芳佳「リリィ?」梨璃「ウィッチ?」   作:ひえん

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梨璃「ナイトウィッチ?」

 第501統合戦闘航空団を指揮所内に送り届けた一柳隊一行は各々床に座り込んで小休止を取った。まず、ここで一息入れてから二水を探す為の情報収集に向かうのだ。

 そして、彼女達は指揮所の敷地内で隊員達から受け取ったペットボトルの飲み物と乾パンを口の中に放り込む。

 

「彼女達を見た扶桑の兵隊達、凄い喜びようだったわね」

 

 夢結がそう呟くと、周囲の皆も頷く。

 

「つまり、それ程名の知れた部隊という事なのでしょうけれど…」

「あれだけ多国籍な混成部隊だから、特別な戦力なのは間違いなさそう」

 

 神琳と雨嘉がそんな会話をしていると、彼女達の前を他校のリリィ達が通り過ぎていく。しかし、そこで梨璃がその一団の中にある人物の姿がある事に気付く。茶髪に近い髪色、百合ヶ丘の制服…

 

「え、二水ちゃん!?」

 

 梨璃が呼び止めると、その人物は驚いたように振り返る。

 

「み、皆さん!?」

 

 そこには二水の姿があった。

 

 

 

 

 一柳隊の案内で指揮所に辿り着いた第501統合戦闘航空団一行は各部隊の指揮官クラスが集まる地下壕へと案内された。そして、ミーナは壕の中を見回す。そこには扶桑軍の軍人以外に見た事も無い軍服を着た士官達の姿、更にはいくつもの大きな画面と見た事もない箱状の機械らしきものが並んでいる。

 ミーナの見た画面には、本来であれば雲の内部の全域に敷設されたセンサー類の捉えた敵影や警戒部隊のデータリンクといった戦況を表す各種情報が表示されるが、今はただ何も表示せず沈黙していた。一方、その中でも忙しなく動く数少ない機械があった。それは雲の外部との通信を担うコンピュータ群と昔ながらの電話機のみである。

 

「やっと来たな」

「将軍、何故ここに!?」

 

 突如背後から聞こえてきたパットンの声に501の面々は驚きつつも姿勢を正す。

 

「せっかく無線で話していた合図の信号弾を打ち上げてやったというのに、随分とのんびりだったな」

「では、あの信号弾は将軍が?」

「そうだ、俺が一番乗りだ」

 

 すると、パットンは近くにいた兵に言う。

 

「おい、あの連中を連れてこい」

「了解」

 

 その兵は部屋の外に出ていくと、暫くして戻って来た。そして、その兵の背後には三人の人影。

 

「宮藤!!」

「服部少尉も」

「あれは…坂本少佐!?」

 

 501の面々は扶桑海軍の三人に駆け寄った。

 

「リーネちゃん!それにみんなも!!」

「まさか、501が扶桑に…!?」

 

 欧州で戦って以来の再会である。積もる話はお互い山の様にあるが、今はのんびり話をしている余裕は無い。

 

「感動の再会ってところ悪いが…ヨーロッパから来たばかりのお前達に戦況も含めて状況を説明する。坂本少佐、頼んだ」

「了解」

 

 そうして、美緒はこれまでに起こった事と現在進行している事態について、資料を交えつつ簡単に説明を行う。同行した一柳隊一行から軽く異世界の話を聞いていたとはいえ、改めて受けた説明に各々ただ舌を巻く。その一方、怪訝な表情を浮かべていた面々もいた…日本側の人員達である。突如やって来た正体不明である外国人風の集団に不信感を抱いている様子であった。すると、その内の一人の士官がこう質問する。

 

「坂本少佐、確認したいのだが…このウィッチの部隊はどこの軍の所属なんだ?」

「いえ、この統合戦闘航空団という部隊はネウロイと戦う為に各国が協力して人員・装備を集結させたものです。その為、どこか一つの軍の所属という事はありません。指揮系統としてはその方面の統合軍司令部の指揮下となっています」

「…では、現状ではどこの指揮下と言える?」

「パットン将軍の指揮下となります」

 

 美緒がそう言うと、その士官は消極的ながら納得した様子でそのまま黙り込んだ。有力な地上部隊を率いてここまでやって来た将官という存在はそれだけ大きいものだと言える。それだけに迂闊な事は言えないと沈黙したのである。

 

「で、少佐。ここからどうするんだ?」

「将軍、それについては日本側の指揮官達も交えて方針を決めようと思います」

「じゃあ、さっさと始めるぞ。ただでさえ時間が惜しい」

 

 パットンは葉巻をふかしながらそう指示を出す。すると、扶桑側の士官達はすぐに立ち上がると、地下壕の外へと駆け出した。彼らは日本側の部隊やレギオンリーダー達を呼び出しに飛び出していったのだ。

