珍奇!強制シーメール化事件   作:モッチー7

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第9話:変わってしまったのか? 変わっていないのか?

1週間もの休暇を貰った強田は、まだ男性だった頃に闊歩していたエリアに戻って来た。だが、容姿が変わり過ぎたのか誰も強田だと気付かなかった

それどころか……

「ねぇねぇ、そこのお嬢ちゃーん。俺達と一緒に良い事しなーい」

「おーい。そこの可愛い子ちゃーん」

(どいつもこいつも、俺を女の様に見やがって)

往く先々でナンパされて無視していた強田だったが、意図的にナンパをシカトするのに疲れたのかベンチで座っていると、

「こんな女の子が、1人でこんな所にいると……危ないよ?

ピエロの様な小男が強田の首に包丁を突き付けた。

(どこがどう危険なんだ?この雑魚が!)

我慢の限界に達した強田が、自身を脅すピエロ擬きを叩きのめそうとしたその時、突然4人組が声をかけて来た。

「そこの小さいの、こんな所で何やってるんだ?」

それを聞いたピエロ擬きが汗だくとなった。

「お……お前達は……強田はもういない筈!?」

それを聞いた4人組の1人である小太りの男性が食って掛かった。

「あ?俺達は、強田がいないと何も出来ない雑魚とでも言いたいのか?」

形勢不利を悟ったピエロ擬きが、捨て台詞を吐きながら逃走した。

「ちっ!覚えてろよ!岩山さんが動けば、テメェらなんか―――」

だが、余計な事を言い過ぎたのか、そう簡単には逃がしてくれなかった。

「その小石山が、今度は何をしでかしたって?」

「石山じゃなくて岩山さんだ!呼び捨てにするな!」

ピエロ擬きは、岩山が馬鹿にされた事に怒って逃走を中断したのが命取りとなって、4人組にボコボコにされた。

それを観ていた強田は、ピエロ擬きのあまりの頭の悪さと4人組の容赦の無さに呆れていた。

「おいおい。そんな雑魚相手にそこまでするか?」

対する4人組は、目の前の女性が強田だと気付いてないかの様に警告した。

「こういう奴はちゃんと締めておかないと、直ぐに増長してとんでもない事をしでかすからな。それに、この時間帯はこういう危険人物がうようよいる。本当に自分が可愛いなら、さっさと帰りな」

改めて変わり過ぎた自分の容姿を再確認させられながら4人組のリーダーらしき男に話しかけた。

「曽我部……やっぱりお前ですら気付かないか……」

目の前の女性が強田だと気付かない曽我部は、初対面の女性(4人組はそう思っている)に苗字を言い当てられて動揺した。

「お前、何で俺の名前を知ってる?」

その途端、小太りが手のひらを返したかの様に強田(4人組はそう思っていない)の襟首を掴んだ。

「このアマ!さては岩山の連れか!?」

が、4人組唯一の女性が小太りを止めた。

「待ちな!その割には、こいつの目から敵意や焦りを感じないね」

このままでは、きりがないどころか4人組が仲間割れすると判断した強田は、テレパシーを使って自分の過去を4人組に観せた。

「な!?」

「え!?」

「おい!?」

「どうなってるんだよ?」

4人は驚きながら強田を視た。

「……やはり変わり過ぎたか?」

 

ようやく目の前の女性が強田だと知った4人は、前とは大違いな強田の姿に驚きつつも懐かしんだ。

「いやー、本当にびっくりしたぜー」

「魔法少女になった奴はみんなこうなのか?」

「詳しい事は良く解んねぇが、どうもそうらしい」

「へぇー。羨ましいこった。私、胸の大きさに自信が無いからさー」

「やめろ!それだけはやめろ!俺はまだ男だ!」

そんな中、曽我部が違和感を覚え始めた。

(岩山については何も話さない。ただ知らないからなのか?)

逮捕されてから今までの話をした強田が4人に訊ねた。

「で、俺を裏切った金髪は知らないか?」

「金髪ねぇー……それだけだと大勢いるからなぁー」

そこへ、さっきボコボコされたピエロ擬きが仲間を引き連れてやって来た。

「おい!さっきはよくもやってくれたなー!」

「何で生きてるんだよ!?」

「勝手に殺すなー!」

再び4人と対立したピエロ擬きであったが、大勢を引き連れているせいか、さっきの惨敗をもう忘れたかの様に強気だ。

「それに、今回は岩山さんが付いてるんだ。お前達はもうおしまいだぜ」

それを聞いた曽我部が強田の台詞に注目するが、当の強田がヤンキーの新参勢力に興味を持てなかった。

それどころか、

「それよりもよ、俺……強田って奴を裏切った金髪を知らねぇか?」

勿論、彼らが素直に真実を話すとは到底思っていなかったが、やっぱり訊かずにはいられなかった。

その予想通り、岩山達は大笑いしながら強田の事を馬鹿にする。目の前の女性が強田だと気付かずに。

「強田?あー、あの魔法少女に捕まったヘボヤンキーの事か?」

「なぁーんか、強過ぎる糞外道を気取ってたらしいけど、本物の化け物には勝てませんでしたか?」

「目立ちすぎるんだよなー?あのアホ」

が、強田に怒りは無かった。

魔法少女に変えられてからの戦いに比べたら、彼らは明らかに小物だからだ。

何時まで経っても本当の話をしない岩山達への興味を失った強田が

「邪魔したな」

と言って去ろうとしたが、モヒカンとドレッドヘアーが合体したかの様な異様な髪形の男性を発見した途端、血相を変えてその男に駆け寄った。

「お前!?どっかで会った事がないか!?」

異様な髪形の男性は理解に苦しんだが、強田の超能力である事を思い出させられていた。

 

