ウルトラマンアルラト   作:リョウギ

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第1話 「力を継ぐもの」

長老曰く

この星に眠る縞瑪瑙の祠には大いなるものが住まうという

 

だが、今はもう会うことはできないらしい

 

どうして?と誰かが問う

 

長老は答えた

大いなるものたちはもうこの星に愛すものがいなくなったのだと

 

我々はもう彼らには愛されていないのだと

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ーギャァァァァァァオオオゥゥゥゥ!!!

 

恐竜のような姿の巨獣が暴れ疾走していく

鬱蒼としげる樹木や植物を薙ぎ倒しながら駆けるそれに複数の影が追従していく

 

ーヒュンッ!!

 

追従する影から放たれる矢が巨獣に突き刺さり、減速していく

 

「ハァッ!!」

 

茂みから一人の影が飛来する

 

ーギャァァァァァァオオオゥゥゥゥ!!!

 

巨獣の頭部から血液が吹き出し、巨体がよろめく

茂みから更に槍が何本も突き出され、巨獣の命を摘み取った

 

 

「ゴルゴスを狩るのは最早造作も無いか…流石は俺たちの中でも最強の戦士だなラフト」

 

毛皮をなめした簡素な服を纏う男が巨獣から槍を引き抜きながら降りてきた青年に声をかける

 

「……お世辞はいい。早く村に持って帰ろう」

 

顔に散った返り血を拭いながら青年ーラフトは興味なさげに告げる

それを見て肩を竦めた男は倒れた巨獣ーゴルゴスの遺骸を切り崩し運ぶ作業に加わった

 

 

一面に広がるジャングルが開けた場所

そこにその村は存在していた

 

木と土で作られた簡素で小さな「家」の並ぶ村

村の中では今しがた手に入れた「獲物」を解体し、毛皮をなめし、内臓や肉を加工している

 

その村の片隅にある家の前でラフトは一人、槍を磨いていた

 

「ラフト。此度の狩りも見事であったと聞く。流石の腕前だな」

 

複雑な構造の杖を手にした老人が現れ、ラフトに声をかける

ラフトは槍を磨く手を止め、老人を見上げる

 

「……俺はただ俺の仕事をしただけです」

「ゴルゴスほどの獣を狩れる者はそうはいない。狩りという仕事こそあるが、そなたの腕前は唯一にして無二の物なのだ」

 

老人の言葉にラフトは特に答えない

そのラフトの目が村に見かけない人物がいくつかいるのを捉える

 

怪我を負ったもの、手足の一部を失ってぐったり横たわるもの

動かなくなったものにすがりつき泣き喚くもの

 

「……長老、彼らは」

 

ラフトの視線を追い、言葉の真意を汲んだ長老は答える

 

「獣災だ。命からがらこの村まで逃げ延びてこれた者たちを今保護している。運が良かった……」

 

獣災

長老の口から語られた言葉にラフトが顔をしかめる

 

「この村も、離れねばならぬ時が近いのやもしれぬ。村の者にも移住の準備を進めさせている」

「移住……ですか」

 

ラフトを振り返らず長老が苦い表情を見せ、ため息をこぼす

 

「ラフトよ。できぬことを考えるのはよせ」

「何もしないまま不可能とは思えません」

「不可能なのだよ。獣災は文字通りの災いだ……嵐や地震に、我々イスの民が抵抗することなど不可能なのだ」

「……イスの民が不可能ならば、大いなる存在の力なら…」

 

ラフトは村の近くに聳える小山を見上げる

山肌から岩造りの構造が見え隠れする、妙に整った稜線をした山を

 

「それこそあり得ぬのだよ。大いなる存在は…もうこの星にはいない。彼らはカダスを…我々を見捨てたんだ…」

 

寂しそうに告げる長老はラフトを振り返らずに立ち去っていく

ラフトは、唇を噛み締め拳を握りしめていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

夜の闇を染め上げる炎

 

彼の目にまず映ったのはそれだった

 

