トレーナーさんちのゴルシ   作:ししゃも丸

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無料でフラッシュ貰ったけどネタが思いつかない……。



ゴルシとコーヒー

 

 

「ちょっと散歩に行ってくる」

「お土産よろしく~」

「へいへい」

 

 ある日の休日、アイツは今日も同じような時間に散歩に行くと言って外に出ていく。それは毎週のことで、アタシが戻ってくるより以前から、つまりアタシがまだ走っていた頃からの習慣だった。

 散歩と言うのは半分嘘で、本当はとある喫茶店にコーヒーを飲みに行っているのだ。当然それは前々からアタシも知っていたし、特に気にも留めていない。

 

 昔ならともかく、今は同棲しているというのに一緒に行かないのか。それはアタシが昔にした悪戯が原因で、だからアイツもアタシを誘わないのだ。

 その悪戯とは、ある日休憩中にアイツが飲むコーヒーにラー油を入れたのが原因だ。

 

『はい、コーヒー淹れておいてあげたよ』

『キモイからその喋り方やめろ』

『素直じゃないんだから』

『事実だろ……ぶぅうううう!!』

『ギャハハハ!』

 

 アタシは当然笑った。盛大にコーヒーを吹き出して、むせているアイツを見てそりゃあもう大笑いした。

 だけど──

 

『……おい……おいって……おーい、聞こえますか~』

 

 アイツはマジでキレて、その日は一切口を聞いてくれなかった。アタシはそれが本当にショックというか、まあ張本人なんだけどゴルシちゃんとしても無視されるのはちょっと傷ついて……。

 なのでそれ以来悪戯は極力控えるようになった。

 

 ただ、アイツはアイツで二度とアタシの前でコーヒーを飲むことはなくなったし、今になってもその散歩とやらに誘ってはくれないのだ。それに不満がないと言えば嘘になるけど、身から出た錆なのでそれを言う権利はない。

 

 でも、最近はちょっと気になることがあって……。

 

「この前使ったばかりだから調子はいいはずだ」

 

 それは昔にいつものように被っていたヘットギアである。実はこれ、ただの帽子というか耳あてではなく、未来のハイテク技術が詰まったすご~いアイテムなのだ。まあこれを被る度に髪をちょっと整えるのが面倒なのが玉に瑕だけどな。

 

 右耳にあるとあるボタンを押す。一見何も変わってないようにみえるが、それは自分で見ているからだ。それを確認するために洗面台に行くと、鏡にはアタシは写っていない。

 

「よし、問題なし」

 

 このヘットギアの機能の一つ、俗に言う光学迷彩である。いくらアタシがゴールドシップと認識されてなくても、アタシという一人のウマ娘は認識されている。別にそれだけなら問題ないけど、これから尾行……偵察するにあたって人目に付くのはマズイ。なのでこの光学迷彩の出番なのだ。

 

 とりあえずこのまま家を出て、アイツが通っている喫茶店に向かうことにした。この時のアタシは何ていうか、少し落ち着きがないような気がする。

 

 これは胸騒ぎだろうか。

 

「ただの杞憂ならいいんだ。杞憂なら……」

 

 それは最近になって敏感になったいわゆる……女の勘というやつであった。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって喫茶店の外。姿を消したまま店の窓ガラスに張り付いていると、店内には驚くべき光景があった。

 

「なななっ!?」

 

 がらにもなくアタシは取り乱していた。それも当然だ。だって、てっきりアタシは一人でいると思ったら、まさか女と相席しているなんて思ってもみなかったからだ。

 

 嫌なことに女の勘は当たってしまった……。

 

 しかも、相席している女は同じウマ娘で、さらに最悪なのがトレセン学園の制服を着ているということだ。

 そのウマ娘は黒く綺麗な長髪をしいて、見るからに大人しそうな娘だ。まさにアタシと正反対な娘。

 

 ただおかしな点もあって。

 

「あんなヤツ、アイツのチームに居たっけな……」

 

 以前アタシはアイツのチームのウマ娘が気になって、今日みたいに姿を消して偵察しに行っていたことがあった。今高等部にいるヤツらは消える前までに見覚えがあったけど、それ以外の子は知らないウマ娘だらけだった。

 

 一応チームだけじゃなくてそれ以外のウマ娘も調査していて、これがまあちらほら居たんだなこれが。

 ちなみに、アイツに好意を抱いているヤツらは全員アタシの要注意人物としてマークしている。しかし、目の前にいる彼女は学園では目撃していない。いや、目に入っていたかもしれないけど、他のヤツらと違ってアイツの近くに来なかった。

 

 とんだダークホースだぜ……。

 

「にしてもあの野郎ぉ……へらへらしやがって……」

 

 実際はただコーヒーを飲んでいるだけなのだが、今のアタシにはそう見えてしまっているらしい。

 

 それにしたって二人とも喋らなすぎだろ……。

 互いに何も喋らずコーヒーを飲んでいるだけ。アタシだったら多分耐えられないのは間違いないが、二人ともアレで何が楽しいんだ ? いや、楽しいとか以前に会話もしないんだったら別々に座ればよくないか? わざわざ一緒のテーブルに座ることないだろ! 

