ノーゲーム・ノーライフ ―神様転生した一般人は気づかぬ間に神話の一部になるそうです―   作:七海香波

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 まず何から申し上げれば良いのやら……と思いつつ、まずは謝罪をば。
 更新遅れて、本ッ当に申し訳ありませんでした!!
 テスト終わったら更新するとか言いつつ、気付けばそこから数週間が経過。馬鹿としか言い様が有りません。はい。
 一応この話は書いてたんですが、何回も手直ししてこれで五〇回ぐらい書き直してるんです。全然気に入らないからという個人的な理由で。
 後モンハン4gで大剣振り回してたのもありますが。

 とりあえず、どうぞ。

 P.S.ちょっと前に各章の題を追加しました。


第一弾 「  」+■=?

『努力と天才は正反対だと言うけれども、それは違うの』

 

『――』

 

『そりゃまあ最近の二次元作品だったら、才能(スペシャル)よりも努力(ノーマル)を重視する傾向に有るけどね。ほら、現実と所詮二次元を混同しちゃダメなのよね』

 

『――』

 

『努力できる人こそが天才であるのだし、天才である人が努力をする。それが真理よ。努力しない人は天才とは呼ばれることはなく、天才と呼ばれる人は皆努力をしているわ。つまり、それらは同一なのよ。トランプの表裏ではなく、サイコロの目のようなモノよ。結局は同じだというのに、時と状況によって見方の変化するもの』

 

『――』

 

『だから――幾ら貴方が少年ジャンプみたいに血と汗と青春を捧げて努力したと言ってもね、私達にはそうは見えないの。貴方は普通に特別が出来る、化物。普通な私達からしてみれば異常で問題で不吉で歪曲してる、理不尽で摩訶不思議な存在(モンスター)

 

『――』

 

『貴方は常に一番だった。×××を差し置いて。運動だって勉強だって統率だって、常にあの子の先を行く。あの子はしっかりやっているのに。塾でも一番だわ。習い事だって毎度のように金賞を取ってくるし、家でも予習復習は欠かしたことはないわ。なのになのになのに――』

 

『――』

 

『そうよね。貴方は知っているわよね。だって、あの子の一番の友達だもの。いつも学校から帰ってきたら話してくれるわ。黒ちゃんがまたこんなことをやった、凄いってね。――でも、それを見る度に思うわ。あの子だって報われないと可笑しいじゃない――』

 

『――』

 

『ね、分かるでしょ?だから。だから、私達が評価してあげるのよ。あの子が報われないのは貴方が居るから。常に先を行く貴方が、そこにいるから。なら、貴方を消せばあの子が先頭に立てる。あの子の努力が報われるのよ。親が子を導いてあげるのは当然のこと、だから例えその過程で一般人(私達)化け物(貴方)を殺しても――それも当たり前、でしょう?』

 

 彼女は、そう俺に言い聞かせるように、

 

 躊躇と決断の狭間に心を揺らす、自身に言い聞かせるようにそう言いながら――

 

 手の平に持った赤いボタンを、押した。

 

 

 ☆ ★ ☆

 

 

 図書館最奥部、地下三十メートル及び多数の結界の張られた場所には新設された実験室が位置している。黒がここへ来てから新たに設置された部屋の一つであり、もっぱらここ最近ジブリールと二人で閉じこもっている場である。

 実にどうでもいい話だが、先日黒がジブリールに叱られた(?)のもこの部屋だったりする。

 

 あれから三日が経過した。

 それなりに普通の生活に戻った今となっては、さすがに黒も元通りの体調を取り戻していた。一般人に比べれば十分ハードなのだが、それも今更である。

 そして今日も今日とて部屋に閉じこもり色々な研究を進める、その予定だったのだが……。

 

 予想内(・・・)の第三者の来客により、二人の作業は一時中断となっていた。

 

 

 先日彼らがゲーム(具象化しりとり)をした際に居たテーブル。

 その上に置かれた四つのティーカップからは、白い湯気と甘い香りが漂っていた。無駄な努力と時間を惜しみなく費やしたジブリールの家事スキルは相当に高く、一緒に出された黒のクッキーと見事に調和する味わいを出すことに成功している。二つが合わさって、フロアには甘い匂いが漂っていた。

 当然本に匂いが染みこまないよう、気流操作の結界が組んであった。

 

「んぐ……お、美味いな。コレ入れたのってそっちの天使さんなのか?」

「――美味しい」

 

