1番最初のレースは覚えているよ。正直言うと、本当につまらないものだったからね。
だってそうだろう。私はウマ娘の限界を超える速さを求めて研究しているし、その結果をレースで確認したかったんだから。
それなのに最初からレースをまともにできないように包囲して来るなんてね。
いやはや困ったものだよ。
うん、確かにあれは私の生活態度のせいだよ。今ならわかるさ。
でもねぇトレーナー君。
どれだけ怒りがあってもレースという自分の成果を発揮する場でああいったプレーはよくないよ。
自分が培ってきた全てをドブに捨てるようなものじゃないか。
彼女たちもあのあとこっぴどく叱られたと聞くしね。自業自得だよ。
レース以後何か話したかって?
ああ、うん。クラシック後半にはなるが、少し話したよ。
デビュー戦であんなひどいことをして悪かったと謝罪されたんだ。
本気でレースを走ってない、許せないと思っていたって。
私が本気で取り組んでいることがわかって納得したから、悪いと思ったんだろうね。
クラシック後半は色々あったからね……彼女たちも思うところがあったんじゃないかな。
ところでトレーナー君。
紅茶をもう1杯もらいたいんだが。
うん、ありがとう。
ふぅー……そういえば、こうやってラボで紅茶を飲むのもデビュー後からだったね。
茶葉を買うように頼んだのに、君ときたら何も買わないでレースを見ているんだ。
あの時は結構怒ったよ、私は。ククク、君も覚えているか。
レース後に茶葉を買いに行ったが、店につくまでずっと君への文句を言っていたからね。
紅茶は大事なものなんだよ、トレーナー君。
君には3年間びっちりと言い続けたからわかっていると思うけどね。
糖分によって脳が活性化するし、香りでリラックス効果もある。
研究には最適だよ。
え? コーヒーでもいいじゃないかって?
とんでもないことを言うなあ、君は!
あんな苦いものを飲むなんて信じられないよ!
君も知っているじゃないか、この前の出来事を!
お昼ご飯を食べていたら隣にカフェが座った。
そして私が1口飲み物を口にしたら、それがコーヒーだったんだぞ!
今思い出しても口が苦くなる! ああ……苦いよー。
早く紅茶で中和しなくては。
全く、私のコーヒー嫌いを君は知っているだろう?
何故すすめてくるんだ、全く。
……ふぅン? そうか、そういうことか。
そういえば君、カフェと仲がいいね。
この前だってカフェテリアで一緒にコーヒーを飲んでいただろう。
なんとおぞましい光景かと思ったよ。
君はあれだろう?
カフェと一緒にコーヒーを飲んでいる方がいいんだろう?
私は君にたくさん注文をするからね。
彼女は物静かで落ち着いている。私とのストレスをカフェとの逢引で解消しているわけだ。
なんとも嘆かわしいことだよ。
そうは思わないかい、トレーナー君。
自分の担当ウマ娘を放って別のウマ娘とコソコソあっているなんてね。
しかもよりによって同期でライバル的存在とだなんてね!
あー、やる気がなくなってしまったなー。
これじゃあ次のレースは出走取り消しかもしれないなー。
……なんだ、別に言い訳しなくたっていいよ。
別にカフェと一緒がいいなら……うん?
私に薬を散々押し付けられるから2人で話し合っているって?
君ぃ、それこそ失礼じゃないかい?
私は決して押し付けているわけじゃないよ。断じてね。
というか、そもそも君はモルモットになるって言ったじゃないか。
自由意思で飲んでいるだろう、君に限っては!
カフェも困っているって?
なあなあトレーナー君。君は一体誰の担当なんだい?
カフェに薬を飲んでもらうことで研究が進むならそれに協力するのが担当トレーナーとしての責務だろう。
そう思わないかい? うん?
思わないだって!?
なんでだ! 君は私に全面的に協力するべきだろう!?
他人に迷惑かける時はその限りじゃないって?
なんだよー、別にカフェならいいじゃないか。
カフェは特段気にしてないよ。シャカール君と違ってね。
あーあ、なんだか話す気もなくなってきてしまったよ。
振り返りを終わりにして研究に戻ってもいいかい?
ダメだって? えー……。
でもね、トレーナー君。
正直ジュニア級の記憶はあまりないと思うよ。
君だって特別残っているものはないだろう?
クラシック級からが濃密すぎたからね。色々あったものだし。
え? 覚えていることがあるって?
なんだ、それ?
私は特に何も覚えがないんだが……。
……ああ! ホープフルステークス!
そういえばそんなものがあったね。
いやはやよく覚えているものだ。
けど、あのレースについては特にいい思い出も悪い思い出もない。
トレーナー君もそうじゃないかい?
別に走ってないんだからね、あのレースは。
タキオンってコーヒーが苦手と言うより苦いのが好きじゃないところありそうです。
というか甘味がすきなだけ……?
マッ缶なら飲めるのかな。