否、それしか映っていなかった

 

ーグギャォォォォォウウウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

歪な鳴き声が響く

共に、炎の海からは夥しい人々の悲鳴がこだましている

 

炎の海からそびえ立つ巨体が彼を見下ろしている

 

獣災(じゅうさい)・ゴルザ

 

彼らーイスの民にそう呼ばれる存在がその巨獣である

 

緑に覆われた惑星・カダスに生きる種族ーイスの民

作物を育て、岩を削り加工し、獣を狩り自然と共に生きる民

そんな彼らですら『災い』と呼ぶしかない存在

 

それこそが『獣災』である

 

ーグギャォォォォォゥゥゥ!!!

 

ゴルザの頭部から放たれた赤い光線が炎の海を更に焼き払う

断末魔の悲鳴がこだまする

 

逃げ惑う者に炎が襲いかかる

立ちすくみ、獣災をただ見上げる者が潰されていく

家に誰かを、何かを求めて入ったものが潰れた家と共に炎に呑まれる

 

その惨状から辛くも逃げ延びた少年はただそれを見つめることしかできなかった

 

ーラフト!!

 

その炎の海から2人の人物が飛び出す

 

ー父さん!母さん!!

 

傷だらけになりながらこちらに走る父と母に安堵したラフトの顔が絶望に染まる

 

ゴルザがこちらに頭を向け、頭部を赤熱させていたのだ

 

ーやめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

叫び声が爆音にかき消される

 

爆発、爆炎、爆風

 

少年の小さな体は吹き飛ばされる

 

目前にいたはずの父と母は骨一つ、肉一欠片も残さず消えていた

 

ーグギャォォォォォゥゥゥゥゥゥ…‼︎

 

ゴルザは少年には見向きもせずに炎の海と化した村を踏み潰し、夜の闇へと消えていった

 

ー待て、待てよ…‼︎待て!!!

 

少年が叫ぶ

だがその声はどこにも届かない

 

崩れ落ち、項垂れる

 

その眼前にそれは現れた

 

白く輝くローブを纏う何者か

 

少年を見下ろすそれはローブの裾から何かを少年の目前に落とした

 

小さな杖にも見える不思議な道具

石でできたそれには精緻な彫刻が施されていた

 

少年はそれを手に取る

 

『 ラフト 』

 

白い人物が女性のような声を上げる

 

『 お前 は 光 か それとも 闇 か 』

 

 

ラフトが跳び起きる

じっとりと脂汗を滲ませ、荒い息を弾ませ混乱する頭を落ち着かせる

 

「夢……か……」

 

ラフトは頭を抱え、汗を拭う

この村に来てからずっと見る悪夢

前に住んでいた村が、当たり前のようにそこにいた両親がどちらも奪われたあの夜の記憶

 

今でもこびりついて離れない獣災のおぞましい咆哮と、村のみんなの悲鳴が頭にこだまする

 

ラフトは手につけた組紐装飾をなぞる

 

その時、ラフトは異変に気づいた

 

「これは…」

 

右手に握っていたもの

それは、夢であの白い女から渡された謎の石器だった

 

「なんで……こんなものを…」

 

それを見つめていたラフトの脳裏にある情景が浮かぶ

村の側の小山、遺跡が眠ると長老がかつて語っていた山だ

 

「……」

 

しばらく戸惑っていたラフトだが、意を決して立ち上がった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ラフトは槍を片手に、石器のナイフを腰にいくつか括り付けて山道を進んでいた

 

目指す先はあの小山

大いなる存在がいた遺跡

 

ただ夢で見ただけ

それでも、何故か現実にも現れたあの石器と頭に浮かんだ情景

それを無視することはラフトにできなかった

 

「…この山…一体なんなんだ…?」

 

山肌から見えていた遺跡群は山の中から見るとより違う姿に見えた

 

ただ岩造りではない。いくつかは更に硬い材質で作られている

それにそこに彫られている文字や模様はイスの民たちが使う文字には似ても似つかなかった

 

「古代文明の文字やら遺跡は妙なものが多いな……」

 

ラフトが今いる村だけでなく、イスの民は遺跡はただあるものとしか認識していなかった

時に一部の石材を削って利用したり、家代わりに使ったりということはあれ、それを詳しく調べようというものはいなかった

 

ーグルァァァァァァァァ!!!

