魔法少女じゃなくて魔獣少女です   作:ちゅぴま

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初変身回です。
変身シーンって大事だと思うんですよね。


魔獣少女、始まりました。

白く細い手に乾いた血がべっとりとついている。目に映る住処も、所々血痕が見られて何かが起きたことは間違いないと確信させる。けど、大丈夫だろうという謎の確信も彼女にはあった。

 

「服までびっちゃりだ…」

 

気に入っていた物でもないが、着ていたワンピースも真っ赤に染っていた。身体にへばりついていて気分が悪い、早く着替えよう。このワンピースがあった洋服売り場に行けば替えなんていくらでもある筈だ。

 

「はあ…」

 

ため息混じりに立ち上がり、軽く背伸びをする。洋服売り場はここから遠い筈だから、今から行くのはベタつく服と合わさって憂鬱になってしまう。まあ仕方ないと目をこすりながら洋服売り場に移動を始めた。

 

「…昨日はよく見えなかったけど、中は案外綺麗なんだな」

 

改めて見るとモールの中は経年劣化によって傷んではいるが昨日見た建物のように崩れていたりはしない。それらと比べたら比較的綺麗な方だ。ただ、まばらに見られる血痕を除きさえすればだが。

 

「………」

 

誰もいない寂れた店内を進み続ける。するとどうしたのか、歩みを止めて自分の手を眺める。

 

「なんなんだろ…」

 

朝から感じている違和感。体調の面ではなく、心の奥で何かが引っかかってるような感覚。ナニカがおかしい。自分が自分じゃない、そんな感じがして止まないのだ。

 

「嫌な事を考えた…」

 

けど、今は気にしないようにしようと首を振って考えを散らす。とっとと替えの服を探すとしよう。さっきの違和感も全部この服のせいだと自分に言い聞かせて再び歩き始めた。

 

「…うーん、これでいいかな」

 

洋服売り場に着いてからしばらく探したが、妥協に妥協を重ねてダボダボのシャツに短パンとなんとも言えない組み合わせを着ることにした。

 

「じゃ、明るいうちに使えそうな物を集めるか。」

 

服も整え、気分も上がってきた所でせっかくだからと辺りの物色を始めた。

 

「食べ物はもういいから何か役立ちそうな物を…」

 

ガサゴソとショッピングモール内の物を漁って回る。けれども見つかるのは半世紀前の物、現代を生きる彼女に使えそうな物はほとんどないといえるだろう。どれもこれもが経年劣化で傷んでおり、無事そうなモノでも少し力を加えたら軋む音がする程だ。

 

「外、どうなってんだろうな」

 

ふと、外はどうなっているのかが気になった。以前は気にしなかったが魔獣に出会わないというのはどうも不思議に思えた。物の劣化具合やこの規模の廃墟からしてここが旧東京であるのは間違いなさそうなのだが…

 

「ちょうど屋上に行けそうな階段があるし、そこから見てみよう」

 

偶然か必然か、彼女の目の前には屋上へ通じるであろう非常階段の扉があった。堅く重そうな扉を蹴り飛ばし、そのまま屋上を目指して進んで行く。コツコツと、階段を踏む音だけが響く。

 

「ッ、太陽がもうあんなに高く…」

 

ようやく屋上にたどり着いた彼女は半日ぶりに見る太陽の光に眩しそうにする。頭上で輝く太陽は今が昼時であることを主張するかのように燦々と輝いている。

 

「…とりあえずあっち側はどうなってんのかな?」

 

まずは階段出口の正面から景色を眺める。地上からそびえたつビルは無数の苔やツタが張り付いて一体化している。道路には木々が乱立し、花や草が無造作に生えていた。

 

「………」

 

どこを見てもそうだ、人の手が加えられていないこの地区は自然に呑まれている。今まで見たことがないこの景色は、良くも悪くも彼女に大きな影響を与えることになる。

 

少し別の場所を見た時、何かが動くのがちらりと見えた。黒くて、大きいナニカ。潜在的な恐怖心を煽る凶悪な外見。彼女はそれと同じモノをこの目で見たことがある。あれは…

 

「魔獣だ…」

 

あの日、彼が見たドラゴンとは違う獣のような魔獣。黒く赤い毛皮のそいつは、確実にこちらを見据えて近づいてきていた。

 

魔獣と遭遇した人間の死亡率は約80パーセントと呼ばれている。理由は単純、魔獣は一度狙った相手をどこまでも追いかけ確実に食い殺すからだ。逃げても逃げても執拗に追ってくる姿は死神にすら見える。だからこそ

 

「死んじゃうのかー、俺…」

 

諦めるの一択を取らざるを得ない。前述の魔獣の性質上、こちらを狙っているヤツから逃げ切ることはほぼ不可能。ならば、約20%の者たちはどうやって生き残ったのだろうか。

