芳佳「リリィ?」梨璃「ウィッチ?」   作:ひえん

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ミーナ「リリィ?日本?」

 芳佳と静夏は命令通りに指揮所へと急ぐ。だが、その途中、静夏が地上に何かを見つけた。

 

「宮藤さん、あそこに何か…」

「敵?いや、人…百合ヶ丘の制服、リリィだね」

「たった一人…このままだと危険なので様子を見に行きましょう」

 

 そして、二人はその人影へと降下する。数はたったの一人、どうやら孤立状態のようだ。高度を下げると、相手は見覚えのある人物だった。

 

「もしかして、二川さん?」

「あっ、宮藤さんに服部さん!よかったあ…やっと味方に会えました」

 

 どうやら、二水はずっと一人で孤立していたようだ。現に安心したような表情を浮かべている。

 

「さっき、白井さんと梨璃さんに会って…その時、一柳隊はバラバラに散ってみんながどこにいるか分からないって言っていたけど、二川さんも?」

「はい…私もあの騒ぎの中でみんなと別れてしまい、たった一人で今まで彷徨っていました」

 

 そして、二水は再び緊迫したような表情に戻ると、二人に聞く。

 

「あの、梨璃さん達は今どこに?急いで合流しないと」

「いや、この状況で一人は危ないよ!…そうだ、私達これから指揮所に向かうけど、一緒に行かない?」

「え?」

「白井さんもこの事は知っているから、手掛かりに困ったら指揮所まで来るかもしれないし」

 

 二水は少し考えるような素振りを見せると、頷いた。

 

「それなら…お言葉に甘えて」

「じゃあ、急ごう。そうだ、二川さん。私の背に乗って」

「いいんですか?ありがとうございます!」

 

 そうして、芳佳は二水を背に乗せるとすぐに飛び上がる。そして、そのまま指揮所へと針路を向けた。

 

 

 

「宮藤!いるのなら返事をしろ!!」

 

 頭上のウィッチは芳佳の名を大声で叫んでいる。どうやら敵対的な存在では無いらしい…夢結はそう判断して草木の中から出ると、上空に向かって手を振った。すると、相手がこちらに気付いた様子だ。こちらに向かって降りてくる。両腕に大きな機関銃、背中にも何やら武器らしきものを背負っている…凄まじい重武装だ。三人のリリィ達はそんな相手の姿に舌を巻く。

 

「陸戦ウィッチか?」

「ええ、まあ…そんなところです」

「カールスラント語が話せるのか?」

「ええ、ゲルゼンキルヒェンの生まれでして」

「ほう、あの辺りか…」

 

 謎のウィッチにドイツ語でミリアムは話しかける。しかし、その様子に梨璃はどこか違和感を覚える。会話がドイツ語である為、ミリアムが何を言っているのかは分からないが、どこか普段と様子が違う。いつもの彼女なら物怖じせず、独特の口調で堂々と会話する。しかし、今の彼女はどこか慎重に言葉を選びながら話している様子だ。

 

「それで…ええと、宮藤少尉を探しているのでしょうか?」

「少尉…?ああ…そうか、そういえば軍医少尉だったか。それで、私と宮藤、服部は同じ部隊でな。そういう事情で合流する必要があるんだ」

「なるほど」

 

 そういえば、最近まで欧州にいたとあの二人が言っていたな…と、ミリアムは心の内で考える。

 

「もしや、宮藤がどこにいるのか知っているのか?」

「ええ、どこに向かったかは知っています」

「何!?おい、ミーナ!ハルトマン!こっちに来てくれ!!」

 

 ウィッチが上空にそう叫ぶ。すると、靄の中から更に二人のウィッチが降りてきた。

 

「何か分かったの?」

「ああ、どうやら二人の向かった場所を知っているらしい」

 

 すると、その降りてきた二人のウィッチは梨璃達へと視線を向ける。だが、その内の一人は訝しむような表情で三人のリリィ達を見ていた。

 

「私はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐、第501統合戦闘航空団の隊長よ。それで、あなた達はどこの所属かしら?その…見た事の無い装備と服装がどうにも気になって」