 

 すると、何やら女の口が動いた。アタシは耳を窓ガラスにピタッと押し付けた。いくらウマ娘といえど、窓ガラス越しではそう簡単に声を聴きとれるわけがないが、ゴルシイヤーは分厚い壁だろうと小銭が落ちた音だろうと聞き逃さないのだ。

 

『……トレーナーさん、最近すごく楽しそうに見えます……』

『ん、そう見えるか?』

『……はい』

『多分アレだな。毎日やることが充実してて、チームの娘達と一緒に夢に向かって何かに取り組むのが楽しんだろうさ』

 

 けっ。そこは素直にアタシがいるからぐらい言えってんだ。

 

『本当にそれだけですか』

『どうしてそう思うんだ』

『……理由は自分でもわからないんですけど、何だかトレーナーさんがそう見えるんです』

『まあ、さっき言った以外にも理由はあると言えばあるかな。それにしてもカフェはよく見ているね』

『たまたまですよ。たまたま』

 

 何だろう、ゴルシセンサーが二人の関係にアラートを出しているような気がしてならない。他のヤツと違って、あの女……カフェと言ったか、彼女はとても危険な気がする。

 

『じゃあ、俺はもう行くよ。またな、カフェ』

『はい、また』

 

 そう言ってアイツは席を立ち上がって伝票を持ってレジに向かっていった。彼女の分も払う辺りはちゃんと大人らしいことをしているようだ。

 だが、問題はそこじゃない。

 

「え、なんだよいまの会話。すげえ互いに通じ合ってる感半端ないんだけど……」

 

 しかもまたって……もしかして、二人の関係ってかなり長いのか……? 

 

 熟年夫婦みたいな会話しやがって。アタシ達だってそういう会話をするし、通じ合ってる仲……のはずだ。

 

 アイツが店を出るのを確認すると、アタシはヘットギアを外し髪をおろして、好機と言わんばかりに店に突入した。

 入るなり店員の言葉など耳にも貸さず、ずかずかと店内を歩いてアイツが座っていた席に座ってやった。

 

 彼女は突然やってきたアタシに驚いていた素振りも見せず、ただコーヒーを一口飲んで言ってきた。

 

「……あの、私に何か用でしょうか……」

「単刀直入に聞くけど、さっきの男とはどういう関係だ?」

「……男って、トレーナーさんのことですか?」

「それ以外にいないだろっ」

「……トレーナーさんとは……友達です……」

「と、友達ぃ?」

「……はい。普通の友達です……」

 

 ……普通の友達って何だろ。ゴルシちゃん、友達いないからわかんないや……。

 

 なので本当にそれを鵜呑みにしてもいいのだろうか。仮にも教師と生徒という関係で、年も倍は離れてそうな二人の関係が友達だとは。い、いや、ある意味では一番健全な関係だと言えるのは間違いない。間違いないのだが……何か引っかかるのは気のせいだろうか。

 

 しかし、これ以上聞きたいこともこれと言ってない。目の前の女は何を考えているのか全く読めなくて、アタシが苦手とするタイプだということもある。もっと顔に出るタイプなら色々と突っつけるのだが、こういう感情表現が苦手な子は難しい。

 

 一応これは聞いておくか。

 

「で、お前はアイツのことどう思ってるわけ?」

「……どうと言われても……トレーナーさんはいい人で、私の数少ない友達です。それ以上のことはありません」

「そうかそうか……うん、普通はそうだよな」

「はぁ……?」

「で、アイツのこと好きなのか?」

「……好きですよ。同じ趣味の友達ですし」

「あーはいはい。そういうやつねっ」

 

 これは白ですねぇ、間違いない。こういうタイプは現状で満足している系だな、うん。今の関係がよくてこれ以上の事は求めてないヤツだ。

 

 はあ。心配して損したぜ。きっとゴルシセンサーの誤作動だな。まったく優秀すぎるってのも困ったもんだぜ。

 

「邪魔したな。これはほんの気持ちだ」

 

 席を立ちながらテーブルに道中で拾った五百円玉をおいてアタシは歩き出した。後ろで彼女がなにか言っているのが耳に入るが、もう用はないし関わる気はないので無視をした。それにお金のことなら気にしなくいい。だってアタシの金じゃないからな。

 

 兎に角、とっとと家に帰ってアイツに彼女のことを問い詰めてやらなければ。

 

 

 

 

 

 

「……きれいな人だったなぁ……」

 

 女子寮の帰り道を歩きながら、先程喫茶店で突然現れた女性のことを思い出す。芦毛のきれいな人で、私なんかよりすごく大人の女性って感じがするウマ娘だった。

 

「……トレーナーさんとどういう関係なんだろ。知り合い、なのかな……」

 

 多分トレーナーさんの関係者だというのはあの態度から察するに分かるけど、今まであの人を一度も見たことがないから何とも言えない。トレセン学園の生徒にはあんな人いないし、居たらきっと話題にもなってる。

 もしかしたらアイドルとかモデルさんかなとも思ったけど、そっちでも一度も目にしたことはない。謎が謎を呼ぶ。とても不思議な人だった。ただちょっと変わってるとも思ってしまう。

 

 ほんの気持ちだと言ってもらった五百円玉を掴みながらふと考える。

 

「やっぱり……交番に持って行った方がいいよね……」

 

 確か近くに交番があった気がするから、ちょっと帰り道から逸れるけど落とし物はちゃんと交番に届けないと。

 

「……トレーナーさんの恋人なのかな……」

 

 あんなに取り乱してる辺りそんな感じはしてた。仮に恋人だったらトレーナーさんが楽しそうに過ごしているのも納得できる。

 ただあんな態度を取るぐらいだと、逆に違うんじゃないかなとも思ってしまう。

 

 私にはそういう経験というか、恋愛に関しては鈍いのでよくわらかないや。

 

 でも、もし二人が恋人同士だったとしてもあまり私には関係ない。

 

 だって、私とトレーナーさんは友達だから。

 

「……あ、そうだ。今度トレーナーさんと一緒にコーヒーメーカー巡りに行こ……」

 

 

 

 

 

 







ラスボスを通り越して裏ボスかな?

一応カフェとの関係は前作と大きな差はない設定です。
そして何故かカフェを優遇する癖がある。

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