芳佳「リリィ?」梨璃「ウィッチ?」   作:ひえん

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ミーナ「攻撃開始!」

 陣地内の砲が一斉に吠え、撃ち出された砲弾が草木を瞬く間に薙ぎ払う。すると、降り注ぐ砲弾の雨を浴び、草木の中に潜んでいたネウロイは次々と木々の合間から飛び出してくる。

 

「よし、撃て!」

「発射!」

 

 そのネウロイを待ち伏せる陸戦ウィッチ達が一斉に射撃を始めた。その肩に抱えるのは日本側から供与された対戦車ミサイル。そして、撃ち出されたミサイルは赤外線で目標を捉え、猛烈な妨害電波環境下でも目標を逃がす事は無く飛び抜ける。そうして、目標へと着弾したミサイルはヒュージの残骸で増強されたネウロイの装甲を易々と貫き、当たり所の良いものはコアを一撃で粉砕してネウロイを撃破する。

 そんなミサイルの攻撃をネウロイの群れが潜り抜けても、更なる攻撃が次々飛び込む。彼我の距離が詰まったことにより、無反動砲を抱えたウィッチ達も攻撃を始めたのだ。そして、攻撃を受けたネウロイは前進も後退も出来ずに釘付けとなっていく。

 一方、攻撃する側のウィッチは自分達が抱える武器に舌を巻いていた。ミサイルは勿論、無反動砲も元の世界のものと比べてもまさに次元が違うと例えていい程の代物である。元の世界の同種の兵器は命中率がとにかく低く、狙い撃つというよりもとにかく当たる距離まで近づいて撃つという様なものである。しかし、日本側から供与されたそれは弾速も極めて速く、風に流されずに真っ直ぐ飛ぶ。そんな常識外れの性能に驚きつつも陸戦ウィッチ達は道を切り開く為にネウロイに攻撃を浴びせ続ける。

 

 そうして生じた隙の中を二つの集団がそれぞれの方向へと飛び出していった。片方はアールヴヘイムを主力としたリリィが中心の大部隊。そして、もう一方は航空ウィッチの部隊である第501統合戦闘航空団とその支援部隊のみといった小規模な編成である。

 

「地上部隊は?」

「しっかりついて来ている」

「出だしはとりあえず何とかなったわね」

 

 ミーナは背後を振り返りながらそう呟く。そして、視線の先には猛スピードで走る装甲車、更にリリィの一団の姿があった。それは第501統合戦闘航空団の支援として参加している一柳隊であった。上空から見る限り、彼女達は寄ってくる敵を片っ端から撃破している様子であり、ウィッチの助けは現状では無用に見えた。

 

「サーニャさん、ノイズの方向は?」

 

 ミーナはサーニャに問う。

 

「先程と変化なし…段々ノイズが強くなってきています」

「となると…そろそろか。宮藤さん、服部さん、あなた達の持つ誘導兵器は有効な攻撃手段よ。肝心な時まで温存するように」

「了解!」

 

 芳佳と静夏の背には対戦車ミサイルの発射器があった、501の中では彼女達二人しか使い方を教わっていない為、これは正真正銘の奥の手であった。

 

「上に反応…雲の中!?」

 

 ハッとしたようにミーナは上空を見る。彼女の能力は三次元空間把握、周辺にあるものを立体的に把握する事が出来る能力である。そして、それは雲中のような目視不能の対象にも使う事が出来る。更に電波等も使う事は無い為、現状のような妨害電波環境下でも無関係に使用できる能力であった。

 

「11時上方、雲の中に何かいるわ!」

「どこだ…?とりあえず撃つぞ!!」

 

 ミーナの指差す先に向かって、バルクホルンが上空目掛けて機関銃を放つ。すると、赤い光線が四方八方に放たれ、大きな黒い影が雲中から現れる。

 

「ミーナ隊長、ノイズはあのネウロイからです」

「分かったわ。総員、あれが本命よ。攻撃開始!」

 

 サーニャからの報告を聞いたミーナはすぐさま攻撃命令を出す。敵の姿はまるで飛行艇のような姿であったが、その胴体には奇妙な円盤状の物体が付いていた。そして、その異様な怪物に対してウィッチ達は一斉に銃撃を始める。

 一方、地上にいる一柳隊は上空で広がるその光景を眺めていた。

 

