と言うか、ぶっちゃけ、将兵のこと忘れていました。
主人公なのに何でだろう?
PMC社長の1日は忙しい。
仕事を受注したりされたり、日程を考えたりしなければならないからだ。
(将兵が問題児でなければなぁ)
もしも、そうであったなら仕事も格段に増えただろう。
だが、現実は非情だ。将兵は問題児だ。それも、どうしようもなく。
腕は確かなのだが、素行が酷い。少なくとも、態度が良ければ良かったのだが·········。
それだけではない。エストバニアとエーメリアスの動向も仕事柄、調べておかなければならない。
問題は山積みだと思うとまた、ため息が漏れた。
今年で60歳。そろそろ違う仕事も検討した方がいいのかもしれない。
そんな、柄にも無いことを考えていた時だった
ジェット音とともに何かが凄まじい勢いで通り過ぎていった。
その数秒後、突如として爆発が起きた。
驚く暇もなく窓から外を覗くと第二射、第三射が発射される。
小型ミサイルだ。
外にいた民間人にはあたっていないが、爆発の衝撃で割れたビルの窓のガラスが
落ちていく。かなり危険だ。
それによって外は大騒ぎになっていた。
だが、視線は下ではなく自然に上に向かっていた。
「···········何なんだ、あれは」
それをどう表現すればいいのか分からない。強いて言うのならば、
「空中戦艦、なのか、あれは······!!」
デカイ。とにかくデカイ。大きさは筆舌に尽くしがたいし、
形も大小大きな箱に薄く長い羽根を取り付けたような形だ。
良く見るとその箱の一つから何かが落ちてきた。
丸く、円盤状の形をしたそれは、途中でパラシュートを開きながらゆっくりと降下していく。
一つではない。空を覆い尽くす程の落下傘が落ちていく。
着地と同時に開き、中からパワードスーツを着た兵士が銃で威嚇射撃をしながら出てきた。
悲鳴がさらに大きくなっていく。
その中にはいつもサービスしてくれた酒屋の親父やバーのママ、
いつも挨拶を欠かさずにしてくれた愛嬌のあるお調子者もいた。
いくら威嚇射撃とはいえ当たりどころが悪ければ最悪、重傷を負うだろう。
ボスの口からまたため息が漏れた。
だが、時間はまだある。すでにアイツが動いているはずだ。
流れる様な手つきで近くにあった本棚を押し、扉の鍵を開け、
中に懸けておいたタクティカルスーツを素早く着る。
現役を退いて尚、手際の良さは色あせない。
小道具、多目的ポーチ、持てるだけのマガジンと爆発物を装備し、年季の入ったホルスターに
ハンドガンが問題ない事を確認して入れる。
最後に掛けてあったアサルトライフルを手に持ち、無線機を装備する。
銃のグリップを握っていると、そこから体に活気が流れ込んでいく。
戦場で培ってきた往年の感覚が蘇ってくる。
銃一つあれば、どんなに困難な戦いでも必ず勝ってみせるという自信が湧いてくる。
「さてと、じゃあ始めるか」
「将兵達が無事だといいが」
「ふははははははは! 圧倒的じゃないか、我が軍は!」
空中戦艦のブリッジの中に男の声が響いた。
体は小柄で髭を生やしている。
本人はそれはそれで威厳があるだろうと思って髭を生やしたのだが、顔が童顔の上、
どこか抜けた性格をしているため、まるで威厳がない。
しかし、この空中戦艦の艦長という地位についており、野心家でもある彼は
今の状況について笑いが止まらない。
軍団を率いて人工島に攻めろ、と言われたときは、緊張したものだがそれもうまくいった。
もう一つの任務も成功させられれば、完璧だ。
これ程の作戦を任され、成功すればさらに地位も上がるだろう。
「グフフ・・・・ゲヒェ、ゲヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・・」
想像すればするほど笑いが止まらない。将来は安泰だ。
「「「・・・・・・・」」」
「フフフフフフフフフフ・・・・ハッ!?」
そんな艦長を乗組員達は生暖かい目で見守っていた。
「何なんだよ、あれは!?」
誰かが叫ぶ。
「くそ、化け物がこんなの聞いてないぞ!!」
だが、叫んでいるのは市民ではない。降下してきた兵士達だ。
一部隊と互角に戦っているのは一人の男だった。
いや、互角と言うのもおこがましい一方的な戦いだ。
一人の兵士が男に向かってアサルトライフルを撃ちまくるが、既に男はいない。
仲間の警告が聞こえたと同時に頭が吹き飛んでいた。
間欠栓から飛び出る水のように兵士の首から血のシャワーが噴き出す。
動揺した兵士の顔に男の鉄拳がめり込み、近くに停めてあった車ごと吹き飛ばす。
その力、圧倒的。
「くたばれ化け物が!!!」
仲間の静止を無視し、兵士が無謀にも男に接近。手には大型ナイフが握られていた。
渾身の突き攻撃を片腕だけで受け止め、そのまま肩を捻り折る。
兵士の苦痛の声が漏れる。
だが、それも一瞬。兵士は痛みにこらえながら男を見ると笑いながら言った。
「腕の一本や二本くれてやるよ」
だけど、
「こいつもついでにくれてやる!!」
腰に提げてあったグレネードのピンをいきよいよく引き抜く。
男が手を離して爆発から逃れようとするがそうはさせない。
折れていない無事な方の腕で相手に抱きつく。と
仲間の兵士の一人が男の体にしがみついた。
「お前、なにやってんだ、爆発するぞ、早く逃げろよ!!」
「お前がここで自爆してどうする!? 作戦はまだ始まったばかりだぞ!!」