 

山道の前方から咆哮が響く

 

(この鳴き声は……)

 

茂みに身を隠し、ラフトが鳴き声の方向へ近づく

 

そこにいたのはゴルゴスよりも一回り小さい獣の姿

アルザスとラフトたちが呼ぶ獣だった

 

その眼前には一人の人間の姿が見えた

 

「世話の焼ける…‼︎」

 

ラフトは茂みから飛び出すとアルザスの肩口に槍を突き刺し、その体を押し倒す

 

ーグルァァァァァァァァァァ!!!

 

暴れだすアルザスの首に腰から取り出したナイフを突き立て、トドメをさす

 

「大丈夫…か?」

 

襲われていた誰かを助け起こす

襲われていたのは少女だった

ラフトや彼の村の人々よりも装飾の多いゆったりとした服を纏う少女

長い灰色の髪に病気のように白い肌と赤い瞳が目立つ

 

「あんた……エルの民か?」

 

少女は小さく頷く

 

エルの民

カダスに住まうラフトたちイスの民とは異なる種族

 

「私はケイ。助けてくれてありがとう。イスの民の……」

「ラフトだ。こんなところで何をしてる?俺たちも寄り付かないような山なのに…」

「この山の遺跡を調べたかったの」

 

ケイと名乗る少女は簡潔にそれだけ答える

 

「遺跡なんて調べてどうするんだ?」

「調べてみない限り何が役に立つかはわからない。エルの民や神託でも、得られない知識があるかもしれない。そういった知識が、これから必要になるかもしれないから」

 

ケイは服についた土を払うと山頂へと進み始める

ラフトは一つため息をこぼすと同じ道へ足を向ける

 

「……ここからは私一人でいい。助けはいらない」

「向かう場所が同じだけだ。ついでに、さっきみたいな獣が現れたら守るくらいしてやる」

「向かう場所が同じ…あなたも遺跡を?」

 

ケイが立ち止まり、ラフトをきょとんと見据える

 

「自然と共に、自然のままに生きるイスの民が、どうして…?」

「理由は俺にもわからない。ただ、こいつに呼ばれた気がした」

 

ラフトが懐から石器を取り出す

それを見たケイが目を丸くし、その手を石器ごと掴む

 

「ど、どうした…⁉︎」

「……これは…これをどこで?」

「どこって……いつの間にか、持ってたんだ…」

「……詳しく聞かせて」

 

ケイの真剣な様子に気圧され、ラフトはひとまず半分ほど崩落した遺跡を見つけて示す

 

「そこで話す。立ち話も面倒だろ」

 

 

「夢の人物……光か、闇か……」

 

ラフトから聞いた夢の話を脳内で整理しているのかケイがぶつぶつと呟きはじめる

 

「………」

 

ラフトは興味深そうに石器を眺めるケイを不思議そうに見ている

 

「……それ、そんなに貴重なものなのか?」

「これ自体が貴重かはわからない…でもこれと同じ形のものを、私たちに伝わる聖書が記録していた」

「せいしょ……ってのはわからないが…これがあんたらのとこでも見られてたかもしれないのか…?」

 

ケイが頷く

 

「聖書曰く、これはエルの民とその神が導くべき人類を惑わせる悪魔が使っていた道具」

 

「その悪魔の名前は、たしか……《ウルトラマン》」

「ウルトラマン……?」

 

その言葉は何故かラフトの耳に馴染んだ

ケイから石器がラフトに返される

 

「いいのか?その悪魔とやらはなんなのか知らないが、聞く感じだといいものには思えないが…」

「私は、エルの神を完全に信じていないの。みんなの前ではこんなこと言えないけど」

 

