芳佳「リリィ?」梨璃「ウィッチ?」   作:ひえん

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百由「ストライカーユニット?」

 大型スクリーンに映し出されたその映像は一柳隊が端末で断片的に記録したものより鮮明であった。この場にいる全員が初めて見る映像であり、食い入る様に見ている。そして、その映像の中では銀色の化け物が古めかしい装備を持った歩兵を襲撃している。そんなラージ級ヒュージに対し、歩兵達は手持ちの小火器で反撃するものの有効打を与える事が出来ない様子である。そういった状況はこちらの世界でもよく見る光景だ。だがしかし、映像を見ていた人々はその後の展開に驚愕する事となる。

 まず、ヒュージが光線を放つ。だが、その光線は容赦なく歩兵陣地を焼き払うかと思いきや、青白い光に弾き飛ばされる。そして、その光源には人影があった。

 

「これが報告にあったマギ…いや、魔法による障壁か。ラージ級の攻撃を真正面から受け止めるとは凄まじいな」

「しかし、報告と違う点がある。障壁を使っている人物は空を飛んでいないじゃないか」

 

 そして、レシプロ機が急降下しながら機銃掃射する映像が流れ、防衛軍の士官達は唖然とした表情を一斉に浮かべる。事前に一柳隊から目撃報告を聞いていたものの、実際に歴史の教科書に写真が載っているような機体が飛び交って機関砲をぶっ放しているからである。

 

「あれは間違いなく零戦二一型だ…なんてこった」

「おい、映像止めろ!一時停止だ!!」

 

 一人の士官が何かに気づいて叫ぶ。

 

「なんだ、どうした?」

「ヒュージを見ろ。体液が噴き出ている」

「なんだと?本当だ、ウィッチという存在の攻撃が通じたのか?…巻き戻せ、そのまま拡大してスロー再生だ」

 

 映像を拡大し、再生速度を落とす。あの場の何が攻撃し、ラージ級ヒュージにダメージを与えたのか確認する為である。皆、戦闘機に気を取られて下で何があったのかまで把握できていなかったのだ。そして、皆が目を凝らす。

 青白い光の壁を張るウィッチはヒュージを攻撃している様子はない。味方を守るのに全力を注いでいるようだ。次に戦闘機による機銃掃射…ダメージ無し、これも違う。では、何が攻撃したのだろう?皆が首を傾げながらスロー映像を見ていると、百由が何かに気づいてポツリと言葉を発する。

 

「もしかして、この手前に映っている小さい大砲みたいなものが撃ったんじゃ…」

 

 士官達はその呟きを聞き逃さず、映像を注視する。

 

「そんなまさか。こんな小さな砲で?」

「いや、だが…着弾のタイミング的にはこいつの可能性が一番高い。こいつはなんだ?」

 

 かき集めてきた資料を漁っていた士官がその砲の正体を見つけ出す。

 

「こいつだ、歩兵部隊が使う速射砲だろう。おそらく47mm砲か…」

「ただの旧式な砲にしか見えない。弾に何かあるのか?HEAT(成形炸薬弾)とかそういう類の」

「だが、あれがHEATだとしてもだ。口径が小さすぎるだろう。それならそこらの無反動砲や対戦車ミサイルの方がはるかに強力だ」

「では、なんだ?あのヒュージは見かけだけ大きいが、力の弱い個体だったか?しかし、あの攻撃は…」

 

 士官達が意見を出し合うものの結論は出ない。すると、スクリーンの向こうから一つの提案が飛んできた。

 

「ちょうどそこに専門家がいるじゃないか。CHARMやヒュージの論文を毎週のように出しているうってつけの人物が」

 

 それを聞いた士官達は顔を見合わせる。それが誰の事なのか見当が付かないのだ。一方、リリィ達はそれが誰なのか察しが付いたようで、ある人物へと視線を集める。すると、その人物から咳払いが一つ。

 

「えー、工廠科二年生の真島百由です。一応、その毎週論文出している人物というのは私ですね」

 

 士官達はてっきり偉い教員でも出てくるものかと思っていた為、一人の生徒が名乗り出た事に驚く。併せて芳佳と静夏も驚く、理由は前者と同様だ。

 

