ガンダムビルドファイターズAMBITIOUS Alternative 天翔ける夢   作:八咫ノ烏

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第五話です。どうぞ!!


第五話 始まる県予選

 喫茶閃光を訪れてから数日後。予選まであと一週間弱しか無くなったのもあり、アカツキの面々は機体の改修に勤しんでいた。

 

「そんなにガリガリ削っていいんですか?」

「いいんだよこれで。あとはここにあれこれ仕込めばGNスナイパーライフルⅠ改が完成って寸法よ」

「なんでしたっけその武器。てか作ったところで先輩の機体太陽炉搭載してないし使えないでしょ」

 

 そんな雑談をしながら各々の改造を進めていく。アオイは推進力の更なる向上のためのバックパックの作成及び、今背中に付いているスラスターウイングを腰に移植するために改造を、エリヤは手数を増やすためにセブンソード用のダガー等を作成している。

 そしてレンはというとクロスボーンには一切手をつけておらず、なぜかクアンタとデュナメスの武装を剥ぎ取りガリガリとヤスリでひたすら削っていた。

 

「万が一に備えてクロスボーン以外にも作っとこうと思ってな。一応改修は済ませたとはいえ、あれももう一年二年前の機体だ。最悪試合当日にパーツが取れたとかも考えられるわけだし、新しい機体を用意しとくってわけよ。つっても本命はクロスボーンだしそいつが壊れない限り使うことはないけどな」

 

 そう言って削り終わったパーツを超音波洗浄機に突っ込んでタイマーをセットする。アオイとエリヤは首を捻って何を作っているのか聞き出そうとする。

 

「GNってことは00からですか…何がベースなんです?ソレスタルビーイングの機体だとは思いますけど」

「先輩のことだしヴァーチェじゃないんですか?ああいう高火力ブッパできるやつ好きでしょ」

「なぜそれを…いや二年の付き合いだしそりゃわかるか。でも残念ながらヴァーチェじゃないんだなぁこれが」

 

 割とあんまり知られてない機体だぜ、とヒントを言い残して職員室に向かうレン。今日でトーナメント表が明らかになるのだ。それが学校に送付されるので恐らくそれを受け取りに行くのだろう。部活の顧問がやるべきではあるのだが、その肝心の顧問が驚くべきことにガンプラバトルに関して全くの無知であるため、部費や練習試合や大会出場の申し込み以外は全て部長に一任しているのだ。

 そういうこともあって部長であるレンは最近忙しく、部室と職員室を行ったり来たりしているのを二人はよく見かけていた。

 

「初戦、どこと当たるんだろうな」

 

 手を止めて呟くアオイ。初戦で転けてしまってはどうしようもない。あまり強いところとは当たりたくないと考えるのはどのチームでも同じことだろう。

 エリヤはパチパチとランナーからパーツを切り離しつつ言った。

 

「さぁ…。先輩の言ってた絶対に負けたくない奴らってのじゃなきゃいいけどなぁ」

「県予選くらいストレート勝ちできるやろ! ガハ! とか言って余裕ぶっこいてた先輩があんなこと言うくらいだし、相当強いんだろうなそのチーム」

 

 当たりたくねぇな、と口にすることはお互いにしなかった。こういうことを言うとなぜかその通りになってしまうという謎のジンクスがあるのだ。

 二人は、再び黙ってパーツを切り出し始める。パチパチという音が部室に響いた。

 

 

 

 

「で、これがトーナメント表ですか」

 

 レンは聞き慣れた大会の概要を聞き流すと、顧問から紙を受け取ってそれをまじまじと見つめる。俺たちのチームは…一回戦から参戦、か。シード権は取れなかったわけか。シード権がありゃ多少楽になるんだがな、とそう考えていると顧問が少し微笑んで言った。

 

「今年も勝てそう?」

 

 顧問の声には隠しきれない期待が混じっていて、レンはそれに少しプレッシャーを感じた。レンが入ってから予選で負け無しという実績があるため期待されるのも無理はないが、それはレンがいたからというわけではない。先輩のレベルもレン同様に高かったから勝てたのであって、一人加わったところで圧倒的な力を得るわけではない。そんなものはアニメの世界でしか起こり得ないことだ。

