「扶桑海軍少佐、坂本美緒だ」
「百合ヶ丘女学院二年生、白井夢結と申します」
「同じく一年生、一柳梨璃です!」
扶桑海軍の女性士官に対し、リリィ二人は一礼して自己紹介を返す。
「先日は部下が大変世話になった。本当に感謝している」
「いえ、そんな大した事は…私こそ宮藤さんに命を救っていただいたので」
「命を?」
「ええ…実はあの時、ネウロイに撃たれて負傷してしまって」
「負傷…なるほど、治癒魔法か」
納得した様子の美緒はからりとした笑い声を上げる。そして、大きく二度頷く。
「部下が役に立ったようで何よりだ」
そうして、美緒は話題を変える。
「で、ついでのようで悪いのだが…我々はリリィという存在について全く知識が無くてな。ちょっと話を聞いてもいいだろうか?」
「私は構いませんが…少々お待ちを。梨璃、下がっていいわ」
「え、いいんですか?じゃあ、分かりました」
これは難しい話になるだろう。相手は芳佳達よりずっと上の階級、それだけに権限も大きく視野も広い。戦力の運用面など深い話にもなる筈だ。自分だけでは荷が重いかもしれない、夢結はそう考えた。
そして、夢結は天葉の元へ行く。そうして、何があったかを説明すると手伝ってほしいと頼んだ。
「ふーん、なるほど…」
「なになに、どうしたの?」
すると、依奈と茜に梅…この場にいた二年生達がやってくる。何かあったのかと集まってきたのだ。そして、夢結は再び何があったのかを説明する。
「うーん、説明か…向こうとの連携を考えるとやるべきではあるわね」
「私は構わないけど、その間に一年のみんなを休憩させておいた方がいいんじゃないかと思うわ」
茜がそう提案する。すると、梅が軍人達の方を見て言う。
「でも、堅苦しい話の隣で休ませるのもそれはそれで酷だろう」
「それもそうね。では…買い出しに行かせましょうか」
「それがいい。じゃあ、梅が引率しよう」
そうして、話は纏まった。二年生達は一年生一同を呼ぶ。
「梨璃、ちょっと飲み物とお茶菓子を買ってきて頂戴」
「え?お姉様は?」
「何かあるといけないから、私はここで待機しているわ」
「という事は、他に誰か…」
梨璃が周囲を見回していると、天葉が他の一年生に対して言う。
「一年のみんなで休憩ついでに行って来て。あ、そうだ樟美。異世界の人達に、進歩したのは科学技術だけじゃないって事が分かるようなものをお願いね」
「うーん…ああ、そういう…分かりました、天葉姉様」
意図を理解したように樟美は頷くと、他の一年と共に部屋の外へ出ていく。
「どこに買いに行こうか?」
エレベーターホールの前で梨璃が皆に問う。
「そうは言うけど、ここに買うところは無いよね?」
「いえ、雨嘉さん。コンビニありますよ」
「え、ほんと?」
驚いた様子の雨嘉に二水は頷く。しかし、軽く考えてから続けて口を開く。
「でも、ここのコンビニは省内の売店という立ち位置なので欲しいものが手に入るかどうか…働いている人が沢山いるので売り切れという可能性も」
「あー、そういう問題もあるのね」
すると、先頭を歩く梅が振り返ってこう言った。
「じゃあ、外に行こう。外のコンビニやお店で好きなものを買えばいい」
「そうですね、そうしましょう。梅様」
そんな一柳隊一行の後に続きながら、壱は首を傾げて樟美に疑問を口にする。
「樟美、天葉様の言っていた事ってどういう意味なの?」
「ああ、あれはね…食べ物の分野も大きく進歩しているって事だよ」
「料理の種類が増えたりとかそういうの?」
「それもあるけど、材料とか作り方、保存方法だって進歩しているよ」
「そうなの?」
「品種改良で農作物の味や大きさも変わっているし、昔は専門店じゃないと買えないようなものだって多かったの。例えば生菓子、今だとコンビニとかで普通に買えるけど、日持ちしないから昔はそれこそ作りたてをお店で買うしかなかったの」
「なるほど、そう考えると確かに…」
納得したように壱が頷くと、ある事に気が付く。この一行の中に亜羅椰の姿が無いのである。