「あなたがその専門家ですか。では、早速ですがご意見をいただきたい」

「そうですね…サイズと攻撃内容から推定されるマギ保有量を考えると、映像に映るヒュージはラージ級に間違いありません。さて、昔の武器についてはあまり詳しくありませんが、先程の会話から考えるとあの大砲は現代の火器程の威力はないと言えるのでしょうか?」

「おそらく、そうなります。我々の世界で大昔に存在した同じ兵器のスペックを見る限り、一般的なラージ級に深手を与える程の威力はありません」

 

 その回答を聞いた百由はわずかに考える素振りを見せると口を開く。

 

「では、マギに干渉する何らかの手段を用いてヒュージを構成するマギを引き裂いた…その可能性はどうでしょう?」

「それができるのはCHARMだけでは…いったいどうやって?」

「それはさっぱりですね。でも、向こうの世界は古代から魔法を使ってきたのでしょう?つまり、それだけの知識や技術の積み重ねがある。私達の世界はマギについてせいぜい50年程度の研究実績しかありません。よって、他の技術は時代相応にこちらがはるかに上でも、その点だけは向こうの方がずっと勝っている可能性もあるかもしれません」

「なるほど。しかし、向こうの魔法はこちらのマギと同じなのでしょうか?」

「それについてはそう簡単に結論を出す事は出来ませんね。この場にその魔法を使う人物がいるとしてもそれを調べるには設備も人員も時間もありません」

「うーむ…結局、何も結論は出ずといったところですか」

「いえ、まだ一つ手があるでしょう」

 

 そう言うと、百由の視線は静夏へと向けられる。そして、質問を口にする。

 

「服部少尉、先程の映像について質問しても?」

「ええ、答えられる範囲なら」

 

 そして、百由は言う。

 

「あの大砲…速射砲でしたか?ええと、それがどんな種類の砲弾を使ったか分かりますか?」

「いえ、あれは陸軍の兵器ですので詳細までは分かりません。しかし、これは推測ですが…ウィッチが砲弾を装填して速射砲を撃ったか、対ネウロイ用の弾薬を使ったか。この二つの可能性があるかもしれません」

 

 静夏が述べた推論に百由は首を傾げる。ウィッチが装填、発砲した?ウィッチの力はリリィとは違い、通常兵器でも効果を発揮するという事なのだろうか。そして、対ネウロイ用の弾薬とは何か?

 

「ええと…まず、対ネウロイ用の弾薬とは何でしょうか?」

「砲弾や爆弾にウィッチの魔法力を製造時に充填した兵器です。これを使用する事で通常兵力でもある程度はウィッチのように効果的な打撃をネウロイに与える事が出来るのです」

「そんな事が…」

「そういった兵器を使用したところを直接見た事もあります。その時は特殊な焼夷弾でしたが」

「通常の砲弾だけでなく焼夷弾まで…?では、もう一つ質問。ウィッチの装備を見てもいいでしょうか?」

「ええ。外観のみなら」

 

 そして、百由や士官達と数名のリリィがウィッチの持つ装備品の周りに集まる。士官達はその装備品の中の銃に注目する。彼らにとってはそれが最も身近な存在であり、真っ先に理解しやすいものであるからだ。

 

「機銃弾は12.7mm…いや、ちょっと違うな。これは13mmか13.2mmか?」

「見た目はただの銃弾だ。ふむ、徹甲弾に曳光弾…」

「銃自体は特に変わった所は無いな。まあ、人が抱えて走り回れるような代物ではないが」

 

 百由もその銃を調べる為にあちこち見て回る。そして、薬室が空である事を確認してから銃身を覗き込む。リリィのCHARMならば銃身内のライフリングに小さな刻印が施されている。それによって弾丸にマギを付与するのだ。はたして、ウィッチの武器も同じようになっているのだろうか。しかし、百由は驚きの声を上げる。

 

「何もない…?」

 

 ライフリングには何か細工をしている様子はない。周りにいた士官達も同様に確認したが、昔ながらの火薬を使用するただの銃に違いないとの事だった。

 