ケイが立ち上がる

 

「導くことがエルの民の使命なら、私は導くために恥じない存在になりたい。そのためにも、この星の、この世界のことを知らなきゃならないの」

 

ケイのまっすぐな視線を受け、ラフトも立ち上がる

 

その手が触れた壁が光り、二人の背後から大きな音が響いた

 

「なんだ!?」

 

ラフトがエルを庇いながらナイフを取り出し警戒する

 

大きな音の正体は壁が動き出し、開いた音だった

 

「遺跡への入り口が……開いた……?」

 

訝しむケイの隣でラフトは手にした石器と遺跡の奥を見比べる

 

「今、この奥から何か気配がしたというか…呼ばれてるのか…?」

「呼ばれてる……ならこの遺跡の奥には…」

 

何か思い当たることがあったのか、ケイは突然遺跡の奥に向かって駆け出す。ラフトはそれを慌てて追う

 

二人が遺跡に入り、中の暗闇に溶け込むと共に扉は静かに閉じられた

 

 

遺跡の内部は高い天井の石造となっていた

所々に発行する岩が壁にはめられ、通路や壁を照らしていた

 

「こんなデカい遺跡、初めて見た…」

 

ケイの遺跡観察にさほど興味があったようでもなかったラフトも、内部の構造や壮大さには驚きを隠せないようだ

 

一方ケイは遺跡の壁画を全景が見えるように遠目に眺めていた

 

「これは……」

 

壁画に描かれていたのは、巨人とそれが守る多くの人々の壁画だった

 

人々のために立ち上がる巨人

巨大な獣に立ち向かう巨人

暗黒に塗り潰された「何か」に闇に引きずり込まれる巨人

光り輝く姿となり、暗闇を祓う巨人

 

そしてそれとは別にある壁画には別の巨人が描かれていた

 

巨人と相対する赤い鎧を纏う巨人

巨人を背後から追撃する武器を持つ青い巨人

鞭のようなもので倒れた巨人を打つ金色の巨人

そして犬のような獣と並ぶ巨人

 

「これは……ゴルザ……⁉︎」

 

ケイが眺める壁画に覚えのある姿と似た獣を目にしたラフトが壁画に触れる

 

「……こいつは、ゴルザと…獣災と戦っているのか…」

「恐らくそう。人々を守るために…」

 

ケイが顎に手を当て考え込む

 

(私たちの神々が残す記録とは違う…この巨人が《ウルトラマン》ならば……彼は人々を惑わすどころか救っている……)

 

巨人の壁画を見上げ、その胸付近に描かれた小さな人を見る

ラフトの持つ石器と似たものを持ち掲げる人物を

 

(私たちの記録と、ここの記録……正しいのはどちらなの…)

 

考え込むケイをちらと見ながらラフトも壁画を見比べていく

 

『 ラフト 』

 

その耳に聞き覚えのある声が響く

見ると更に奥へと続く通路に一人の人物が立っているのが目に入る

 

「お前…‼︎」

 

踵を返し、奥へと消えていくその人物ー夢に現れたローブの人物をラフトは追いかける

 

通路を更に走り抜けたその先、行き止まりに立つローブの人物の前にそれは鎮座していた

 

「こいつは…壁画の…‼︎」

 

光る石に照らされたそれは巨大な石像

しかし象られているのは人間ではなかった

胸に楕円形の構造、体の各所には鎧、少し切長の目が目立つ頭部は右半分が砕けていた

 

壁画に描かれた巨人とよく似た存在がそこにあったのだ

 

『 お前 には 資格 が ある 』

 

いつの間にかラフトの方を向いたローブの人物はラフトの手元を指す

握られた石器、その先端の構造の石が剥がれ光り輝く内部が覗いていた

 

「資格……?なんだそれは…お前は…この巨人はなんなんだ⁉︎」

『 彼 は アルラト 』

「アルラト……?」

 

