九人のリリィと二人のウィッチは雲の中に飛び込み、山道を駆ける。そして、しばらくすると道はいつの間にか平坦になっている。内部の状況は先程と同様らしい。もう少しすると、ネウロイとやらと遭遇した円形の広場に出るはずだ。リリィ九人はかなりのスピードを出して駆ける。そして、ウィッチ二人は後ろをチラッと振り返りながらその様子を見る。
「足が速いなあ…あれって身体強化の魔法なのかなあ」
「どうでしょうかね?何か蹴っているようにも見えます」
「うーん…もしかして、シールドを蹴っているのかな?」
能力の高いウィッチは手足の先にシールドを展開し、水面の上を走り抜ける事も可能だ。芳佳はそれと似たようなものを想像したのである。しかし、静夏にはそう見えなかった。それはリリィ達の足元に見えたものがウィッチのシールドとはどこか違うものに見えたからであった。
「わあ、ほんとにあれで飛ぶんですね」
「しかも、あんな重そうな銃に弾をたくさん抱えてじゃぞ。原理もさっぱり分からん」
「すっかり聞きそびれましたが…結局、あの耳と尻尾って何なのでしょう?」
「…さあ?しかし、速い。加減してもらわないと追いつけない」
リリィ達は前を行くウィッチ二人を見ながら駆ける。気になる点は多々あるが、今は調べようがないのでどうしようもない。
「気を付けて、そろそろ例のポイントよ。どこから何が飛び出してきてもおかしくないわ」
夢結が駆けながら叫ぶ。それを聞いた一柳隊一同は緊張した表情で周囲を見張る。すると、前方を行くウィッチ二人が急減速し、銃を前方に構える。それを見たリリィ達も速度を落とした。そして、梨璃は芳佳に駆け寄って状況確認を行う。
「何かありましたか?」
「いえ、この先に妙な砂埃と煙が」
この先は例の空き地だ。だが、確かに様子がおかしい、土埃や白い煙で覆われていて先がよく見えないのだ。更に時たま金属がぶつかるような音も聞こえてくる。もしや、誰かが交戦しているのか?皆がそう考えた刹那である。赤い光線が煙をぶち抜いて飛び込んできた。だが、芳佳が咄嗟にシールドを展開し、光線を弾く。続いて青白い光線まで飛んでくる。しかし、11人全員を覆う芳佳の巨大なシールドはそれも難なく弾き飛ばす。そして、光線を見て咄嗟に回避しようとした一柳隊の面々は呆気にとられていた。
「これが全部魔力で出来た障壁…?凄いわ、まるでギガント級ヒュージのマギリフレクター並み…」
芳佳のシールドを見た夢結が呆然と呟く。すると、視線の先に広がる土埃と白煙が晴れてきた。今の光線でかき消されたらしい。先程の攻撃は例のネウロイなのだろうか?そして、それと戦っているのはリリィだろうか?そう考えながら夢結は目を凝らす。だが、その予想はある意味で大きく外れた。
そこには小型ネウロイの一団がいた。それは予想通りだ。だが、それと交戦していたのは人ではなかった。
「ネウロイとヒュージが…戦っている…!?」
スモール級とミドル級ヒュージの群れがネウロイに襲い掛かっている。ヒュージの爪や刃がネウロイを切り裂き、ネウロイの光線や弾がヒュージを貫く…化け物と化け物が至近距離で戦う凄まじい光景がそこには広がっていた。流石のリリィもウィッチもこの状況には困惑するしかなかった。しかし、そこで芳佳は言う。
「ここで止まっても仕方がない…突破しよう!私がシールドで援護するから」
「そうしましょう。これは意外とチャンスかもしれません!」
梨璃が頷きながら同意する。どちらにしろ、ここを突破しないと元の世界への帰還は出来ない。それにネウロイとヒュージは互いに潰し合っている、この状況なら自分達に飛んでくる攻撃も少なくなるかもしれない。そうして一柳隊の面々は頷いた。
「では、突破しましょう。こちらに飛び掛かってくる敵と進路上の敵にだけ対応、それ以外はとりあえず無視で」
