古手美羽、この名前を付けられてからボクは今まで言わば色んなことをしてきた。経った二十年しか生きてきてないが世間一般の人が一生で体験する以上のことを体験している。ボクは十五歳になった時に雛見沢を出て世界を転々とした。正直な事を言うならばあの町を出たかったから海外に行った。
その選択肢が正しかったのか分からないが…後悔はしていない。
ボクは雛見沢という町が嫌いだが…ボクと雛見沢は磁石のS極とN極のようなもので離れられない。どんなに努力をしたところで、どんなに離れたとしても絶対に離れる事は出来ない。忘れる事が出来てもそれは一時的なもの完全に忘れる事は叶わない。だからこそ、ボクは町を離れて五年が経過した年に雛見沢に戻る決意をした。
五年も経過すれば色んなことが変わる。それは身内や人もだが、雛見沢という町自体も変わるんじゃないだろうかと少し期待していた。だけどその期待は町を訪れてすぐに崩れ去った。ボクが出た五年前と何一つ変わっていなかった。
今は古手家で静かに暮らしている。妹はボクを笑顔で出迎えてくれた……だけどボクにとってその笑顔は怖いものでしかない。幼い頃にボクは一度ある人物と喧嘩したことがあった。その時にボクは別に次の日にでも謝ればいいか何て考えていた。その次の日からボクが喧嘩した人物は姿を現さなくなった。心配になったボクは彼の家を訪ねる事にした。するとそこには…無残な姿で倒れている人がいた。その人物はボクが喧嘩をした人物だった。最初は誰かに恨みでも買って、やられたのかと考えていたが一週間が経過した頃にボクは妹の部屋で喧嘩した男の財布を見つけた。最初は半信半疑だったが妹を問い詰めるとすぐに話した。
コロしてしまったのは自分で動機はボクに殴られた傷があったからだそうだ。妹を警察に連れて行くことも考えたがそんな事をしても彼女の年齢から考えてもそんなに重い罪にならないだろうからね。
それにこんな奴でもボクの妹だから。
「兄様が戻って来てくれて嬉しいのですよ」
本当にいつも思うがこの笑顔は本当に不気味でしかない。
「梨花、ボクはこれでもお前のことを妹として信頼している」
「それは嬉しいのですよ!」
「だが、今度は何も起こさないでくれるとボクとしては有難いんだが」
「分かっているのですよ。それに僕たちは兄様のことを尊敬し、崇拝しているのですから兄様を困らせる様なことを起こすことをしませんよ」
尊敬してくれているならば僕に面倒ごとを押し付けないで欲しいんだけどな。
「そうかい、そうだと良いのだけど…」
今回は無事に過ごせれば一番良いんだけどな。そしてその後、妹が膝枕をしてくれとせがむので仕方なく膝枕をすることにした。
「やっぱり兄様の膝枕は良いのです」
「別に他の人の膝枕と違うところはないと思うけど?」
「違うんですよ。兄様の膝枕は他の人のとは……なんか詳しくは分からないけど落ち着くんですよ!唯一、兄様の膝枕の時だけが張り詰めた緊張感が解かれるのですよ」
妹は小学生らしい無邪気な笑みを浮かべている。こんな風な笑みを浮かべている人間が……。
「そうか…それは嬉しい限りだな」