「あれ?亜羅椰は?」
「あー、なんか疲れたから休むって。それで、今はマンゴーとかそういうのを食べたい気分だからそんな感じのデザートを買ってきてってさ」
「まったく、我が儘ね…」
月詩の亜羅椰からの伝言に壱はため息をついた。そして、一行は外出許可を得ると防衛省の外を目指す。都内のど真ん中だけあって周囲に店は多い、まず買い物に困る事は無いだろうと各々考えながら正門を潜っていった。
「さて…お待たせしました」
一方、控え室では夢結達が美緒の前に集まった。美緒の質問に答える為である。そして、各々軽く自己紹介を終える。一同がさて始めようと思った矢先、依奈が部屋の中に残った亜羅椰の姿を見て驚く。
「亜羅椰、行かなかったの?」
「ええ、こっちの方が面白そうだったもので。こんな異文化交流そうそうありませんし」
「まったく、余計な事はしないでよ」
「了解ですわ。おっと、失敬。百合ヶ丘女学院一年生、アールヴヘイム所属の遠藤亜羅椰と申します」
亜羅椰が自己紹介を終えると、夢結は話を戻す。
「それで、リリィについてでしたね」
「ああ。そうだな…まずはそちらの武器を見てもいいだろうか?独特な武器だとは聞いている」
「ええ」
すると、夢結はケースの中からCHARMを取り出す。
「これがリリィだけが使う事ができる魔法の兵器…CHARMです」
「ほう」
そうして、美緒はまじまじとCHARMを観察する。銃の様にも見えるが、巨大な刃も付いている。しかし、かといってその刃は外付けの銃剣には見えない。銃と剣、両方の機能が備わっている武器なのだろうと美緒は考える。
「この武器に付いている刃は銃剣ではないな」
「はい、近接戦闘用の刃です。ブリューナク…この型を含めて多くのCHARMは射撃能力と近接戦闘能力を有しており、必要に応じて形状を変形させる事で柔軟に戦闘への対応ができるようになっています」
その説明に極めて多機能な武器だと美緒は考える。しかし、機能を増やすと難点も生じるはずである。説明には変形とあったが、可動部が増えるとそれだけ整備性や強度の面で不安が出てくるし、それを補う為に重量も嵩む可能性は高い。未来の技術力や使用者の身体強化でその辺りの問題は解消しているのだろうか?
「一目見る限り重そうだ。使い勝手はどのような感じだろうか?」
「そうですね、未使用時は見ての通りの重さですが…マギ、つまり魔力がかかるとCHARMは軽くなり、強度も跳ね上がります」
「理屈はともかく軽量化できるのか…なるほど、そういう理由でもリリィ専用の兵器という訳か」
「ええ。一方、こちらはウィッチの様にどんな武器でも使えるという訳にはいきませんが」
いざとなれば拳銃や鈍器でも武器になるウィッチと比べると、その点では大きな差があるように美緒は感じた。自分達の世界にリリィが遠征してきた場合、その特殊な装備は補給や整備といった面で色々と難が出てくるだろう。今後、合同作戦を行う場合はそういった点を考慮する必要が出てくる筈だ。
「万が一、CHARMを失った場合は戦闘続行不能となるのか?」
「その通り。ただ、CHARMはマギの制御も行っている為、喪失した場合は防御も困難となってリリィの生存にも関わってくる問題となります」
CHARMが魔法の制御を行っているという点に美緒は驚く。
「契約した使い魔ではなく、そのCHARMが?」
「CHARMのコンピューター…いえ、機械によってマギの出力制御を行っています」
美緒はとても信じられないという表情を浮かべるが、一方で使い魔という非現実的な単語にアールヴヘイム二年生一同は目を点にしていた。
「機械が担うとして、どのように銃弾や刃に魔法…いや、マギを注ぎ込むのだろうか?」
「注ぎ込むという感じではありません。CHARMに刻まれた刻印から術式を弾に付与するという方式となっています」
「刻印?」
「見ていただいた方が早いかと」
