ヒカリノツルギ   作:アフロマリモ

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2 転移

「眩し!」

 

 私は、腕で顔をかばいながら、急いで瞼をキュッと閉める。

 恐る恐る、目を開けるとそこには、青空の頂点で煌々と世界を照らす、真っ白な太陽があった。

 

(ここどこ? 夢かな? それにしてはリアルだなぁ)

 

 頬をつねるがピリリと痛い。夢じゃないのかも……。

 上体を無理やり起こす。

 周りを見渡すと、大地に一面に、色とりどりのガーベラの花が咲き誇っていた。

 そよ風が吹けば、花と土草の香りが、鼻腔をくすぐるだろう。

 

(ていうか、こんな服着てたっけ)

 

 確か、ブサイクな猫柄の寝間着を着ていたはずだったが、私の太ももを隠しているのは純白のスカート。急いで立ち上がり全身を確認すると、その正体はワンピースのようだった。とてもじゃないがこんな服、趣味じゃないし、持ってもいない。

 足元から土を踏む感触が直に伝わる。靴を履いていなかった。

 腰をねじらせ自分の背面を見ると、土で汚れていたので、はたき落とす。

 汚れを落としながら、私は視界に違和感を感る。いつもと景色が違う。

 明らかに、いつもいる自室とは、異なる空間にいるのだから、当たり前だろと思うかもしれない。けどそういうことじゃなくて、もっと根本的な……

 

「あ!」

 

 私は気が付く、眼前に垂れる前髪の色が、黒から白に変わっていることに、

 腰まで垂れた髪を、うなじで束ね、肩超えさせ前に垂らす。

 その髪は、純白に染まった絹の川のようだった。

 

(え!? うそ!? 私の黒髪はどこに!?)

 

 もしかして超高速で年とったのか!? 浦島太郎的な展開なのか!? と心によぎるが、肌には、年を取ったような皺もなく、生まれたてのような、きめ細かさだった。もしかしたら以前の私よりもきれいかも。年を取ったわけではなさそうだ。

 私は少しの間、自分の体の変化を楽しんだ。

 

 

 楽しみ終わった私は、とうとうこの世界の考察に移ることにした。

 いくつもの考察が浮かぶだろう、精神がイカれて幻覚をみている説、

 宇宙人に連れ去られた説、

 もともとこっちの世界が本当の世界で、向こうの世界はただの夢説など

 いや、ホントはこんな思いついてない。なぜならすでに私の中では答えは決まっていたからだ。

 

(異世界転生ですね! 間違いない!)

 

 私は自信満々に胸を張る。

 ちょうどあの劣等感にまみれた世界から、おさらばしたいと思っていたところだ。ありがたい。

 そろそろチート能力やら、チートアイテムが、手に入る頃合いだろう。

 というか、ステータス画面とか開けないのかな。

 私は、右手をかざしたり、開け! とか言ったりしてみるが、そのような画面が開く気配はない。が別の気配が、私の周りをうろついてるのを感じた。

 それは、小さな光だった。蛍ほどの光をかざしながら、私の周りをクルクルと飛び回っている。

 私は、ハッとした。

 

(ハハーン、さてはこの光が、私に眠る強大な力のカギだな!)

 

 私は瞬時に推理する。伊達に異世界転生ものを読み漁っているわけではない。

 この光……いや光って呼び方はよそう。私と被る。

 そうだなぁ、とりあえずこの光は「蛍」と命名しよう。

 蛍は程なくして、私から離れていく。

 

「待って! 蛍」

 

 私は蛍を呼び止める。そうすると蛍は少し止まる。そしてまた少し進み、また止まる。

 

(ついて来いってことかな)

 

 確信の持てぬまま、鮮やかなガーベラの花を踏みつぶさないように蛍についていく。

 歩き続けていると、永遠に続くと思われたガーベラ畑は終わりを迎え、森林が私を出迎える。

 木々が、ところ狭しと生えているにもかかわらず、木漏れ日が差し込むおかげで、程よい明るさが私の行く先を照らす。

 蛍はためらいなく森の中へ入っていく。

 隆起した木の根っこに足を奪われないように、慎重に蛍の後を追う。

 

(蛍のお供って、なんだかおじゃる〇みたいだなぁ、あとは閻魔様の尺があれば完璧なんだけど)

 

 20分近く歩き続けると森は終わり、一つの村につく。村だったものの方が正しいかも。

 そこには人の気配はなく、壊れた家屋達が存在を主張するだけだった。

 蛍はウロウロと動いた後、村の中へと飛んでいく。

 

「はぁ……はぁ……、ちょっと待ってよ! どこ行くの?」

 

 私の声を無視し、小さな光はどこかへ消えていく。慣れない道を歩いたせいか、足には疲労がたまり、追いかける体力は残っていなかった。

 

(私のこと導いてくれるんじゃないの?)

 

 最強の能力を期待してついてきた、私にとって、このボロボロ村はあまりにも期待外れだった。

 

(とりあえず、休める場所を探そう。足パンパンだよ、もう!)

 

 私はイライラしながら、村を探索する。ところどころガラスの破片が散らばっていて、素足には脅威だった。

 脅威を躱しながら、トコトコと村の中心に向かって歩いていく。そこには屋根の吹き飛んだ広い家のようなものがあった。

 太陽が沈もうと、遠くに見える山脈に、体を隠し始めていた。探索しているうちに、時間が結構すぎていたみたいだ。

 

(もういいや、ここで休もう。最強チート能力は明日あたりにもらえるでしょ)

 

 私は、屋根の無い大きな家に泊めさせて頂くことにした。

 

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