「すみませんが、ネウロイを攻撃する際に魔法を使用するのですよね?どのようにこの銃に対して魔法を使うのでしょうか?」

「先に述べたような特殊な弾薬もありますが、基本は装備に魔法力を注ぎ込む…と言えば通じるでしょうか」

「いや、注ぎ込むとしてもその過程というか…あー、もう。ぐろっぴ!説明用にCHARMを持ってきて!!」

「人使いが荒いのう。あと、こういうまともな場でその呼び方は…」

 

 ぶつぶつ愚痴りながらもミリアムがCHARM…グングニルを持ってきた。そして、百由は説明の為にファイバースコープを取り出す。そして、銃身にそれを入れて端末に映像を映し出す。そこに映るのはグングニルの銃身内部だ。

 

「これを見てもらうと分かるように、CHARMのライフリングや刀身にはマギと制御用の術式を付与する為の小さな刻印が刻み込まれています。その銃にはこういったものは無いのでしょうか?」

「いえ、ありません。通常のウィッチが使用する火器は一般的な火器と同様です」

「それはつまり、特殊な兵器は必要なく魔法を使用できると?」

「まあ、おおよそは。ただ、このストライカーユニットの力も借りなければ効果的な戦闘は出来ませんが」

 

 そう言うと、静夏は筒のような物体を指さす。そして、それを見た百由は先程見た光景をハッと思い出す。これこそウィッチが脚に付けていた機械であった。しかし、外観だけではこれがどのような理屈で動く機械なのかさっぱり分からない。

 

「これで先程空を飛んでいましたが、これはどのような機械なのでしょうか」

「このストライカーユニットは簡単に説明すると、ウィッチの魔法力を増幅する機能を持ちます。そして、これによってウィッチはネウロイと戦う事が可能となるのです」

「増幅ね…その点はある意味CHARMと同じか…」

 

 しかし、百由はストライカーユニットの外観と筒の内部を見て、ある点に気が付く。

 

「ん?この奥行だと…うーん?脚の長さに対して、内部のスペースがやたら狭いような…これだと脚が入らないわ。いや、でもあの時はちゃんと脚が入っていた筈、どうなっているのかしら?」

 

 百由が首を傾げていると、芳佳がどうしたのかと尋ねる。

 

「ええと、この機械の中身なのですが…この奥行だと脚が入らないような気がして」

「ああ、それですか。えーっと、なんだったかな…ストライカーユニットに魔法力を注ぐとこの中の空間が変化するとかなんとか」

 

 そんな芳佳の話を聞いた百由は目を見開く。

 

「え…まさか、空間操作?それはとても興味深い!あの、試してみても?」

「え、ええ!?」

「よしっ、ぐろっぴ!今すぐこれに脚突っ込んで!!」

「はぁ!?百由様、正気か!!」

 

 しかし、芳佳は慌てた表情で止めようとする。

 

「あ、あの、このストライカーユニットは初心者にはとても危険で…」

「ああ、大丈夫。大丈夫。いざとなれば引っこ抜くので」

「えぇ…」

「ああ、もう!どうなっても知らんからな!!」

 

 恐る恐るとミリアムは芳佳のストライカーユニットに脚を入れる。だが…

 

「なんかぶつかったぞ。これ以上入らん」

「えっ!?」

 

 どうなっている?やはりマギと魔法は別物か?と百由はとっさに考える。一方、芳佳はミリアムに対してアドバイスのようなものを投げかける。

 

「ええと、もっと勢いよく魔法力を注ぎ込む感じで…」

「マギを?えーっと…そういう制御はCHARMが無いとちょっとな…」

 

 二人の会話を聞いた百由は静夏に質問を飛ばす。

 

「魔法の制御はどうやっているのでしょうか?」

「制御ですか?それは使い魔の力を借りてやっていますが…」

「ふーん、使い魔ね…つ、つ、使い魔!?」

 

 実にファンタジーな回答に百由は絶叫しながら驚愕する。しかし、これで大きな違いがはっきりした。リリィはCHARMでマギの制御と増幅を行うが、ウィッチのストライカーユニットは魔法力の増幅のみ、制御はそのファンタジーな代物で行うという事だ。そして、百由は二つのストライカーの形が違う事に気が付く。CHARMと同じように多種多様な種類があるのだろうか。

 

「この二つはそれぞれ違う形をしていますね」

「ええ、自分のストライカーは紫電。宮藤少尉のものは震電という名前のストライカー。それぞれ違う機種でメーカーも異なります」

「なるほど」

 