 しかしレンは喉まで出かかったその考えをなんとか飲み込むと、苦笑いして

 

「やーどうでしょう、今年はちぃっとヤバそうな相手がいますんでね。…ともすれば準決勝で負けるやもしれません」

「つまりそれ以外で負ける気はしてない、と。そういうことになるの?」

「必ず勝てるとは言い切れませんが、県予選の山場はそこです。そこさえ越えてしまえば全国には行けるかと」

 

 そう言って準決勝の点を指で指し示す。もしレンの予測通りに事が運べば、県予選で一番激しい戦いは決勝戦ではなくレンたちの準決勝戦になるはずだ。それを制した方が三重代表として全国に挑む権利を与えられると言っても過言ではないかもしれない。まあそれも全て机上の空論と言われればそれで終わりなわけだが。

 

「ま、期待しないで待っててください。勝ってきますから」

「心強いわね。期待して待っておくわ」

 

 顧問の言葉にまた苦笑いすると、

 

「期待しないでって言ったのに…それでは失礼しました」

 

 と言って職員室を後にする。廊下を歩きながら再びトーナメント表を見て一回戦の相手の特徴を思い浮かべて戦略を立て始める。

 

「俺の記憶が確かならこのチームは高機動の近接特化が多かったはず…。うちも似たようなもんだから地力の差が出るな。いつもみてえに俺が斬り込んで錯乱させた後あいつらに一対一の状況を作ってもらおうかね」

 

 知っての通り、アカツキには近接戦闘特化のMSで構成されているために、レンが斬り込んで戦闘状況を無茶苦茶にした後、混乱する敵MSにそれぞれが急襲し、一対一の戦闘に持ち込むというのが彼らの得意な戦法だ。相手によってはその限りではないが大抵この戦法を取ることが多く、代々この戦法を使っているためアカツキといえばこの戦法と三重に浸透してしまっている。

 恐らく何かしら対策はされるだろう。しかし、それをひっくり返して自分のペースに持ち込むのもガンプラバトルの醍醐味の一つというものだ。

 

「今年もいっちょ頑張りますかねぇ…っと。電話か」

 

 ズボンで震えるそれを取り出して電話の相手を見て、先日とは打って変わってニヤリと笑うとすぐにそれに出た。

 

『よっすレン。卒業式振りだな』

「そうですっけ?何回か閃光で会ってる気がしますけど」

 

 電話の相手はかつてのリーダーであり先輩だった。レンの頭が上がらない数少ない人間である。レンは廊下の壁にもたれて口を開く。

 

「で、急にどうしたんですか?まさか今から押しかけるとか言うんじゃないでしょうね」

『そんなことするわけないだろ。今年もこの時期が来たわけだし、激励とちょっとしたアドバイスでもと思ってな』

「アドバイス…ですか?」

 

 怪訝な顔をして聞き返したレンに先輩はそうそうと言った。一体なんのアドバイスだろうか。そう首を捻り考え込むレンに、先輩は言った。

 

『バトルを楽しめ、レン。…お前、どうせ俺たちに引け目を感じてんだろ。負けたのは俺のせいだとかってな』

「…」

 

 その言葉に黙り込んで俯く。それを否定することはレンには出来なかった。先輩はその沈黙を肯定と捉え、ゆっくりと喋り出す。

 

『負けたのは誰の責任でもない。仕方がなかったんだ。気にしたところで何にもならないだろ。違うか?』

「いやでも…!! 負けたのは俺のせいなんですよ!! あそこで俺が操縦不可能な状態になってなかったら…絶対に準決勝まで進めていたんですよ!! なのに、俺のせいで…」

『だがなってしまったもんは仕方ないし、いくら悔やんだところでその結果が変わるわけでもねえ。俺たちのことを気にしてる暇なんて今のお前にはないはずだろ』

 

 レンの言葉を否定するわけでもなく、だがしかし先輩は優しくレンに言った。

 

