珍奇!強制シーメール化事件   作:モッチー7

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第18話:未来終了のお知らせ……

強田が目を覚ますと、上半身裸で手術台に磔にされていた。

「……ん……?ここは……?」

強田が辺りを見回すと、複数の医師や看護師が何かに吹き飛ばされたかの様に失神していた。

「何なんだこいつら?俺をどうする心算だったんだ?」

取り敢えず拘束を外して服を着る強田。

「これはぁ……メスか?俺って病気……」

とここで、強田が周囲の医師達が吹き飛ばされている理由に気付いた。

「はぁ……なるほど……あいつらか」

強田が思い出したのは、強田を怨人に変えた未来から来た生霊達の事。

「なるほどな。まだまだ悲惨な未来は回避しきれてねぇって事か!?」

そして、強田が強制的に受けさせられかけた手術の正体を知って背筋が寒くなった。

「んで……また諦めていなかったのかよ……」

 

で、強田が病院内を歩き回っては視たモノの……

(ちっ!兵器馬鹿集団に捕まりゃぁ、兵器馬鹿集団が盗んだ糞石の所へ往けると思ってたんだがなぁ……流石に甘かったか?)

強田の背後で転がっているのは……強田の逃走を察して捕らえに来た兵器推進善業メンバーの情けない姿であった。

「この程度の強さで、よくあのデカブツを殺すと言えたもんだな?出直せや」

(とは言え……この数って事は、俺達からあの糞石の破片を取り出したのは、1度や2度じゃねぇな。んで、俺達の体から取り出した糞石を兵器に転換し、その武器でデカブツ共を殺し、俺達の存在価値を低下させる……筋書きとしては悪くない)

だが……

(が、糞石共は兵器に取り込まれる事を良しとせず、俺達の様な存在をせっせと作り続けている。糞石は何故そんな方法をあえて選んだんだ?戦争に恨みでもあるのか?)

考えれば考える程、答えから遠ざかってる気がする強田。

ただ、1つだけ解っている事がある。

「どっちにしろ……あの兵器馬鹿集団から糞石を取り戻す。全てはそこからだな」

強田は、自分の胸が一瞬だけ光った気がした。

「残り時間もほとんど残ってないみたいだしな!」

決断した強田は、横で倒れていた兵器推進善業メンバーの胸倉を掴んで無理矢理起こした。

「おい!答えな!俺達の体から取り出した糞石はどこだ!?」

兵器推進善業メンバーは答えない。だが、兵器推進善業メンバーの口をこじ開ける必要は無かった。

「無理してまで口を開ける必要はねぇ!お前の過去を思い浮かべるだけで良い」

強田がテレパシーを使って兵器推進善業メンバーの記憶を覗き視る。

「ぐっ!?」

兵器推進善業メンバーが必死に偽りや妄想を捻り出そうとするが、時既に遅しであった。

「解った!あっちだな」

「待て!喋る!何でも喋る!」

兵器推進善業メンバーが慌てて口から嘘を吐こうとしたが、それも既に遅しである。

「無理なら口を開けるなって言ったろ?もう既に訊き出したんだからよ」

「貴様!」

兵器推進善業メンバーが慌てて拳銃の銃口を強田に向けた時には……やはり既に遅く、強田は既に瞬間移動で目的地に到着していた。

「不味い!直ぐに本部へ―――」

それさえ既に遅く、通信に使えそうな機材は全て長距離転送で別に場所に一瞬で移動させられていた。

「無い無い無い!くそぉー!早く車を!急がねば!」

全てが時既に遅しで、強田はもうとっくに目的地に到着していた。

 

