珍奇!強制シーメール化事件   作:モッチー7

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第13話:元男性魔法少女のい〇り

謎の隕石……

 

通常兵器を餌に成長・強化する巨大怪獣(叩務や兵器推進善業の為にもう1度、通常兵器を餌に成長・強化する巨大怪獣)と戦う地球にとっては、正に切り札と言える存在である。

巨大怪獣の接近を全く許さず、巨大怪獣の製作者であるダメージヘアー星人を死に至らしめ、適性者を多彩で強大な超能力を有する魔法少女に変える。

正に、巨大怪獣と戦う地球にとっては至れり尽くせりであった。

だが、隕石には性差と言う概念が無く、老若男女関係無く、見境無しに適性者を魔法少女に変えてしまう。しかも、例え年老いて醜くなっていようが、例え厳つくて恐ろしいであろうが、例え致命的に容姿不格好であろうが、例え男であっても魔法少女に成った途端に可愛い少女に変えられてしまい、ふっくらつやつやした乳房を手に入れてしまうのだ。

そして……俗に言う『ロリ巨乳美少女』となった元男性魔法少女は、今日も以前と以後の乖離に悩まされるのだ。

 

今日も、強田と松本が日課の搾乳に打ちのめされていた。

「アウトだ……今の俺は、完全にアウトだ……」

「逮捕したい……あの忌まわしい詐欺石を逮捕してしまいたい……」

「そんな大げさな」

翔太が諦めの悪い強田と松本に呆れるが、別の魔法少女が翔太を窘める。

「この者達、かつては元男性だったんだろ?なら―――」

「元じゃねぇ!これからも一生男だ!死んだ後も男のままだ!」

強田の怒号に驚きながらも、翔太を窘めた魔法少女は強田がどんな状況なのかを理解した。

「つまり、君はまだ切ってないって事だね?」

切るがどう言う意味か理解した強田が再び怒号を飛ばす。

「誰が切るか!俺は男だ!永遠に男だ!」

それに対し、魔法少女は納得したかの様に頷いた。

「解るよその気持ち。俺も、受け入れて切り落とす勇気を振り絞るのに、どれだけの月日が掛かった事か」

それを聞いた強田が急に冷静になる。

「何!?それじゃあ!?」

魔法少女は改めて自己紹介した。

「俺は神楽榊。元陸上自衛隊男性隊員で二等陸佐だ」

「自衛隊?そんなお偉いさんが、何でこんな所に?」

「勿論、巨大怪獣討伐の為さ」

それを聞いた強田は、自分が魔法少女に成った理由を思い出しながら溜息を吐いた。

「真面目だねぇ。俺なんか、糞検事共に散々騙されてここに来ちまったって言うのによ」

神楽は理解に苦しんだ。

「騙された?こういうのって、普通は志願制じゃなかったのか?」

強田が怒り気味に言う。

「全然違います。全然違います」

「2回も言うか?」

だが、松本もそれに続く。

「強要罪適用だ。刑法第223条。生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。つまり、逮捕だ」

神楽は、強田と松本がどれだけ今の自分を受け入れていないのかを、自分なりに理解した。

「なるほどな……まさかこんな姿になるとはって感じだったのか……」

そこへ、ライラがやって来て、

「神楽か?戻ってたのか?」

自衛隊時代の名残なのか、ライラに向かって敬礼してしまう神楽。

「は!神楽榊二等陸佐!中東の兵器推進善業に関する調査から帰還いたしました!」

急に硬くなる神楽に呆れるライラ。

「固いよ君は……魔法少女は軍人ではないのだぞ」

ライラの指摘を受け、つい自衛隊時代の名残が出てしまった事に気付いて態度を直す神楽。

「あ。すまん。つい癖で」

「骨の髄まで染込んでるって感じだな。直すのに、あと数年は掛かると言った感じか?」

一方、『兵器推進善業』と言う言葉を聞いてしまったので、注入された未来からやって来た生霊達が騒ぎ出してしまい、必死に胸を押さえる強田。

(く!静まれ!落ち着け!怒りと悔しさを捨てろ!)