男と腕の折れた兵士を強引に引き剥がし、反撃をギリギリのところで避ける。
さらに腰に提げていたグレネードを投げる。
爆発。だが、倒れていない。
「俺からもプレゼントだ!」
発砲音に気づかなかった。たったそれだけのことが兵士の命運を分けた。
投げようとしたグレネードがいきなり爆発。
至近距離で食らい、動かなくなる。
「狙撃か!?」
それが遺言だった。援護していた兵士の。
ロケットランチャーを持つ別の兵士が咄嗟に男に向かって発射。
直撃し、爆音に包まれる。
「あいつはどうなったっ! グレネードが誘爆したようだが!」
「粉塵で前がみえな」
隣にいる仲間の兵士が吹き飛んだ。
入れ替わりに仲間の血で真っ赤になった男が目の前にいた。
今までは相手の動きが速かったのと仲間が殺られたことに気が動転していたが、
近くにいてやっと男の正体が分かった。
新型のパワードスーツを着ている。どうりで強いはずだ。
思考は一瞬。ワンテンポ遅れ、回避に徹する。
悪魔の破壊をもたらす拳を皮一枚で避け、続くハイキックを顎を引いて回避。
そのまま踵落としに繋げてきた。休む暇もない。
ステップですんでのところで回避。
しかし、パワードスーツのもたらす殺人的な破壊力は地面を抉った。
コンクリートを削り、弾丸のような速度で周りに散っていく。
コンクリート片のいくつかが体を直撃すると同時に白煙が視界を覆っていく。
だが、見えた。足が文字通り地面に刺さって動きがとれなくなった相手の姿が。
右腕に取り付けた近距離専用の大型ブレードを展開。叩きつける様に攻撃する。
腕でブロックされるが、相手にとって不利な状況には変わりない。
「今だ、撃て!!」
周りの兵士達が続けて発砲するも効果は今一つない。
(あの機動性であの破壊力。装甲も厚い!これは短期決戦で潰さなければ勝ち目はない!!)
と、不意に相手の動きが止まった。故障か?
(いや、違う!!こいつはー)
パワードスーツに電流が流れ始め、全身が不自然に輝いているのを見て、全身が凍りつく。
(あの光、あれはまさかー)
「しまっ」
最後まで言えない。言おうとしたその前に相手の攻撃が炸裂した。
地面に陥没した足を軸に体を思い切り捻り横に一回転。
咄嗟に両腕で防御。
蹴る方の足に凄まじい電流が帯びながら回し蹴りが直撃した。
援護の攻撃はいつの間にか止まっていた。今起きた現象に誰もが手を止めていた。
本来ならパワードスーツの破壊力で兵士は吹き飛んでいたはずだろう。
先ほどと同じように。今まで通りに。
なら、これは一体どういう事だ!?
どうして、
どうして爆発が起こった!?
少なくとも回し蹴りが直撃しただけで大爆発はしない筈だ。
この光景は何かの冗談か何かなのか?
「あれは一体なんなんだよ!」
誰かが叫ぶが答えを知るものなどいない。
爆発の中、怪物がゆっくりとこちらに来ていた。
空中戦艦のブリッジの中では艦長が無言になっていた。
「a部隊、壊滅的損害をだしました!」
「c部隊も現在、交戦中です」
「艦長!」
「も、もちつけ!お前ら!!そ、そうだ、カリブ海に行こう!」
「艦長が落ち着いて下さい!」
状況はかなりまずい。
まさか、精鋭揃いのa部隊が壊滅させられるとは、予想外の事だ。
とは言え、他の部隊も交戦中で下手に動かせない。
援護射撃をしようとして民間人に当たったりしたら目も当てられないからだ。
どうすれば・・・・・・・
いや、こんな時だからこそ自分がしっかりしなくては!
「AAOFは出せるか!?」
「は、はい、可能です!!」
「なら、あれを使うぞ!」
「ッ、しかし、あれはまだ」
「いいから、やるんだ!このままじゃ仲間がやられちまう!」
しかし、まだ何か考えているのか、出そうとはしない。
無理もない。あれはそれほどの物だからだ。
「命令しか言えない。誰かに役目を押し付けるしか能がなくいつも見ているだけなのが俺達だ」
だけど
「だからこそ全部、自分達が命令の責任を背負う。これからも、この先も」
だから、
「自分たちの出来る限りの事をやって維持を見せてやれ!!!」
「「「「了解!!!!!」」」」」
ならば、これ以上は言葉は不用。
行動で示すのみ。
「ハッチ解放!!AAOF、発進します!」
さぁ、
「盛り上げて行こうか!」
起きて
起きて
まだ、眠るには早いよ
「·····誰だ?」
白い、限りなく白い世界で将兵は問う。
私? 私はね、
後ろから声が聞こえるのに体が動かせない。
肩に手が置かれる。
ゆっくりと後ろを振り向く。
そこには、悪夢が広がっていた。
辺り一面焼け野原になっており、死体だらけだ。
しかもよく見ると死体は全部少女の姿形をしていた。
「これは・・・・・・なんなんだ。誰が一体こんなことを?」
肩に手を置いた、全身血まみれの少女がこちらを見て笑う。
私はあなたに殺されたのよ
将兵の手にはいつの間にか拳銃が。
あなたが私達を殺したの
「嘘、だろ················」
だから
今度は
私が将兵を殺す番ね
「ひっ」
邪悪で歪んだ笑顔をしながら、少女は将兵に抱きついてこう言った。
もう二度と離さない。もう二度とこの手を離さない
ずっと一緒だよ
艦長が役に立たなさそうで立ったり、兵士が弱かったり、
パワードスーツの人がチートだったり。
ボスの活躍は次回で書こうと思います。