一方、兵器推進善業中東支部の総合指令室でも隕石発光に関する会議が行われていた。

「では、隕石の発光は日増しに強まってるのだな?」

「はい。隕石を主成分とした銃弾や弾頭の悪影響を―――」

叩が悔しそうに机を殴った。

「ひいぃ!?」

「あの隕石は、本当にこの地球を護る気があるのかぁーーーーー!」

飛鳥井当主の咳払いにより、叩がクールダウン。

「失礼。興奮し過ぎました」

「落ち着き給え。だからこそ、君達は我々飛鳥井家を頼ったのであろう?」

先程までの激怒はどこへ行ってしまったのか、叩が急に恥ずかしがって委縮した。

「まことにお恥ずかしい限り……本来なら、我々軍人の後ろに隠れる筈の飛鳥井家の手を煩わせるとは」

今度は兵器推進善業中東支部の大幹部と思しき人物が手を叩いた。

「そう硬くならんでも良い。原因調査を行っている最中だ。その内結果が判明する」

「ですが、我々があの隕石の兵器化が遅れれば遅れる程、下々は魔法少女を騙るインチキ詐欺師どもに騙され続けます!そのせいで……我が祖国日本は……」

悔しそうに握り拳を作る叩。

それを大幹部が諫める。

「落ち着け。それと焦るな。詰めを急ぎ過ぎて勝てる戦いに敗けては、元も子もないぞ?」

「しかし!」

が、叩は言葉に詰まった。言われてみれば、確かにその通りだからだ。

でも、日本には早く戦争の素晴らしさに目覚めて更なる発展と進化を迎えて欲しいのも、叩の正直な本音である。

「やはり……待てません!我が祖国日本が、戦争反対と言う致命的な猛毒に侵されてじわじわ衰退……もとい!死亡して逝く姿を!……これ以上診たくありません……」

遂には涙ぐむ叩。

それを大幹部が諫める。

「だからこそだ。完全確実に巨大怪獣を斃し、日本に君の様な存在が必要不可欠だと、知らしめなければならんのだ」

悔しそうに握り拳を作る叩。

それを見てニヤッと笑いながら話を飛鳥井当主に振る大幹部。

「ところで、貴方のお孫さんで飛鳥井家次期頭首最有力候補を騙して魔法少女に変えた検察は、今どうしてます?」

飛鳥井当主が不満そうに語った。

「知らん。飛鳥井家の影響下にある企業や組織などには、解雇か不採用として扱えと伝えてある。それ以降は、我々は全く関与しておらん」

「では、その者は既に検察ではないと?」

「無論だ」

よほど不快だったのか、飛鳥井当主が話題を強引に変えた。

「ところで、君達が進めている隕石の兵器化において、我々は何をしたら良いのかな?」

「それはですね―――」

「1度地上に激突した隕石から足が生えないと、本気で思ってるのかい?」

突然響き渡る強田の声に驚く一同。特に飛鳥井当主は、強田の声がまるで少女の様に聞こえる事に驚いた。

「なっ!?何故貴様がこんな所に!?」

「この声は!?魔法少女を人間に戻す手術を我が孫に施したのではなかったのか!?」

「警備兵!何故奴がここにいる事を、今の今まで黙っていた!?」

そんな一同の動揺には目もくれず、姿を現す事無く自分の言いたい事だけを並べる強田。

「あの糞石がお前達を見殺しにしようとしてる事に、あれだけ宣言されてもまだ気付かないのかい?暢気なものだな」

「出てこい!姿を現せ!」

「生憎だが、俺はこの部屋にはいねぇよ。魔法少女の超能力とやらで声だけをこの部屋に届けているのさ」

「飛鳥井護!貴様はまた、飛鳥井家の男子としての責務から逃げるのか!?」

強田は、あえて飛鳥井当主の挑発を肯定する。

「そうだよ。俺はとっくの昔に飛鳥井家を辞めたよ。と言うか、俺のフルネームを視れば、赤ん坊でもそのくらいの事は解るつうの!」

「貴様!その様な事が許されると―――」

「俺が書いた辞表を受理して解雇すれば良いだけの話だ。それに、事は急を要する。地上に激突した隕石から足が生える事は無いなんて見当違いな事を言ってる場合じゃないぜ?」

「馬鹿かお前!地球上には存在しない物質が含まれている以外は―――」

「その地球上には存在しない物質が完全にブチキレてるんだよ。その点は、実際に観た方が速い」

フィンガースナップが響き渡った途端、兵器推進善業中東支部の主要人物達が一瞬で転送された。

 

その頃、兵器推進善業の追手から逃れた神楽達は……

「で、フランスへの入国理由をお尋ねしたいのですが?」

「え……えーとぉー……」

神楽達は返答に困った。

なぜなら、ここまで逃げる心算は無かったからだ。

「何で私達……ここまで飛んでるの?」

「こっちが訊きたいよ!あいつらから逃げるだけで良かった筈でしょ!?」

ただ、神楽だけはある嫌な仮説が浮かんでいた。

「……強田の予想が正しかったと仮定したら」

夏芽とエレクトロンがハッとする。

その時、魔法少女管理委員会の各支部が隕石の襲撃を受けたと言う事件がニュースで報じられた。まるで強田の仮説が真実だと証明するかの様に。

「隕石!?魔法少女を造り出すって言う、あの隕石か!?」

「でも、各宇宙研究所はそんな事は一言も!」

「静かにしろ!ニュースが聞こえないではないか!」

その隙に、神楽達は逃走した。

「私達、さっきから逃げてばっかですね?」

「良いの良いの。どの道、どうしてこうなったのか説明できないから」

 