急に胸を押さえる強田の姿に、神楽が不安に感じた。

「おい!どうしたんだ君!?何が遭ったんだ!?」

それを見ていたライラが頭を抱えた。

「話すと長くなるよ……」

 

神楽の報告を聴いて残念そうにするライラ。

「……そうか。やはり向こうの怪獣は、日本に出現する怪獣より格段に強いのか?」

それに対し、神楽はやや怒った様に言う。

「ええ!向こうのは、必ずと言って良い程『兵器推進善業』と1戦交えてから来ますからね。空腹の奴と戦うか満腹の奴と戦うかの違いですよ!」

それを聴いたライラが強田の言葉を思い出し、自分の背筋を冷たくした。

「未来からやって来た生霊は、これ以上魔法少女が減る事を恐れてる。だから、例えそれが悪党であっても手を出す勇気が無いんだ」

ライラの心の底から少しずつ怒りが湧いて来た。

「人間はそんなに馬鹿か……強大な兵器がどれだけ不要で役立たずか気付かない程、我々人間は馬鹿だと言うのかァーーーーー!」

ライラが怒りに任せて目の前のテーブルを蹴り上げた。

「この、戦争オタク共がぁーーーーー!」

「ひいぃ!?」

隣にいた役員が慌ててライラから離れる中、神楽は冷静かつ冷酷に質問に答えた。

「その通りです!……が、今の我々が絞り出せる限界です。特に、軍事政権や独裁者が横行し過ぎて民主政治に不慣れな国ほど、完全に兵器推進善業の言いなりですよ」

が、神楽の返答はどんどん上層部への愚痴に替わっていく。

「まったく……そこら辺のボランティアや良心的な店舗の方が、よっぽど政治家らしい事をしてますよ。あれでは、反政府デモをしろと命令されているようなものだ」

「じゃあ何か!?その無能な政治家どもを全て皆殺しにしろと言うのか!?」

怒り狂って怒鳴り散らすライラの額に1枚の札を貼る神楽。

「頂上にいて全てを見渡せる者ほど、クールな思考が必要だ」

神楽に貼られた札のお陰で冷静さを取り戻したライラが再び着席する。

「すまない。取り乱した」

「取り乱したってレベルじゃないでしょがー」

ライラの隣にいた役員の冗談は無視された。

それに、神楽の報告はまだまだ続く。

「それと、祭高明と1戦交えたそうですね?」

「ああ。久々に残業させられたって愚痴ってたよ」

「その祭高明の逮捕……またまた後回しにされてしまいそうです」

それを聴いて頭を抱えるライラ。

「では何か?奴らの怪獣の死体の販売を見て見ぬ振りしろと?」

「実際、彼らも怪獣達の敵です。ま、怪獣を討伐する理由が理由ですから、流石に奴らをダメージヘアー星人の敵だと断定し難いですが」

兵器推進善業の余計な悪行に頭を痛める国連の心情を察したライラが呆れた。

「怪獣を討伐してくれるのであれば、なりふり構わずと言う訳か?数字は正直だな」

そして、神楽が真面目な顔できりだす。

「で、ここから本題なのですが―――」

ライラの隣にいた役員が驚いた。

「今までの不都合な報告が本題じゃないと言うのか!?」

でも、神楽はその“本題”を続けた。

「日本支部で余ってる魔法少女を、東南アジア支部や中東支部、それにモンゴル支部に譲ってくれませんか?期限付きでも構いませんので」

それを聴いて頭を抱えるライラ。

「……兵器推進善業の暴挙や悪行に晒された怪獣は、そんなに強いのか?」

神楽が悲し気に答えた。

「それもありますが……兵器推進善業が魔法少女の数を制限していますから、戦況バランスがすこぶる悪いのです」

ライラはもう何も言えなかった……

 