 要件を出す前にまずは一口と、来客はそれぞれミルクティーとクッキーを口に含む。

 堅すぎず柔らかすぎないさっくりとした感触と、砂糖とバターの奏でる滑らかな甘み。

 茶葉のエキスが深く染みこんだ紅茶と、そこに注がれたミルクの生み出す柔らかな色と香り。

 片方は予想外の驚きに目を開き、もう片方も特に女性としてのプライドがあるわけではないので素直に賞賛した。

 

「クッキーは俺の焼いた奴で、紅茶はジブリールだ」

「どれも魔法で鮮度が保たれていますので、しっかりとした味わいが感じられると思いますよ」

 

 そんな彼らを前に、黒とジブリールも自分の分を口にしていく。

 黒はミルクティーを、ジブリールはクッキーを。

 互いに互いの作った物を最初に口にするのは、果たして偶然かどうか――それを問うのは無粋だろう。

 

「さて、分かってはいるが改めてそっちの口から聞くぞ――本日の用件は?」

 

 傾けていたカップを皿の上に戻し、黒は目を細めながら正面の二人を注視する。

 対面に座る彼らも一旦手を休め、傍らに置かれていた紙で軽く手を拭いてから、手をテーブルの下に戻した。

 

 『人類LOVE』とロゴの入ったシャツを着た青年が、代表として話を切り出す。

 組んだ両手に顎を乗せ、前髪の隙間から覗く鋭い目が黒達を静かに射貫いた。

 

「――全ては我がケモミミのため。獣人種(ワービースト)征服のために、黒、お前らの力を借りたい」

 

 ――いつも通りの下らない理由を吐いた彼は、それで満足したかのように、フッと笑みを浮かべた。

 ……なるほど。

 

「――本日の、要件は?」

「ちょっと待てや黒、なんだその馬鹿を見るかのような目つきはってオイコラそこで目を反らすんじゃねぇー!」

 

 聞かなかった事にした黒に慌てて突っ込む空。

 いつもこんなノリとは言え、さすがにボケをスルーされるのは中々に心に響いたらしい。ボケか本気かは知らないが、二人といえば二人らしい。

 

 呆れたような表情をしながら、やはり目の前の彼らは変わらないと思いつつ。

 黒は、正面の来客――人類種(イマニティ)の王である、空と白を見つめたのだった。

 

 

 

 

 一つのボードに画鋲で留められた、巨大なこの世界(ディスボード)の世界地図。

 その前に立った黒が指示棒を手にとある一部を指していた。

 

「――つまり、獣人種(ワービースト)戦に手を貸せと?」

 

 空達が黒に相談してきた内容は、内政をある程度安定させてからの『対外国との(ゲーム)』だった。

 

 現在の空白は元引きこもりという前科があるとはいえ――一応、『国王と女王』の座に就いており、その仕事内容は主に国内の政治と対外との駆け引きである。

 

 国内政治において『賢王』と呼ばれ、ここ数日で問題貴族などが随分と整理されたのは耳に新しい。

 首を揃えて文句を言いに来た古き貴族達を全員ゲームで打ち倒し、所持品全てを巻き上げたのだとか。そんな逞しい彼らが、今更この内容で黒に相談することがあるだろうか。いや、ない。頭の賢い項羽とでも言うべきだろうか。話術によるカリスマと絶対的な実力によって民衆に圧倒的な支持を得る二人だからこそ、もはや国内に敵はないに等しい。

 

 さて話がそれたが、国内の問題があらかた済んだなら――次は国外の問題について手がつけられていくことは言うまでもない。

 エルキアは人類種(イマニティ)最後の大都市であり、住むべき土地を失った人民達が多くを求めてやってくる。当然空達もいくつかの公共事業を展開して彼らをひとまず食いつながせているものの、このままでは限界という物がある。どうしても、領土の拡大を始めなければならないのだ。

 

 そこで目を付けるべきが、エルキアの目の前に広がる広大な領土を保有する東部連合。

 

 空白の二人としてはこの前見かけたステファニー・ドーラの犬耳に目が行っていることから獣耳と触れあうのが一番の目的なのだろうが、それは置いておくとしても大陸は様々な素材の宝庫である。異世界の知識を使えば大きく活用できることは間違いないだろうし、どう考えても手に入れておきたい場所である。何よりその土地は獣人種が先代からゲームで奪ったものであり、今の内に取り返しておけば元の住民達が戻ることが出来る。彼らなら土地勘もあるから、今後の事業展開にも有意義に活用できる。

