これで、終わりだ!!
やったぜ!
(後書きに続く。)
間違いない。あのスナイパーは、ここにいた。
しかもよく見ると、わずかだが、ま新しい血が道路に付着している。
先ほど、自分がライフルで攻撃した時にかすったのだろう。
(運があるんだか無いんだか。)
だが好都合だ。ここで確実に仕留めてやる。
ーー油断していたからなのだろう。
何気無く後ろを振り返ると、そこには敵の姿。
「!!」
声を出す暇もなく、相手の右手に装備された接近戦用のブレードが眼前に迫る。
左手に持っていたブレードを勢いよく前に出す。
ブレード同士が接触し、激しく火花が散る。
クソッ、油断した。いつの間に居やがったんだコイツ。
アラームがならなかったので油断した。では、済まされない。危うく、頭と体が泣き別れるところだった。
だが、どうしてアラームが鳴らなかったのか。
その答えは、相手を見て分かった。
ー地形透写迷彩。
文字通り『写す』事で迷彩をその地形のカラーリングパターンや質感を出すことが出来る迷彩だ。
これなら、ギリスーツと呼ばれるスーツをいちいち着用しなくてもいいし、
素早く、かつ、完璧なカモフラージュを保つことが出来る。
まさに、万能迷彩という奴だ。
ーーしかし、この迷彩には欠点があった。
それは、『地形を透写するために自分を地形につけ続け無くてはいけない』というものだった。
手のわずかな動きでさえ、迷彩はそれに合わせようとする。
その際に生じる地形の『読み取り』のタイムラグは決して短いものではない。
それを逃げなが行うというのは事実上不可能だ。
ということは、まさか相手は····
«···会心の一撃を防がれるとは···少しショックだな。»
無線から聞き覚えのない声がした。地形投射迷彩を装備した目の前の相手が語りかけている。
声音は低く、落ち着いた印象を持たせる様な声だ。
内心、相手がこちらに語りかけた事に驚きながら、それを声に出さないようにし、相手に言う。
«ショックと言う割には、随分と落ち着いているじゃねえか。»
«それは、お互い様だろう、『ホワイトウルフ』、いや、『ホワイトフォックス』と言ったか?»
確かにな、と苦笑しつつ相手の動きを注意深く観察しながらも、先ほどの声をボイススキャンにかける。
«しかし、二対一とは、卑怯じゃねえか、なぁ、»
出た、スキャン結果が。名前はーー
«『カーマイン』さんよ。»
名前を言いながら内心絶望的な気分だった。
コードネーム『カーマイン』、男性、暗殺者だ。
その卓越した技能も優れることながら、相手の心理を見抜く観察眼にも長けており、
彼が行う暗殺の成功率は100%とも言われている。
«悪く思うな、こちらも仕事でな。»
«仕事っていうは?»
«一つは、彼を援護する事。もう一つは»
カーマインが先に動いた。少し遅れてこちらも動く。
«お前を殺す事だ»
カーマインの振るブレードの軌跡を予測し、合わせようとブレードを振るが、カーマインはバックステップをする。
マズイ、空振りだ。
フェイントに成功した暗殺者は踵でブレーキをかけるとブレードで突き攻撃を繰り出す。
左手に持つブレードを逆手に持ち、迎撃。
火花が散るも、それも一瞬。
カーマインも突き攻撃を防がれると解ると慌てたのか、また、一歩下がった。
その拍子にブレードを落としー
勝機。ここを攻めない手はない。ここで決める。
相手の顔は見えないが恐らく驚愕に包まれた顔をしているのだろう。
···いや、待てよ、違う!これはー
理解が脳を貫くよりも速く、体は反応していた。
ブースターを駆使しながらバク転するのと同時に銃弾のショックウェーブが、耳元を通りすぎる。
バク転しながらもカーマインのいる方向に向かって、ライフルの引き金を引きまくる。
相手もコンマ秒の差もなく、落ちようとしていたブレードを思い切り蹴った。
柄の部分を蹴られたブレードは重力を逆らい、こちらを向かってくる。
避けれない。だが、その攻撃はすでに読んでいた。
持っていたブレードを空中で投げ、ブレード同士で相殺させる。
空中で弾き合ったブレードの一つは、そのままカーマインがキャッチし、
もう一つは、カーマインの後ろにある電灯を切断しながらもどこかに吹き飛んでいった。
カーマインもジャンプし、手に持ったブレードをこちらに向かって振った。
(感服した。まさか、『彼』の狙撃を土壇場で読むとはな。)
カーマインは目の前の敵に対して素直な感想が胸の中に出ていた。
(だが、これで終わりだ。)
スローモーションの様な時間が流れる。
短く、それでいて濃密な攻防もこれで終わりを告げるだろう。
カーマインの勝利という形で。
ヘッドユニット越しで相手の顔を見る。そして、全身に悪寒が駆け巡った。
そこにあったのは不屈の瞳だった。断じて、敗北者の瞳ではない。
相手が、左手に何かを持っていた。小型のグレネードランチャーだ。
だが、こんなに近ければ相手もダメージをうけるだろう。
(それも覚悟の上というわけか!)
