鋭くスマホの画面を睨み、苛立ちが蘇ったのか一度舌打ちをするレン。その顔を見て二人は息を飲み、レンがそんなことを感じるほどのチームがあるのかと驚き、そのチームがどれほど強いのか考える。
県予選第一回戦まであと二週間。
胸に痛みがっていう描写ありましたが病気で倒れるとかそういうことはこの先一切ありませんので安心してください。