 

 だがここで、大きな問題が発生する。

 

 領土を取り戻すためにはエルキア側から東部連合へと勝負を挑まなければならないのだが、肝心のその内容がさっぱり不明なのだ。強いて言っても、分かっているのは相手プレイヤーが獣人で有ること。そんな当たり前のことぐらい、知ることが出来ない。

 

 なぜなら、東部連合は自ら勝負を挑むことなく、常に受け身でゲームを行っているからだ。しかもその上に、彼らはゲームの掛け金として『ゲーム内容に関する記憶の封印』を求めている。つまり、自分たちの慣れ親しんだ上で多種族は不慣れなゲームであり、その上長く研究されたら危険なゲームであり、そこにはイカサマがあるということまでは想像がつく。

 

 つまり東部連合の策は、『十の盟約』の中に存在する『ゲームは挑まれた方が決定権を有する』というルールを最大限に活用するための戦法としては十分なものなのだ。

 

 確かに黒も空白もイカサマを使う相手とは何度か相手をする機会が有ったし、それら全てに対して勝利を収めることは出来た。

 だが、そのどんな場合に置いてであっても、イカサマ――チートにはパターンが存在した。トランプであれば、特殊模様の印刷・形状の僅かな変化・シャッフルにおけるテクニックなどが代表的な所だろうか。

 だが、今回のゲームはイカサマを見抜くどころか、そもそも内容の手がかりすら掴めていない。そもそもイカサマではなく正々堂々としたゲームなのかも知れない。

 

 自分たちでゲーム内容を類推するしかなく、国家戦を担うゲームである以上その情報は厳重に隠匿されているから、実体を探り当てて確定することも出来ない。これは現実なのだから、そう都合良く情報が漏れてくることなども有り得ないと考えるべきだ。

 

 つまり、実質、情報が零に近いところからエルキア側は東部連合に挑まなければならないのだ。古代から現代にかけて、戦を征する最大の要素とは常に情報力である。それが限りなく無いに等しい今、そう簡単に挑むことなどできやしない。

 

 ――それら全ての不利を分かっていて尚、挑むのか?

 口に出さないまま、黒はその目だけで空白に問いかけた。

 

 そんな彼を前にしても、空白は何一つその大胆不敵な態度を変えることはなかった。

 

「ああ。そんなこと分かってるさ。だからこそ、組もうぜって言ってるんだよ。ほら、覚えてるだろ?『「  (俺たち)」に敗北の二文字はない』。そして――」

 

 十全に相手の情報を押さえ、相手の動き――思考すらも予測し、予想外の対策を完璧に実行し尽くす。その上にこそ、空白の無敗は成り立っている。確かに、十分な情報が揃わないのだとしても空白が勝利する可能性はある。だが絶対ではない。十中一二を引き当ててしまうかもしれない。万に一の確率での敗北が、あり得る。

 それは許されない。

 崖っぷちに座る人類を背負う者としてではなく、純粋に、一人(二人)のゲーマーとして。

 だから、九割五分の確率を十全に引き上げるために、

 

「――『■と「  」(俺たち)には、勝利しか残らない』、か?一体何時の話だよ、ソレ」

 

 ■というカードを切る。

 黒の続けた言葉に、覚えてたか、と空が笑う。

 誰が作ったか、そのフレーズは彼らがオンラインゲーム上に現れて僅か数ヶ月後にささやかれ始めたモノ。彗星の如く現れ、瞬く間に最上位を占めた二人のプレイヤーの最初の持たずして持った(・・・・・・・・)肩書き。一度も実現したことがない故に、思い描かれた幻想。

 それを、ここで現実にする。

 

「いえ、お待ち下さい皆様。それは、まず不可能なことで――」

 

 本来であれば、許されない行為だろう。

 人類種(イマニティ)VS獣人種(ワービースト)の舞台に、部外者()が立つことは。

 

 『十の盟約』その七、団体(人類種)の代表として戦えるのは、全権代理者(空白)。黒はその立場に立つことは出来ない。人類種(イマニティ)の中で尾ひれを付けて泳ぐ噂によると、どうやら黒は多種族によって作られた魔導人形(オートマタ)らしいから。

 だからそれが許される様な状況まで持っていく必要性が、今の上に追加される事になる。

 その方法を模索することも付け加えれば、一体どれほどの難易度に跳ね上がることか……そんなことは、ここにいる誰もが分かりきっている話だ。

 