梨璃がそう指示を出すと、楓と神琳がどのような形で隊を進めるか考えて案を出す。前方は芳佳が壁となり、後方は静夏が守る。その間に一柳隊が入る。外周は夢結や梅のような近接戦に長けたリリィを配置、その内側は二水のような後衛を得意とするリリィを置く…こうして方針は定まった。そんな円形に近い陣形でこの修羅の巷を突き破るのである。
「えーと…一柳さん、そちらの用意はいいですか?」
「宮藤さん、梨璃でいいですよ。そして、一柳隊は準備完了です!」
「了解です、梨璃さん。じゃあ、行きますよ!」
芳佳が前進の号令をかける。そして、シールドを展開。一同はそれに合わせて進軍開始、リリィ達のスピードに合わせて芳佳は飛ぶ。進路上にいる敵に銃撃、すぐ後ろにいる梨璃と夢結も同じ目標目掛けて攻撃開始。周囲から飛び掛かってくるネウロイやヒュージは外周のリリィ達が斬り伏せる。後ろから忍び寄る敵は後方を陣取る静夏と神琳が排除。そんな流れで一同は邪魔な敵を排除しつつ、空き地の出口付近までたどり着く。この場にいたネウロイとヒュージは互いに潰し合い、殆どその数を減らしていた。いっそ、後の事も考えてこの場の残敵を掃討するか…と皆が考え出した時、新たな異変が起こった。
「な、なんじゃ?この揺れは…」
「嫌な予感しかしない」
どこからか地響きが聞こえてくる。皆が慌てて左右を見渡すと、二水が何かを見つけて叫ぶ。
「あれを見てください!」
彼女が指差す方向…出口から見て左手方向から何やら土埃が噴き上がっている。そして、揺れと土埃が収まるとその異変を起こした主の姿が見えた。真っ黒なその姿、その上部にはまるで戦車の砲塔のようなものがある。4つの巨大な脚で大地を踏みしめて進むそれは間違いなく化け物の類であった。
「大型の陸戦型ネウロイ…」
そう呟く静夏の額に冷や汗が流れる。この手のネウロイは装甲が固い、航空ウィッチでは火力不足に陥る事も多々ある。そして、相手の火力は極めて強力である。通常であれば、多数の火砲と陸戦ウィッチを集中投入してすり潰す、重爆撃機の大型爆弾や戦艦の艦砲を叩き込む等の対処が必要となる。だが、ここにそんな大規模な戦力はいない。こうなっては逃げの一手しかない、静夏はそう考える。
「宮藤さん!こちらの戦力であれの相手は無理です!!」
「梨璃さん達を先に逃がそう」
「そうですね。いざとなれば全速力で逃げましょうか…こちらの方が足は速いですし」
静夏がそう言った刹那、大型ネウロイに青白い光線が飛び込んだ。そして、直撃を浴びたネウロイの一部が損壊する。
「な…!?」
一同は光線が飛んできたであろう方向へと振り返る。すると、そこには別の化け物がいた。巨大な銀色の異形…二足歩行の巨大な怪物が大型ネウロイ目掛けて突進している。
「ギガント級ヒュージ…!」
その姿を見た神琳が呆然としながら呟く。ギガント級は大型のヒュージであり、その巨体は極めて固い。そして、マギ保有量も多い為、通常兵器はマギの障壁…マギリフレクターによってほぼ全て弾き飛ばされる。よって、このサイズのヒュージに対抗可能なのはマギを持つリリィのみである。もしかすると、先程のヒュージの群れはこのギガント級が引き連れてきたものかもしれない。しかし、その群れはほぼ壊滅しており、既に脅威とは言えない数しか残っていない。だが、それでも状況は最悪だ。敵はこの一体だけではないのだ。
しかし、ギガント級ヒュージはこちらを気にもしない。そのまま大型ネウロイに勢いよく体当たり。その衝撃で地面がズシリと揺れる。ネウロイも対抗して赤い光線を叩き付けるが、マギリフレクターに弾かれる。すると、ネウロイは砲塔状の物体から真っ黒な砲弾のような物体をヒュージに撃ち込む。ヒュージはマギリフレクターで巨大な砲弾を受け止めたが、砲弾の持つ運動エネルギーを受け止めきれずに後ろへと倒れた。そのまま倒れ込んだヒュージにネウロイは巨大な脚を叩きつける、押さえつけるような形だ。しかし、ヒュージは倒れ込んだ姿勢のまま青白い光線をネウロイに撃ち込む…
「まるで昔の怪獣映画…」