「始まったわ」

「あれが…お姉様、では私達も…」

「梨璃、待ちなさい。あの高度では何もできないわ」

 

 ネウロイの高度は高く、リリィ達には手が出せない。それに、むやみやたらに撃てば上を飛ぶ味方への誤射の危険もある。よって、今の彼女達には上空の戦いを見守るしかなかった。しかし、それでも放ってはおけない為に彼女達は戦場の真下へと急いで駆ける。すると、そんなネウロイがある動きを見せる。

 

「急降下!?」

「逃げる気か?」

 

 突然、ネウロイが一気に高度を落としたのだ。地面ギリギリまで接近するように…そんなネウロイに対して真上を飛ぶ芳佳は対戦車ミサイルを構える。そして、ロックオン…となる前に異変が起こった。

 

「これは…みんな避けろ!」

 

 エイラが突如叫ぶ…彼女の持つ能力を知る仲間達は途端に回避に移った。その刹那、地上から猛烈な対空射撃が始まった。そして、間一髪といった様子でウィッチ達は大量の赤い光線を躱していく。

 

「なんて密度の攻撃…」

 

 額に冷や汗を流しながらペリーヌは呟く。

 

 別のネウロイが多数地上に潜んでいる…これでは上からは迂闊に近づけない。そして、対空砲火を撃ち上げるネウロイの姿は木々に隠れて見えない…だが、それを倒す為に低空に降りたとしても、地上の木々に阻まれてうまく動きが取れなくなることは目に見えている。よって、このままでは上空からの制圧も容易ではないだろう。そうして、ウィッチ達はネウロイと一度距離を取って集合する。あのネウロイの群れとどう戦うか、一度策を練る為である。

 

「こうなったら、二手に分かれて地上と空中のネウロイを各個に叩くしかないか…まずはあの対空砲火をどうにかしないと」

 

 ミーナはそう呟くと、低空を強襲する組の人員を指名する。

 

「バルクホルン少佐、今から指名する人員を率いて低空に降下し、地上のネウロイを撃破して頂戴。同行者は宮藤曹長、ユーティライネン中尉、ハルトマン中尉。残りは私と共に少佐の隊の攻撃後、上空からあの大型を狙う。危険だけど、今はこう攻めるしかないわ」

 

 苦虫を噛み潰したような顔でミーナは指示を出す。そして、それぞれが動き出そうとした矢先、地上で爆発が起こった。

 

「何事!?」

「中佐、地上部隊が追いついたようです。地上のネウロイを襲撃中の模様」

 

 突然の爆発に驚くミーナに対し、地上の様子を観察していたリーネが言う。そして、その一報を聞いたミーナはしめたとばかりに頷く。

 

「少佐、降下は待って。方針変更よ、上空から一気呵成に大型を叩くわ」

 

 

 

 空戦が行われている場へと急ぐ一柳隊。そうしていると、上空のネウロイが突如急降下を始める様子が目についた。

 

「降りてきた…?これなら攻撃できるわね」

「急ぎましょう、お姉様」

 

 そうして、リリィ達がペースを上げた途端、周囲から膨大な数の赤い光線が上空へと撃ち出された。

 

「攻撃!?いったい何が!?」

「夢結様、大変です。ウィッチ達が退避していきます」

 

 上空を見ていた神琳がそう告げると、夢結は停止を指示。そして、周囲を見渡す。

 

「お姉様、どうしましょう?」

「梨璃、周囲をよく観察なさい」

 

 梨璃は小首を傾げつつも言われた通りに周囲を見る。すると、ハッとしたように手を叩く。

 

「あっ、分かりました!敵は上ばかり攻撃しています」

「その通りよ。では、この状況では私達はどうするのか最善かしら?」

「私達で地上にいると思しきネウロイを倒す…でしょうか」

「ええ、正解よ。地上にいると思しきネウロイの対空砲火で、上を飛ぶウィッチ達は本命の大型に手が出せない。よって、私達でこのネウロイを撃滅し、味方の攻撃をやりやすくする…という方針で攻めましょう」

 

 夢結はそう言うと、懐から発煙筒を取り出す。

 

