■剣の主従、再演   作:ゼミル

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心の中のケリィが「僕はね、使命なんて忘れて幸せに平穏を楽しむキャストリアとそれに付き合う村正が見たかったんだ」なんて言ってたら、
シュワちゃんが乱入してきて「だったら書けばいいだろう!」とバッグからチェーンガンを出して脅してきたので書いた結果がこちらになります。





運命の夜、再演(はじまり)の日

 

 

 

 

 

 ――鉄を打つ。鉄を打つ。宙の炉で()を打つ。

 

 最初は右腕が燃えた。次の一振りで左腕が灰になった。

 

 ()()()()()()()。鍛冶師が焔を恐れて堪るかよ。

 

 鉄は肉の体ではなく魂で鍛つものだ。魂の髄まで鍛冶師の(オレ)――千子村正が腕の1本や2本や3本失くしたって槌の振るい方を忘れる筈がない。

 

 ()を打つ。(聖剣)を打つ。ひと振りひと打ちに魂を込めて槌を振るう。

 

 

 

 

 娘っ子が「止めて」と叫ぶ声を無視して聖剣を拵える。

 

 アルトリア・キャスター。選ばれた予言の子。楽園の妖精。その生涯で得た己の全てを捧げて聖剣を生み出す為の生贄。

 

 ()()()()()()()()

 

 鉄を鍛つ。一打ごとに(怒り)を籠めて。(悲しみ)を籠めてる。(憤り)を籠めて。(憐憫)を籠めて。(慈愛)を籠めて、繰り返し繰り返し。

 

 普段はへらへら笑って予言の子に相応しい存在になるんだって言ってた癖に、内心では嫌々予言の子と楽園の妖精としての役割を果たす事を重荷に感じていて。

 

 クソ生意気に見栄を張ってばっかりで、その実本当に欲しい物を求めるのを諦めては空元気で押し隠して。

 

 極寒の『(苦痛)』の記憶ばっかり山ほど抱え込んでおきながら、温かい『(幸福)』の記憶なんてこれっぽっちも持てぬまま、楽園(終わりの地)まで辿り着いてしまった。

 

 ふざけんじゃねぇ!

 

 何が『予言の子』だ、何が『楽園の妖精』だ! 儂やカルデアの連中と同じように嘆き、悲しみ、怒り、苦悩し、喜び、そして笑える、どこにでもいるただの娘っ子じゃねぇか!

 

 挙句が己の何もかんもを犠牲にしてアルトリアそのものを聖剣にする、だぁ? それこそふざけんな!

 

 だのにこの期に及んで「役目だから」とアルトリアは自分から選定の場に自分から入っていきやがった。

 

 

 

 

 ああ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 聖剣を鍛つ。儂がしたい事、鍛冶師としての仕事に己の全てを注ぎ込む。

 

 異星の神やカルデアのマスターに依頼されて斬った張ったの荒事も案外悪くはなかったが、やはり儂にはこっち(鍛冶仕事)が性に合う。

 

 槌を振るうごとに聖剣が形を成していく。完成が近付くと儂に聖剣の創り手としての仕事を奪われたアルトリアが遠ざかっていくのを感じて、そしたら予想していた以上の安堵と嬉しさの念を覚えてしまった自分につい笑いが漏れそうになった。

 

 カルデアの連中の下へ無理矢理戻されていく間、それでもアルトリアは儂を残して去るまいと手足をバタバタさせていた。

 

 

「ま、気にするな。お前さん同様、儂が好きでする事だ。はじめからこういう運命だったのさ」

 

 

 最期まで聖剣を鍛ち終えた時、この霊基は焔となって消え去るだろう。アルトリアともこれでお別れだが悔いはない。

 

 ――――いや。

 

 ひとつだけ、心残りはあった。

 

 近付いた者のが望む存在を水面に具現化させ、手にしようと河に入った人々を水底に引きずり込むドラケイの河に直面した時、アルトリアの望みが具現化されて出現したのは。

 

 

「髪飾りは、作ってやれなかったがな」

 

 

 グロスターの舞踏会用に『予言の子』に相応しい勝負服は急ごしらえで用意出来たが、髪飾りまでは手が回らなかったのが心残りで。

 

 最期のひと打ちで仕事を終えると同時、千子村正の意識と霊基は小さな悔恨を抱えて跡形もなく消滅した―――― ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()

