魔術師という職業   作:雨本咲

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ちょっと短めです。記念すべき7777文字。


第7話 徘徊と三頭犬

 ホグワーツ魔法魔術学校では、日々の授業で大量かつハイレベルの宿題が出される。

 1メートル以上にも及ぶ長さを求められる論文だとか、授業内容をまとめたレポートの提出だとか、そんなやつだ。まるで大学の様な内容の宿題に、大半の新入生は困惑し、混乱し、苦戦する。そこに別分野の研究や習う必要のないスキルアップの為の学習その他が加わるともなれば、生半可な覚悟では遂行できまい。

 そんな状況に今いるのが、スリザリン寮所属の1年生、11歳の身長140㎝、得意科目は魔法薬と天文学の、オリヴィエ=コニアテスという少女だ。彼女はそれらの過酷な宿題に加えて、魔術師としての研究作業や魔法についての研究、日によっては上司ローラ=スチュアートへの報告があるなど、普通の学生にプラスアルファの仕事も多い。なぜなら彼女は、学生であると同時にイギリス清教の一員(オフィスワーカー)であり魔術師でもあるからだ。

 故に。

 

「今日もギリ日付超えた……けど終わったッ!」

 

 宿題の締め切りや先の見えない研究に追われて、日付が変わるまで起きている事だって珍しいことではない。

 現在の日時、10月19日24時20分。つまり、10月20日午前0時20分。

 場所はスリザリン寮談話室。普段から漂っている地下特有の冷気は、深夜ともなれば更に色濃くなる。

 大理石の壁に囲まれた広い面積の中には、大小の椅子や背の低い机などが並べられている。そして一番目立つ所では、地上だとまだ登場する機会がなさそうな暖炉がパチパチと燻っていた。

 その広い談話室のど真ん中に鎮座する肘掛椅子に座りながら、万年寝不足少女オリヴィエは溜息を吐いた。普段ならこの椅子は上級生が使っているのだが、今はその上級生すら寝静まっている。ここ数日は、段々と難しくなってきた授業内の宿題の処理に加えて、約半月かけて研究していた無詠唱魔術の研究や無言呪文の特訓なんかも入ってきたので、ずっと徹夜しっぱなしだったからだ。だが、その研究がやっと終わったのであった。

 これで、魔法の勉強に専念できる。ついでに無言呪文も習得したし、無詠唱魔術は不完全ながらも成立した。―――ちなみに、無詠唱魔術は魔術師なら誰でも使える代物ではなくなってしまった。特殊な形に変質させた術式に、オリヴィエが作った特殊な霊装を組み込むことにより、手振りだけで発動する。何度も発動する事によって段々と威力は増していくというおまけ付きだ。とはいえ変質させた術式もまだ数少ないし、魔術の特徴たる威力には期待しない方がいいので、まだ実戦運用は先の話だろうが、手振りだけでいいようにグレードダウンしたというのは画期的なはずだ。

 この数日間はあまりに遅くまで起きていたので、しばしば上級生に「まだ寝ないのか」と注意を受けたものだ。親切な上級生よ、あなたの後輩は徹夜の呪縛から解放されましたよ、と声高に叫びたい。勿論オリヴィエは勉強も研究も好きでやっているし徹夜には慣れているが、上級生を無駄に心配させるのはオリヴィエの良心がズキズキ刺激される。だが、明日からはゆっくり眠れる。先輩は安心してよかろう。

 オリヴィエはふと、ローブの裏に手を突っ込んだ。これもつい最近に生み出したもので、ローブ―――ここにかけた結界に、オリヴィエは歩く協会と名付けた―――の裏地と縮地トランクに魔術的な回路(パス)を繋ぐ事によって、ローブの裏に手を突っ込むだけで自室にアクセスできるという代物だ。これの開発も、オリヴィエの徹夜を推し進めた一因である。