ローブの人物が巨人を振り返り見上げる

 

『 ある巨人 は 光 となり ある巨人 は 闇 を 選んだ 』

 

『 アルラト は まだ どちらでも ない 』

 

『 この星 と お前 も また 同じ 』

 

「この星と俺たちと同じ……?」

 

「ラフト‼︎」

 

ローブの人物の言葉に耳を傾けていたラフトだが、ケイの呼びかけに我に返る

追いついてきたケイが息を切らせながらも目の前の光景に目を見開く

 

「巨人の石像…こんなものが……」

「…ケイ、お前にはあいつの言うことが理解できるか?」

「あいつ…?」

 

ラフトが指す方を見たケイがようやくローブの人物に気づく

 

「あなたは、何者?」

 

ケイの問いにローブの人物が応える

 

『 フレン 』

「フレン……ここにどうやって入ったの?」

 

更なる問いに、フレンと名乗った人物は応えず遺跡の天井を見上げる

 

『 時 は 待ってくれない 』

 

ーズンッ!!!!

 

その言葉に呼応するかのように地響きが遺跡を揺らす

よろめくケイをラフトは支えた

 

「この地響き……まさか……‼︎」

 

 

地上 ラフトが住む村

 

いつも通り、毛皮をなめして服や布を作る者、干し肉を回収したり新しく干す者、収穫した野菜を集める者が往来する中、中央の家から姿を現した長老は空を見上げる

 

「ラフトのやつどこに行ったのでしょう……今日は大型獣の狩りの予定は無いですが、心配ですね……」

 

男が長老に話しかける

長老は何か知っているかのような表情を見せるが何も語らない

 

「あやつめ、まさかな……」

 

ーズンッ!!!!

 

その時、大地が大きく鳴動し村が揺らされる

 

「なんだ!?」

「この揺れ…まさか…‼︎」

 

ードゴォン!!!

 

何かに長老が気づくと同時に大地が轟音と共に捲れ上がる

 

ーゴォォォォアァァァァァァ!!!

 

捲れ上がり裂けた大地からマグマと共に巨大な何かが姿を現す

 

ジュウジュウと茹で上がるような音を鳴らす冷え固まったマグマの体表に灼熱を閉じ込めたような赤い一本角を持つ恐竜のような巨獣

 

獣災・デマルザ

 

そう呼ばれる『災厄』が姿を現した

 

「獣災……‼︎ 皆に知らせよ!!この村は捨てる!!」

 

長老が側にいた者たちに呼びかけ、助け起こす

 

「長老!!村の外に焼けた岩が…‼︎ それのせいで、森に火が…‼︎」

 

憔悴しきった様子で走ってきた男の報告に長老が唇を噛み締める

 

男の言う通りデマルザの足元から火の手が起こり、側の木々に燃え移る。森に覆われたこの一帯に灼熱のマグマを纏うデマルザが現れたのだ。この一帯が火の海になるのは最早時間の問題だった

 

「長老!!」

 

皆が助かる術をなんとか考える長老の耳に声が響くが早いか、デマルザの喉が赤熱、その口から高熱のマグマが噴き出し、村の端から側の小山へと薙ぎ払われる

 

ーきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

降り注ぐマグマが村に火の手を放ち、悲鳴が上がる

 

長老が見上げた小山の先、デマルザの熱線で焼け落ちた山肌からは縞瑪瑙に輝く構造がーこの星の人々には馴染みのない構造が剥き出しになっていた

 

ーゴォォォォアァァァァァァ!!!

 

現れた『ピラミッド』を見たデマルザはまるで喜んでいるかのような咆哮を上げた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ーギュウゥゥゥゥゥゥアァァァァァァ!!!

 

遺跡から脱出ようと通路を振り返った二人の前に、遺跡を崩しながら巨体が現れる

 

甲虫を二足歩行にしたような巨大な虫に似た黒い獣

大きな前脚を腕のように振り回すそれは、赤い複眼で二人を睨む

 

「ベスカーラ…‼︎」

「獣災か⁉︎こんな時に…‼︎」

 

ーギュウゥゥゥゥゥゥアァァァァァァ!!!