 

 

 

 

「皆さん、よくご無事で…」

 

 二水はそう言いながら一柳隊の元へと駆け寄った。そして、梨璃が笑顔で彼女を迎え入れる。

 

「よかったあ、二水ちゃんが見つかって」

「ええ、私もなんとか…途中で宮藤さんと服部さんに会って、ここまで運んでもらったんです」

「え?じゃあ、私達がいた事も二人から聞いた?」

「ええ、私と会う前に夢結様と梨璃さんに会ったという話は聞いていました」

 

 すると、二水は周囲を見回す。

 

「でもまさか、あんな状況でもこうして全員揃うなんて…凄いです!流石です!!」

「それはともかく…二水さん、怪我はしていない?」

「ええ、夢結様。なんとか無事でした」

「そう、それは何より」

 

 そして、二水は思いだしたように話題を変える。

 

「あの、どうやら向こうの世界の外国から応援部隊がやって来たみたいで」

「ええ、私達も会ったわ」

「びっくりしました。いきなり外国の偉い人が戦車隊を引き連れてやって来たので」

「偉い人?それに戦車隊…?」

 

 その話を聞いた神琳は首を傾げた。どうにも二水と自分達の話が噛み合わない。

 

「多分、階級は将官クラスですよ…どうやら宮藤さん達の知り合いみたいで」

「ええと、私達が会ったのは外国のウィッチで…」

「陸戦ウィッチの方々なら見ました」

「いえ、航空ウィッチでしたよ」

「え?」

 

 501の面々と接触していない二水は首を傾げる。一方で他の一柳隊の面々も驚いた表情を見せていた。自分達が接触した部隊以外に増援がいた事を今初めて知ったからである。指揮所に入る時、少し離れた陣地内に古めかしい戦車やハーフトラックの姿を見たものの、その方面の知識が薄い彼女達にそれが扶桑の車両なのか他の国の車両なのかを見分ける事が出来なかったのである。

 

「となると…海外から本格的な陸上部隊までやって来た、と?」

「そうなりますね。あの人達が助けてくれたので、守備隊として戦っていたリリィ達も何とかこうして休息をとる事が出来ました」

 

 二水の話を聞いた神琳と楓は顔を見合わせた。思った以上に向こうの世界の動きが早い…互いにそう考えたのである。

 

「展開が早いですわね」

「向こうの世界は国際的にある程度纏まって動いていると考えてもよさそうですね」

「ええ、こちらはまだ他国の目立った動きはありませんもの」

 

 そんな会話をしていると、扶桑軍の士官が走ってやって来た。曰く、今後の方針を決めたいので各レギオンの代表者は至急集まる様に、と。そして、命令を受けて梨璃と夢結が指揮所内の会議室として使われている部屋へと向かった。

 

 二人が会議室に入室すると、室内には扶桑と日本側双方の各部隊の指揮官達やウィッチ隊の小隊長クラス、他のレギオンのリーダー達が既に集まっていた。

 

「叶星様に一葉さん、そちらも無事でしたか」

「梨璃さんに夢結様が来たという事は一柳隊も無事こちらに?」

「ええ、なんとか全員無事でした」

「よかった。二水さん以外行方不明と聞いていたので心配していました」

 

 一葉が安心したような表情を浮かべる。一方、叶星は夢結に静かな声色でこう聞く。

 

「こうして集まったという事はいよいよ反撃かしら?」

「ええ、おそらく。外国からの戦力がやって来たようだし」

「私達も助けられたわ。あの人達、とても実戦慣れしていて心強かった」

「私達は航空ウィッチと出会ったわ。どうやら宮藤さんの所属している部隊だとか…」

 

 すると、部屋のドアが勢いよく開く。その場の一同がその音に驚いた表情を浮かべていると葉巻の煙と共に一人の外国人の男性が入ってきた。そして、その後ろにはウィッチと思しき外国人の一団。

 

「待たせたな。俺はジェラルド・S・パットン、リベリオン合衆国陸軍の将軍で統合軍西方軍集団最高司令官…だが、今は訳あって扶桑緊急救援部隊の指揮官だ」

 

 聞こえてきたその肩書に皆、一斉に姿勢を正す。

 

「で、諸君が精強であるとはここにいる坂本少佐から聞いている。そこでどうすればこの状況を一変させる事が出来るのか意見が欲しい」

 

 そう言うと、彼は椅子にどっしりと腰かけた。そして、早速一人手を挙げた。

 

「では…私から」

「ああ、緊張する事はねえ。言ってみろ」

「えー、百合ヶ丘女学院工廠科2年の真島百由と申します」

「学生…お前さんが話に聞いたリリィってやつだな」

 