「今から隊を二手に分けるわ。楓さん、もう一方の隊の指揮は任せるわね」

「喜んでお受けいたしましょう。で、その発煙筒は?」

「森の中で戦闘になるからこの煙を目印とするのよ」

「なるほど。攻撃を終えた後、ここに戻ってくる為の目印ですわね」

「ええ。あと、支援隊の車両は万一に備えて後退させましょう。梅、至急伝えてきて頂戴」

「分かった。縮地ならすぐだ」

 

 そして、梅が駆けて行くのを見送ると、夢結は二水に問う。

 

「二水さん、鷹の目は使えるかしら?」

「靄もちょっと薄いので使えはします。ですが、木が多くて敵の姿までは…」

「直接確認できなくてもいいわ。相手の対空砲火が撃ち上がっている場所をおおよそでいいからメモにプロットして頂戴」

「分かりました、夢結様」

 

 そうして、二水は紙に彼我の位置とおおよその距離を書き込むと夢結と楓に手渡す。そして、二人はその紙を見る。

 

「地上の敵の数は8ね」

「ええ。伏兵がいなければですが…配置は綺麗な円形ですわね」

「問題はその中心に例の大型がいるという点ね」

「迂闊に近づくのは危険ですわね。それに真ん中に進めば空中の大型含めて複数のネウロイから十字砲火を受ける可能性もある」

「そうね。では…円の外側から一体ごとに潰していきましょう」

「了解ですわ。では、私の班はこの通路の右側を」

「こちらは左側を叩く。4つ倒したら発煙筒の煙の位置を目指すように」

「ええ」

 

 そうして、夢結は皆に方針を伝えると、二手に別れたリリィ達は木々の中へと飛び込んでいく。

 

「お姉様!いました、あれです」

 

 梨璃の指差す先には箱状の中型ネウロイがいた。その上部には砲塔とそこから飛び出す砲身らしきものがあり、そこから絶え間なく赤い光線を空に向けて撃ち続けている。

 

「なんて連射性能、こちらに撃ってきたら危険ね…」

「では、どうしましょう?」

「そうね…二水さん、ミリアムさん。二人であのネウロイの砲塔…いえ、砲身の箇所を集中的に狙って頂戴。その隙に私と梨璃で仕留めるわ」

 

 皆が頷く。そして、二水とミリアムが射撃開始。それと共に梨璃と夢結が目標目掛けて飛び込んでいく。すると、敵の攻撃が突如止まる。

 

「二人の射撃が砲身にうまく当たったようね。梨璃、今のうちに一気に仕掛けるわよ」

「はい!」

 

 二人のリリィは銃撃しながらネウロイに肉薄。CHARMの刃を煌めかすとそのままの勢いで斬りかかった。

 

「コアを探して」

「見当たりません、ミリアムさん達も呼んで四方から叩いた方が早いかも」

「そうね…二水さん、ミリアムさん。手伝って頂戴」

 

 そして、四人のリリィ達が四方からネウロイに斬りかかる。最早、削り取るような勢いでネウロイに斬撃を浴びせていく。すると、梨璃が叫ぶ。

 

「ありました!コアです」

 

 斬撃を浴びせた損傷個所に光り輝く赤い色の結晶が出てきたのだ。

 

「梨璃、今すぐ破壊して!」

 

 間髪入れずに刃で斬りかかると、ネウロイはあっという間に瓦解した。

 

「撃破確認、次行くわよ」

 

 

 

 地上からの対空砲火は次々とその数を減らしていく。

 

「宮藤さんの言う通り、彼女達を連れてきたのは正解だったわね」

 

 そして、ミーナは叫ぶ。

 

「対空砲火は消えたわ。今よ、各員攻撃開始!!」

「了解!!」

 

 命令と共に芳佳と静夏は対戦車ミサイルの照準を合わせる。そして、手順通りにロックオンした事を確認すると引き金を引いた。

 

「発射!」

 

 二発のミサイルはまっすぐにネウロイ目掛けて飛び込んでいく。その接近に気が付いたらしいネウロイは即座に上昇して躱そうとするも、ミサイルのシーカーはそれを逃す事は無い。そして、ミサイルは向きを変えて目標を追う…命中。爆発の閃光が一瞬煌めくと、ネウロイの表面には大きな損傷が生じていた。

 

「おお。すっげえな、アレ!ほんとに目標を追っかけて行ったぞ!!…よーし、後は私達の出番だ!!」

「よっしゃー、突撃ー!」

 