 

ベスカーラと呼ばれた獣災は耳障りな咆哮を上げながら二人に向かってくる

 

その時、ラフトの手にする石器が砕け、眩い光を放った

 

砕けた石器は石のような構造ではなく、まるで光を集めて固めたような、水晶状になっていた。黒い模様が入り、まるで新品のようにそこにあった

 

それと共に石像の胸の構造が光を放ち始める

 

「石像が…蘇るの…?」

 

驚くケイを置き去りに、ラフトは手にした道具と石像を見比べる

 

「……ケイ、あの壁画には…巨人が獣災を倒す絵があったよな」

「ええ……ラフト、まさか⁉︎」

 

ケイが驚き、ラフトの方を見る

決心したような顔で石像を見上げるラフトがそこにはいた

 

「光とか闇とか、知らない。だけど……あの獣災たちを滅ぼせるなら…‼︎」

 

ラフトは道具を握りしめ、掲げる

 

知らないはずの道具。だが、ラフトにはその使い方が何故かわかっていた

 

「力を貸せ、アルラト!俺にはそれが必要なんだ!!」

 

道具ーヘドロレンスの柄のスイッチを押し込む

先端の構造が展開され、眩い光と渦巻く闇が噴き出し、ラフトの体を包んだ

 

「ーッ!!ラフト!!!」

 

眩さに目を覆ったケイが次に見たのは、光に変わったラフトが石像の胸へと入り込む光景だった

 

ーギュウゥゥゥゥゥゥアァァァァァァ!!!

 

ベスカーラが石像へと突撃してくる

その足元にいたケイが思わず目を瞑る

 

ールアァァッ!!

 

ベスカーラの咆哮とは違う、少し低い「声」が響く

 

直後、吹き飛ばされたベスカーラが通路へと倒れ込んだ

 

ケイが目を開き、見上げる

 

そこには淡い光に包まれながら立ち上がる巨人がいた

 

金色のラインが走る黒い体に白銀に輝く鎧を纏う巨人

切長の目が目立つ半壊した顔は、光の粒子が吹き出すとともに修復され、傷のようなヒビが走る貌が露わになる

 

ールアァァ…ッ

 

「ウルトラマン……‼︎ ラフトが……」

 

立ち上がる巨人はケイの方を振り向き、無事を確認すると頷く

 

 

ーギュウゥゥゥゥゥゥアァァァァァァ!!!!

ールアッ!!

 

ケイの前に庇うように立ち塞がり、巨人ーウルトラマンアルラトがベスカーラと相対、双方が突撃する

 

ベスカーラの重厚な巨体を受け止めたアルラトはそのままそれを押し返し、ショルダータックルでよろめかせる

 

ールアァァッ!!

 

ガラ空きになった腹にアルラトの拳が突き刺さる

その一撃によろめき、体液を口から吹き出すベスカーラを逃さず、次々と拳が打ち込まれる

 

ーギュウゥゥゥア………ァァァァアァァァァ!!

 

ベスカーラの前脚による反撃

腕で受け止めたが勢いは殺しきれずアルラトが壁に叩きつけられる

そこを逃さず馬乗りになったベスカーラはお返しとばかりに前脚の連撃を叩き込む

 

ールアァァッ…‼︎

 

しばらく防戦一方だったが、トドメとばかりに両手を振り上げた隙をアルラトは逃さない

 

ールアッ!!

 

アルラトの両腕が閃き、光の刃が放たれる

斬れ味鋭く唸りを上げ、刃はベスカーラの胸を深く抉り裂いた

 

ーギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥアァァァァアァァァァ!!!

ールアァッ!!