 

 次に千子村正の意識が覚醒した時、彼は街も死体も全てが黒く焼け焦げた知らない地獄(見慣れた光景)の中に居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……何とも()()()()夢を見ちまったぜ」

 

 

 赤毛の少年が目を覚ます。体を起こしてそのまま背伸び。立派な()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その作業台に突っ伏して寝てしまった事に気付く。

 

 寝床で眠った時と変わらず日の出に合わせて目を覚ましたのは年寄りの習性か。

 

 いや()()()()()()()()まだ17歳、バリッバリの若人なのだけれど。

 

 

「桜の嬢ちゃんと大河のヤツが来る前に着替えて朝餉の準備でもすっか」

 

 

 昨晩仕上げたばかりの小物を丁寧に梱包して作業台の引き出しに仕舞い込むと、少年は寝ている間に凝り固まった体のあちこちから音を鳴らしつつ鍛冶場の外へ出た。

 

 

 

 

 

 少年には名前が2つある

 

 ()()の名前は衛宮士郎。故人衛宮切嗣を育ての父に持つ、穂群原学園高等部2年生。

 

 ()の名前は千子村正。ブリテン異聞帯迄の記憶と経験を持つ、妖刀村正の伝説を生み出した稀代の刀鍛冶。

 

 2017年の異聞帯にて、千子村正は衛宮士郎の肉体を依り代に召喚され疑似サーヴァントとして異聞帯で活動を行った。

 

 衛宮士郎はその在り方が千子村正によく似た生涯を送っていたが故に、千子村正の依り代に選ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――その繋がりに目を付けた神か仏が気まぐれを起こしたのかどうかは知らないが。

 

 どういう訳か千子村正は今、衛宮士郎として(未来/過去)を生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

(それにしても()()といい今朝見た夢といい、コイツはもしかして虫の報せってやつなのかねぇ?

 折角切った張ったしなくたって誰もが生きていける平和な御時世なんだ、鉄火場は勘弁して欲しいんだがな)

 

 

 彼の予感はその日の夜、現実のものとなる。

 

 夜の校舎。青と赤の影が繰り広げる剣戟。目撃してしまった少年の口を封じようと襲いかかる青の槍兵。

 

 

「投影、開始――!」

 

「んなっ!?」

 

 

 それを『肉体』が持つ魔術の才能、投影魔術で生み出した刀で迎撃する。

 

 校舎の窓から差し込む月明かりに浮かび上がった槍兵(クー・フーリン)の身のこなし、驚いた顔は、『魂』が持つ記憶(記録)の1ページに刻まれた神様の代理人(賢人グリム)によく似ていて。

 

 

「ただの人の身で俺の槍捌きについてくるたぁやるじゃねぇか!」

 

「そっくりな体捌きをする野郎と知り合いだったもんでな! そいつは槍じゃなくて杖だったがよ!」

 

 

 学校での戦いはわざと派手に校舎内で暴れながら非常ベルを鳴らし――口封じに動くような輩は衆目を集めるような展開は嫌がると前の人生で学んでいたし、今の時代通報さえ出来ればお上があっという間に駆けつけてくれると今世を過ごす間に学んでいた――それに舌打ちをした青の槍兵は撤退を選択する。

 

 

 

 

 

 これで終わりの筈がないと、少年は確信していた。

 

 

 

 

 

 駆け付けた警察と消防隊から彼もまた逃れるように自宅の武家屋敷へと帰り着くなり、土蔵横の鍛冶場へと向かうと、木箱に収めていた未完成の刀身を手にし。

 

 

「やっぱりなぁ!」

 

 

 背後で一閃された西洋調の朱槍を斬り払う。手にした刀に続いて振り返れば、案の定青の槍兵が再び目の前に立っていて。

 

 

「へぇ。口封じにもっぺん襲いに来るってやはり読んでやがったのか」

 

「通りすがりの目撃者をわざわざ口封じに追っかけ回すなんて外道働きやるような連中ってのはな、大概しつこいって相場が決まってるんだよ!」

 

「俺だって主君の命令じゃなきゃ好き好んで外道働きなんてしたかないんだが、まぁ今回はそういう手合いが今の俺の主君なんでな――今度は本気でやらせてもらう」

 

 

 槍兵の姿が消え、赤い閃光が瞬いた。

 

 神速の槍の刺突。今度は完全に防げない。頬と腕がかまいたちにでも襲われたみたいに目で捉え切れぬ速度で切り裂かれた。

 

 ランサーのサーヴァント、クー・フーリン。その身のこなし槍捌きは『魂』が知る平行存在(グリム)どころか学校で直面した時よりも疾く、鋭い!