 パットンは眼鏡をかけた黒髪の女性を見て言う。

 

「ええ、その通り。でも、どちらかと言うと私は裏方よりですが…まあ、それはともかく。で…話を戻しますが、目下最大の脅威はネウロイ。そして、それらが発していると思しき妨害電波でしょう」

「まあ、それは当然だな」

 

 百由の発言に対してパットンや周囲の軍人達は頷く。無線もセンサー類も壊滅状態である今のままでは前衛と後方の意思疎通が成り立たず、目と耳を塞がれたようなものと言える。よって、それを何とかしないとどうにもならない。

 

「で、いい手はあるのか?」

「目標のネウロイについてはこちらのリリィの有する鷹の目の探知範囲外かつ視界不良で未発見。あー…そのー、他の手段は…」

 

 返答に困った百由は視線を防衛軍の士官達の方へと移す。しかし、その視線に気が付いた士官達は黙って首を横に振った…保有戦力で対処可能ならとっくに手を打っている筈である。よって、それは当然の反応であった。

 そして、その様子を見たパットンは仕方ないといった様子で肩をすくめる。

 

「ミーナ中佐」

「何でしょう?」

「そちらの戦力で索敵可能か?」

「厳しいと思われます…サーニャさん、ちょっと手伝って頂戴」

「分かりました、中佐」

 

 ミーナが一人の小柄なウィッチの名を呼んだ。周囲のリリィ達や日本側の士官達は何が始まるのかといった様子でそのウィッチへと視線を向ける。すると、そのウィッチから猫のような耳と尻尾が現れる。そして、彼女は目を瞑る。

 

「何だあれは!?」

「すごい…」

 

 日本側の皆から一斉に驚いたような声が上がる。彼らの視線の先のウィッチにある変化が起こった…まるで鹿の角のような発光体がそのウィッチの頭部に現れたのである。

 

「どう、サーニャさん?」

「いえ、中佐。やはり厳しいです。物凄いノイズがあって…」

「やっぱり厳しいわね…そうなると、全方位に哨戒を出して索敵か…」

 

 一方、日本側の一人の士官が驚いた表情を浮かべながら問う。

 

「中佐、そちらのウィッチは電波を探知する事が可能なのでしょうか…?」

「ええ、彼女のようなナイトウィッチはこの手の固有魔法を有しています」

「では、そちらのウィッチの方に一点質問したいのですが…」

「なんでしょう?」

「敵の位置を把握出来なくても、妨害電波が飛んでくる方向を判別する事はできますか?」

 

 サーニャは困ったような表情を見せた。

 

「方向ですか?」

「そう、具体的な場所で無くてもノイズの強弱でもいい」

 

 すると、パットンがハッとしたように手を叩く。

 

「なるほど、敵の発する電波の逆探知を狙っているのか」

「その通り、本来なら複数個所から測定して発信源の位置を割り出す、妨害電波発信源に飛んで行く誘導弾を撃つという手を使いますが…ここにはそういった機材も人員もありません。よって、そちらの…ええと」

「リトヴャク中尉です」

「失礼、リトヴャク中尉こそがこの状況を打破する鍵となるでしょう」

 

 すると、エイラが胸を張りながら言う。

 

「どうだ、サーニャは凄いんだ」

「ちょっと、エイラ…恥ずかしいわ」

 

 恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にするサーニャ。だが、首を横に振ると意を決したように頷く。

 

「やってみます」

 

 そうして、サーニャは再び目を瞑る。そして、深く深呼吸。彼女の持つ固有魔法に集中する。

 

「3時方向、上に30度。次、7時方向…角度は水平。以上、この二方向で強いノイズが出ているように感じました」

「ありがとう、サーニャさん。将軍、現有の戦力ではこの程度が限界です」

「いいや、何もないよりずっといい。反撃に出るぞ」

 

 そんなパットンの力強い声が場に響くと、皆が慌てて姿勢を正す。

 

「今の観測情報からすると、妨害電波を放つネウロイは最低でも二体。よって、こいつらを仕留める必要がある。上空の方は501に任せるとしてもう一匹の相手は…」

 

 パットンが場にいる面々の顔を見る。そこで志願しようとその場のリリィ達が手を挙げようとする。だが、そこで会議室の戸が開く。

 

「百合ヶ丘女学院、アールヴヘイム。装備の補給から復帰しました!」

 

 CHARMを抱えた天葉と依奈の姿がそこにはあった。そして、皆の視線が彼女達に集まると、天葉は困ったように口を開く。

 

「ええと…今どういう状況?」

 




探していた仲間とついに合流する事が出来た一柳隊と501JFW。
そして、戦況をひっくり返す為、パットンの指揮の下に彼女達はついに動き出す。
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