答えは身代わりだ。

魔獣は殺したからには骨も残さず食べ尽くし、果てには流れた血液すらも飲み干そうとする。その間に残った人々は軍に保護してもうのだ。そして現状、奴の狙いは彼女に向いている。

 

「腹、減ったな…」

 

そういえば朝抜いてきたっけ、と苦笑いしながら腹をなでる。最後の晩餐といってみたい気持ちもあるが、お相手は待ってくれないらしい。涎を零しながら歩いてくるのがよくわかる距離まで来た。

 

「結局、なんで女になったかも分かんなかったし…」

 

デパートの壁を這い上がり魔獣が眼前に姿を現した。目は血走り息は荒く、今にもこちらに襲い掛かってきそうだ。が、不思議と彼女に恐怖の色はない。すでに生きるのを諦めて目を伏せ、せめて痛む間もなくと身を委ねている。

 

「GAAAAAAAAッ!!」

 

魔獣の咆哮が天地に轟く。力強い踏み込みは足場を揺らし、そこ巨大な爪から放たれた一撃は双方に必殺を確信させた。

 

 

ーーーガキン、と重い金属音が響いた。

 

 

「え?」

 

 

魔獣の鋭利な狂爪は、爪を思わせる黒の三刃よって防がれた。防いだのは彼女自身の左腕。しかし、当の本人は困惑で紫色の瞳を揺らしている。腕に纏っているのは篭手と一体化した剣、手甲剣。その紫のカラーデザインと取り付けられた刃はさながら獣の鉤爪を彷彿とさせる。

 

「っっ!!」

 

腕に力を込めて思いっきり振るう。すると魔獣の巨体は風に吹かれたかの様に飛んでいく。巨体が叩きつけられた事で揺れる足場がその力の強大さを証明している。

 

「戦える…のか…?」

 

現実味の薄い状況に、左手に取り付いている得物に問いかけるように呟く。その問いに手甲剣は答えるはずは無い。けれども彼女の黒い目には、黒曜石の様な刃が輝いたように見えた。

 

それに呼応するように足元に紫色の魔法陣が開かれた。次第に魔法陣が上昇し、着ている服を身体にフィットした紫と黒のスーツへ置換していく。そして衣服を置換し終えた魔法陣はバラバラに砕け散り、一つ一つが機械的な部品へ変化し彼女を囲み飛び回る。

 

「GARUUUUU…」

 

ーーー魔獣が起き上がり、再びこちらを見据える。

 

突き出された彼女の右腕には対称となるように紫色の篭手が装備され、漆黒の鉤爪が展開される。装着された腰部のアーマーからは尻尾を模した刃が飛び出し、足には重量感のある装甲が取り付けられる。そこから伸びた軽装甲が彼女の脚部へと装着される。この姿に意外と違和感は無い。

 

「おお、カッコイイじゃん。」

 

鉤爪同士をぶつけながら、恥ずかしいとかよりも格好良いという感想が漏れ出た。年頃の少女が着るには破廉恥だったりゴテゴテしているが、彼女の記憶は男。ロマンがあれば問題ないと魔獣よりも早く動く。

 

「フッ、ハアッ!」

 

脚に力を入れて、全力で踏み込む。先程まで立っていた床がへこみ、耐えきれなくなった足場に穴が開く。本人ですら理解の追いつかない速度のまま、魔獣の顔に膝蹴りを加える。

 

「GAAAAAッ!?」

 

再び転倒する魔獣は諦めまいとすぐに立ち上がろうとしたが、頭上の影に気付き動きを止めて顔をあげる。

 

それが敗因だ。

 

「ハアアァァッッ!!!」

 

そこには腕の刃を魔獣に向けた彼女が、自由落下に身を任せながら迫る姿があった。既に回避不可のこの状況で魔獣は最後の足掻きか、喉が張り裂ける程の声で吠えた。

 

「GAAAAAAAAAッッッ!!!」

 

「うるせえぇぇぇぇッッ!!」

 

手甲剣は分厚い皮膚に食い込み、その衝撃で床が抜ける。それだけじゃない、四階、三階二階と次々と床を食い破っていく。衝撃で窓が割れ、周囲の床も巻き込まれる様に倒壊していく。

 

店の床が消えて地面が見えるほど打ち付けられた魔獣の息は既になく。勝者である少女は魔獣から引き抜いた手甲剣を誇らしげに掲げ、叫んだ。

 

「ぴーす!」

 

こうして、彼女の中で致命的なナニカが壊れ始めた。




不穏な雰囲気を何とか出したかった(力不足)

変身状態のスペックとか要る?

  • 要る
  • 要らない
  • そんな事より投稿頻度上げろ
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