 だがこれによって、いつでも自分好みの紅茶を飲める、という安心感が生まれたのだ。

 この日のために用意しておいた秘蔵の高級茶葉―――縮地トランクに入れば、秘密裏に自室へと帰れるのだ―――発覚すると面倒なのであまり高頻度では使えないから、とっておきの時だけだが―――で淹れた、いつもオリヴィエが縮地トランクから取り出すものとは一味違う紅茶―――先入れの牛乳もちょっと高めのやつだ―――を口の中に流し込んだ。普段使いの茶葉とは一線を画す、芳醇な香りと爽快感のある渋みは、連日仕事に追われるオリヴィエを癒すには十分すぎるご褒美である。そして今夜は奮発して、クロテッドクリームとジャムを乗せたスコーンも用意した。所謂「クリームティー」である。さくさくのスコーンに、濃厚なのにさっぱりとしているクロテッドクリーム、ジャムの鮮烈な甘みが口内いっぱいに広がる。オリヴィエは紅茶をそこに投入し、絶妙なハーモニーを十二分に楽しんだ。

 

 そして、カフェインで眠れなくなった。

 

 ―――誤算だったか……!

 自分へのご褒美を終わらせたオリヴィエが、ベッドに入ったが眠れない。シルクの掛け布の感触やマットレスのふかふか加減は初日から変わらないのだが、目をつぶろうが脱力しようが全く眠りに落ちない。研究が終わった徹夜明けだからと言ってはしゃぎすぎたのだろうか。オリヴィエは今まで世界一健康な生活をしていた、とは断言できないが、こんな夜遅くに紅茶を飲んだことは無かったのだ。完全にカフェインの覚醒力を見誤っていた……。

 ベッドの中で頭を抱えた。早く眠らないといけないのはわかっているが眠れない。かと言って徹夜する程何かに切羽詰まっている訳でもない。徹夜は慣れているから平気だが、朝になるまでの退屈を紛らわせるモノがない。一体どうしたものか。

 

「―――校舎内を出歩こうか」

 

 夜眠れない時はいっそ動いてみるのが効果的だと、オリヴィエは以前ローラから聞いた。夜間行動の大敵であり全生徒が嫌いな存在二大巨頭である、管理人のフィルチと騒霊(ポルターガイスト)のピープズを攻略できるのは基本的にスリザリンだけらしく、ついでに夜間に出歩いている教授はスリザリンの寮監(スネイプ教授)くらいのものらしい。これらの要素により、上級生曰くスリザリン生はホグワーツの夜闇を恐れずに歩き回れるらしいのだ。

 ここで、オリヴィエは『ホグワーツ校舎の捜査』という大義名分を思いついた。未だ入った事のない深部に調査の手を伸ばすのも悪くない。ダンブルドア校長が入学式で言及していた、4階右側の禁じられた廊下も気になるところだ。そんなこんなで、カフェインの覚醒力によって深夜に一人目が冴えてしまったオリヴィエは、『ホグワーツ校内を歩き回り禁じられた廊下の真相を暴く』事を一晩の目標に設定した。

 

 

 

 ―――しっかしまあ、広い校舎だこと。

 オリヴィエは心の中で、皮肉めいた感じになるように悪態を吐いた。ポケットの中の懐中時計は深夜0時50分を指している。3、4時くらいまではうろうろできるだろう。

 昼間と違って、深夜のホグワーツ校舎は底の見えない暗闇に包まれている。一方のオリヴィエはカンテラやランタンを持っていない。灯りが心許ないな、と思い、オリヴィエは右手の人差し指を立て、蠟燭のような小さい炎を起こした。手元を照らすならこの程度でよかろう。ついでに今は、自分―――炎は効果範囲に入らない―――に光を吸収させる魔術を使っている。これをすれば、相手の認識を阻害するとかいう面倒な事をせずとも、夜闇の中へ身を隠せるのだ。殆どで歩いている人間がいないうえスリザリンに伝わる夜間行動の心得もあるが、保険をかけておくに越したことはない。

 大理石の壁に反射して、かつんかつんという、自身の足音が小さく聞こえる。奥も全然見えないうえ道は入り組んでいる。スリザリン寮付近の迷路のような地下洞窟が、過去一で面倒に感じた。

 オリヴィエはなるべく足音を立てないようにひっそりと足を運びつつ、深夜のホグワーツ魔法魔術学校校舎巡りツアーの、記念すべき1カ所目へと向かったのだった。

 