 その名前は明らかに和風といったものであった。しかし、傍でそれを聞いた一人の士官は唖然とした表情だ。どうしたのだろうと百由は首を傾げる。すると、その士官は資料を漁り始める。そして、あるページを開いて静夏に質問をぶつけた。

 

「我々の世界には紫電、震電という戦闘機が存在した。ここにある写真の機体だ、そちらにこれらは存在しないのか?」

 

 そこにはまさに同じ名前の戦闘機が記載されていた。

 

「前線で見た事は無いですね…もしかしたら開発中かもしれません。ストライカーと同じ愛称を持つ戦闘機はよくあるので」

「では、他の戦闘機はあるのか?」

 

 その士官は資料を次々取り出してくる。傍からその光景を見ていたミリアムはその士官の様子がまるで二水のようだと呆れ気味に呟く。その士官はそういう方面に深い興味を持った人物なのだろう、最早執念を感じる勢いである。

 一方、そんな質問をぶつけられている静夏の方はたまったものではない。自分の兵科と違う装備に関して質問されても、そこまで詳しくないのでおおよその事しか回答できない。更に海外の兵器に関してまで質問が飛び込んでくる。そんな静夏が困り果てていると、芳佳が助け舟を出す。

 

「あのー、そろそろ我々も帰還したいと考えておりまして…時間も時間なので」

 

 その一言に皆は時計を見る、もう夕方だ。ウィッチ二人は雲の向こうに帰還しなければいけないし、事態の報告もあるだろう。これ以上、無理に引き留めても仕方ない。それに彼女達にはこちらの事を扶桑側に報告してもらう必要がある。すると、スクリーンの向こう側の人々が慌ただしく動く。そして、スピーカーから音声が流れてきた。

 

「いくつか資料や書類をそちらに送る。それを向こう側に届けてほしい」

 

 それを聞いた静夏は緊張した表情で質問を返す。

 

「それは外交文書…となるのでしょうか?」

「まあ、形式はともかく…結果的にはそうなるだろう。この事態を悪い方向に進める訳にはいかない。少尉の君達には荷が重い依頼かもしれないが、確実に向こうの政府へ届けてほしい」

「分かりました。最も信頼できる上官に預けます」

 

 すると、見た事もない機械から音を立てて紙が出てくる。あれは電信の類だろうか?士官達はその出てきた紙を手早く封筒に入れていく。そして、封をしたそれを手渡してきた。芳佳が封筒を受け取ると、この場にいる皆に一通り挨拶を済ませる。それを終えると外に出る為に二人は用意を進める。まずは離陸準備と武器弾薬の点検をしなければならない。そして、リリィ達に案内されて二人はグラウンドに出る。

 一通りの用意を終えてストライカーユニットの始動準備を開始。だが、基地での通常の発進と異なり、ここには地上の支援機材は一切無い。よって、全て自前の魔法力で魔導エンジンを始動せねばならない。ウィッチ二人は普段より丁寧にエンジンを始動、特に問題も無く順調に動いている様子だ。これなら飛べるはずである。そして、フワリとホバリングを始めたウィッチ二人を見た周囲の面々は一様に驚いた表情であった。

 芳佳が離陸しようと進行方向の安全確認をしていると、梨璃が駆けよってきた。

 

「宮藤さん、お気をつけて」

「ええ、ありがとうございます。色々とお世話になりました」

「いえいえ、こちらこそ助けていただいたので…」

「では、そろそろ出発します。梨璃さん、またお会いしましょう」

「はい、必ず」

 

 短い会話を終え、梨璃は二人から離れる。ストライカーユニットの爆音が更に大きくなると、ウィッチ二人はグラウンド上を滑走するように加速。そして、そのまま飛び上がると真っ直ぐに雲の柱へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「静夏ちゃん、大丈夫?」

「はい、こちらは異常なし。何が出てくるか分かりません。警戒しつつ飛びましょう」

「そうだね…ん?」

「どうかしました?」

 

 雲の柱の内部で芳佳は地上に動く何かを見つける。数は複数、一列になって動いている。

 

「ほら、あの木の間。何か動いているような」

「確かに。いえ、あれは味方ですよ!陸軍の歩兵です!!」

 