鶴紗がそう言うと、他のリリィも同意するように二度三度と頷く。あの化け物達はこちらを狙ってはいない。しかし、流れ弾は次々と飛んでくる。今のところはウィッチ達が危険なものをシールドで防いでいる為に被害はない。だが、進むに進めない。
「よりにもよって、帰り道の上で取っ組み合いとはな…さて、どうする。このままだと進めないぞ」
梅が頭を抱えながら言う。化け物達は道の上で派手に戦闘しているのだ。そして、その道を避けるとしても周りの木々の間に何が潜んでいるか分からない以上、迂回するのもリスクがある。よって、この怪獣映画のような騒ぎが終わらない限り、帰り道は塞がれたままだ。だが、そこで楓がポツリと呟く。
「このままあの騒ぎが終わるまで待っていたとして、残った方がこちらに攻撃してくるだけでは?」
「有り得るわね…」
夢結がため息をつきながら同意する。さて、どうしたものか。それでも二体まとめて相手にするよりはましだ。やはり、どちらかが勝つまでこのまま待つか?夢結がそう考えていると、梨璃が解決案を出してきた。
「えっと…二体まとめて倒せませんかね?ノインヴェルト戦術で」
「無理よ、特殊弾は一発しかないわ。それでは倒せるのは一体のみよ」
夢結が梨璃の提案を否定する。すると、神琳が何か思いついたのか考えを述べる。
「いえ、できるかもしれません。あの二体は至近距離で組み合っている形です。よって、うまく撃ち込めばまとめて吹き飛ばせるかも」
その意見を聞いた梨璃は深く頷く。
「それです!やりましょう、お姉様。それに宮藤さん達ばかりにこれ以上、苦労を掛けたくありませんし…」
「はあ、分かったわ…一か八かね。みんな、準備して」
そして、リリィ達はノインヴェルト戦術を実施する為に動く。芳佳がその動きに気づいて何事かと尋ねる。
「梨璃さん、どうしました?あまり動くと危ないですよ」
「私達であの二体を倒します!」
「ええ!?あんな大きいのを二体もどうやって…」
「ノインヴェルト戦術を使います…えーと、私達の必殺技みたいなものです!宮藤さん、準備が必要なので援護をお願いします!!」
「了解…んー?」
梨璃からはノインヴェルト戦術という単語が飛び出した。芳佳にはそれが何かは分からないが、梨璃が自信満々に必殺技と言うぐらいだ。何か凄まじい武器でも使うのかもしれない。しかし、援護と言ってもどうすればいいのだろう。何をするのか分からないのだからさっぱり想像できない…シールドを展開しながら芳佳は首を傾げた。
「最後は私と梨璃で決めるわ。このまま縦隊の隊形で後ろから一直線にパスを繋いで!他に敵はほぼいない、最短で終わらせるわよ」
夢結が指示を飛ばす。最後尾には梅が展開、彼女の脚ならいざとなっても離脱できるだろうという判断だ。
「よーし、準備はいいか?始めるぞ!」
梅がCHARMの引き金を引き、特殊弾が放たれる。放たれた弾は光の球となって飛翔、その光球は前方に陣取る鶴紗目掛けて飛んでいく。だが、彼女は高速で飛んできたその特殊弾を避けようともせずにCHARMで受け止める。
このノインヴェルト戦術というものは、この戦術専用の特殊弾によって作られるマギスフィアという光球に複数のリリィのマギを注ぎ込み、そのため込んだマギの力による強大な一撃を目標に叩き込むというものである。その威力はとにかく強力で、当たりさえすればどんなヒュージすら一発で撃破出来る程なのだ。そして、そのマギスフィアにマギを注ぎ込む方法とは、リリィがCHARMを介して光球にマギを注ぎ、次のリリィにその光球をパス、またマギを注ぐ…この流れを複数人分繰り返す。しかし、この戦術はリリィとCHARMに多大な負荷をもたらす為、攻撃失敗時には一転して劣勢に追い込まれる可能性も抱えている。
光球は最後尾から一直線に前へと次々パスされていく。それを確認した梨璃と夢結は前へと駆け出す。可能な限り近い距離でマギスフィアを確実に撃ち込む為だ。楓からパスを受けたミリアムがマギスフィアを前へと飛ばす。