 まずオリヴィエが向かったのは、図書館だった。いつも通っているのに何でまた、と聞く人間が現れるかもしれないが、そいつにはホグワーツ図書館についていささか無知であるという評価を下さざるを得ない。こんな深夜の、こんな人気のない時間だからこそ入れる場所があるのだ。

 そう、『閲覧禁止』の書棚である。

 この閲覧禁止ゾーンには、ホグワーツでは決して教えられる事のない『強力な闇の魔法』について記述した本が並んでいる。閲覧禁止と銘打っているだけあって、教授方の誰かのサイン入り許可証がないと本を借りる事ができないという管理の厳しさだ。この書棚に並べられた本を開ける事が許されるのは、教授のサイン入り許可証を以って借りるか、上級生になって『闇の魔術に対する上級防衛術』の授業を受けるかしかない。だがオリヴィエは、一刻も早くこの内容を知りたくて知りたくて堪らなかったのだ。

 オリヴィエは、閲覧禁止の書棚を隔てるロープをそっと跨いだ。今オリヴィエが使っている術式は、光を吸収できても音や存在をかき消すことは出来ない。大音を鳴らせば終わりだ。尤も、この嫌に広い校舎の中で聞き取れる人間が居れば、の話だが。

 火を起こした人差し指を並ぶ背表紙一つ一つにかざしていけば、一冊一冊の内容がすぐに見える。閲覧禁止の棚に居る書籍達は厄介で、背表紙に押された金の文字が剥がれていたり、全くの未知の言語で書かれていたりする事があった。だが閲覧禁止というだけあって古めかしい本や正体不明の本なんかがずらりと並んでいて、オリヴィエの好奇心を刺激された。世界中の禁忌を詰め込んだ禁書目録の記憶者としては、心が踊らない筈がない。オリヴィエは興味をそそられた物にひとつひとつ手をかけ、開いては記憶していった。オリヴィエは一つの本に手をかけ、そして引っ込める。何故か、といえば、その本は開いた瞬間叫び出すタチの悪い物だったからだ。無論そういった悪質な本は避けつつ、オリヴィエは本を開いては読んで覚え開いては読んで覚えを繰り返し、気付いた頃には30分が経過していた。その時間内で、オリヴィエは1年生の初歩的な授業―――1年生で習う事を馬鹿にしている訳ではなく―――どころかホグワーツでは決して学びようのない上級の闇の魔法を記憶することができた。例えば『最も強力な魔法薬』という本の、身の毛もよだつような結果の挿絵といった、結構()()()()表現の本も少なからずあったが、魔導書の精神汚染に比べれば赤子のようなものだった。

 

 満足して図書館から出た時、オリヴィエははたと歩みを止めた。

 ―――やりたい事が思いつかない。

 無鉄砲に寮から出てきたが、図書館以外に行きたい所が思いつかない。別に閲覧禁止書棚と禁じられた廊下以外は普段から入れる訳で、わざわざ夜に来てまで訪ねたい所なんて特にない訳だ。オリヴィエは考えあぐねて、人気のない部屋を片っ端から開けて行こうと考えた。もしかしたら、秘密の隠し部屋なんかも見つかるかもしれない。

 

 『とにかく何か面白いものを探す』という目的で散歩をしてみたが、そこまでの収穫がなかった。絵画が動いたりゴーストがうろちょろしたりしているホグワーツ校舎だが、部屋には工夫が殆どないようだった。開けてみれば廃教室だったり物置部屋だったり、そもそも扉だと思ったら壁だったりして、大した結果は残らなかった。強いて言えば、厨房へ入る方法も見つけたくらいだろうか。普段は大量の屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)が忙しなく働いているらしいのだが、深夜というだけあって誰もいなかった。今度暇なときを見つけて、日中に訪ねてみよう、とオリヴィエは思った。もしかしたらお菓子や食事をおすそ分けしてくれるかもしれないし。

 ついでにオリヴィエが気になったのが、とある部屋にあった大きな鏡についてだ。埃っぽい廃教室においてあって、誰が使いに来るのか皆目検討もつかないような立地だった。魔法の道具かもしれないと思って試しに映ってみたが、オリヴィエの姿が映し出されるだけだった。何でもかんでも魔法がかかっている様に感じる魔法学校においては珍しいただの鏡だったし、一体全体誰が映りたがるというのだ。まあ、どうせあの変人校長による理解不能の趣味なんだろうと、オリヴィエは記憶の彼方に投げておいた。