ライラへの報告と懇願を終えた神楽は、深夜である事を良い事に、全裸になって海に飛び込んだ。

その姿は、まるで美しい人魚の誘惑の様で幻想的であった。

「本当に、魔法少女は俺の男根(あいぼう)を休ませないな」

神楽が振り返ると、強田が突っ立っていた。

「その魔法少女様を、お前は東南アジアや中東に飛ばしたいんだって?」

それに対し、神楽は皮肉で答える。

「盗み聴きとは感心しないな。それとも、ライラの緊急連絡を聞いて転勤を恐れたかい?」

強田が気楽な感じで答えた。

「まさか。寧ろ……望むところだよ」

が、神楽が怒り気味な真顔で言い放つ。

「調子に乗るなよ新人。通常兵器を散々大量に浴びた巨大怪獣を嘗めるなよ。向こうの戦いを経験したら、巨大怪獣に向かって通常兵器を一切使用しないエリアの戦闘が『お遊び』だと錯覚してしまう程にな」

それでも、強田は気楽に答えた。

「だから往くんだよ。そう言うアウト共をこれ以上のさばらせない様に。それに、俺の中にいる連中も兵器推進善業と戦いたがってる」

神楽が不安そうに訊ねる。

「怨人や未来からやって来た生霊の事、軽くは聞いていたが……本当に大丈夫なのか?」

強田が気楽な感じで答えた。

「こいつらがあまり怒ってない内は大丈夫さ。ま、予想不可能な不意打ち的な縛りゲーみたいなもんですわ」

それを聴いた神楽は、怒り気味にそっぽを向こうとするが、

「やはりお前は連れていけない。怪獣討伐をゲーム感覚―――」

「なら……試して視るかい!」

強田が白いドレスを上からまとったような服装になり、背中から白鳥の翼を思わせるオーラを発生させた。

「なっ……」

神楽の背筋が凍った。

それは決して海面温度が低いからではない。強田が母島決戦で新たに得た力に畏怖しているからだ。

(俺が後ろに下がった?自衛隊の心得を散々叩き込まれた上に、兵器推進善業の暴挙を吸収して強化された巨大怪獣と何度も戦わされたこの俺が!?)

それに反し、神楽の恐怖心を察した強田が既に普段の姿に戻っていた。

「って、俺達が潰し合っても誰も得しねぇよ。特に、俺の中にいる連中はな」

力の差を思い知ったからか、神楽が急に謙虚になった。

「あ……ああ。そう……だな」

すると、強田も全裸になって海に飛び込んだ。

「あ!?おい!?」

海上に頭を出した強田が微笑んだ。

「それと。こんな時間にこんな所でこの姿……本当はお前もアレに嫌気を感じているんじゃねぇのか?」

図星だった。

神楽は、表面上は冷静で機械的な先輩魔法少女を気取っているが、本心は未だに女に成りきれてない部分もあるのだ。

でも、それを悟られる訳にはいかない―――

「なんの―――な!?念動力で胸を揉むな!」

「無理するなって。本当は嫌だっただろ?男なのに牛の様に乳を搾られるの」

「ぐっ!貴様!?まだ諦めて―――」

「諦めねぇよ。何せ俺は、我が道を往く強過ぎる糞外道ヤンキーだからな♪」

何かに気付いた強田が目で合図する。

「それに」

それは、何かから逃げる様に現れた松本であった。

「エレクトロンめぇ。猥褻罪だ……逮捕してやる……公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処するだぞぉーーーーー!?」