 シャーリーとルッキーニが間髪入れずに逆落としのまま降り注ぐ。そのまま銃撃を浴びせ、下方へと急降下していく。ネウロイの攻撃は逃げ行く二人を狙おうとするものの、すぐに次の攻撃が飛んでくる。サーニャが抱える大きなフリーガーハマーからロケット弾が放たれ、同時に肉薄したエイラがネウロイに銃撃を浴びせる。ネウロイは手近なエイラに攻撃を浴びせるが、彼女はシールドも使わずに涼しい顔をしながら全て躱していく。

 

「ほら、こっちこっち…おっと残念、そいつもハズレだな」

 

 エイラに攻撃が集中している間に真上からペリーヌが攻撃を浴びせる。

 

「真上がお留守でしてよ!」

 

 機銃弾を浴びせ、ペリーヌは下方へと即座に離脱。そして、続いて響く発砲音…リーネの対装甲ライフルが火を噴くと、ネウロイの一部が大きく損壊する。続けて二射目、三射目…次々と大口径の銃弾が突き刺さり、ネウロイには複数の大穴が開いていた。しかし、まだコアは出てこない。

 

「ああもう…こいつ、まだ粘るの?」

「そろそろけりを付けよう。行くぞ、ハルトマン!」

 

 そして、エーリカとバルクホルンがネウロイに向かって突進。バルクホルンは二丁の機関銃を撃ち、ネウロイに銃弾の雨を浴びせる。その間、エーリカは被弾を免れた個所を探して銃弾を叩き込む。そこに芳佳、静夏、ミーナも攻撃に加わる。更に一撃離脱で攻撃を行った面々も舞い戻ってくる。

 四方八方から多数の攻撃を浴び、ネウロイは次々と被弾。修復も追いつかず、次第に高度を落としていく。すると、ネウロイの下部が突如として爆発…地上の敵を撃滅した一柳隊も地上から射撃を始めたのだ。

 

 そして、ついに皆が叫ぶ。

 

「コアだ!!」

 

 その刹那、多数の銃弾がほぼ同時に叩き込まれてコアは粉砕される。それと共に大型ネウロイは即座に空中に散った。

 

「撃墜確認…」

 

 ミーナがそう呟くと、無線が鳴った。

 

「各隊へ、聞こえるか?パットンだ、忌々しい妨害電波が消えたぞ。やったのか?」

「こちらミーナ、ネウロイは撃墜しました。こちらは損害無し。この様子だともう一方も撃破したと思われます」

 

 ミーナが無線に報告を入れると、すぐにまた別の無線が飛び込む。

 

「こちらアールヴヘイム、聞こえますか?ウィッチ隊と共に目標と思しき大型ネウロイを撃墜。こちらも損害無し」

「了解。各隊、通信は無事に回復した。指揮所まですぐに帰還せよ」

「えー…こちらヘルヴォル。複数の残存ネウロイが日本側の出口に向かっています。至急、追撃の許可を」

「指揮所からヘルヴォルへ、追撃は不要。外部に迎撃を任せる。まずは帰還せよ」

「了解、帰還します」

 

 そんな通信が終わると、ホッとしたような深いため息が指揮所内のあちこちから響く。

 

「さて、終わったな。帰投した連中を出迎える用意をしろ。そして…各隊が帰投した後、日本側と調整を行う。統合軍の代表として、俺が向こうと接触する為に…だ」

 

 パットンがそう言うと、日本側と扶桑側の人員がすぐに準備に取り掛かる。そして、数名の隊員が通信機材を操作しようとしたその時、大型ディスプレイに突如として警報が表示された。そんな表示と警報音に指揮所内は再び混乱の只中へと放り込まれる。

 

「何事だ、状況を知らせ!」

 

 パットンがそう叫ぶ中、日本側の人員達が慌てたようにデータリンクからの情報が表示されている端末の画面に飛びつく。そして、同じく画面前に転がり込んだ百由は、その画面に表示された文章を見て呆然とした表情を浮かべた。

 

「鎌倉の由比ヶ浜に…アルトラ級ヒュージ出現ですって…」

 




ネウロイを撃破したリリィとウィッチ達
しかし、間髪入れずに強大な脅威が鎌倉に現れる
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