その少し前、強田が兵器推進善業が強奪・回収した隕石の許へ辿り着いた。当の隕石は強烈な発光を続けるばかりであった。

そして、強田はいつになくかなり緊張した面持ちであった。

ここで隕石の説得に失敗すれば、兵器推進善業はダメージヘアー星人と巨大怪獣に飼い殺しにされ、兵器推進善業を優遇し贔屓する国の未来が終わる。強田もそれを承知の上で説得に赴いたのだ。

「おい糞石!」

だが、隕石の言い分は説得成功とは程遠いモノだった。

「何故まだ逃げないのです?その胸の傷が、このエリアに貴女の居場所が無い事を証明していると言うのに」

強田はいきなり出鼻を挫かれた。

失敗が許されない戦いに挑む男の出鼻を、失敗は許されない戦いに挑む男の祖父が挫くと言う、最悪の皮肉。

そしてそれは、隕石がどれだけ兵器推進善業に失望したかを簡潔かつ的確に表現していた。

だが、強田に隕石の説得から逃げる事も引く事も失敗する事も、なに1つ許されていない。

隕石の説得に成功してこの国を救う。それだけだった。

しかし……

「上の連中のスキャンダルを全部知ったくらいでその国の全てを知った気になるのって、気が早過ぎるって!」

「大を護る為に小を捨てるのは、悪党のする事だから」

「この国のガキ共を皆殺しにする気か?」

などと言った精神論的な台詞しか吐けない強田。

無論、論理的かつ長期的にダメージヘアー星人との戦いを見据える隕石の心に届く訳がない。

寧ろ、強田より隕石の方が賢そうに見えてしまう。

(あの戦争愛好馬鹿どもぉー!ぜんぜんこの国を護ってねぇじゃねぇか!)

そんな追い詰められた強田を見かねたのか、あの未来からやって来た生霊達も隕石の説得に加勢する。

「我々のこの姿を視て下さい!今あなた様に見捨てられると、地球は確実に敗けてしまいます……ですから、ですから今一度!お考え直しの程を」

が、兵器推進善業に裏切られ続けた隕石の心に、未来からやって来た生霊達がここまでやって来るまでに味わわされた苦痛の数々さえ届かなかった。

「貴方方をその様な姿に変えない為に私達はこのエリアを離れるのです。あの者達にこの星を汚させない様にする為に」

一方、強田を怨人に変えたもう1つの霊……兵器推進善業の魔法少女への妨害行為のせいで巨大怪獣に殺された女性の死霊は口を閉ざして隕石の説得に参加しようとはしなかった。

「その者が最もよく知ってるようですね?私がこのエリアに居てはいけない事実に」

強田は完全に焦っていた。油断していると全ての台詞が敬語になってしまいそうなくらい焦っていた。

だが、相変わらず強田が吐く台詞は、根拠が無い精神論的なものばかりであった。

隕石の光は更に強まり、そして、隕石そのものと共に消えた。

 

終わった……

 

真っ暗になった倉庫内で愕然とする強田。

強田は、兵器推進善業や自身の祖父に足を引っ張られ過ぎて、失敗が許されない戦いに敗北したのだ……

そして、この国の未来が完全に終わった瞬間を目撃してしまったのだ……

 

兵器推進善業中東支部の主要人物達が転送された場所は……何も無い真っ暗闇であった。

「何だ……ここは……」

「照明!照明は無いのか!?」

「一体、何がどうなっているんだ!?」

お望み通りに照明が点灯した。

「って、空っぽだぞ?あの日本を裏切った糞は、我々を―――」

「見覚えが無いかい?この場所の事」

強田の声が響き渡るが、その声はどこかいつもの覇気が無い。

一同は強田の言ってる意味が解らなかった。

そこで、叩が挑発的かつ説教的に問い質す。

「大義の為に戦っている我々の貴重な時間を奪っておいて―――」

が、強田が背を向けながら放ったパンチがそれを遮った。

「その裏切り者面を俺に見せるな。あの糞石共の完全に見捨てられたくせによ」

それを見た飛鳥井当主が慌てて問う。

「何をしている!?それに、その格好は何だ!?早く男に―――」

「うるせぇ!」

強田は確かに怒り狂っていた。だが、その割には覇気や元気と言ったモノが全く感じられない。

当然だ。隕石の説得に失敗し、この国の未来を完全に終わらせてしまった張本人だからだ。

「お前らいい加減にしろよ!もっと現実を視ろよ!意見を聴けよ!下々に触れろよ!お前らの自分勝手な理想に自分の国を巻き込むんじゃねぇよ!迷惑なんだよ!死ぬんだよ!滅びるんだよ!」

