これは
「ところで、なんだ。サーヴァントになってもその衣装で登場たぁ、そんなに気に入ってくれてんのかい?」
「んー、気に入ってるのはその通りなんだけど、『あ、何か召喚される気配がする!』って感じがした時にマーリンがね、『
「そ、そうかい……お節介焼かれちまったかねぇ」
「? どうかした?」
「何、虫の知らせってやつも本当にあるもんなんだなと思っちまってな。いや魔術師の知らせか?」
「???」
「ちょっと待ってろ」
鍛冶場の中に消えたかと思うと、すぐにアルトリアの下まで戻ってくる村正。ちょいちょいと少女を手招き。
「ほれ、ちょっと頭出せ」
「ふえ?」
言われて素直にアルトリアが頭を下げれば、彼女の頭に乗っかった帽子がひょいと取り上げられた。
何をするつもりかと一瞬顔を持ち上げかけたところに「じっとしてろ」と発した村正の表情が妙に真剣で(あと、顔が思った以上に近付いていたのに驚いたのもあって)、慌てて下を向き直すアルトリアの頬はほんのり赤みを増していたり。
(うわぁ村正の手が私の髪を触っちゃってる……!)
村正のゴツゴツとした鍛冶師の手がアルトリアの前髪に触れた。ぶっきらぼうな印象とは真逆の繊細な手つきだった。
「ほれ、その目で見てみな」
目的の物と一緒に鍛冶場から持ってきた手鏡でアルトリアの顔を映す。
その瞬間、アルトリアは一瞬呼吸すらも忘れた。
「あ――これ――」
――それは、春の白い花を模した髪飾り。
ティンダジェルの鍛冶屋で出会って、欲しかったけど村の妖精にどうせ取り上げられるからと諦めて、それでもドラケイの河で流れてくるぐらいには未練タラタラだった、初めて望んだ自分へのご褒美。
留められた髪飾りは、月光を浴びて春の日差しのように優しく輝いた。
「グロスターでの御披露目は急だったもんだから、衣装は間に合ってもこういう小物まで用意出来なかったのが心残りだったもんでな。
河で見かけたのを思い出せる限り再現してみたんだが――ま、これで儂としてもブリテンでの心残りにケジメがつけられてスッキリできるってもんだ」
満足げに村正の口元が歪む。
その時村正が浮かべた笑みは普段の笑い方、眉根に皴が寄った年寄り臭さを感じさせるそれではなく、険を全く感じさせない柔らかな、まさに年頃の少年そのものの笑顔だった。
「村正……」
――楽園の妖精であるアルトリアは妖精眼と呼ばれる特性を持つ。
妖精眼は嘘を見抜き、意志ある者が持つ本心を妖精眼の持ち主へと視せてしまう……当人が望まなくても、強制的に。どれだけアルトリアが望まなくとも、拒みたくとも。
そんな彼女だからこそ分かってしまう。
村正の言葉が、想いが。
――どれもこれも虚偽虚構を一切含まぬ本心であると。
心からの本音だけを、アルトリアにぶつけているのだと。
だから、今の村正がアルトリアへ向けた少年そのものの笑顔も本物で。
――それが何より、
あと付け加えるなら。
嘘の仮面に慣れ過ぎた彼女にどこまでも真っ向勝負の剛速球をぶん投げてくる村正、その中でも妖精國時代含め初めて見せた、爽やかで優しい少年の笑顔は、アルトリアには刺激が強過ぎた。
「ううううううううう~~~~~~!」
念願の夢が叶って嬉しいやら。村正の感情とか笑顔とかが眩しくてくすぐったいやら。欲しかったものが村正にはバレバレだったのが気恥ずかしいやら。
感情にくべられた燃料が薪どころか真夏に放置されたガソリン並みに大炎上して、アルトリアの顔と頭は本当に燃えているみたいに熱くなってしまう。今すぐドラケイの河に頭突っ込んで冷却したい気分だ。
自分が今どんな顔をしているのか分からないし知りたくもない。ついでに何となくだが村正にも見られたくない。顔を隠すのに手頃そうな帽子も今は村正の手の中だ。
ちょうど顔を隠すのに良さそうなのが目の前にある。
「うおっと?」
だからアルトリアは、今度は自分から村正の胸元に飛び込む事で顔を隠した。
学校から自宅に辿り着くまで2度青の槍兵の襲撃を退け死線を潜り抜けたばかりだからだろう、学生服姿のままの村正の胸元からは汗の臭いがして、服越しに肉の躰が放つ熱も感じた。
妖精國ではこれまた無縁だった男性との濃密なスキンシップである。しかもアルトリアの側からだ。
(うわー! うわー!? うわわわわー!? 男の子の胸の中ってこんな感じするんだー!)