そう言うと、夢結は整備用のマイクロスコープを工具箱から取り出す。そうして、CHARMの銃身内部の拡大図を端末に映し出す。その様子にも美緒は驚くが、画面に映し出されたライフリング表面を見て唸る。
「これはルーン文字か…?やはり、ウィッチとは何もかも違うな。欧州でもギリシア文字だし…」
「その、違うというのは?」
「これとはまあ異なるが…うむ、実際見た方が早いだろう。宮藤、ちょっと来い」
美緒は紙コップで緑茶を飲む芳佳を呼ぶ。そして、芳佳はお茶を一気に飲み干すと、急いで美緒の元へとやって来た。どうしたのだろうと言いたげな表情を浮かべながら。
「どうしました?坂本さん」
「ああ、宮藤。ちょっとシールドを出してくれ」
「え、シールドですか?分かりました」
そう言うと、芳佳の頭に犬のような耳が飛び出す。そして、青白い光が輝くと、この場にいるリリィ達は驚いたような表情を浮かべた。芳佳が何の道具も持たずに平然と魔法を使ったからであり、魔法の制御方法がまるで違うという実感も併せて得たのである。
「と、まあ…見ての通り、シールドには文字が浮かんでいる」
リリィ達はそのシールドをしげしげと観察する。そして、夢結は何かに気が付いたようにポツリと呟く。
「この文字、漢字だわ…」
「それに真ん中に書かれているのは梵字ですわね」
その呟きに亜羅椰が続く。
「梵字…仏教の」
「ええ、その通り。流石に読めはしませんが…周りの漢字は五行かしら?」
「魔法に関しての理論は丸っきり別物と考えてよさそうだわ」
一方、天葉はうーんと唸ると首を傾げる。
「なんだろう、ヘリオスフィアとはどこか違う気がする」
「使用者本人がそういうのならそうなんでしょうね」
「でも、ウィッチはみんなこれを使えるって…」
「こっちだと希少なレアスキルだっていうのに、無茶苦茶ね…」
間近で初めてウィッチのシールドを見たアールヴヘイム二年生達はそう語り合う。そして、そんな聞き慣れぬ単語を聞いた美緒が問う。
「その、レアスキルとは?」
「スキルはリリィが持つ固有の特殊能力みたいなもので、その中で強力なものをレアスキルと呼びます。様々な種類があって…うーん、そうだな…私の場合はこのシールドと似たような防御結界を作り出す能力ですね」
「そうか、こちらの固有魔法のようなものか」
「へえ、ウィッチにも似たようなものはあるんですね」
天葉が感心したように頷く。
そんなやり取りを続けていると、部屋の中に防衛軍の士官達がやって来た。その手に抱えているのは大量の資料の山と差し入れの菓子類や飲み物である。そんな彼らもやる事は美緒と同様、情報交換であった。
そして、資料を次々並べると早速説明が始まった。だが、それを見聞きした陸海軍の士官達から驚いたような声が次々飛び出す。
「どうしたんだろ?」
そんな様子に話し合っていたウィッチやリリィ達も釣られるようにそちらへ移動する。そこにあるのはこちらの世界の戦史を纏めた本の数々。大規模な水上戦闘、双方が戦車を用いた機甲戦、数多の軍用機が飛び交った大規模航空戦…ネウロイや怪異との戦いばかりで人間と人間の戦争は稀な向こうの世界の軍人達にとって、この資料の山は未知の戦訓ばかりでありまさに宝の山であった。
「どれも物騒な話ね…」
「彼らはプロよ。傍から見ればただの物騒な話でも彼らには価値があるのでしょう」
リリィ達は一歩引いた位置でその様子をただ見ていた。一方、防衛軍装備品のパンフレットを見た静夏は頭を抱えていた。その様子に芳佳がどうしたのかと尋ねる。
「ああ、いえ。性能がどれもただただ凄まじくて…」
「どれどれ」
そこには戦闘機らしき航空機の写真があり、その下に機体の紹介と性能が書かれている。そして、写真を見ると機体にはプロペラが無い。
「これって…ジェットエンジン?」
「そうです。そして、この最高速度を見てください」
「マッハって音速だよね。マッハ2ってどういう意味?」
「音速の二倍だ。とんでもないな」
「シャーリーさんの倍…」
芳佳の疑問に美緒が答える。しかし、それだけではないと言わんばかりに隣にいた海軍中佐が言う。
