アグネスタキオンは超光速の夢を見るか   作:あぬびすびすこ

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 全て振り返ったタキオンたち


Intermission:応援

 いやはや大分語りつくしたんじゃないかい?

 大阪杯、宝塚記念、秋の天皇賞に有マ記念。

 GⅠ4連勝だ。シニア級は大成功と言ってもいい。

 特に有マ記念では理論上理想的な上振れに近い結果を出すことができた。これ以上ないほどにいい結果だったよ。

 

 特にあの1年間は研究自体も有意義なものだったし、結果がわかりやすく出ていたのもモチベーションに繋がっていたね。

 論文で見たんだが、知っているかいトレーナー君。

 1つ前のレースで入着もできないウマ娘に「前回より低い順位はとらないようにしよう」と声をかけていくと、前回より低い順位を取りにくくなるんだ。

 しかし「前回よりも高い順位を目指そう」と声をかけると、低い順位もとるが高い順位になりやすい傾向にある。

 つまり、マイナスを抑制する応援とプラスを促進する応援があるわけさ。どうだい、興味深いだろう?

 

 私の脚は速い。それこそ自動車にジェットエンジンがついているようなものさ。以前は自転車についていたが。

 その自負があるし、実際レースでもそうだった。だから君にはプラスを促進する応援をしてもらうために色々誘導していたのさ。

 以前よりほんの少し真面目に授業を受けてみたり、トレーニングを多めにしたりね。

 思い出してみたまえ、実際私を鼓舞する時はそういった応援をしていただろう?

 

 えー!? 違うってどういうことだい!

 私はプラスになっていると考えていたぞ!

 私らしくないから心配していたって?

 おいおい冗談だろう。冗談だといってくれ。私が聞いていた応援についてかなり考え直さなければならないからね。

 

 いつもの態度が悪いってなんだそれ!

 弁当にケチをつけたり薬をちらつかせたりするからだって?

 いいじゃないか別に。私と君の仲だろー?

 それに契約の時にモルモットでもいいって言ったのだからね。責任は君にあると思うんだけどね。

 

 それにシニア級になってから薬を飲ませる頻度は減っただろう。

 そんなことない? いやいや、確実に減ったはずだ。

 以前は1日3本飲むときもあったが、今や3日に1本だよ! 数字が逆転するぐらいには飲ませていない!

 昨日は2本飲んだって? 昨日のレポートが見当たらなくてね、すまないがその意見はわからないな。

 

 あー! なんで君は毎回頭をぐしゃぐしゃにするんだ!

 耳と前髪だけは触るなって言ってるだろう!

 まったく! 髪を整えるのだって時間がかかるんだぞ!

 こんな無駄なことに時間を使うのはナンセンスだよ!

 

 ほら、責任をもって髪を整えたまえ。

 それが嫌なら今日はパーティにでもしようじゃないか。

 君の大好きな発光するジュースを3本ほど用意しよう。茶請けは錠剤さ。ラムネじゃあないぞ? うん?

 そうそう、それでいいんだ。

 

 さて、話がかなりズレてしまった。

 応援の話だったね。

 結局私が求めていたのは、プラスの効果さ。

 下限を上げる応援ではなく、上限をさらに上げる応援というわけだね。

 実際これは効果が出ていた。それは君もレースを通じて見ていたと思う。

 いやはや感情の力というものは侮れないね。

 

 何度も言うようだがシニア級の研究はとても有意義だった。

 自分の能力を数値化して計算してきたが、感情の効果は計算式に当てはめてもとにかくブレが生じる。

 大阪杯の後、シャカール君と協力してなんとか計算式を出してみようと色々やってみたんだけどね。値の変動がありすぎてまともな数値で示せないということだけわかったよ。

 だってそうだろう。応援してくれる人物によって効果が違うんだからね。不特定なことがあまりにも多すぎるのさ。

 

 うん? 人によって効果が変わることが気になるのかい。

 なに、単純な話だよ。

 自分が知らない人物から応援されるより、同じように努力している知らないウマ娘から応援された方が。

 知らないウマ娘より、知っているヒトのほうが。それより知っているウマ娘の方が。

 信頼しているヒトのほうが、より感情へ与える力が大きいということさ。

 特に私はかなり素直な性質らしくてね、それが顕著に出るわけだ。

 

 わかりにくいかい?

 不特定多数のファンよりも君に応援されたほうがよっぽど力が出る。そういうことさ。

 これは私だけじゃなく、どのウマ娘でも同じだと思うよ。

 シャカール君はロジカルなタイプだから効果は薄いらしいけどね。

 

 なんだ、急に。顔を赤くして。

 ふぅン? 私の発言で照れてしまったということかい。

 なるほど。

 

 改めて考えると確かに恥ずかしいな!

 赤面ものだよ本当に。君の顔を見ないようにするから、私の顔も見ないでおくれよ。

 

 

 

 

 

 ふぅ。落ち着いたね。

 こういう時だとハーブティはいいものだ。気持ちを落ち着けてくれる。

 

 ところでトレーナー君、もう話すことはないんじゃないかな。

 元々インタビューのために振り返りを先にしておくというテーマで語っていたわけだが。

 もう語りつくしたんじゃないかい。もう唇を湿らせるのにも飽きてきたし、おなかも紅茶でいっぱいだよ。

 

 え? 1つ忘れているものがあるって?

 えー、なんとなくわかっているけど、ついこの前の話じゃないか。

 確かにトゥインクル・シリーズでの話だけどね。もうその話は何度もしてきたじゃないか。雑誌に新聞にテレビに! おかげで研究の時間がなくなってしまうぐらいだよ。

 

 はぁ、まあいいだろう。3年間を振り返ると言ったからね。

 それに、レースで勝つために最も苦労したというか。本当に死闘だったから、とてもよく覚えているよ。

 

 第3回URAファイナルズ。いやはや、丁度いい時期にデビューしたものだよ。




 ここからはURAファイナルズでの戦い。
 待ち構えるウマ娘たちにご期待ください。
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