 

 そう言われたミリアムは夢結にどう回答するかを問う。

 

「夢結様、所属を聞かれたぞ。どう答える?」

「いえ、ちょっと探ってみましょう。この状況をどこまで把握しているのか聞いてみて」

 

 ミリアムは振り返ると、ミーナに質問を返す。

 

「ええと…先に一点確認したいのですが」

「何かしら?」

「あなた方はどこまで今回の事態を把握しているのでしょうか?」

「扶桑で異常事態が発生し、ついにネウロイと戦闘に至った…という事までしか」

「では、この雲の先がどこに繋がっているとかそういう話も?」

「雲の先…どういう事?」

「やはり、聞いていませんか。私達はその雲の向こうの国から来たのです」

「ええと、よく意味が分からないのだけど…」

 

 ミリアムがそう言うと、ミーナは困惑したような表情を浮かべる。すると、もう一人の小柄で金髪のウィッチが口を開く。

 

「ふーん、まるで別世界にでも繋がっているような言い方だね」

「そう、その通り。雲の先は別の世界…日本という扶桑とよく似た国が存在しています」

「まさか本当にそう返って来るとは思わなかったなあ。でも、その証拠は?」

 

 ミリアムは首を横に振る。

 

「いえ、今は具体的な物証になるものは持ち合わせておらず…」

 

 そして、頬に汗を浮かべながらミリアムは再び夢結の方へと振り返る。

 

「夢結様、どうするんじゃ…異世界という証拠を見せろと言われたぞ」

「指揮所に連れていけばいくらでも証拠があるわ。とりあえず、今は特に何も見せられないからそこに向かうように言って頂戴。そして、そこが宮藤さん達の目的地である事も」

「ふむ…」

 

 ミリアムは軽く溜息をつくと、口を開く。

 

「私達は証拠を持っていませんが、この雲の真ん中にある指揮所に向かえば納得していただけるかと」

「指揮所?扶桑軍の?」

「ええ、扶桑と日本の合同部隊の指揮所です。そして、そこに宮藤少尉と服部少尉は向かっています」

「なるほど…」

 

 すると、三人のウィッチ達は顔を見合わせると何やら話し合っている。どうするのかを決めているのだろう。そして、ミーナが口を開く。

 

「ええ。とりあえず、その指揮所を探して向かってみるわ」

「お気を付けて」

 

 ミリアムはなんとかやり切ったと大きな溜息を吐き出す。だが、突如声をかけられる。

 

「おい」

 

 相手は最初に遭遇したウィッチであった。

 

「お前達はこの後どうするんだ?」

「え?」

「いや、こんな状況なのにたった三人で行動するのか?それに通信手段も喪失しているんだろう?」

「ええ、まあ…」

「一緒に行くか?私はゲルトルート・バルクホルン少佐。そして、あいつはエーリカ・ハルトマン。あんなのでも中尉だ」

「えっと、ちょっと確認してみます」

 

 ミリアムは焦った様子で二人に言う。

 

「二人ともどうする?一緒に行かないかと言われたぞ」

「指揮所に?いえ、しかし…私達は他の皆を探さないと」

「うむ、それが最優先じゃ。そうしないとレギオンとしては活動困難…では断るか」

 

 しかし、梨璃が待ったと言う。

 

「ここで闇雲に探すより、ああいうところの方がみんなも集まって来る可能性が大きいのではないでしょうか?お姉様」

「確かに、それも一理あるわね」

 

 たった三人で捜索を続けていても限界があるのは確かであり、なにより危険も大きい。まず、マンパワーが足りないし、ヒュージやネウロイに包囲されるという最悪の事態も有り得る。それなら人員も装備も多い指揮所を拠点にした方が効率的だろう。場合によっては支援も要請できる筈である。そして、夢結は頷く。

 

「彼女達に同行しましょう」

 

 そうして、ミリアムはミーナに同行する旨を伝える。しかし、ミーナが問う。

 