「射程もでたらめな数値ばかりで信じられんよ…この空対空ミサイルという欄を見てみろ、宮藤少尉」
「ひゃ…100キロって、そんな先までこんなのが飛んで行くんですか!?」
その数値に美緒もただただ唖然とする。書かれている通りならロケット弾のような見た目のこの兵器が100キロ以上先の航空機を攻撃するというのである。戦闘は目視内でしかできない彼らにとって、最早想像すらできない世界であった。
そんな最新装備の説明に半信半疑の表情を浮かべる者もあった、現実離れし過ぎて到底受け入れられない様子である。すると、防衛軍士官達は端末で動画を再生し始めた。動く映像なら理解が早いと考えたのだ。炎を噴き出しながらとんでもない速度で飛び上がっていく戦闘機、目標目掛けて勝手に飛んで弱点を的確に撃ち抜く誘導弾、まるで機関砲の様に連射する艦艇の艦砲…そんな映像を見た士官達が驚いた声を次々上げる。すると、美緒が尋ねる。
「何か対ヒュージ戦の映像はないか?」
「ええ、ありますよ。そうですね…これがいいか」
そして、タブレット端末が手渡される。それを机の上に置くと、ウィッチ達とリリィ達が覗き込む。すると、映像が始まった。木々を上から見下ろすような映像だ、どうやら空中から撮影されたものらしい。
「これ、飛行機から撮ったのかな?」
「それにしては動きが少ないような…先程のようなヘリコプターでは?」
「ドローン…いえ、無人機かと」
「無人機…」
夢結の口にした無人機という単語に芳佳の表情が曇る。それを見たリリィ達はどうしたのかと首を傾げた。そして、映像ではその木々の間には見覚えのある姿が並ぶ。
「あ、この前の遠征の時の映像だ。そういえば、広報か何かに使うって撮影していたっけ」
天葉がハッとしたように言う。そこに映っていたのはアールヴヘイム一行である。
『こちら司令部、目標付近の敵に動き無し。偵察情報通りに敵が展開していると思われる』
『アールヴヘイム了解。このまま前進し、目標地点を制圧する』
そんな無線のやり取りが流れると、アールヴヘイムは駆け出した。そのスピードは常人のそれよりずっと速い。そして、その進行方向には工場跡のような廃墟があった。これが目標地点でありヒュージが巣くっている場所なのだろう。
『月詩に辰姫!先に突っ込むのならそのままスモール級を建物の中から誘い出しておいて』
『了解!お任せあれ!!』
そんな無線が響くと、映像の中で二人が突出。正面方向の建物の壁に射撃を始めた。弾が当たり、脆くなっていた壁が崩れ落ちる。すると、そこから続々と小さなヒュージの群れが飛び出した。
『よし、かかった。撃て!』
他のリリィは少し引いた位置で三日月状に展開、ぞろぞろ出てきたヒュージに十字砲火を浴びせる。その間に突出していた二人は敵との距離を取る為に退避、そのまま建物の上へと飛び乗ると周囲の索敵を始めた。
「凄い跳躍力だ」
映像を見ていた美緒が驚いた様子でそう呟く。
『来るよ!多分ラージ級、正面の倉庫の中から出てくる』
『分かったわ、牽制お願い。接近戦で仕留める』
『はいはい。ほら来た』
そんなやり取りの後に倉庫の壁が吹き飛ぶ。その中には大きめのヒュージが一匹、建物の上に陣取った二人のリリィはその化け物に弾丸を叩き込む。必然的にヒュージの意識はそちらへと向けられると、光線を叩き込む。しかし、二人のリリィは屋上の床を蹴り既に宙を舞っていた。光線は建物を粉砕するが、リリィには掠りもしない。ヒュージは獲物を追撃しようと、視線をそのまま上へと持ち上げる。しかし、四方から斬撃。隙を突いて他のリリィ達が肉薄していたのである。そして、一人のリリィが大きく跳ねると、その勢いのまま止めの一撃を叩き込む。まるで羽の様にマギを纏うその姿…それはすぐ隣にいる天葉のものであった。
咄嗟にウィッチ達の視線は天葉へと向けられる。そして、当の本人は軽く苦笑い。
「まあ、その…もうちょっと続くので」
そんな天葉の一言に皆は視線を戻す。