 

 

(くっそ、サーヴァントの頃と比べてまだ体が成長途中な分追っつかねぇ!)

 

 

 記憶にある賢者の体捌きを参考に槍兵の動きを脳内で高速シミュレーション。魔力回路を起動し身体の強度と反射神経を強化。

 

 そうして致命傷クラスの一撃を寸前に振り抜いた刀身で打ち払うも、防御しても尚衝撃を受け止め切れず、積み上げた木箱や姉貴分が持ち込んだガラクタを巻き込んで土蔵側へと吹き飛ばされた。

 

 おまけに手にしていた刀身までも致命の一撃を受けた代償に、雪の結晶が如く粉々に砕け散ってしまった。

 

 頬の傷から血を拭い、切れた口の中に溜まった血も吐き捨てる。箱が積み重ねられていたせいで隠れていた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「筋は良い。勝負度胸もあるしその歳で敵に刃を振るう覚悟も決まってやがる。もしやお前が7人目なのかもしれねぇな」

 

「ハッ、だったらどうするってんだ」

 

「いや別に。惜しくはあるが目的は果たさせてもらう。その心臓、貰い受けるぜ」

 

 

 来る。気配が変わった。獰猛な獣の気配を漂わせる槍兵よりも恐ろしい空気が朱槍から放たれ出す。

 

 生涯あらゆる刀を観てきた『魂』だからこそ分かる。あれは死そのものだ。目を離した瞬間には宣言通り心の臓腑を槍にくり貫かれてしまいそうで、目が離せない。

 

 

 

 

 不意に、右手が無性に熱くなった。

 

 

 

 

 宙の炉で魂ごと燃え尽きた時と比べれは月とスッポンだが、それでも今にも右手が燃えだしそうな熱を帯びている。

 

 同時に、床の魔法陣が猛烈に輝き始めた。

 

 ()()()()()()()()()()()()と、彼にしては珍しい呆気に取られた表情でそんな感想を浮かべた少年の目の前に、やがて光は人の姿となって残滓を残しながら溶けて消える。

 

 

「7人目のサーヴァントだと!?」

 

 

 青の槍兵が驚愕に顔を歪めながらも、臨戦態勢を取られる前に仕留めるべく朱槍を振り上げた。が、

 

 

「うえっ!? えいっ、やあーっ!」

 

 

 少女の気合いの声と共に人影が手に持つ杖を振るう方が先んじた。

 

 明らかに槍兵よりも頭一つは小柄な体躯でありながら朱槍とぶつかり合った杖、少女の背丈よりも長いそれが拮抗したかと思った次の瞬間、ぶつかり合った部分が閃光を放ち、長身の槍兵の方が蔵の外へ弾き飛ばされた。杖に乗せた魔力を衝撃として解放したのだ。

 

 

「うわーっビックリしたぁ! 思わず思いっきりブン殴っちゃったけど襲ってきたのはあっちなんだからセーフ! ……だよね?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

「あ、そうそう召喚されたんだから挨拶しないと……こほん」

 

 

 少女が振り返る。

 

 顔が向けられるまでのほんのわずかな数瞬の間に、少年の中で記憶(記録)が濁流の如く溢れ返った。

 

 声も、髪の色も、瞳の色も、ずっと持ち歩いていた杖の形状も、というか今着てるドレスとマントと帽子に至っては――

 

 

 

 

「こんにちわ、じゃなくて今は夜だから、こんばんわ! キャスター、アルトリアともうしま――――え゛

 

 

 

 

 召喚された少女――アルトリア・キャスターは少年の顔を目視するなり、名乗りの途中で奇声を上げて固まった。

 

 目を見開き、プルプルと震え始め、やがて黒の手袋に包まれた手で少年を指差し、

 

 

「ちょ、え、ええええええええええええ村正ぁ!? あれっでもあれぇ!? 何か村正、人間になってる!?」

 