 

苦悶の叫びを上げるベスカーラを蹴り飛ばし、馬乗り状態から脱出する

 

逆転し、壁に叩きつけられるベスカーラ

構えを取り直しそれに相対するアルラト

 

が、その一瞬の静寂を天井から降り注いできた瓦礫が遮った

 

見上げると遺跡の天井が崩壊し、外の光が覗いていた

 

ーギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

一瞬の隙にベスカーラは地面を掘り返して急速潜行

再び出てくることはなく、どうやら逃げたらしい

 

「ーあ」

 

ケイの足場が崩れ、その体が宙に浮く

が、自由落下は起こらない

 

落ちる前にアルラトがその体を手に収めたからだ

 

「…ありがとう」

 

アルラトが頷く

しばらく周囲を見回したアルラトはケイを手に収めたまま地上へと飛び出していく

 

『 ……… 』

 

崩れゆく遺跡の隅からそれを見上げるのはフレンと名乗るローブの人物

 

『 運命 も 待ってはくれない 』

 

崩落が進む遺跡の中、その姿はいつの間にか消えていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

地上に出たアルラトを待っていた光景

それは一面の火の海だった

 

燃え盛る地上、そこに一体の巨獣が暴れていた

 

ーゴォォォォアァァァァァァ!!!

 

「もう一体怪獣が…⁉︎」

 

アルラトは火の手が及んでいなかった山裾の洞窟にケイを下ろし、デマルザに向き直る

 

ーゴォォォォアァァァァァァ!!!

 

デマルザの側、ここに長く住んだラフトには嫌でもわかってしまった

かつての仲間たちがいた村が火の海の中にあったことが

 

ー熱い!熱い!!

ー嫌だ!!死にたくない!!

ー助けて!!助けて!!!

 

そして超人であるアルラトの耳には聞こえたくもない声が響く

逃げ遅れた、もしくは逃げることすらできなかったかつての村のみんなの断末魔や悲鳴が

 

アルラトは拳を震わせ、怒りのままに構え直す

 

ールァァァァァッ!!!

 

デマルザへとアルラトが突進する

デマルザは喉を赤熱させマグマ熱線を放ち、その突撃を妨げる

 

ールゥゥゥッ!?

 

アルラトがよろめき膝をつく

そこに突撃してきたデマルザがアルラトを蹴り飛ばす

 

地面を転がるアルラトに追撃とばかりにマグマ熱線が迫るが、なんとか体を転がし、それを回避する

 

立ち上がったアルラトの胸元、青く輝いていた結晶が赤く点滅を始め、アルラトがよろめき肩で息をする

 

ーゴォォォォアァァァァァァ!!!!

 

好機と見たのかデマルザが咆哮、再びマグマ熱線をチャージし始める

が、顔を上げたアルラトは今マグマを噴き出そうとするデマルザの口をアッパーを叩き込んで無理やり塞ぐ

 

熱線が暴発したダメージでよろめく

デマルザの赤熱化した喉にすかさずアルラトの拳が突き刺さる

 

ールァァァッ!!

 

更にもう一撃

 

ールアァァァァッ!!!

 

そして裂帛の気合いを込めた一撃がデマルザの喉に突き刺さる

その一撃はデマルザの硬質化した外皮をも貫いた

 

ーゴォォォ……アァァァァ……

 

喉に大穴が開いたデマルザはしばらく痙攣すると、脱力

絶命して倒れ伏した

 

倒れたデマルザをアルラトが見下ろす

その顔に走るヒビから黒いモヤが少し漏れたように見えた

 

陽が暮れゆく中、ポツリ、ポツリと雫が落ち一帯に雨が降り始める

 

雨が火の手を弱めるが、そこには焼失した森と村だった何かしか残っていなかった

 

「あれが…彼がウルトラマン……」

 

雨に濡れ、まるで泣いているかのようなアルラトを見上げ、ケイも拳を握った




デマルザを倒したラフト
だがかつての仲間は村と共に失った

獣災を目の敵にするラフトの在り方を問うケイ
ラフトは忌まわしき過去の記憶を語る

次回ウルトラマンアルラト
『赤い夜の悪夢』
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