「任せた!!」
その先にいるのは梨璃と夢結の二人。更にその前方には芳佳と静夏が飛んでいる。ミリアムの声を聞いた芳佳と静夏の二人は咄嗟に振り返る。すると、視線の先には高速で駆ける二人のリリィとその後ろから飛んでくる光の球が見えた。
「静夏ちゃん、あれは…?」
「分かりません、あのような物体は初めて見ます。おそらく、あれが必殺技とやらでしょうか?」
「つまり、あの光の球で攻撃するって事かな?」
「多分、そうかと…」
すると、梨璃が走りながら叫ぶ。
「宮藤さん、私達はこのまま前進します!」
このまま彼女達は自分達より前に出るつもりなのだ。静夏は直感的にそう判断する。視線の先の梨璃は武器で光の球を受け止め、そのままそれを保持しながら走る。そして、静夏は芳佳に進言する。
「宮藤さん、あの二人はこのまま前に出るようです。それにあの様子を見る限り、光の球を持っていると無防備に近い。私達で支援しましょう」
「うん!」
芳佳は梨璃のすぐ隣に並んで飛ぶ。そして、シールドを張り、機関銃とシールドで邪魔になりそうな飛来物を叩き落す。
「梨璃さん、援護します!」
「ありがとうございます。このままお姉様と一緒に突っ込みます!!」
一方、静夏は夢結の隣に並び、芳佳と同じように支援する。すると、梨璃が武器の先に保持していた光の球を夢結の武器へと叩きつける。静夏が驚いてその様子を見ると、光の球は二人の武器に挟まれるような形になった。
「お姉様!」
「梨璃、このまま最後まで駆け抜けるわよ!」
「はい!宮藤さん、服部さん、危険なのでこの光の球を撃ったらすぐに離れてください!!」
「了解!」
そして、二体の化け物の巨体が眼前に広がる。もう目と鼻の先、ヒュージの破片らしきものやネウロイの乱射した光線が次々飛んでくる。しかし、歴戦のウィッチ二人のシールドと機銃弾はその全てを弾き飛ばす。
「梨璃!決めるわよ!」
「はい!」
そして、リリィ二人が大きく跳ねた。だが、眼前にネウロイが放った巨大な砲弾が飛び込んでくる。直撃コース、万事休す。そう二人が瞬時に考えた刹那、芳佳が叫ぶ。すると、芳佳のシールドのサイズは更に巨大化。青白い光の壁が真っ黒な砲弾を受け止める。そして、そのままシールドの角度を変えて明後日の方向へと砲弾を弾き飛ばした。
梨璃と夢結はあまりの出来事に一瞬唖然とするが、気を取り直して態勢を整える。眼下には重なるような形でヒュージとネウロイの姿がある。ほぼ密着した形、絶好のチャンス。そして、二人は一度視線を交わすと、CHARMを振り下ろしてマギスフィアを放った。そのまま光球は化け物へと着弾。刹那、凄まじい閃光が場を包む。芳佳と静夏はそれに驚きながら左右へとそれぞれ急旋回、距離を取る。あの二人は大丈夫か、と芳佳は心配して辺りを見回す。すると、煙の中から梨璃と夢結が現れた。二人とも無事であった。芳佳はそれに安堵すると、そのまま上昇する。ネウロイとヒュージがどうなったか確認する為だ。
着弾地点の煙が風に流される。すると、そこにネウロイとヒュージの姿はなかった。あるのは大穴と残骸らしきものだけである。
「やった!倒した!倒したよ!!」
芳佳は皆に叫ぶ。すると、梨璃はにこやかな笑顔で手を振ってきた。他のリリィ達も集まってきている。これであの向こうへと進む事ができそうだ。
「長居は無用ね、全速力でこのまま離脱しましょう」
全員が集まったところで夢結が言う。
「その方が良さそうです。何が出てくるか分かりませんし」
それに対して、静夏は大きく頷いた。そして、このまま進む事に決まった。小休止すら危険と判断したのだ。どこから何が出てくるかも分からないからである。
リリィとウィッチは駆ける、目指す先は正面の雲の向こう。その雲の壁はだんだんと近づいてくる。そして、全速力のままそれに突入。ついに雲の壁を突き抜けた。
「おおっと!?」
