「ほわぁぁぁ!!」
私は、変な声を上げながら飛び起きると同時に、周囲を確認する。いつもの部屋だ!
次に全身の確認をする。ブサイクな猫柄の寝間着に黒い髪! そして急いでズボンを下げる。健全な太ももヨシ! 傷跡もない。
「夢かぁ」
安堵し、布団に倒れこむ。スマホの時間を確認すると、4時と表示されている。
(寝落ちしてたんだ。リアルすぎて本当に怖かったぁ……とりあえず顔洗お)
まだ日も出ていない時間帯だが、その方が都合はいい、家族と顔を合わせるリスクが少ないからね。
ゆっくりとドアを開け、ゆっくりと階段を降り、1階の洗面所へ向かう。さっきみたいな夢を見た後だと、暗闇が怖くてスムーズに行けないと思ってたかが、案外明るくて大丈夫だった。
洗面所につくと、蛇口を捻りる。出てきた水を、顔いっぱいに掛けまくる。あの影たちの冷たさとは全く違う、心地よい冷たさが肌に触れる。
タオルで、顔に残る水の残党を拭き取り、鏡に映る自分の姿を見る。
疲れ切った顔で、毛先は乱れ、顔色もあまりよくないように感じた。
「ひどい顔」
思わず呟く。
「そんなことないよ! ヒカリは可愛いよ!」
快活な女の子の声が、私を励ましてくれる。
「お世辞なんて言われてもうれしくないよ」
私は否定する。
「お世辞じゃないよ! もっと自信を持とうよ!」
「自信なんて……持てって言われて持てるものじゃ……」
私はさらなる激励を否定しようと……、待て、私は今誰と話しているんだ?
声のした、右の方を見る。
そこにはふわふわと浮かぶ光源がいた。
「あのねぇ、ヒカリ! 自分を卑下するのはよくないよ! 自分は、どんな時も自分の味方じゃないといけn」
私に見られていることに気が付いた光源は、しゃべるのをやめ、こちらを見る。いや別にその光源に、明らかな目が存在しているのかは定かじゃないけど、確かにこっちを見たような気がした。
「「……」」
お互いに無言で見つめ合う。光源が口火を切る。
「あのぉ……私の事見えてる?」
その問いに、私は無言でうなずく。
小さな光は嬉しそうに周りを飛び回る。
「ヒカリに憑いて、早半年! まったく私の事、認知してくれないから心配したよぉ~」
唖然とする私をよそに、光は騒ぎまくる。
「ホントに見えてる? ホントに声聞こえてる?」
嬉しそうに何度も質問を繰り返す。
「じゃあさ、じゃあさ! これ何本に見える? 見える?」
きっと指の数のことを質問しているのだろうが、この光源にそれらしい器官は見当たらず返答に困る。
「え……何も見えない……です」
何とか絞り出した回答に、光源は残念そうに、えぇ────!! と声を上げる。
「やっぱり見えてないんじゃん!」
そう言った後、ハッとしたように
「あ! そういえば私、手無いんだった! テヘっ!」
このお茶目で頭の足りない光とともに、非日常が訪れた。