 ジブリールも三人の考えていることを見抜き、進言する。

 明らかなことだと分かっていながらそのまま話を進めようとする三人に、彼女は自身の意を露わにする。

 

「ジブリール」

 

 難しい顔をして考える彼女に、黒は語った。

 

この世に不可能はない(ナッシング・イズ・インポッシブル)、だ。不可能と謳われるモノは未だかつて可能とした者がいないだけで、その言葉は無意識に意識に刷り込んでいる枷でしかない。不可能だとか無理だとかは言ってたら出来ないんだよ」

「つーかジブリールさんよ、黒は人間で天翼種(フリューゲル)のアンタを破っただろうが。それに比べりゃ黒の参加権を納得させることぐらい、簡単じゃねぇの?」

「――あ」

 

 そう。思い返せば目の前に居るマスター、黒こそが僅か数週間前にその不可能を成し遂げたばかりではないか。何千年以上もの月日と共に重ねられた知識を持ってしても自らが勝利出来なかった相手が、不可能を可能に変えたヒトが、目の前に居る。

 

 それは説明にはなっていない。あくまでそれとこれとは話が別の事である。

 それでも、彼女の心の中にあった、マスター()の敗北という僅かな思考を捨て去るには十分な理由だった。

 

「申し訳ありません。マスターを信じないなど、あってはならないことを申し上げるなど……」

「いや、そんな無条件に信じられても困るんだが」

 

 見事に言いくるめられたジブリールを前に笑いながら、黒と白が思い出すように話す。

 

「……それにしても、にぃ、良くそんなの思い出した……」

「出会って間もなくの頃の話だからなぁ。普通覚えてないだろ、あんなの」

 

 この二人(三人)が組んだなら、そこには勝利しか約束されない――初めて見たときはどこのエクスカリバーだと画面越しにも関わらずツッコミを入れたものだった。ちなみにこちらの世界にはない概念だったので、誰にもネタが伝わらないのが残念だったのも同時に覚えている。

 

 その理論は、理由も説明もなく、そして何より実戦で試した覚えすらない。それでは、つまらないから。空白も黒も、互いに互いしか認めた(ゲーマー)はいない。もし二つが揃ったなら、それはもはやゲームではなく――ただの作業だから、と。ただの一度も実現させたことはない。

 だが、今回の相手であれば。

 対戦相手に一切の情報を隠し通す頭脳と、一度望めば物理限界すら超える肉体。そのどちらもを兼ね揃えた今回の相手であれば、「  」と■の二人を相手に、戦い抜くことが出来るかも知れない。

 相手は万全の状態で、こちらは全くの情報がない不安定な状態。――だから?

 

 

 

 実に、面白いじゃないか。

 

 

 

 『何も分からない。方法もルールもゲーム盤も、予め知っておくべきモノが一切手に入らない。全ては、ゲームが始まってから』――逆に考えてみよう。それら全てをひっくるめてのゲームだと考えれば、どこに不都合があるのだろうか?

 

 初見で防具護石装飾品ネコ飯アイテム無し、対象不明に状況&状態不安定の新武器で挑むモンスターハンター。分かっているのは相手(狩猟対象)獣人種(モンスター)だということだけ。ぶっちゃけて言えば、所詮そんなものだ。

 

「ああ、空。改めて言っておくが、俺たちも参加するってことで良いぞ」

「オッケー。そうと決まれば後は宣戦布告、か。一旦城に戻って、準備するか。実はさっき、在エルキア大使館の爺さんにアポ取りつけてきたんでな。明日には向こうへ行くぜ」

「分かった。んなら、それ相応の準備をしていくとするか」

 

 黒とジブリールの参加が決まったところで、話は一気に進んでいく。

 宣戦布告は明日、四人――いや、ステファニー・ドーラを含めた五人で正面から堂々と乗り込む予定だ。

 なぜ彼女が必要かというと……「別に必要は無いが黙って行動すると後で五月蠅そうだから」「ステフ、うざい……」らしい。その扱いはいくら何でも酷くないか?と黒だけが思っていた。

 

 

 




 チェックはしたんですが、所々表現がおかしいかもです。深夜でハイテンションなので。

 ちなみに、この時点で原作との差異が結構出てきてます。
 大分無茶苦茶ですが、黒が入った分の補正だとでも思っておいて下さい。



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