「なっ、一柳隊!?」
雲を抜けた先、眼前に人が数人立っている。慌てて皆が急停止、そこにいたのは一柳隊にとってよく知る人物だった。一人は真島百由、百合ヶ丘女学院工廠科二年生。CHARMの研究開発からヒュージの研究まで、マギが関わる分野全般が専門で活躍する若き天才である。そして、他校のレギオンリーダーが二人、エレンスゲ女学園の相澤一葉と神庭女子藝術高校の今叶星がいた。この二人が所属するそれぞれのレギオンは過去何度も一柳隊と共に行動しており、既に気心知れた仲だ。
「あんた達、あの中で今まで何していたの!?みんな心配して大騒ぎだったのよ!」
「色々あったのよ。こんなに時間がかかった理由はしっかり説明するわ、説明する為の証拠も確保済み」
百由の問いに同期である夢結が答えると、その大雑把な返事に百由は頭を抱えた。
「ああ、もう。それだと何があったか分からないじゃないの!報告は分かりやすく簡潔に、よ!!よく見たらCHARMもガタガタじゃないの」
「そうは言っても…簡単に説明できるような話じゃないのよ。だからこの場での細かい説明は無理。というか、大騒ぎってどういう事かしら?」
「こっちも色々あったのよ。まあ、一柳隊との連絡が途絶した事も含むわ。あ、さっき捜索隊としてうちの強行偵察のレギオンと防衛軍の偵察小隊があの雲の中に飛び込んだんだった…まあ、先に捜索対象が戻ってきたから完全に無駄足ね。で、それはそれとしてもう一つ…さっき新種らしき真っ黒なラージ級ヒュージが現れて、それを防衛軍がミサイルでとどめ刺して撃墜しちゃったとか。もうそれで大騒ぎよ」
すると、百由はそこまで言ってからある事に気が付く。
「んん…なんか人数多くない?というか…あの人達浮いてる!?なにあれ…どういう原理で浮いているのかしら?」
未知の事象に大騒ぎする百由を見て、梨璃は苦笑いしながら言う。
「叶星様、一葉さん。レギオンの他の皆さんもこの山に?」
二人は頷く。
「ええ、鎌倉で異常事態があったという事でヘルヴォルに急遽出動命令が出ました」
「グラン・エプレも同じよ。そしたら、一柳隊が雲の中に入ったまま連絡が取れないと聞いて…梨璃さんやみんなが無事でよかった」
「で、中で何が…?それにあのお二人は?」
一葉の問いに梨璃はため息をつきながら答える。
「えーっと…ちょっと私達の手に負えそうもない事態が起こってしまって…とりあえず学院に報告します。あの、ヘルヴォルとグラン・エプレの皆さんに同行してもらってもいいでしょうか?」
「ええ、それは勿論」
一葉と叶星の二人は同意するが、梨璃の様子がおかしい事に気が付く。
「梨璃さん、大丈夫?」
「あはは…ちょっと、気が抜けてしまったみたいで」
梨璃はそう返事を返すと地面に座り込む。叶星が改めて周りを見渡すと、他の一柳隊一同も皆疲れ切った表情をしている。
「叶星様、中で何があったのでしょうか…?」
「分からないわ…でも、梨璃さんの反応と皆の消耗具合からして何かとんでもない事が起こったとしか思えない」
「これは覚悟を決めて事に当たる必要がありそうですね。さて、まずは皆を呼ばないと…」
一葉と叶星がそう話し合っていると、後ろから声を掛けられた。
「あのー…梨璃さんのお知り合いの方ですよね。一つ聞いてもいいでしょうか?」
二人が振り返る。そこには一柳隊と共に雲の中から出てきた謎の少女がいた。その見た目と雰囲気からおそらく同年代だろう。リリィだろうか?しかし、脚に妙な機械を付け、大きな機関銃を抱えている。その異質な姿に一葉が軽く驚きながら答える。
「ええ、どうぞ」
「ここが…日本という国でしょうか?扶桑ではなく」
少女の発した質問に一葉と叶星は顔を見合わせて困惑した。
「ふそう…?」
雲の中に地形に変化はない。しかし、それ以外の異変は起こる。
それでもリリィとウィッチは雲の向こう側を目指して駆け抜ける。
そして、ウィッチ達は雲の向こうで何を見るのだろうか。