まだ男だった頃の強田が苦しそうに転がっていた。

「くっ……くっそぉー……」

 

その途中で、異様な髪形の男性が慌てて逃走した。

貴様!強田だったのかぁーーーーー!?

異様な髪形の男性の台詞によって、強田の今の容姿を漸く理解した岩山達がどよめいた。

「あれが強田!?」

「変わり過ぎだろ!?」

「もはや詐欺だ!」

が、強田の興味は異様な髪形の男性の詳細しかなかった。

「お互い……随分変わっちまったなぁー。まるで、整形手術した逃走犯だぜ?」

「何の事だ!俺は最初から―――」

「誤魔化すなよ?俺の記憶の中では、お前は金髪の筈だったんだ?」

強田の言葉通り、強田を魔法少女管理委員会に売り渡した後に髪形を強引に変えたのだ。

完全に鬼ごっこ状態の2人を観て、4人組と岩山達は呆れた。自分達が置いてきぼりを食わされた事も踏まえて。

特に、自分の知ってる強田とは違う強田を見せられた曽我部が嫌そうな顔をしながら舌打ちをした。

 

強田がようやく異様な髪形の男性に追いついたかに見えたが、その時、巨大怪獣登場を告げる警報が鳴り響いた。

「チッ!こんな時に」

何の事だか解らない4人組と岩山達が困惑する中、強田がヤンキー達に逃走を強要する。

「何をしてる!?奴が来るぞ!早く逃げろ!」

「何がだよ?」

「怪獣だよ!巨大怪獣!」

だが遅かった。

ハエトリグモとマレーヒヨケザルを同時に兼ね備える巨大怪獣が空から降って来て、口から粘糸を次々と吐いた。

「曽我部!三田!渡部!塩屋!」

強田がヤンキー達に向けて放たれた粘糸を念力で全て自分に引き寄せた。

「お前ら無事か!?」

「強田!?お前こそ大丈夫か!?」

その間、巨大怪獣がビルを登っていた。

「今度は何を始める気だ?」

ビルの屋上からジャンプした巨大怪獣は、足から出た粘糸を皮膜がわりにして滑空する。

「羽も無いのに空を飛ぶのか?」

そして、巨大怪獣は口からレーザーの様な粘糸を吐いて逃げ遅れた曽我部達を襲った。

強田が慌ててシールドを張って曽我部達を庇ったが、巨大怪獣は滑空しながら強田に飛び掛かった。

(チッ!最近は勝ってばかりだったから完全に嘗めていたのか!?)

「お前ら!早く逃げろ!」

「逃げろって言われても、お前はどうするんだよ!?」

「今はそんな言い合いをしてる場合じゃない!この俺が何時までもつのか解んねぇぞ!?」

強田が諦めかけたその時、サーチライトの様な閃光が巨大怪獣の目を襲い、巨大怪獣の目測を誤らせた。

更に、巨大怪獣の背中に数発の銃弾が命中して巨大怪獣を墜落させた。

予想外の援護に顔が明るくなる強田。

「やっと来たか!?」

強田の視線の先には、夏芽とエレクトロンと松本がいた。

「おいおい。休暇の筈なのに、何で戦ってるんだよ?」

エレクトロンの質問に対し、強田が強気に答えた。

「馬鹿言え。かかる火の粉を振り払って何が悪い」

が、ふと松本の立ち方が気になる強田。

「こいつは確か……足の形が大分女らしくなったと言うかぁ……」

夏芽が笑顔で答える。

「松本さんは、私とエレクトロンさんが魔法少女らしい振る舞いを叩き込んでやりましたからー♪

その間、松本が赤面する。

「うー……何時か覚えていろよー」

「……お気の毒に……」

そうこうしている内に、目測を誤って墜落した巨大怪獣が体勢を立て直した。

それを見た強田が意地悪そうな笑みを浮かべた。

「刑事さんよ……こいつの暴行罪と器物損壊罪はもう適用なんだろ?」

松本がキョトンとしながら答える。

「あ、ああー」

「なら……俺の正当防衛成立だろ?こいつはもう……アウトなんだし」

それを聞いた曽我部がハッとする。

(何だよ……やっぱり強田は強田かよ)