「それで、あなた達は何者なの?そもそもウィッチなのかしら…?」

「私達はリリィ。ウィッチのように魔法の力を使って戦う存在です」

「リリィ?」

「ええ。そして、私達は百合ヶ丘女学院所属のレギオン、一柳隊です。私は一年生のミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス。そして、こちらが二年生の白井夢結。後は隊長で一年生の一柳梨璃。他にもいますが、今は逸れてこの三人だけ…」

「ちょっと待って…あなた達、学生?軍人では無く?」

「はい」

 

 その説明にミーナは頭を抱え、バルクホルンとエーリカは首を傾げる。

 

「そして、私達はこの武器…CHARMを使ってヒュージという怪物と戦っています。ええと…さっき、バルクホルン少佐が倒したあの銀色の怪物です」

 

 ミリアムがヒュージの残骸を指さすと、三人のウィッチはどこか納得したように頷く。実際に戦ってネウロイとは違う敵が混じっている事を感じ取っていたのだろう。

 

「移動しながら詳しく話を聞きましょう。ここにいたら包囲されかねないわ」

 

 そして、六人は移動を始める。すると、歩き出して早々にミリアムに梨璃が尋ねる。

 

「ミリアムさん、なんだかいつもと様子が違ったけど…どうしたの?なんか、とにかく丁寧というか慎重というか…言葉を選んでいたような感じだったけど」

「ああ。あれはな…言葉にも流行り廃りというものがあってな」

「流行語とかそういうの?」

 

 ミリアムは頷く。

 

「それも含む。じゃが、梨璃。例えば…お主、江戸時代の人間と会話してまともに話が出来ると思うか?」

 

 梨璃は頭の中で想像する。そして、即座に無理と判断する。

 

「うーん…難しいかな。お侍さんが何を言っているかなんて分からないだろうし」

「じゃろ。要はそんな感じじゃ。いくらドイツ語が通じるからと言っても時代が違うし、そもそも文化的価値観も丸っきり違う。実際、所々聞き取れない単語が混じっておった。単にそれは儂が知らん単語なだけかもしれんが、ドイツ語に存在しない単語かもしれん」

「うーん…日本語と扶桑語はそこまで大きな違いが無さそうだから考えた事がなかったなあ」

「いや、そうでもない。百由様辺りは相当苦労しておったぞ」

「そうなの?」

 

 ミリアムの話に梨璃は驚いた表情を浮かべる。すると、何かに気付いたミーナが叫ぶ。

 

「総員警戒!あなた達、ここにいるって事は戦えるのよね?」

「ええ、勿論」

「そう、でも無理はしないように。来るわよ、8時上方、雲の中から一機。4時方向、木々の中に二機!」

 

 ミリアムがミーナの言葉を通訳し、梨璃と夢結に伝える。

 

「この視界不良と電波妨害環境下でどうやって敵を…?」

 

 夢結は首を傾げつつも、敵がいるとされた方向にCHARMを構えた。そして、指示通りに敵が現れて夢結は舌を巻く…これもウィッチの固有魔法の力なのかと。

 

 

 

 一方、指揮所では二水が周辺警戒の任に駆り出されていた。敷地内ではウィッチ達に急ぎ装備の説明とレクチャーが行われており、人員に余裕は無い。その中でレアスキルの鷹の目を持つ二水の存在は大きかった。他の場所と比べ、指揮所の周囲は木々が伐採されて視界が開けている。それだけに鷹の目はある程度ではあるが効果的に機能していた。

 そして、指揮所に退避していたグラン・エプレ等のレギオンや扶桑軍や防衛軍の火砲に敵の位置を報告、迎撃戦の要の一つとなっていた。

 

「扶桑側の出口方向から何か来ます。複数…いえ、これは戦車です!」

 

 額に汗を浮かべた二水がそう叫ぶ。すると、身構えていたリリィ達が筒先を下す。既にレアスキルを多用しており、二水の消耗は激しかった。その様子を心配して叶星が声をかける。

 

「大丈夫?少し休んだ方が…」

「いえ。戦力が乏しい今、ここで私が頑張らないと…」

 