 芳佳が見つけたのは扶桑陸軍の歩兵小隊であった。見慣れた小銃を抱えて身を潜めつつ進む。そんな彼らは草木を被って擬装している為、上からでも一目では分かりにくい。よく見ると、陸戦ウィッチもいるらしい。そして、二人はその小隊の元へと降下する。

 

「ご苦労様です。扶桑海軍服部少尉と宮藤少尉です」

「よかった、他にも味方がいましたか。しかも、ウィッチ二人とは心強い」

 

 小隊を率いる陸軍中尉が笑顔で敬礼しながら状況を説明してきた。彼らは東京の連隊所属で、斥候任務を命じられてこの雲の中に入ったらしい。そして、雲の向こう側へと潜入、偵察と調査を行って帰ってきたところのようだ。

 

「では、二人は向こう側の人間と接触したと?」

「ええ、どうも別世界らしいという事は判明しました」

「やはり…」

「それで向こうの政府関係者から書類を届けるように依頼されまして」

「うん、それならばちょうどいい。今頃、この件で鎌倉には関東一円から陸海軍の士官が多数集まっていますよ。そこでまとめて報告しましょう。その方が手間も省けるでしょうし」

「そうですか、それならよかった」

 

 静夏はホッと胸を撫で下ろす。鎌倉には既に味方が多数集まっているようだ。そして、芳佳も呟く。

 

「坂本さんも来ているかなあ…」

「どうでしょう?まあ、少佐なら真っ先に来ていそうな気はしますが」

 

 そして、二人は歩兵小隊の上空を守りながら前進。先に大規模な戦闘をしたせいか、特に接敵する事も無く雲の外へと出た。今度は見慣れた鎌倉周辺の景色が見える、無事に帰還したのだ。だが、突如として猛烈な悪臭が漂ってきた。皆は咄嗟に鼻をつまむ。何があったのかと芳佳が周囲を見回すと、防護服を着た人物が駆け寄ってくるのが見えた。どうやらただ事ではない状況らしい。

 

「斥候に出た小隊か!?」

「そうだ!今戻った」

「失礼しました、中尉殿!ここは危険ですので隊を率いて今すぐ下山してください」

「何があった?」

「それは後程説明がありますので、今すぐここを離れてください。そちらのウィッチの方々も!!」

 

 防護服を着ていてよく分からないが、その様子から駆け寄ってきた人物は陸軍の下士官か兵卒らしい。

 

「何があったんだろう?」

「さあ…?戦闘だとしても、防護服まで着込むなんて」

 

 小隊の兵達も騒ぐ。状況はさっぱり掴めないが、ここにいても仕方ないと指示に従って山を下りていく。

 

「おお、無事だったか!!」

 

 斜面を下り木々の間を抜けると、陸海軍の士官達が駆け寄ってくるのが見えた。すると、一人の海軍中佐が叫ぶ。

 

「誰か坂本少佐を呼んで来い!!あの二人も帰ってきたぞ!!」

「えっ、坂本さんがいるんですか!?」

「ああ、いるぞ!ずっと心配した様子だった。少尉、早く顔を見せてやれ」

「ありがとうございます!」

 

 芳佳は中佐に教えてもらった方向へと急ぐ。すると、そこには大きなテントがあった。そして、そのテントの中から馴染みの顔が出てくる。坂本少佐と土方兵曹である。

 

「宮藤!!」

「坂本さん!!土方さん!!」

「無事だったか…よかった。服部は?」

「無事です、向こうで士官の皆さんと話をしています」

「そうか、二人とも無事か…上々だ。で、何があった?」

「ええ、それについては一緒に帰ってきた陸軍の皆さんと報告します」

「よし。では、行こう」

 

 ウィッチ二人と陸軍の斥候隊は雲の中とその向こうで何があったのかを陸海軍の士官達に報告する。そして、双方が持ち帰った物証と芳佳が持ち帰った封筒を見た士官達はただただ愕然とし、大慌てで東京へと至急電を打電するのであった。

 

 雲の中を超えた先は別の国に繋がっている模様。至急対応されたし。

 




偵察部隊が集めた情報に皆はただ驚く。
そして、情報を得た双方の国々は動き出す。

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