「あのおっさん、また夏芽に扱かれたな?おーい!」

強田と神楽に気付いた松本であったが、全裸で海面に浮いている姿を観て嫌そうな顔をする。

「……お前らも逮捕されたいのか?六月以下の懲役だぞ?」

だが、強田は服を着るどころか、挑発的にボソッと呟いた。

「乳搾り」

「だっ!?」

慌てて両手で胸を隠す松本。

「やはり貴様は逮捕だ!逮捕だ―――」

「それじゃあ何かい?いつも通りに牛の様に乳を搾られろって言うのかい?」

「ぐっ!」

「がっ!」

強田に内面を暴かれて困惑する松本と神楽。

そして……観念したかの様に怒りを露にする松本。

「俺は元々、お前らのインチキを見抜きに来たんだ!それなのに……何で女みたいな恰好で女々しい振る舞いを強要されて!」

そこで、強田が松本を誘う。

「なら、お前も服を脱いでこっちに来なよー!そして、その牛の様な胸に隠してるどす黒い物を全て吐き出せよー!」

強田の言葉に、意を決して海に飛び込む松本。

そして、3人が三者三様に文句を言いながら乳房に残った母乳を念動力で絞り出した。

「どいつもこいつも……俺を裏切ったり騙したりしなければな、こんな姿にならずに済んだんだよぉーーーーー!」

「あの糞詐欺石ぃーーーーー!俺の人生を滅茶苦茶にしやがってぇーーーーー!逮捕だぁーーーーー!」

「俺だってなぁ……小便の様に母乳を垂れ流す為に、代々続く神主の家系の優遇を捨ててまて自衛隊に入隊したり、怪獣討伐に志願したりした訳じゃ、ねぇんだよぉーーーーー!」

で、乳房に溜まった母乳を海中に捨てる感覚に酔いしれる3人であった。

「あっ、あーーーーー!あーーーーーんーーーーー!」

 

全てを吐き出してスッキリした3人は、楽し気に語り合いながら宿舎に戻って行った。

無論、ちゃんと服を着ている事は言うまでもない。

 

数日後、神楽の口から中東支部行きとなった魔法少女が発表された。

 

強田護

曙夏芽

エレクトロン・カプチーノ

 

この3人。

流石に松本は経験不足と言う理由で保留となってしまったが、その妥協案として、松本の精神的女性化の元凶である夏芽とエレクトロンを連れて行く事にしたのだ。

貢献欲過剰な夏芽は兎も角、これ以上の激しい戦闘に自由を奪われるのを拒むエレクトロンは激しく駄々をこねたが、やはり命令は命令。拒否権は無いのである。

「横暴だぁーーーーー!」

「エレクトロンさん……何の為に魔法少女に成ったんですか?」

「まあ……しょうがないよ。向こうの怪獣は、誰かさんのせいで強くなり過ぎだって話だし」

「言うなぁーーーーー!あーん!嫌だぁーーーーー!」

と言う訳で、早速4人は激戦区である中東に向かうのであった。

「いっやだあぁーーーーー!」

 

一方、国連の追手が厳しくなり過ぎて日本にいられなくなった叩は、どうにか兵器推進善業中東支部に逃げ込んでいた。

「くそ!どいつもこいつも、あの忌まわしい憲法第9条からの卒業を何故嫌がる」

「そっちも苦戦している様だな」

それを聴いた叩は、まだまだ厳しい戦いが続くと確信した。

「まだ……例の真実を愚民共に伝えきれてないのか?」

「ああ……あれだけ食らってまだしぶといし、あの隕石も弾丸や砲弾の中に入りたがらない。観ての通りの劣勢だよ」

叩が決意を新たに真顔で答える。

「だが、やらねばならん。兵器だけで巨大怪獣を滅ぼし、魔法少女を騙る詐欺師集団から世界を救済せねばならん。そして、世界を再び人類の成長と進化に必要不可欠な戦争で包んで平和と発展に導くのだ

が、中東支部の問題はそれだけではなかった。

「しかし、その詐欺師共の日本支部とやらが、この地に更に招かざる敵を送り込んだ様だ」

「なに!?」

叩が手渡された写真を視た。そして、怒りに震えた。

「あの糞娘ぇーーーーー。2度ならず3度までも、我らの救済の邪魔をするかぁーーーーー?」

強田の顔写真を憎しみに任せて握り潰す叩であった。


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