『脚』は動物の足全体で
『足』は主にヒトのくるぶし以下の部分のことらしいんです
一応足はヒトの下肢踝(股関節からくるぶしまで)を指すらしいんですけども、全体を指す場合は脚が適当のようですね
足は脚の要素を含むからどっちでもいいらしいんですけどこれややこしいっすね!
今までウマ娘に『脚』、ヒトは『足』って区別してたんですが!
でも間違ってはいないので上記の通りにいきますよ~!
夏合宿も後半。残り1ヶ月を切った。
今日も今日とてトレーニングに勤しむ俺たち。
「トレーニングかい? これが?」
竹ウマに乗りながら不満を垂れるタキオン。
海の中でえっちらおっちらとゆっくり歩行している。
学校まで竹馬を使って海を渡る人たちがいるという話を聞いたことがある。やっているのはそれだ。
想像以上に難しいらしく、何度もバランスを崩しては海に落っこちており機嫌が悪い。
砂との接地面に重りをつけているし水の抵抗もあって、思うように歩けないみたいだ。
「結構難しいですからね~。慣れると楽しいですよ」
笑顔でざぶざぶと歩いてくるのはフクキタルだ。
バランスを崩す様子もなく、普通に歩くような速さで近づいてきた。
「走る時と同じで、正しいフォームが大事なんです。もちろん足を前に出す時も姿勢を意識します!」
こうですよ!
そう言いながらひょいひょいと歩いていく。
……フクキタル、タキオンの2倍ぐらい多く重りをつけていた気がするんだけど。デジタルも同じ量だ。それでシャカシャカ歩き回っているし。
チームリーダーに至っては4倍の重りをつけて、先輩の乗る水上バイクを
「ふぅン。走る時のフォームと同じような前傾姿勢。足の前方、蹄鉄がある部分を使った歩行。確かに地上を走るのと同じだ。同じ側を動かす以外はね」
竹ウマは性質上、右脚を前に出すときは右手が前に出る。
緊張している時のような動かし方だ。武士みたい。
「まったく、毎度毎度おかしなトレーニングを思いつくものだね!」
ぶつくさ言いつつ一歩一歩前へと進む。
実際のところかなり上達していて、今では転ばずに歩くことは容易だ。スピードは遅いけど。
ここまでくるのに1時間はかかっている。ようやくまともにトレーニングができているといった状態だ。
コツを掴んで竹ウマ歩行トレーニングをしているタキオンを見ていると、後ろから声をかけられた。
誰だろうと振り向くと、同期のトレーナーだ。
「よう。調子はど、う……ああ、うん。なるほどな」
水上バイクで走る先輩とそれを追いかける芦毛のウマ娘。
そして少し離れたところでわっせわっせと竹ウマで歩くフクキタルやタキオン、デジタル。
異様な光景を見て、何かを察したようだ。
「この前は悪かったな」
急に謝られた。
なんのことだと聞き返すと、バツが悪そうに頭をかく。
「ほら、タキオンとのことだよ。結構強めに言い過ぎちまったし、本来他のトレーナーとウマ娘にいろいろ言うのもすごい失礼だった」
他の同期にもやりすぎだって怒られちまった。
そう言って頭を下げられる。
言われた時は驚いたしどうしようかとは思ったけども。
特に問題も起きなかったし俺は気にしていない。むしろタキオンとのことを見直すいい機会だった。
感謝こそすれ、恨んだり怒ったりしてはいないんだ。
「そう言ってくれると助かるよ。いやぁ、俺の担当にもしこたま怒られてさ。タキオンがかわいそうだって」
かわいそう?
タキオンに対して全く使われなさそうな言葉だったから思わず首を傾げてしまう。
「いやなに。俺がお前に話をした後からさぁ。タキオンの生活態度が急変したって担当から聞いてな。しかもちょっとそわそわしてるっつーじゃん。やっちまった! と思った!」
新人なのにわかったような口きいてよぉ!
同期と2人でゲラゲラ笑う。
「担当からそういわれてもう顔面蒼白だったわ。それで思わず事情を話したらすっげー怒られたってわけ。最近がんばってるのにってさ」
失礼したわ、本当に。そう言って眉尻を下げた。
結果として俺たちにとってプラスに働いたから別にいいんじゃないだろうか、うん。
「そうらしいな。よく聞くぜ? タキオンがカワイく笑うようになったってな」
かわいそうと同じぐらい聞かない言葉だ。カワイイなんて。
いや、可愛らしいところはあるんだけど。他の人がそういうのは全く聞かなかった。
悩みが解消されて余裕ができているってことなのかな、と思う。
「うっし、話は終わりだ! 担当の調子を見に行くとするよ」
今度飲みに行くぞ、なんて言いながら去っていく。
タキオンもかなり変わったんだなぁと思うのであった。
◆ ◆ ◆
日々のトレーニングを続けていたある日。
ウマ娘たちの雰囲気がいつもと違った。
なんというか、浮ついているじゃないけど、楽し気というかなんというか。
何かあるんだろうか。近くで話をしているウマ娘たちに聞いてみる。
「おはようございます! あ、タキオンさんのトレーナーさんだ!」
「今日は光ってないんですねぇ、脚」
いつも光っているわけじゃないよとツッコむと、くすくす笑われる。
それはさておき。何かあるのと聞いてみる。
「え? 何もないですよ」
あれ?