アルトリアの頭の茹り具合が1ランク上がった。
(服の上からだと判りにくかったけどやっぱり村正の体ってしっかり鍛えてある! 筋肉かたーい! 匂いちょっとツンッとしてるけど癖になりそうな匂いかも?)
くんかくんかすんすん。無意識に鼻の辺りを更に強く村正の胸板に押しつけてみる。
「おーい? 嬢ちゃーん。聞いてんのかーオイ」
笑顔から一転、じゃれつくのに夢中なわんこに呆れた飼い主みたいな顔になった村正が声をかけるが胸の中の少女には届いていない様子。
仕方ないと言いたげに声掛けを止めた村正は、しばしの間少女が満足するまで付き合ってやる事にした。何だかんだでアルトリアには妙に甘いのがこの男なのである。
――重なり合う影を月だけが見守る冬の夜であった。
・千子村正in衛宮士郎
擬似サーヴァントとして降臨したアルターエゴ・千子村正が妖精國までの経験した記憶そのままに、依代だった衛宮士郎の精神を上書きする形で憑依してしまった存在。
憑依のタイミングが第4次聖杯戦争終了直後に発生した大火災だった点とその際目撃した聖杯の泥から発する呪いから、幼い精神が災害のショックと呪いに耐え切れず魂が死んでしまった肉体に依代になった縁を逆流する形で憑依したのではと村正は推測している。
切嗣に助けられて聖剣の鞘を埋め込まれたりそのまま彼の養子になるまでの経緯はSN士郎と同様。若干関係性は違えど食事目当ての虎の襲撃は受けているし巨乳系後輩が通い妻しているのもそのまま。
ただし中身がある種のサバイバーズギルドに囚われながらも老年期まで生きて大往生した戦の世の刀鍛冶なので、『正義の味方』という義父の
前世では存在しなかった未知の金属や未来の鍛造技術とかそれを使って作った作品とか知っちゃったら職人としては再現したくなるからね仕方ないね!
召喚用魔方陣が存在する蔵の隣に増設した鍛冶場は数年前にできたパトロンからの出資で建てたもの。
当初は虎の実家経由で現代でも活動する数少ない鍛冶場を紹介してもらいを軒を借りて活動していたが、当時出せるだけの技量を注いで打った作品が偶然
パトロンからの無茶振りな依頼に文句を言いつつ、村正も村正で期待に応えては過剰なレベルの報酬や妙に充実したパトロンの刀剣コレクションを堪能してるので実際Win-Winな関係を結んでいたり。
今作でアルトリアに贈った髪飾りの材料もパトロンから提供された装飾用の端材や報酬に押し付けられた宝石類をふんだんに使ったガチレベルの芸術品という裏設定有。でもアルトリアには秘密。
穂群原のブラウニーならぬ穂群原の親分。ぶっきらぼうで
ただし外道働きの類は絶許マン。中身が殺し合いデフォの時代出身者なので容赦なく実力行使するタイプで逆鱗に触れた時の啖呵と暴れっぷりは
部活は基本帰宅部。時折生徒会長に頼まれて便利屋の真似事をしたり、前世の経験から弓道部に出入りして道具のメンテナンスを行ったりしている。
仕事に手が抜けない性分だったせいで結果原作SNと同じく赤の弓兵と青の槍兵の戦いを目撃してしまい、そして――――
彼の願いは既に叶った。最早彼に何の悔いもない。
ただの女の子になれた
――この世全ての悪ですらも一切両断を果たしてみせよう。
※前世では刀以外にも槍や弓に使う鏃も作っていた事から今作では弓の扱いにも一定の知識・技能を持つと推測。
余談ですが槍ニキはアルトリアの魔術を
ランサーが死んだ! この人でなし!(まだ死んでない)
キャラ完全崩壊な蛇足があるかもしれないし封印するかもしれない。
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むしろR17.9まで逝け