アグネスタキオンは超光速の夢を見るか   作:あぬびすびすこ

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 ライブと言えば!


Story43:うまぴょい伝説

 ウィナーズサークルにたどり着き、そこで待っていたタキオンを見つけた。

 思わずタキオン! と叫びながら走っていくと、彼女はぽかんと口を開けて俺を見る。

 

「おいおいトレーナー君。顔がさっき見たよりもビシャビシャじゃないか。泣きすぎじゃあないかい」

 

 そう言って俺の顔を袖でグシグシ拭いてくる。

 おい、これ勝負服……!

 

「まあいいじゃないか。洗えば変わらないよ」

 

 そう言ってぐいぐい押し付けてくる。

 慌てて離れて自分の袖で目を拭くと、タキオンが穏やかに笑っていた。

 

「見れたかい?」

 

 ああ、見れた。

 でも、すごく心配になった。

 

「そうか。でも、ケガはしていないよ」

 

 体が壊れるんじゃないかと思った。

 

「大丈夫さ、ほら」

 

 タキオンはお守りがついている脚を見せ、軽く振る。

 

「これがあるならケガすることなんてないだろう。実績があるものだからね」

 

 オカルトだなぁと眉尻を下げると、すぐ近くにオカルトな存在がいるじゃないかと言われた。

 ああ、カフェ……。

 

「何はともあれだ。私たちはついに辿り着いた……やった、やったんだぞ! トレーナー君!」

 

 興奮を我慢していたらしいタキオンが、俺の腕を掴んで喜び出す。

 じたばた脚を動かしたり、ぴょんぴょん跳ねてみたり。

 ただの少女のように嬉しそうなタキオンがそこにいて、思わず俺もやったな! と笑顔で跳びはねるのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 珍しくしっかりインタビューを答え終わって、ライブ会場。

 俺はサイリウムを持ってライブの開始を待っていた。

 

「いやぁ、今日はかなり負けたな。すごい悔しい」

 

 そして隣には先輩だ。

 タキオンがゴールドシップを負かし、長距離ではカフェがフクキタルを打ち破った。

 負けたとか言っているが、短距離とマイルでタイキシャトルとサイレンススズカが勝っている。

 つまり、今回の勝利でURAファイナルズ距離別全部門制覇しているというわけだ。

 しかも先日海外にいたアグネスデジタルはドバイシーマクラシックでハナ差2着だし。

 

 かなり負けたとか嘘つけ!

 俺はそう思った。

 

 そんなこんなでライブの開始を待っていると、準備が終わったようでステージでライトが煌めく。

 URAファイナルズではお決まりの音楽が鳴り響き、奥のステージに3人のウマ娘が登場した。

 

位置について

よーい

ドン!

 

 アグネスタキオン、ゴールドシップ、シンボリルドルフがステージから降りてくる。

 それを見て、よくここまできたものだなぁとタキオンとの出会いを思い出す。

 

うーーーー

うまだっち

 

うーーーー

うまぴょい

うまぴょい

 

 最初の出会いはもう最悪だった。

 保健室で薬を飲まされそうになっていたんだから。しかも3本。

 

うーーーー

すきだっち

 

うーーーー

うまぽい

 

うまうまうみゃうにゃ

3

2

1

Fight!

 

 そのあとシンボリルドルフとの模擬レースを見て、惚れこんだんだ。

 凄まじいスピードとその素質、そして可能性の先を目指すその姿勢に。

 

おひさまぱっぱか快晴レース

はいっ

 

ちょこちょこなにげに

そーわ So What

 

 スカウトしたくて薬を飲んだし、役に立ちたくて何度も発光した。

 今思うととんでもないことだな。

 

第一第二第三しーごー

だんだんだんだん出番が近づき

 

 わかってはいたけどデビューでは圧勝だった。

 その後のホープフルステークスでも快勝。

 やっぱり強いんだ。そう思った。

 

めんたまギラギラ出走でーす

はいっ!

 

今日もめちゃめちゃはちゃめちゃだっ

ちゃー!

 

 

がち追い込み

糖質カット

 

コメくいてー

でもやせたーい!