『俺たちのことはもう気にしないでいい。お前はお前らしく自分のことと後輩のことだけ考えてりゃいいんだっての、わかるか?』

「そんなこと言われても…」

 

 無理だ、と言いかけたレン。しかし先輩はそれをため息を遮ると、

 

『無理なわけじゃない。俺はお前に楽しんでほしいと思ってるからこう言ってるんだ。そんなんじゃ楽しもうにも無理だろ。だから気にしないでくれていい。お前本来の実力を出し切って戦ってくれ。それだけが俺たちOBの望みだ。これでも気にするなってのは無理か?』

 

 と言った。楽しんでほしい、か。そう口に出したレンは顔を少し上げると不敵な笑みを浮かべ、わかりましたよと言った。

 

「やってやるさ!! 俺たちの快進撃を楽しみにせずに待っとけ!!」

『その心意気だ。…楽しめよ、レン。ガンプラバトルは楽しんだもん勝ちだ』

 

 そう言って電話を切った先輩。レンはスマホをポケットにしまうと、部室に向かって駆け出した。

 

 

 

 

「帰ったぞ!! トーナメント表もらってきたぜ!!」

 

 勢いよく部室の扉を開き、持っていた紙を机の上にバァン!!と叩きつけたレン。その音にビクッと体を震わせて驚いた二人は口々に

 

「ちょっと!! 集中してんですからもう少し配慮してくださいよ!!」

「手元狂ってパーツ欠けたじゃないですかふざけんな!!」

「おいアオイのはわかるとしてエリヤテメエのは純粋な罵倒じゃねえか」

 

 ポカリとエリヤの頭を叩いてピシッとトーナメント表の一点を指し示した。

 

「俺たち新生アカツキの公式戦初陣はBブロックの第四試合、対戦相手は海聖高だ。近接特化の機体ばっかだから地力の差が出る。だが俺たちならいける」

 

 だろ?とでも言いたげに二人の目を見る。アオイは口角を上げると

 

「すごい自信ですよねホント。まあ負ける気はしませんけど」

 

 と言って腕を組んだ。エリヤもそれに同意して作業スペースに置いてあるエクシアを見つめる。愛機がどこまで通用するのか、と想像するのはどのファイターでも同じことだろう。

 期待に胸を膨らませる一方で、一抹の不安を感じるのもそうだ。いくら負ける気がしなくとも、必ず勝てるという保証はない。どれだけ綿密に作戦を練ろうがそれを容赦なくひっくり返してくるイレギュラーな存在もいるし、絶望的な戦力差を物ともせずに打ち破る者だっている。勝ち筋があるのなら負け筋というものもある。

 

 エリヤのその不安を感じ取ったレンは、よく聞け!!と声を張り上げる。

 

「今年も全国大会行きの期間限定切符を得るのは俺たちだ!!他のチームが強いからなんだってんだ!!だったら俺たちがそれを上回りゃいいだけの話だ!!そうだろ!!」

 

 レンの言葉を聞いてエリヤは苦笑すると

 

「それができたら苦労しないと思いますけどね」

「俺今そういう返答求めてなかったんだけど。盛り上げようとしたのに台無しじゃねえか何してくれとん、なぁ」

 

 そう言ってエリヤの頬をぐりぐりと人差し指で押しながら言ったレン。やめてくらさいよと抗議するがその手は止まりそうにない。しばらくされるがままにされるエリヤだった。

 

 

 

 そして。

 

「覚悟はいいな、アオイ、エリヤ」

 

 そう言って握った拳を突き出すレン。二人はレンと同じように拳を突き出して

 

「当たり前でしょ」

「もちろんできてますとも」

 

 と言った。レンはそれを聞いてその意気だ、と言って不敵な笑みを浮かべる。

 

「うっし!!そんじゃあいっちょ見せつけてやろうぜ!!俺たちの実力ってやつを!!」

 

 そう叫んで二人の突き出した拳に自分の拳を上げて天高く突き上げた。二人もそれに倣って

 

「「オー!!」」

 

 と叫んで突き上げる。

 

 県予選当日。彼らの戦いが始まる。




次回から県予選が始まります。戦闘シーン頑張らなきゃ(使命感)

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