 大広間に久々に行って寮別得点の砂時計をじっくり眺めた後に、特に何もなかったな、とオリヴィエは校舎内に見切りをつけた。折角夜に好きなだけ歩き回れるのだからどうせ行けるなら外まで行ってしまおう、と、オリヴィエは外まで足を伸ばす事にした。まだ今年は未使用―――クィディッチ・シーズンは11月からだ―――のままのクィディッチ競技場の真ん中に立って選手の気分になった後、ホグワーツ湖の大イカを眺めたり、禁じられた森に入って魔法生物を観察したりした。一角獣(ユニコーン)やケンタウロスが居て、バレない様に遠目から見るだけではあったが、貴重な経験になったとオリヴィエは感じた。

 そしてオリヴィエは校舎の中に戻って、禁じられた廊下がある4階へ上がった。最後にして最大の目的を果たすために。

 

 ―――埃っぽい。

 現在地は、ホグワーツ城4階右側の廊下『禁じられた廊下』。余程痛い死に方をしたい人のみが入ることを許されるその廊下に、死ぬ気などさらさらないオリヴィエが最初に抱いた感想はそれだった。誰も彼も校長の言いつけを遵守しているのか、至る所に埃が層になって溜まっているし、角のあたりには蜘蛛の巣が張っている。むせて咳き込まない様に配慮しながら歩いて行けば、薄暗い廊下の先には分厚い木の戸があり、開けようとすると当然ながら鍵がかかっていた。

 ポケットの中の懐中時計は2時30分を指している。調査にかけられる時間は約1時間30分。一体何があるのかもわからないというのに、とんだタイムトライアルだ。だが、まあ―――悪くはない。オリヴィエはローブの裏から自身の杖を引き抜き、構えた。

 ―――開け(アロホモラ)

 これは魔法の方が手っ取り早いので、オリヴィエが杖を振る。と、鍵の開く軽快な音がした。―――呪文を言わなくてもいいのは隠密性に長けていて非常に良い。

 そしてなるべく音を立てない様に、オリヴィエはそっと戸を引く。オリヴィエがゆっくりと戸を動かして行くと、向こうに部屋があるのが分かった。ゆっくりと見えてくる小部屋。中を覗くと、そこには大きな『それ』が、我が物顔でずっしりと鎮座していたのが、真っ先に目に飛び込んできた。

 それは例えるとすれば、怪物犬とでも言うべき生物だった。床から天井までびっちりと埋める巨体、そして何より特徴的なのは、八岐大蛇を想起させる三つの首と三組の血走ったギョロ目。黄色く汚れた牙の隙間からは縄の様に涎が滴り、寝ているのか獲物を前にして舌なめずりしているのか判別がつきにくいが、ただ一つ、わかる事がある。この化け物の正体だ。三つの頭の犬といえば、魔術師でなくとも存在くらいは知っているだろう。―――ギリシャ神話に登場する冥界の番犬、三頭犬(ケルベロス)だ。

 ―――は。

 一瞬、オリヴィエの思考に空白が生まれた。

 その空白において、三頭犬が冷静さを取り戻す時間が生まれてしまったのはオリヴィエの失態だった。三頭犬はオリヴィエがぽかんとしている内に、オリヴィエが敵であると認識してしまったのである。そうなれば、三頭犬は速かった。雷の様な、低い唸り声がオリヴィエを威嚇した。見えないはずだから、匂いや音で勘付かれたのだろう。痛い死に方、とはこの三頭犬に食われるという事か。このままでは食われるが―――いや、まだ何かがある。

 オリヴィエは、長くない余裕の中で『それ』を見つけていた。三頭犬があんまり大きいから一瞬は見落とした。だが、オリヴィエの観察力を舐めてはいけないのだ。天井から床まで埋める三頭犬の巨体に敷かれて見えにくくなっていたが、三頭犬は下に『仕掛け扉(トラップドア)』を隠していたのである。

 ―――更にトラップは続いている!

