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新たな巨大怪獣が出現したので、魔法少女達が次々と出動したが、1人だけライラ達と揉めているのを強田が発見する。
「何で私は待機なんですか!?」
「待機?アイツ出ないのか?」
強田は引き返して立ち聞きした。
「駄目だ。お前は待機だ」
「そんな!?私のどこが駄目なんですか!?」
ライラの隣にいた役員がサラッと答えた。
「ハッキリ言いまして……
「そんな事ありません!」
「いいや、お前は今週、何回強制出動させられたと思う?」
強田はコケそうになった。
(ただの働き過ぎかよ!?)
「でも……私はまだ戦えます!」
イライラし始めたライラの声がどんどん大きくなる。
「クドイ!お前には3日間の休憩を命じる!これは命令だ!」
「命令……」
待機命令に食い下がっていた魔法少女も、ここまで強い口調で命令されて渋々引き下がった。そして、力無く出動する魔法少女達とは逆の方向に歩き始めた。
待機を命じられた方を追おうとする強田だったが、
「お前は出撃だ。曙夏芽の分もな」
強田が舌打ちしながら振り返った。
「もー!追っちゃダメかよ?」
ライラが呆れる様に言い放った。
「お前は曙とは違う。お前は出動ろ」
「でもよ……」
力無く歩く夏芽の背中が異様に寂しそうだった。
「ほっといて良いのかよ?あれ」
ライラが溜息を吐きながら言い放った。
「本当はこんな事をしてる場合じゃないんだがな……曙は元ホームレスで両親も共にホームレスだ」
強田が少しだけ驚いた。
「ホームレスって、あの町の片隅に転がってるアレか?」
「そうだ。曙の両親は家も無ければ仕事も無い。誰もあの2人を必要としなかった。そんな2人が傷の舐め合っている内に出来たのが―――」
「あの女か?」
ライラが辛そうに首を縦に振った。
「だから曙は……必要性や役割に貪欲なんだ。過剰な程にな」
何を思ったのか夏芽の方へと歩こうとした強田だったが、
「だからって、お前に待機命令が下った訳じゃないぞ」
強田が舌打ちしながら振り返った。
「寧ろ、お前が積極的に出動して曙が休暇を取り易くしてやれ」
「はいはい。解りました。よ!」
強田は、夏芽の事を気にしながら渋々出動した。
「巨大怪獣、超能力許容限界値を突破します!」
「グオォーーーーー!」
巨大怪獣との戦いを終え、夕食の時間になったので食堂に集まる魔法少女達。
そんな中、今日は待機だったせいか、どこか気が引ける夏芽。
そこへ、強田が馴れ馴れしく夏芽に話しかけた。
「よっ。今夜時間ある?」
強田が夏芽を連れてキャバクラにやって来た。
「なんて言うか高そうなお店だね?」
「俺は行き慣れてるけどね」
夏芽は驚いた。
「結構行ってるのぉー!?こんなに高そうなのにぃー!」
「しっ!声が大きい。他の客に迷惑だぜ?」
強田と違って居酒屋に行ける程の金に無縁だった夏芽は周りをキョロキョロする。
が、強田は不意打ち気味に夏芽に話しかけた。
「あいつら、お前の仕事中毒が気に入らないらしいな?」
それが何を意味するのかを悟った夏芽が驚いた。
「観てたの!?ライラさんとの喧嘩を!」
一方の強田は冷静そのものだった。
「あまりにも珍しいからな。自慢じゃないが、魔法少女に変えられるまでは、ここまで真面目な奴には出会えなかったからな」
(本当に自慢じゃないよそれ)
そこへ、かつて強田に敗けたヤンキー達が笑いながら入店した。
「いやぁー♪強田の野郎がいなくなって清々するぜ!」
「枕を高くして眠るって、正にこの事っすねぇー。いやぁー、やっぱ自由って良いでやんす♪」
「お陰で俺達の天下だぜ!」
黙って聞いている心算だったが、強田のおでこに青筋が浮かぶ。
「で、強田の野郎ってどうなったけ?」
「魔法少女相手になんかやらかしたって言う話は小耳にはさんだっすけど、その先が一切無いのが不気味っすねぇー」
「おいおい。知らねぇのかよ?」
(そいつと一緒に魔法少女やってますよ……)
「きっと殺されたんだろうねぇ……」
「いやぁ、きっと死んでるっすよ。そう信じましょでやんす」
「その方が俺の為俺達の為だよな!?」
(勝手に殺すな!だから死んでねーっつうの!)