「お、おう。儂としても説明が難しいんだが――おいちょっと待て」

 

 

 少年もまた少女を指差し、

 

 

「お前さんまさか、()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

「そうだよ! 村正だって宙の炉で消えちゃったのと同じ村正なの!?」

 

「おうよ。一世一代魂を懸けた大仕事をやらせてもらった張本人さ。ありゃいい仕事させてもらったぜ」

 

 

 あっさりと、ハッキリと言い切ってやる。

 

 すると何故か殴りかかられた。解せぬ。文句を言おうとしたが、勢い余って胸に飛び込んでくる形になったアルトリアが、顔を真っ赤にして目に涙を浮かべていたせいで呑み込まざるをえなかった。

 

 

「バカバカバカバカ! 村正のバーカ! 勝手に人の役割奪って! 十分助けて貰ったのに自分の命まで灰にしちゃって! 目の前でそんな光景見せられた側の気持ちにもなれよぅバカーっ!!」

 

「人の事そんなバカ呼ばわりすんじゃねぇやい。ま、刀バカって意味なら否定しねぇがよ」

 

 

 蔵の外から剣呑な闘気を感じた。青の槍兵が誘っているのだと理解して、少年は新たな刀身を投影する。同じく気配を感じ取った少女も蔵の外へ顔を向けた。

 

 

「すまねぇが今は少々野暮用でな。すぐ終わらせてくっからここで待ってな」

 

 

 柄も柄もない、剥き出しの刀身だけを手に戦いの場へ出て行こうとした少年の腕を、少女の手が握って引き留めた。

 

 

「ダメだよ村正! よく分かってないけど今の村正は人間なんでしょ!? もうサーヴァントじゃないんだからあっさり死んじゃってもおかしくないんだよ!」

 

「それを言ったらカルデアのマスターも前線で体張ってたぜ」

 

「それは、彼にはマシュが居たし……とにかくダメ! 人間になった村正はもう戦っちゃダメ! ダメったらダメー!」

 

「そもそも命を()りに来てやがんのは向こうの方だ。死ぬのは別に怖くねぇが、だからってハイそうですかと殺られるつもりもさらさら――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女が叫んだ。それは懇願だった。魂からの、本心だった。

 

 ああそんな。まさか彼女が――――

 

 

「やだ、やだよう。せっかくまた村正に会えたのに、いなくなっちゃやだぁ……」

 

 

 それこそ人として生まれたのではない、異聞帯のブリテンを救う為に星の内海から送り込まれた妖精であるアルトリア・キャスターのような一部の例外を除けば、英霊の座に招かれた者は大なり小なり歴史に名を遺した偉業の達成者であると当生(衛宮士郎)以前は彼もまた英霊の端くれだった少年は知っている。

 

 今のアルトリアの姿を見て、それが曲がりなりにも座に登録された英霊であると見抜けるものはどれだけいるだろう。

 

 そこいらの魔術師など比較も出来ない膨大な魔力を有する星の内海から生まれた妖精であり、神造兵装たる聖剣そのものであるアルトリアが、今。

 

 涙を流している。駄々をこねている。親と離れたくない幼子のように泣きじゃくっている。

 

 

 

 

 

 その姿に、少年(老人)は。

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………ククッ、ハッ、ハハハハハッ!」

 

 

 戸惑うのでもなく、慰めるのでもなく。

 

 心底嬉しそうに、笑い声を漏らした。

 

 

「なんだよう。なんでそこで笑うんだよう、ばかむらまさぁ」

 

「嫌なに何だ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、お前さん」

 

 

 旅の間、ずっと他人の顔色を気にして強がって、笑顔の下に傷だらけの心を隠して、本当の気持ちを抑え込んで。

 

 周囲から『予言の子』として()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に振舞って、だけど彼女自身が望んだ事は周囲が許してくれないからと諦めて。見ているこっちが切なくなるぐらい本心を露わに出来ずにいた、あのアルトリアが。

 

 こうして激情のおもむくままにに泣いている。叫んでいる。己を曝け出している。()()()()()()()()()()()()()

 

 それが何より、あの旅の彼女をずっと傍で見ていた(村正)には嬉しかったのだ。

 

 

「――ああ、そんな姿見せれるようになれたって事は、ちゃんとお前さんも自分の役目を終いまで果たし終えれたんだな」

 