 オリヴィエの目的は、禁じられた廊下の真相を暴く事である。ここから先に捜査の手を伸ばすには、三頭犬のトラップを突破しなければいけなさそうだ。オリヴィエは三頭犬の殺害も辞さない方針で、ローブを引っ掛けてまくり、裏から武器を呼び出した。

 先端から出てきた『それ』は、オリヴィエの小さな身には余るほど大きい銀の杖だった。頂点にはうずくまる天使と、背中に大きな天使の羽の彫刻がされてある。五大元素の内の一つ、『エーテル』の象徴武器(シンボリックウェポン)―――蓮の杖(ロータスワンド)だ。蓮の杖(ロータスワンド)はふわりと移動すると、オリヴィエの胸の中でしっかりと抱かれた。

 

万物(E)照応。(C)五大(T)の元(F)素の(O)元の(T)第五。(E)平和(O)と秩(T)序の(R)象徴(T)『司(S)教杖(P)』を(A)展開。(O)偶像の一。(F)神の(F)子と(F)十字(G)架の(L)法則(A)に従(A)い、(C)異なる(T)物と異(D)なる者(T)を接続(A)せよ(C)

 

 杖を抱きしめながら、オリヴィエは呟いた。すると蓮の杖(ロータスワンド)は、それに呼応するように頂点の羽を花の様に開かせる。それを見るとオリヴィエは唐突に、ローブの裏地から取り出した折り畳みナイフで蓮の杖(ロータスワンド)の柄の部分をメチャクチャに切りつけて傷つけた。オリヴィエを食い殺そうと首を伸ばしていた三頭犬は、ぴたりと動きをやめた。それが終わってナイフを投げ捨てると、オリヴィエはふう、と息を吐く。三頭犬はなんのことやらと止まっているが、やがて気づいた。

 時間差で、三頭犬の足がメチャクチャに切られている事に。

 蓮の杖(ロータスワンド)はエーテルの象徴武器(シンボリックウェポン)だ。エーテルは音や光を伝達すると()()()()()物質で、そしてエーテルには面白い性質がある。万物に似ている為に、蓮の杖(ロータスワンド)で他の四大元素を全て扱えるのだ。これに、形や役割が似ている物は性質や力も似てくる―――つまりは丑の刻参りの藁人形みたいなものだ―――という偶像の理論を当てはめれば、空間そのものに作用させてこんな遠隔攻撃も出来るのである。

 三頭犬は、足をメチャクチャに切りつけられた痛みで苦しみ、もがいていた。しめた。痛みで理性が飛んでいる今こそチャンスである。オリヴィエは隙を見て仕掛け扉を開け、三頭犬が落ち着く前に滑り込む。帰りの手を考えなきゃなあ、と考えつつ、オリヴィエは落ちている途中ながら下に迫る罠の存在に気付いていた。

 ―――植物?

 下にあったのはツタの絡み合った植物の様なものだった。普通に考えればクッションなのだが……先刻の三頭犬に続いてロクな物ではない事は察する事ができる。無鉄砲に戸を開けて痛い目を見たばかりな訳だし、此処はさっさと燃やして対処した。植物が無くなればそこそこの高所からの落下だったが、幸運にも、オリヴィエは箒を使わない極東の飛行術式を―――実戦で使った事はないが―――一応使えるのである。術式の効果で軟着陸し、フワフワ浮きながら―――落とし穴なんかがあってもおかしくないので―――オリヴィエはその先の部屋へと進んだ。

 

 現在時刻は2時40分。いいスタートである。




 スネイプ先生の足を噛んだ三頭犬が足を傷つけられるって面白いですね! それを狙いました(後付け)
 はい、ということでフワフワのフラッフィー突破です。フラッフィーっておっかないのに名前はかわいいですよね。ハグリッドのネーミングセンス……
 次は鍵部屋から始まり、攻略するまでです。トントン拍子ですね! やったー!
 では、この辺りで目を離して頂いて、
 次話に進んで頂ける事を祈りつつ、
 今話はこの辺りで筆を置かせて頂きます。(鎌池和馬先生風)
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