JC聖女とおっさん勇者(?)   作:景空

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第33話 テンプレ

今あたし達はハンターギルドにいるのよね。瑶さんの『道具屋に……』発言は

 

「道具屋はハンターギルドの割引があるので先にギルドに登録したほうがいいですよ」

 

の言葉で変更になったの。

ハンターギルドは弓と剣が支え合うシンボルを掲げた建物で入口は両開きのウェスタンドアね。どこかのファンタジー小説の冒険者ギルドがこんな感じだった気がするわ。

 

入口を入って、あら、お約束の併設の酒場は無いのね。ロビーにはテーブルこそあるけど単純にパーティーメンバーの待ち合わせや簡単な打ち合わせをする程度みたいね。正面にあるのは受付カウンターかしらね。女の人が4人こっちを向いて座っているわ。右手奥は商業ギルドにもあった打合せ用の個室って感じね。左手奥には掲示板があって色々な紙が貼りつけてあるわ。お約束の依頼書かしらね。獲物の買取カウンターは正面から入ったところにはない感じだから裏口かしら。

 

「ほら、いくよ」

 

あたしがキョロキョロ見回して止まっていたら瑶さんに背中を押されちゃったわね。

 

「新規登録をしたいんだが、ここでいいのか?」

 

あら?瑶さんいつもよりちょっときつめの言葉遣いね。でも、受付のお姉さんも別に嫌そうでもないわ。

 

「はい、こちらで登録できますよ。こちらに名前を記入お願いします」

 

そう言ってお姉さんは一枚の紙?違うわね何かしら。紙みたいな何かを出してきたわ。

こういうの分かっていたから昨日の夜宿でミーガンさんに一応名前だけは書き方教わったのよね。

瑶さんが書いている横にあたしが並んでいるんだけど、お姉さんあたしには出してくれないの?

 

「ねえ、お姉さん。あたしにも登録用紙頂戴よ」

「お父さんだけですよね。お嬢さんにはちょっと早いんじゃないかしら」

「見た目弱そうに見えるのは分かってるけど。いいから出して。それと親子じゃないから」

 

あ、瑶さんの肩が揺れている。

 

「何よ、瑶さんまで。笑わなくたっていいじゃないの」

「い、いやごめん。最近は、もう意識してなかったけど、朝未って年齢的にはまだ子供だったなって思って。そんな朝未がそれなりの弓の名手で近接戦闘だってある程度出来るなんて受付の姉さんだって気付かないって。悪くいってやるなよ。プププ」

「もう、いいわよ。で、お姉さん、登録用紙は出してくれないの?」

 

「おいおい、ハンターはお子ちゃまが出来る仕事じゃないんだぜ」

 

あああ、こんなところでテンプレ展開いらないのに。当然無視よね。

 

「あ、あの本当にあなたが登録するの?」

「さっきからそう言ってるでしょう」

 

「おい、無視すんじゃねえよ」

 

さっきからうるさいのがついにあたしを掴まえようと手をだしてきたわね。でも、これ本当に掴まえるつもりあるのかしら?あんまりにもゆっくりなのよね。

 

一応ワイルドウルフの突進を避けた要領で避けて後ろに回ったのだけど。相手は素手だし軽く足を掛けるくらいで良いかしらね。

 

”ドギャバアン”

 

派手に転がったのでちょっとびっくりしたわ。

 

「え、こんな程度で転がるんですか?」

 

あたしは思わず声に出しちゃったわ。

 

「ちょ、ちょっとお嬢さん。お逃げなさい。その人ガラは悪いけど一応6級ハンターです。お嬢さんみたいな方が関わらない方が良いです」

「こちらから関わるつもりは無いですよ。でも、降りかかる火の粉は叩き潰さないと危ないでしょう。それに今程度のお遊びを気にする人がハンター登録しようとすると思いますか?」

 

一瞬助けに入ろうと動こうとした瑶さんも今はちょっとニヤニヤしながら見てるし、ちょっと人が悪いんじゃないかしら。

 

「ふ、ふっざけんなー!!」

 

あら?立ち上がったと思ったら長剣を抜いてきたわね。

 

「ちょ、ガルフさん。ギルド内で一般の方に武器を向けるのは……」

 

受付のお姉さんが慌てて止めようと声を掛けたみたいだけどどうしようかしらね。武器を抜いたって事は本当に殺しに来てるのよね。でも素手でも掴まえられなかったあたしを武器を持って重くなった腕でどうにか出来るとでも思ってるのかしら。

あら?考えてみれば、あたしってこの状況で随分と冷静ね。筋肉の塊みたいなおじさんに武器向けられてるのに。思わず顎に手をやって考えこんじゃったわ。

 

”ブン”

 

あたしの横を剣が通り過ぎたわね。うーん、一応”本気”みたいだけど……。

 

面倒になったので、もう一度足を掛けて転がした上で、短剣を首の後ろに当ててみたのよね。だってあまりに動きが遅いんだもの。

 

「よく、そんな動きでハンターとして生き延びているわね。ワイルドウルフでももう少し速いし考えた動きしたわよ」

「うっぐ」

 

あ、動きを止めて悔しそうにしているけど、周りの人の反応は何か信じられないものを見たって感じね。

でも、まあいいわ。

 

「ねえ、お姉さん。この場合、体勢を崩してうっかり短剣を押し込んだらあたし何か咎められます?」

 

受付のお姉さんに尋ねただけなのにガルフって言ったかしら、この人固まったわね。

お姉さんも驚いた顔してるわ。

 

「い、いえ。あなたは単に襲われて撃退しただけですので」

「そうですか。後で逆恨みで襲われても面倒なんですよね。どうしようか考えちゃいますね」

 

ちょっとだけ短剣の切っ先を首に掠らせてみたのだけど、あら、ちょっと……

 

「こんなところで粗相をするなんて。掃除も面倒ですし。どうしましょうかね。あとはこの人しだいですが」

「や、やめ。すみません。もう2度とおかしなことをしません。赦してください」

「あら、随分と根性無しですね。剣まで抜いてそれですか?」

 

あたしは、抑え込んだ後に短剣をそっと当てただけだもの。やさしいわよね。

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