兵器推進善業の全てを否定するかの様な強田の台詞に、叩が怒りに任せて殴りかかるが、

「テメェの腐った面を俺に見せるなって言ってるだろ!」

強田の念力に吹き飛ばされて近くの棚にぶつかる叩。

一方の強田は、叩がまだ生きている事を確信した途端、悔しそうに舌打ちした。

「チッ!もっと出力を上げれば良かった」

失神した叩を無視すると、殺意と怒気に満ちた眼差しを飛鳥井当主に向けた。

「後はてめぇだ!何で貴様は何時まで俺にこだわる!?あの糞男は、俺の他にも多くの女を産ませたじゃねぇか!何でそっちの方は視ない!?」

それに対し、飛鳥井当主もまた怒気に満ちた台詞を吐いた。

「あんな無能な女共には何も期待せん!そのくらいの事も見抜けないのか!?」

強田は頭を抱えた。

「……古い……古過ぎる……男尊女卑なんか今時流行んねぇよ」

「何を言っている!?それが飛鳥井家次期頭首台詞か!?」

「ちげぇよ!俺は飛鳥井家次期頭首じゃなくて強田護だからよ!」

「なっ!?なっ!?」

強田は、飛鳥井当主に話す事など何も無いといった感じで、兵器推進善業のお偉いさんと思しき人物の腹部にアッパーを見舞った。

「ぐえぇ!?」

「なにテメェが護る筈だった国の未来の足を引っ張ってるんだ?と言うか、兵器とか言う何の役にも立たねぇ粗大ごみを買い取ってる暇があったら、もっと現実を視ろ。そして恵め」

目を覚ました叩の怒りは既に限界だった。

故に、飛鳥井当主の意見を無視して発砲するが、強田にはまるで通用しなかった。

「何をしている!?飛鳥井家次期―――」

「うるせえぇ!この化物を生かしておいたら、日本は反戦と言う恥を背負い続けるんだぞ!」

強田は頭を抱えた。

「お前、いい加減にしろよ馬鹿無脳。まだ負け足りないのか?まーだ負け足りないか?」

「なんだとぉー、お前は戦争を何だと思ってるんだ!?」

「だからお前は負け足りねぇって言われるんだよ!1回で良いから手足失ってみろ。そんなふざけた事が言えなくなるぞ?」

強田が空になった倉庫を見渡しながら言い放った。

「ここは……お前達がかき集めた糞石共を保管していた場所だよ。証拠である糞石共は、お前達を見捨ててどっか行っちまったけどな」

「ふざけるなぁー!地球を蝕む巨大怪獣共を滅ぼす為の兵器の材料を……貴様ぁーーーーー!」

強田の念力に吹き飛ばされてる叩。

「今なら糞石共がお前達を見捨てた理由が解る。銃弾や砲弾なんて、使ったら直ぐに消える。だが、人の体内に入っちまえば……直ぐに消える事は無いし、いずれは何かの役に立つかもしれない……それが、お前達に1番足りない物だった……」

そして、強田は飛鳥井当主にこう宣言した。

「俺は諦めない!飛鳥井は必ず辞めるし、男も強田も絶対に辞めない!それと、この国の未来も諦めない!おれのお袋からプレゼントである……飛鳥井家に置き去りにされると言う苦痛と苦労に賭けて……」

 

そこへ、1人の兵士がやって来た。

「ここにおられましたか!?」

それを見た叩が命令するが、聴き入れて貰えず、それどころか、

「緊急事態です!魔法少女がこの国への違法入国を試みようとしています!その数、およそ20!」

強田がライラ達を1度は疑ったが、直ぐに自分がしでかした取り返しのつかない失態を思い出して否定した。

(だとすると……あの転売ヤー共か!?)

 

一方、最上座に座っていた祭高明が居並ぶギャング達にシャンパンが配り終わるのを気長に待っていた。

しかし、

「ボス!……元譲からあまり嬉しくない報告が」

だが、祭が慌てる事は無かった。ある程度予想していたからだ。

「あの兵器推進善業の時代遅れ共……やはりこうなりましたか?では、あの国での狩猟は今夜が最後と言う事で」

2番目に偉い人が座るべき席に着席しているギャングが、今回の強田の隕石の説得に失敗した事について指摘する。

「ボス、やはりエメラードにこだわらずに予定を早めた方が良かったのでは?」

しかし、祭は首を横に振る。

「いや、隕石があの時代遅れ共を裏切ったとなれば、Risquemaximumが何らかの動きを見せて来る筈です。そのストッパーは多いに越した事は無い筈です」

全ての席にシャンパンが配り終わった事を確認すると、祭はおもむろに立ち上がり、

「祈りましょう。今夜の狩猟の成功を」

まるでその言葉が乾杯の音頭であるかの様にグラスを持ち上げるギャング達。

「今夜があの国での最後の狩猟になる。あの時代遅れ達にも、僕達のビジネスの有効性を理解して欲しかったものを……」

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