だが口の端に微かに笑みを浮かべている。

その間に、巨大怪獣が既にビルの屋上にいた。

「こいつ、そうやって高い所から飛び降りないと飛行できないって事か?」

「どっちかと言うと滑空だよ。ハンググライダーみたいな奴」

「ま……さっき失敗した技をまたやるとは……馬鹿の一つ覚えとはこの事だな?」

ビルの屋上からジャンプした巨大怪獣は、足から出た粘糸を皮膜がわりにして滑空する。

だが、魔法少女達は既に巨大怪獣の更に上で浮遊していた。

「さっきはよくもやってくれたな?高く付くぜ!」

強田が真下に落下しながら巨大怪獣の背中を蹴った。

その衝撃で標準を誤った巨大怪獣は、無意識のうちに粘糸を山なりに飛ばす。

エレクトロンが本を開くと、無数の蝶が次々と発生して巨大怪獣が吐いた粘糸に突進し、そのまま共同で粘糸を持ち上げて巨大怪獣にぶつけた。

再び墜落した巨大怪獣であったが、今度は松本が複数の手錠が発生して巨大怪獣の身動きを奪った。

「松本警部……まだまだ刑事だった頃が抜けてないみたいだな?」

だが、突然曽我部が強田に向かって叫んだ。

「強田!後ろだー!」

強田が慌てて振り返ると、ハエトリグモとマレーヒヨケザルを同時に兼ね備える巨大怪獣がもう1匹現れて、滑空しながら強田に飛び掛かった。

だが、既にその動きを見破っていた夏芽が瞬間移動で先回りし、複数の鏡から閃光を放って巨大怪獣の目測を誤らせた。

その一方、強田が曽我部達がまだ逃げていない事に苦言を呈していた。

「何やってるんだお前ら!?殺されたいのか?」

それに対し、曽我部が意地悪そうに微笑んだ。

「火の粉を振り払って何が悪いんだい?それに、あいつらはもうアウトなんだろ?」

強田はふとあっとなったが、昔を思い出したかの様に苦笑いした。

「ふっ。そうだったな」

その後も2匹の巨大怪獣は見せ場を1度も生み出せる事なく敗れ消滅した。

 

休暇中に巨大怪獣退治をさせられたものの、ようやく自分を魔法少女管理委員会に売った男を捕まえた強田。

「さてと……やっと出逢えたな?」

一方の異様な髪形の男性が慌てて助けを求める。

「岩山さん!早くッ!早くアイツを何とかしてくださいよッ!岩山さんッ!」

勿論聞く耳持たない強田。しかも、当の岩山達は巨大怪獣出現のどさくさに紛れて既に逃走していた。

「こいつは俺と貴様とあの大五郎ヘアーの3人の問題だ。部外者を勝手に巻き込んでんじゃねぇ!」

この言葉通り、強田は岩山など眼中に無かった。松本のあの言葉を聞くまでは。

「ところが、事はそこまで小さくないんだ」

松本の台詞が、謀らずも強田のパンチを寸止めに変えた。

「は?さっき言った3人以外に誰がいるって言うんだ?」

 

覚醒剤(シャブ)を売り飛ばしただぁー!?」

「買い手も多く、暴力団との繋がりまで疑われてる」

「恐らく口封じだろうね?アンタが覚醒剤の事を警察に密告する前にって」

「強田さん、この方の覚醒剤販売に関する記憶はございませんか?」

強田は首を傾げるばかりであった。

元々、強田がシーメール化して魔法少女として巨大怪獣と戦う羽目になるきっかけとなった事件は、異様な髪形の男性の一方的な勘違いから始まった。

覚醒剤や大麻と言った危険薬物に手を出さない主義だった強田に覚醒剤販売の現場を見られたと勘違いし(当の強田は、偶然現場を素通りしただけでその事すら既に忘れていた)、このままでは強田に強請り尽くされると勝手に危機感を懐き、強田が行く先々で喧嘩に明け暮れていたと聞いて、それをたまたま休暇で出掛けていた大五郎ヘアーに密告。

強田が大五郎ヘアーに敗れ、検察に騙されて魔法少女に成ってしまって現在に至るのである。

「だから覚醒剤(シャブ)覚醒剤の事を密告する前にって訳か?」

だが、強田はやはり解らない。

「でもよ、それのどこが他に関係者がいるって言えるんだ?」

いつもの強田らしくない勘の鈍さに驚く夏芽。

「気付きませんか?この不公平感に」

「不公平?何の事だ?」

曽我部が先に気付いた。

「は!岩山達もこいつの覚醒剤(シャブ)の事を知っていた!?」

「何ぃ!?」

「なのに、強田と違って岩山に対して何もしてない」

それが意味するものはただ1つ。

「少なくとも黙認してた。最悪、岩山達もつるんでたって事も」

強田が俯き気味に訊ねた。

「……俺の休暇……あと何日残ってたっけ……」

その途端、異様な髪形の男性は、口から魂を発射したくなる程蒼褪めた。

「どいつもこいつもアウトだらけだしな!」

そして……異様な髪形の男性の予想通り、それから6日間、岩山達の悲鳴が鳴り止む事は1度も無かった

 

「あースッキリした。充実し過ぎた休暇だったぜ」

「強田さん、やり過ぎ……」

とにかく、強田が抱えていた問題の1つが後腐れ無く解決したのであった。異様な髪形の男性が惨敗したと言う代償を支払う形で。

「これのどこが『めでたしめでたし』なんですか?」

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