 

 タキオンから弥生賞に出ると言われた時は驚いたな。

 あの時はやる気が出てきたのは嬉しいとしか思っていなかった。

 

あのこは

ワッフォー

そのこは

ベイゴー

どいつもこいつも あらら

リバンドー

 

泣かないで

はいっ

拭くんぢゃねー

おいっ

あかちん塗っても

なおらないっ

はーっ?

 

 皐月賞でも強かったな。

 その後からはずっと混乱しっぱなしだったけど。

 レースに出るのか出ないのかわからず、トレーニングはいっぱいやるし。

 

きょうの勝利の女神は

 

あたしだけにチュゥする

 

虹のかなたへゆこう

 

 自分の脚について教えてくれた時は、情けなくて悔しくて。

 絶対にタキオンを走らせてやるんだって気持ちでいっぱいだった。

 

風を切って 大地けって

 

きみのなかに 光ともす

 

どーきどきどきどきどきどきどきどき

 

 

 

きみの愛バが!

俺の愛バが!

 

 

 

 菊花賞を終えて、しっかりと休養して研究を続けて。

 シニア級になってからは常に全速前進だった。

 

ずきゅんどきゅん 走り出しー

ふっふー

 

ばきゅんぶきゅん かけてーゆーくーよー

 

 大阪杯、宝塚記念と中距離のGⅠに挑戦していった。

 勝つたびに夢が広がったし、タキオンの走りに魅了された。

 

こんなーレースーはー

はーじめてー

3

2

1

Fight!!

 

 天皇賞と有マ記念。

 何度も戦うライバルたちとのレースは、タキオンにとって理想の条件だった。

 そして有マ記念で可能性の先に手が届くところまで来たんだ。

 

ずきゅんどきゅん

胸が鳴り

ふっふー

 

ばきゅんぶきゅん

だいすーきーだーよー

 

 URAファイナルズでは観察するとか言っていたが、なんだかんだタキオンは走りたかったんだ。

 だってもう少しで自分が思い描いた瞬間にまで行けそうなんだから。

 

今日もーかなでーるー

 

はぴはぴ だーりん

3 2 1 Go Fight

 

うぴうぴ はにー

3 2 1

うーーFight!!

 

 予選でも準決勝でも、タキオンは自分の実力が出せると証明した。

 残すは決勝で、今までの全てを出し切れるかどうかだった。

 

うーーーー

うまだっち

 

うーーーー

うまぴょい

うまぴょい

 

 今まで以上にハイレベルなレースで、タキオンがどんどん抜かされていった時は思わず心臓が止まるところだった。

 でもタキオンが諦めていないから、俺も頑張れ! と応援していた。

 

うーーーー

すきだっち

 

うーーーー

うまぽい

 

うまうまうみゃうにゃ

 

 

 

きみの愛バが!

俺の愛バが!

 

 

 

 タキオンが加速してどんどん追い抜いていくのを見て、涙がこぼれた。

 あと少し! あと少しで理想に届くんだ!

 順位なんか気にしないで、タキオンの走りだけを見ていた。

 

ずきゅんどきゅん 走り出しー

ふっふー

 

ばきゅんぶきゅん かけてーゆーくーよー

 

 全力で走って、自分の理想で砕けそうな脚を回転させて。

 一瞬で先頭まで駆け抜けていく姿に目が灼かれた。

 

こんなーおもいーはー

はーじめてー

3

2

1

Fight!!

 

 ゴールドシップと並んだ時、いけると。

 何故か思ったんだ。

 行ってくれ! そう願ったら、タキオンは何もかもを置き去りにしていった。

 

ずきゅんどきゅん

胸が鳴り

ふっふー

 

ばきゅんぶきゅん

だいすーきーだーよー

 

 ゴールインしても走り去っていく姿を見た時、ついにやったんだ……そう思った。

 ゴールドシップが止めてくれなかったら、きっと大変なことになっていただろう。

 トレーナーとして失格かもしれないが、俺は止めれなかっただろうなと感じた。

 

今日もーかなでーるー

 

はぴはぴ だーりん

3 2 1 Go Fight

 

うぴうぴ はにー

3 2 1

うーーFight!!

 

 タキオンとの3年間。それは超光速で過ぎた最高の時間。

 センターでポーズを決めたタキオンを見て、似合わないな、なんて思うのであった。




Report:●▼年3月○△日

 人生で一番嬉しいひとときだった
 また味わいたいものだね
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