 

 カルデアのマスターと一緒に役目を果たした彼女(アルトリア)はもう、『予言の子』からも『楽園の妖精』の使命からも縛られていないのだと理解できて、少年はもう1度笑った。

 

 ()()()

 

 

「ようし、だったら面倒事はさっさと片付けちまうとするか!」

 

「待って待って話聞いてた!? 死んじゃうかもしれないから戦うなって言ってるの聞いてんのか村正ァ!」

 

「あぁん? 死ぬつもりはねぇよ。今世はまだまだ生き足りてねぇんだし、他にもしたい事が出来ちまったからな。今」

 

 

 グロスターで勝負服と一緒に贈った帽子の上から、くしゃりと金色の頭を優しく掴んで視線を合わせた。

 

 

「今世は儂が生きてた時代ともお前さんが生きた妖精國とも大違いだ。飯は美味いし物は豊かで隣の村同士が奪い合ったりする必要もなきゃ野盗に村を焼かれる心配もしなくていい。罪を犯せばお上がちゃんと動いて罪人をひっ捕まえて裁いてくれる。何よりお前さんでも楽しめそうな代物がこの時代には山ほど溢れてるときたもんだ」

 

 

 涙で濡れた彼女の瞳にニヤリと年不相応な、孫を可愛がる年寄りじみた男臭い笑みが反射する。

 

 

「折角来たんだ、少しぐらい観光と洒落込んでもバチは当たらねぇよ――()()()()()()()お前さんが満足するまで付き合ってやるさ」

 

「――――――――あ」

 

 

 アルトリアの口がポカンと開いて固まった。

 

 

「その為にも野暮な連中は先におっぱらっとかねぇと()()()()()()()()の邪魔になっちまう。そんなのはお前さんも嫌だろう?」

 

「っ、う、うん、確かに! よーし何か元気湧いてきた!」

 

 

 ぐしぐしと乱暴に服の袖で涙を拭って、アルトリアは強気な笑顔を浮かべた。目元は赤くなったままだがそこに以前滲んでいた暗さや抑圧された負の感情は、ない。

 

 ああ、そんな顔もできるようになったんだなと、彼はまた嬉しくなって。

 

 

「そうそう。そうやって笑ってるのが1番可愛いよ、お前さんは」

 

 

 ついポロリと本音を溢したら、アルトリアの反応は覿面だった。目元どころか顔全体、耳の先まで別の意味で真っ赤っかに染め上げる。

 

 

「そそそそそういう所が村正なんだぞ村正ァ!

 あーもうこーなったら私も手伝うからさっさとあの怪人青タイツ一緒にやっつけちゃおう! 律義に私達が出てくるの待ってくれてるみたいだし!」

 

 

 リンゴのように赤く染まった顔を見られまいとするかのように早足で蔵の外へとアルトリアが向かおうとする。

 

 そのまま少年の横を通り過ぎてしまう刹那、少女は足を止めて手を伸ばした。

 

 

あの時(妖精國)とは立場が逆になっちゃったけど……また一緒になれたね。うん、すっごく嬉しいや」

 

 

 小さな手が剥き出しの刀身を持たぬ少年の左手をそっと包んだ。

 

 

「今度はずっと一緒なんでしょ、村正」

 

 

 不安でもなく、怖れでもなく、心からの信頼がそこには在った。

 

 指と指を絡め合わせてより固く結びつく事で、彼は問いかけへの答えとする。

 

 

 

 

 

「応よ。最後の最後まで、お前さんに付き合ってやらぁな」

 

「――――うんっ! それじゃあ行こう! 一緒に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして少年と少女は戦いの場へと再び身を投じる。

 

 怖れるものなどもう、何もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其処に至るは幾多の旅路、我らは聖剣の鍛造者。

 

 

 

運命の夜、再演(はじまり)の日――――聖剣の主従は再び、今此処に。

 

 

 

 

 

 

 

 




     *      *
  *     +  つづかないです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *




キャストリアがSNに召喚されてる作品は既出でも村正おじいちゃんも同時エントリーしてる作品はまだな筈だからスキマ需要を狙っていくスタイル。

きっとただの女の子になれたキャストリアは我慢せずに泣き喚けるようにも成れたんだろうな…という個人的願望。
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