じゃあなんでこんな雰囲気なんだろう。
こういった浮つきには厳しいエアグルーヴも、周りの様子を見ているだけで特に何も言ってないし。
「あ、そういうことですか! 今日は近くで夏祭りがあるんですよ!」
「毎年トレセン学園の合宿に合わせてやってくれるんです」
だからか! 去年も来ていたが知らなかった。
あの時はタキオンの脚で必死だったからなぁ。
「トレーナーさんもタキオンさんと一緒に行ってみたらいいですよ! 花火も見れて楽しいですから!」
「トレーナーさんのほうが花火になったりして」
薬飲まされてばっかりだからな!
2人とひとしきり笑って別れる。
そうか、夏祭りかー。最近トレーニングと研究尽くしだからな。ちょっと気分転換させてみようか。
というわけで夏祭りへ足を運んでみた。
「ふぅン。こういった催しをやっていたんだね。知らなかったよ」
顎に手を当てて人が多いな、なんて呟いている。
相変わらず人混みが苦手なようだ。
ところでタキオン。
「なんだい、トレーナー君」
浴衣持ってきてたの?
「ああ、これかい? 近くの呉服店が合宿所にサンプルとしてくれたみたいでね。何故か他の娘たちと一緒に着替えさせられたんだよ」
動きにくいったらないよ、と肩を落として困った様子だ。
似合っているよと声をかけると、ふぅン? と俺の顔を見る。
「こういった衣装が好みなのかい? 確かに僅かながら高揚しているようだね。どれ、少しばかりデータを」
ニヤリと笑いながら近寄ってくるので、頭にチョップを叩きこんで先に歩く。
「トレーナー君! いきなりなんなんだ君は、急に頭を叩いて。それに見たまえ、この靴を。下駄なんだぞ? もし転んでしまったらどうするつもりなんだ」
ぶつくさ文句を言いながら歩いてくるタキオン。
大人をからかうんじゃないよと言って、こちらに追いつくのを待つ。
「からかっているつもりはないよ。ただ事実を述べているだけで……うぅん、やっぱり歩きにくいな。慣れない靴を履くものじゃないな」
困った様子でカツカツと足踏みして気にしている。
鼻緒が擦れてでケガをしたりする可能性もあるが大丈夫なのだろうか。
「ああ、それは大丈夫さ。靴ずれ用のクリームを塗っているからね。ウマ娘用のものだし、問題ないだろう」
なら大丈夫か。
しかし歩きにくいとなると困るな。
屋台を練り歩く予定だったが、一旦戻ろうか。
「いや、なんとかなるだろう。トレーナー君、手を貸したまえ」
手を差し出すと、手首を掴まれた。
そして俺を支えに何歩か歩き、満足気に頷く。
「これなら問題ない。ほら、トレーナー君。案内したまえ」
腕を揺らして催促されたので、このわがまま放題のお姫様をエスコートすることになった。
タキオンはこういった催しにあまり参加していなかったようで、ぶつくさ言いつつも楽しんでいる。
「にんじん飴ね。トレーナー君、買ってくれたまえ」
「ん、なるほど。これはいい糖分補給だ。中のにんじんも美味だよ。少し食べるかい?」
「これが金魚すくいか。こんな薄いものですくい上げるんだね」
「……トレーナー君、もう1回やるよ」
「ふぅン、どうだい? やったことはなかったが、計算してしまえば取れるものさ。ほら、もう1匹……えー!?」
「ふむ、射的か。銃で景品を打ち落とす。少しばかり野蛮だね。それが味なんだろうが」
「なあトレーナー君。あれ固定されていないか? 明らかに動かないんだが。そうとしか説明がつかないよ」
「……君の先輩は細工でもしたのか? あんな簡単に落とすなんて。いや、あそこのリーダーをアシストしたからか」
いくつか屋台を回っていき、タキオンと俺の手が塞がったところで一休みだ。
近くにあるベンチに座って買い集めた食糧を頬張る。
「なんだ、普通の焼きそばだね」
プラスチックのパックに入った焼きそばを1口食べて首を傾げている。
屋台の料理はそんなものだ。お店をやっている人じゃなくても料理を売ったりしているから。
「ふぅン。だが、それを知っていて買ったんだろう?」
そうだよと言うと、少し考えこむ仕草をしてまた1口食べる。
「面白いものだね。おいしいわけじゃない、けれども雰囲気でつい買ってしまう。夏祭りという熱気に浮かされているわけだ」
そしてそれを楽しんでいるということか。そういうことだよ。
ラムネのビー玉を押し込み、プシュッと軽い音と共に泡が出た。1口飲んで炭酸とシンプルな甘さを楽しむ。
たこ焼きとラムネはあんまり合わないなぁ、なんて思いながら。
「感情というものはプラスにもマイナスにもなる。学園祭も夏祭りも、どうやらプラスに働くらしい」
楽しそうに話して、タキオンもラムネを口にする。
2人でゆっくり食べて、夏の熱さと祭りの熱気を感じていると周りの雰囲気が少し変わる。
ひゅるる~と音が聞こえ、空を見上げると花火が上がっていた。
みんなが空を見てわぁ! と声を上げたり、写真を撮ったりしている。花火が上がっただけで、空気がさらに楽し気なものに変わっていく。
「……綺麗な光だね」
チラ、とタキオンの横顔を見る。穏やかに笑みを浮かべて、瞳に花火を映していた。
そうだな、と一言呟いて俺も花火を見る。
様々な色に輝きながら咲き誇る花火を眺めて、ゆったりとした時間を過ごすのだった。
Report:●◇年8月□○日
夏祭り、なかなか有意義な時間だった
精神的なアプローチで身体能力を向上させるというのは難易度は高いが間違いではない
能力以上の結果を出せるが、逆にいえば能力を向上させないと良い結果は出ないだろう
やはり基礎を大事にするべきなのだろうね
しかし光で咲く花というものはいいものだね
美しいものを見ると気分が高揚するよ
また見てみたいものだ