TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第10話 大木の腰

 まるで岩盤まで根を下ろした大木のように重い腰を上げて、ワタシは遠路はるばる金を稼ぎにギルドまで来た。『なにが遠路ですか。徒歩で15分でしょう』というナヴィの突っ込みがあったけど、コンビニより遠いなら、それは遠路になるんだぜ。

 

 

「あー、だるいなー。働かなくても月に50万円くらい口座にお金が入ってこないかな」

 

「そんな都合の良い事態など起きようもありませんので諦めてあくせく働きましょう」

 

 ロスト保護プログラムで借りているアパートから徒歩15分。

 とぼとぼ歩いて水々市冒険者ギルド04支部まで来た。

 

 日本に転移してきた翌日、ワタシはすぐに冒険者の免許を得るためにギルドまで来て、実はちゃんと冒険者になっている。ワタシ偉い。

 

 まあ、冒険者になってまだ1回も冒険者としての仕事をしていないけどな!

 アッハッハ!(笑)

 

 アニメとゲームとラノベが面白すぎるのがいけないんです。ワタシは悪くないと声を大にして言いたい。

 

 ちなみに、冒険者の免許自体はすぐに取得することが出来た。

 

 ワタシを保護してくれた赤坂さんの事前情報の通り、Bランク以上の他の冒険者の推薦があれば簡単に免許を取得することができる。

 免許とはいったい…… うごごごごごご……

 

 まあ、冒険者というのは万年人手不足なのだ。いとも簡単に冒険者になれるのも致し方ない。危険を冒したいと思う人は少ないし、稼げる分死にやすいしね。

 

 冒険者になると、『冒険者カード』というものが支給される。

 冒険者カードは保護プログラムのときにもらった身分証よりも少し大きいサイズの硬いカードで、表面にはワタシのステータスが載っている。

 

 ワタシはかなり驚いたのだが、冒険者カードに載っているステータスは魔力や防御力、体力などがすべて数値化されて載っていて、しかもレベルが上がったりなどでステータスに変動があると、自動でカードも更新されるとのこと。

 ワタシは魔道具にあまり造詣がないが、内部を覗いて視る(・・)と結構複雑な作りをしているようだ。

 

 この世界は本当にゲームみたいなシステムになっているなと改めて感じた。まあ、分かりやすくていいけどね。

 

 みーちゃんに冒険者カードを発行してもらうときに、当然ワタシのステータスもそこに載っているのだが、みーちゃんにだいぶ驚かれたのを覚えている。

 「ステータスが全部999になってますね…… ロストだとバグっちゃうのかな……? 一見するとゲームに出てくる魔王とか勇者みたいなステータスしてますね! まあ、多分バグだと思うので、一応上にも報告しておきますね!」なんて無邪気に言われて乾いた笑いをしたものだ。

 うん、みーちゃんごめん。ワタシ、言えてないけど元魔王なんだ。

 

 

「いくか~」

 

「猫背になっていますよ、マスター。しゃきっとしましょう」

 

「ふぁ~い」

 

 諦めてギルドの自動ドアをウィーンとくぐる。

 

「お、レインとナヴィじゃねーか」

 

「ほんとだ」

 

 自動ドアをくぐると、ちょうど上半身が半裸の大男2人とばったり会った。どうやらギルドに併設されている酒場へ向かうところのようだ。

 

 2人とも筋骨隆隆としたシルエットで、ガハハと良く豪快に笑うほうがガンさんで、もうひとりの見た目に反した爽やかな喋り方をするのがテツさん。2人は兄弟で、周りからはガンテツ兄弟とよく言われている。

 

「あ、ガンさん、テツさん」

 

「こんにちは。4日ぶりですねMr.ガン、Mr.テツ」

 

「今日は昼間っから呑むの?」

 

「そうそう。今日はオフだからね。兄さんと一緒にお酒を飲んで楽しもうかと」

「そっ! 今日の俺らは気前がいいぜ~? 昨日たんまり稼いだからな! レインは今から昼ごはんか? なにかおごるぜ?」

 

「いや~、今日は冒険者やりにダンジョンの攻略申請に来ただけなんだよね~」

 

「え!? ナヴィちゃん、ホントなの?! 働きに?!」

「レインが!? いつもギルドには食事に来るだけで、この2ヶ月保護プログラムにかまけて働いていないぐーたら姫がついに動くのか?!」

 

 ん?

 なんかおかしくない?

 

 今日は冒険者として働きに来ているだけだといえば、ガンテツ兄弟にめちゃくちゃ驚かれた。

 

 たしかにワタシはギルドに食事にしか来ていないけどね? 週4くらいで来てるけどね?

 ここの酒場の料理は安いくせにおいしいからね、しょうがないね。唐揚げが特に美味しいからね。

 

 ガンさんやテツさんとは酒場で知り合って、意外に話があって意気投合した。冒険者とは何たるかをすごい雄弁に語るのを聞くのは結構好きだ。

 

「いやいや、ワタシだってしっかりとした社会人だからね。(書類上は)20歳だし、れっきとした大人。しっかりと働くときは働くのだよ。ふふん♪」

 

「明日は雪が降るかもしれんな、テツ」

「そうだね兄さん。電気ストーブ、今のうちに出しておこうか」

 

「息ピッタリだなおい」

 

 少しおどけてワタシだって働くんだと言ってみれば、弟のテツさんまでひどい言いようだ。さすが兄弟、仲がいいようで何よりだな?

 

「じゃあ、そんなわけでワタシらはダンジョンに行ってくるから――」

 

 話をそこそこに、攻略申請をしに窓口へ行こうとして、ふと酒場の方に目が行った。

 

「なにあれ? なんか人だかりが出来てるけど……」

 

「ああ、登録者数1,000万人超えのYootuber“かがりん”が握手会するっていうんでみんな来てんだ。ゲリラ的だからあれでも少ないほうだぜ。

 ま、かく言う俺らも仲間から連絡もらって、ちょうどそれに来たってわけだ」

 

 Yootuberのかがりん?

 誰それ?




(仲いい兄弟がいると、片方を死なせて闇堕ちさせる展開もできるのですが、
ハッピーな方が好きなので)ないです。

幸せで安心できる日常的な物語が良いって、それ一番言われてるから。
だからみんな、まどマギ観ようね!
とっても可愛らしいマスコットもいるよ


***

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