あの後、火影様に事の経緯を話してお団子頭の女性を預けて、任務の報告もしてボクは帰路に付いた。それから一週間が経過して僕はそのことについて忘れていた。毎日、多忙な任務があり、任務のことばっかり考えているとお団子玉の女性のことなんてすぐに消えてしまう。
「最近…なんか付けられている気がするんです」
「付けられている?」
ボクの目の前に座っている人物は日向ネジ。木の葉隠れの里の上忍の忍でとても優秀な人間。両親を亡くした僕に住む場所を提供してくれたのは日向一族宗家の当主である、日向ヒアシ様だった。
何でボクなんかを迎え入れてくれたのかが分からないが…素直に感謝している。日向ネジ様や日向ヒナタ様とは年が近いこともあってよく話すことが多い。僕の今の仕事についてやボクの存在に関しては…極秘ということになっているので日向一族の人間以外は僕のことを知らない。
「はい、暗部としての仕事をしている時は付けられている感じはしないんですけど普通に街中を歩いていたりする時に誰かの視線を感じる事が多いんです」
いつからかは忘れてしまったが……視線を感じる。ボクを付け狙うような忍者がいるとは思えないからこそ疑問なのだ。後、この事に関しては僕の想い過ごしと言う可能性も零ではない。
だから日向家の人々に話すと妙な心配を掛けてしまうのではないかと話すことは正直、ためらった。だけどどうやら最近のボクを見ていて何か不自然な感じを感じ取ったらしい日向ネジ様がボクに「悩みはないか?」と話し掛けてきた。それが今の状況を作り上げている。
「…変な輩じゃないと良いが…一応、俺の方からヒアシ様に伝えておこう。何かあってからでは遅いからな」
「いや、そこまでの事では「お前に怪我があってからでは遅い!」」
こうなってしまうとネジ様は一歩も後ろに引いてくれない。
「分かりました。僕の事を心配して頂きありがとうございます」
「それで次の日曜日は休みが取れそうか?」
日曜日?
「え、何かありましたっけ?」
「おいおい、忘れたのか。ハナビ様が知ったら悲しむぞ」
「あ、ああ、ハナビ様のお誕生日でしたね。た、たぶん大丈夫だと思います。何分昨日、休暇にしてくれるように頼んだもので」
こんな事はハナビ様には言えないがハナビ様の誕生日を忘れていた。思い出したのが一週間前で急いで火影様に頼みに行った。
それを聞いたネジ様は少しため息を漏らしていた。
「もっと早く行っておけば良いものを」
「すいません」
これに関しては謝るしかない。
「まあ、休暇にしてくれるように火影様に言ったのならどうにかなるだろう。それでハナビ様への誕生日プレゼントは考えたのか?」
「はい、決まっております。正直に言いますとかなり悩みましたが最終的には購入まで至りました」
このプレゼントでハナビ様が喜んでくださるかは分かりませんが…喜んでくださるといいな。もしかしたら気に入って下さらないかもしれないがそうなってしまったら仕方ない。
「そうか。それなら安心だな」
「安心?」
「ああ、お前が一番忘れてそうだからな。誕生日の事も忘れていたみたいだしな」
「………確かにそうかもしれないけど……」
少し不満そうな顔をしているボクを見てネジ様は少し笑みを浮かべていた。