 すると、戦車とハーフトラックが複数やって来た。二水が先に発見したものらしい。すると、ハーフトラックから数人の陸戦ウィッチが降りてきた後、更に一人の士官も戦車から降りてきた。どれも扶桑人ではない、その様子に叶星と高嶺が困惑していると、周囲の様子がおかしい事に気が付いた。

 

「え、何?どうなっているの?」

 

 周囲の扶桑軍の軍人達が大慌てで姿勢を正して一斉に敬礼。防衛軍の隊員達もその士官を見て、同じく慌てて敬礼していた。

 

「余程のお偉いさんかしら…?」

「ええ、高嶺様。あの人、多分かなりの階級ですよ。だって、階級章が…」

 

 そして、葉巻をくわえたその士官は指揮所内へと入っていった。そして、リリィ達が呆然としていると、二水が叫ぶ。

 

「あっ、敵襲!6時方向、地上から!!」

「南側の陣地に連絡!急いで!!」

 

 

 

「うーん、こんな小さなロケット弾が勝手に飛んで行って敵に命中するって…本当かなあ」

「説明通りなら、正しい手順で目標を捕捉して発射すれば…自動で目標まで飛行という事ですが」

「うん。まあ、実際に試してみるしかないか」

 

 芳佳と静夏は緊急で行われたレクチャーを終えると、防衛軍から緊急で供与された対戦車火器を抱えていた。周囲には他のウィッチ達も同様に各種対戦車火器を装備して陣地内で待機している。彼女達は武器の扱いには手慣れているだけあり、このような未知の兵器でも扱い方の飲み込みは早かった。しかし、実射は困難である事から手順と射撃時の注意点の説明のみに限った為、皆はその性能に半信半疑の様子であった。

 

「来たぞ!ネウロイだ!!」

「試射代わりだ、攻撃準備!!」

「了解!」

 

 陸戦ウィッチが対戦車ミサイルの発射機を構える。そして、隣に防衛軍の隊員が付いて補助と指導を行っている。

 

「よし、捕捉した。撃てっ!!」

 

 ロケットモーターの点火音が鳴り響くと、高速で飛び出したミサイルはあっという間に目標の手前まで到達。そのスピードにネウロイは迎撃すら出来ていない。そして、ミサイルは上空へと一気に跳ね上がる…一般的な装甲車両は上面が弱点であり、そこを狙う為の機能だ。そして、着弾。魔法力がこもったメタルジェットがネウロイの厚い表面をぶち破ると、その内部へ瞬時に強烈なダメージを与えていく。そして、ネウロイは瓦解…コアを上手く粉砕出来たようだ。

 

「本当に勝手に飛んで行った…」

「え、ええ…しかも、真上から突っ込んでいきましたよ…」

 

 その光景に芳佳と静夏を含め、ウィッチや扶桑軍の軍人達はただ唖然とした表情を浮かべるしかなかった。すると、背後から聞き覚えのある声が響く。

 

「これが異世界の兵器か。想像以上じゃねえか、個人携帯の誘導兵器…そして、的確に戦車の弱点である面を狙ってくる。とんでもねえな」

「パットン将軍!?」

 

 ヨーロッパにいる筈の人物の姿に芳佳と静夏は驚く。周囲の扶桑の軍人達も再び驚いた表情を浮かべ、日本側の士官はどこかで聞いたような名前に凍り付いたような表情でその人物を見つめていた。

 

「よう、服部少尉に宮藤曹長!いや、こっちだと少尉の方がよかったか?」

「将軍、何故ここに?」

「まあ、この騒動で扶桑まで様子を見に行くようにお偉いさんから言われてな」

「なるほど…しかし、将軍。ここはとても危険な状況で…」

「ああ、その点についてはいい土産を持ってきた」

「土産?」

 

 首を傾げる芳佳。すると、パットンは上空へ信号弾を打ち上げた。

 

「頼れる戦力だ」

 




芳佳の同僚だというウィッチ達と遭遇した梨璃達。
そして、芳佳と静夏は意外な人物の登場に驚愕する。
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