『こちらアールヴヘイム、ラージ級を撃破』
『司令部了解。偵察情報ではギガント級が確認されているが、捕捉しているか?』
『未だ確認できず、索敵を続ける』
そんな無線のやり取りが続いていると、映像に変化があった。
『揺れている…地震?』
『いえ、建物が崩れているわ。中央の一番大きい建屋』
『つまり…本命はあそこか。亜羅椰、先行して』
『了解ですわ』
リリィ達は廃工場の一点を目指す。すると、カメラは崩落する建物を映す。刹那、その屋根が崩れ落ち、大きな砂埃が噴き上がる。そして、その砂埃の中に巨大な影が映る。
『いた!!ギガント級発見。アールヴヘイムはノインヴェルト戦術を仕掛ける』
『了解、こちらでも観測機が目標を確認している』
『茜、準備するからその間の前衛の指揮は任せた』
『了解、出来る限り削っておくわ』
『危ない、回避!回避!!』
映像の中ではヒュージが投げつけてくる大きな配管や鉄骨の残骸をリリィ達が次々避ける。そして、無線の中の聞きなれない単語に美緒は疑問を抱く。戦術というのだから何かしらの機動なり攻撃なりをするのだろう。しかし、それがどんなものなのか皆目見当が付かない。
『ノインヴェルト開始します』
光り輝く光球が飛んで行く。どうやら、後ろにいたリリィから放たれたものらしい。すると、芳佳が何かを思い出したように声を上げる。
「あ、これってあの時の」
「宮藤、これを見たのか?」
「はい、最初に白井さん達と会った時に」
「ほほう」
そんな会話をしている間にも画面の中の事態は動く。飛んできた光球をリリィが受け止め、別のリリィ目掛けて弾き飛ばしている。何をしているのかと美緒は画面を注視する。
リリィ達は手慣れた様子で光球を次々パスしていく。そして、次のリリィに光球が飛び込む。そのリリィは隣にいる天葉であった。すると、今度はこれまでのリリィとは違う動きをし始めた。巨大なヒュージ目掛けて勢いよく前進したのである。そして、地面を蹴って飛び跳ねる。
『フィニッシュショット、いっけえ!!』
そんな叫び声と共に猛烈な閃光が放たれる。そして、その閃光はヒュージに直撃、更に大きな閃光が場を包み込むと衝撃波と爆風が周囲に飛び散った。撮影機もそれに揺さぶられたのか映像が上下に揺れている。そして、土煙が消え去るとそこにヒュージの姿は無かった。
『こちらアールヴヘイム!目標撃破!!』
『了解した。作戦完了を確認、帰投せよ』
映像はそこで終わった。リリィがどう動いてどう戦うのか、この映像で大いにそれを知る事が出来た。だが、同時に分からない点も出てきた。それは最後の強力な攻撃は何だったのかという点だ。
「最後の攻撃はいったい?」
「あれはノインヴェルト戦術、我々リリィが使える最強の攻撃手段です」
「それで、あれはどういった原理なんだ?」
その問いに夢結は少し考えると、こう答える。
「簡単に言うと、専用の特殊な弾丸にリリィ九人分のマギを注ぎ込んだ一撃…と言えば通じるでしょうか?」
「なるほど、そういう事か。しかし、たった九人分であの威力とは…」
過去、ネウロイの巣攻略の為に大量の陸戦ウィッチを動員して列車砲の砲弾に魔法力を注いだ例があった。それに美緒自身も無茶な手を使い、結果的に芳佳の魔法力に深刻な悪影響を与えてしまった事もある。それらと比べると、この攻撃方法は遥かに低リスクかつ省力化されたものに思える。この技術を取り込むことが出来ればあるいは…と、美緒は心の内で考えた。そして、夢結に対して軽く一礼。
「いや、大いに参考になった。ありがとう」
「お役に立てたようで何よりです」
そうしていると、買い出しに出ていた一年生が戻ってきた。夢結は梨璃の買ってきた菓子を受け取ると一口食べる。そして、もう後は時間が来るまで待機するだけだ…そう考えながら夢結はホッとした様子で紅茶を飲んだ。
扶桑から来た人々は異世界の技術やその積み重ねにただただ驚く。そして、彼らはネウロイとの戦いにそれらが有効に活用できないかと考え始めていた。