«カーマイン、避けろ!!!»
仲間の狙撃手の忠告。しかし、間に合わない。慌てて顔面をガードするも、もう遅い。
グレネードが放たれる。
カーマインの上に。
爆発が、カーマインを襲った。
スナイパーこと、『デルタ』は、その光景を見ていた。
とはいえ、彼もただ見ていただけではない。カーマインの援護もした。
化け物染みた運動性能と奇抜な発想の回避さえなければ、ヘッドショット確定だったはずだ。
だが、そこから先の戦闘はデルタの予想の範疇を大きく越えていた。
そして今、カーマインが爆発に巻き込まれていた。
敵の放ったグレネードランチャーによって。
しかし、相手は、爆風を食らっていない。何故なのか。
ーー種明かしすると、切断された電柱だ。
先程、カーマインの蹴ったブレードと相手が投げたブレードが空中で、弾きあった。
その際、カーマインはブレードをキャッチし、もう一つは近くの電柱を切断した。
しかしよく見ると柄に細長い糸の様なものが見えたと思うと相手はそれを思い切り引っ張った。
ワイヤーだと気付いた時にはもう遅かった。
しかも、カーマインからは死角になっており、彼はそれに気付いていない。
切断された電柱の一部を引っ張られたブレードがまたもや切断、
カーマインいるの方向に電柱が倒れ始めた。
カーマイン本人は相手が持つグレネードランチャーに対し、ダメージを最小限にするため顔をガードした。
当然の判断だ。
ーー自分の後ろから、電柱が迫って来ているとは気付かずに。
だが、そのまま敵がグレネードランチャーを撃てば、撃った本人も爆発に巻き込まれてしまうだろう。
かといって何もしなければ、カーマインごと電柱に潰されてDEAD ENDだ。
生きていたとしても、負傷は免れない無いだろう。
手負いの所を狙撃された場合、先程の様な回避は満足に出来ないだろう。
要するに自爆だ。どうしようもない。
そう思っていた。
ーー倒れ始めていた電柱にグレネードランチャーを当てるまでは。
当たったグレネード弾は電柱を破壊するだけには留まらない。
爆発した電柱の前には彼がいた。
運悪く、グレネード弾の有効範囲内にいたカーマインが。
両腕で顔をガードしていた彼に唐突な後ろからの爆発に対処できる道理はなかった。
彼は背中から爆発に巻き込まれた。対して敵はノーダメージだ。
当たり前だ、爆発はほとんどカーマインが受けている上に、わざわざ彼から接近していたのだから。
電柱に潰されず、爆風はカーマインで防げる。一石二鳥だ。
これは、偶然の産物なのか?それとも、狙ってやったことなのか?
どちらにしろカーマインはもう戦闘不能だろう。
化け物め、
デルタは、自分でも知らず知らずのうちに畏怖と共に振り絞るかのようにそう呟いていた。
まだ、続くだと······!?
デルタ「俺、あんまり活躍してないじゃん」
・・・・・。
デルタ「タイトル詐欺じゃん」
すいません。こんなに長くなるなんて思ってなかったんです・・・。
というわけでプロローグなのに次回も続きます。