強田がヤンキー達と喧嘩しそうだったので、夏芽が慌てて立ち上がった。
「あー!私達、やらなきゃいけない事が山積みだった―――」
夏芽の言葉で冷静さとキャバクラに来た理由を思い出し、不意打ち気味に夏芽に話しかける強田。
「3連休初日なのにか?」
「!」
図星を突かれて驚く夏芽。
「あいつらに休暇を押し付けられたのがそんなに悔しいのなら、2度と休暇を押し付けられねぇ様にしてやれば良いんだよ」
「……出来るの?」
強田が悪徳詐欺師の様な顔をしながら言い放つ。
「本当は……遠くで偉そうにしてる無能は大嫌いなんだが―――」
酒が入ったからなのか、例のヤンキー達が更に偉そうな事を言う。
「強田の野郎ー、もうこんな美味い酒が飲めねぇんだよなぁー♪」
「アイツの分まで飲んでやるっすねぇー♪」
「強田のお通夜祝いだぁー♪」
だが、さっきと違って強田は冷静そのものだった。
「……強田……さん……大丈夫……です……よね……?」
「ハッ!あんな雑魚擬き、ほっとけば良いのさ。仕事を欲しがるアンタと違って、目の上のタンコブが勝手に死ぬのを待つ事しか出来ないカスだ。我ながら大人げ無かったぜ」
(あの大五郎ヘアーとは無関係そうだしな)
またしても巨大怪獣が出現し、強田がそれにあたろうと出撃する。
だが、今回の敵の様子がいつもより変なのだ。
「巨大怪獣の反応……消滅!」
「超能力許容限界値は!?」
「計測……出来ません!」
「計測不能!?魔法少女以外の方法で消されたと言うのか!?」
そんなオペレーター達とライラの会話は……完全に見当違いだった。
その間も巨大怪獣の攻撃にさらされる強田達。
「消滅したんじゃない!透明になったんだ!」
透明な巨大怪獣からの攻撃に他の魔法少女達が慌てる中、強田が飛翔して高層ビルの屋上に向かった。
「何をする気だアイツ?」
「あれで囮の心算なのか?」
「肝心の私達が見えないと意味が―――」
だが、他の魔法少女達の疑念と心配をよそに、強田が透明な巨大怪獣の攻撃を楽々と払いのけた。
「ふっ……卑怯なだけあって、攻撃に重さを感じないな!?」
「え!?」
「アイツ!?そんなに探索得意だっけ!?」
「でも、まるで判ってたって動きだよ!?」
その後も透明な巨大怪獣が強田を攻撃し続けるが、ナイスタイミングで小型シールドを張り続ける強田。
「あんな……何所から来るか解らない攻撃相手に、あんな小さいシールドだけで!?」
「やっぱり見えてるよアイツ!」
透明な巨大怪獣もそれを察したのか、正体を現しながら強田との距離を広げる。
「巨大怪獣の反応が出現!」
「何!?」
テングザルとオウギワシを同時に兼ね備える巨大怪獣が口を大きく開け、口から多くの人々に嫌われているアノ音を発した。
「おい!こんな時にオナラする奴があるか!?」
「私じゃない!」
「私も違う!」
「じゃあ誰!?」
魔法少女達が嫌な予感がした。
「まさか……」
そのまさかである。
巨大怪獣は口から屁を吐いたのだ、
巨大怪獣の屁の臭いにもがく苦しむ強田。
口から屁を吐く事で強田の目を封じたと思い込んだ巨大怪獣が再び透明になった。
「巨大怪獣の反応……消滅!」
ライラは、自分達の情けなさに絶句した。
「……遊ばれているのか?」
巨大怪獣がここぞとばかりに屁の臭いに苦しむ強田を襲う。
「しまった!」
と思いきや、強田が出現させた小型シールドが巨大怪獣の攻撃を何度も阻んだ。
透明なのに驚きを隠せない巨大怪獣に対し、やっと屁の臭いから解放された強田がクスッと笑った。
「透明になれる上に口からオナラを吐くのか……反則技のオンパレードだな?」
強田が飛行しながら巨大怪獣のお腹にパンチを入れた。
「え?えーーー!?」
気を失った巨大怪獣が実体化しながら墜落した。
「あー、危なかったぁー」
そして、強田が両手に光弾を握り締めながら巨大怪獣目がけて落下する。
「でやあぁーーーーー!」
強田は、両手に光弾を握り締めながら上方で両手を組み、そのまま振り下ろして鉄槌打ちを見舞った。
「巨大怪獣、超能力許容限界値を突破します!」
耐えきれなくなった巨大怪獣が黄色い煙となって消えた。
が、
「うえっ!?こいつ!口から吐く屁も臭いが、死体の最後っ屁化もめっちゃ臭い!ふざけんじゃねぇよおい!」
透明な巨大怪獣相手に大金星を奪った強田に駆け寄る魔法少女達であったが、
「あんた、なかなかやるじゃん!」
「って!?臭い!」
「お前……染み付いてるぞ?さっきのオナラが」
「帰ったら風呂入った方が良いわよ!マジで!」
強田もこの臭いに呆れた。
「やっぱ臭いか?本当に卑怯のオンパレードだったぜアイツ!?」
だが、あの話題から逃げる訳にもいかないので、勇気を持って話を続ける魔法少女達。
「しかし、アンタにあれ程の探索能力があったなんて」
が、強田が嬉々として首を横に振った。
「いや、あの卑怯者を発見したのは俺じゃない」
「え?」
予想外の返答の意味が解らず困惑する魔法少女達。
すると、夏芽が瞬間移動でやって来た。
「夏芽!?」
「あんた謹慎中じゃ?」
強田が意地悪そうに言い放った。
「謹慎中なのにだと?こいつは出動してないぜ?」
謎が謎を呼ぶ言い回しにさらに困惑する魔法少女達。
「どう言う……事?」
と、ここで種明かし。
「こいつ、遠くて安全な場所で、俺に偉そうに命令してただけだぜ?」
魔法少女達がやっと合点がいった。
「って事は、あの巨大怪獣を探索して見つけ出したのは……」
「そう。こいつだ」
そう言えば、夏芽の周りに複数の鏡が取り巻いていた。
「俺達が使う物質生成は、想念を実体化させる超能力……なんだろ?」
「だから、探索や遠見に特化したアイテムを出現させて、それで得た情報や戦況をテレパシーで伝えた?」
強田が意地悪そうに言い放った。
「つまり、アイツは出動せずに安全な場所で命令してただけなんだよ」
強田の言い分に呆れるライラ。
「まったく……言ってくれるよ」
だが、その割には笑顔を浮かべるライラ。
「こんな悪知恵がすんなり浮かんで実行出来るとは。強田護……あの子はひょっとしたらひょっとするぞ?」