TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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いま流行り(n周遅れ)の現代ダンジョンものかいてみました。
対戦よろしくおねがいします。


プロローグ
第0話 オタクな魔王さま


 

 

 ――ああ、死んだ。

 

 冒険者になってまだ間もない少女は自分の死を確信した。

 自分はこのモンスターに殺されて死ぬのだろう、と。

 

 犬のような顔をした人型のモンスター、コボルト。

 ただのコボルトであれば少女でも対処できた。このダンジョンには通常種のコボルトしかいないから自分でも大丈夫だと、そう思っていた。

 

 しかしどうだ。

 

 ふたを開けてみれば頭に一角獣のような立派な角が生えた、明らかに通常種とは異なる風貌のコボルト。

 雷属性の魔法を使ってくる上位種だ。

 

 上位種と言うだけならまだいい。

 たとえ上位種でも、1匹だけならまだ逃げることは出来た。

 

 しかし、その上位種のコボルトが5匹。

 上位種だけではなく、通常種もどこからかワラワラ出てきて囲まれた。

 

 そして自分はコボルトの雷魔法をくらって身体がしびれて身動きが取れない。

 

 

 ――欲をかいちゃダメだったなぁ……

 

 自嘲気味に少女は笑う。

 

 少女がいるダンジョンはまだできて新しいダンジョン。

 新規のダンジョンはまだ開拓されていない分危険度も高いが、その分一気に稼げる可能性がある。いわゆるダンジョンドリームだ。

 自分なら大丈夫、ダンジョンドリームを勝ち取っていい暮らしをしてやる! その過信が今回の結果を招いたのだ。

 

 両親の反対を押し切って冒険者になったが、冒険者になったことは別に後悔していない。いつかモンスターに殺されるかもしれないことも考えていた。これも運命だろう。

 命のやりとりをするんだ。そんな覚悟はとっくにできている。

 

 けれど両親はきっと、自分が死んだらすごく悲しむし、すごく怒るだろう。そこだけは後悔しているし、申し訳ない。

 

 

「グギャ…ャ…」

 

 コボルトたちがニヤニヤと、こちらに近づいてくる。

 

 右手に持った棍棒を左手に軽く打ち付けて、今からこれでお前を殺してやるんだぞ、そう言っているように感じた。

 

「ごめん、お父さん、お母さん……」

 

 コボルトが棍棒を振り上げる。

 

 まるでスローで再生される動画のように、棍棒が振り下ろされる瞬間が鮮明に見えた。

 

 あたる直前、文字通り死ぬほど痛いであろう痛みを想像し、少女は目をつむった。

 

 

 

 しかし、いくら待っても衝撃は来ない。

 

「え?」

 

 

 閉じていた目を開けると、そこには銀髪の女の子がいた。

 

 コボルトと少女の間に割って入るようにいる銀髪の女の子は、コボルトが振り下ろした棍棒を何でもないように右手で止めている。

 コボルトたちはいきなり現れた女の子に驚いているようで身構えて距離をすぐさまとった。

 

「生きるのをあきらめるのはまだ早いぜ、お嬢さん?」

 

 こちらをちらりと見ながら、女の子が言う。

 自分よりも年下であろう女の子が使うにはすこし違和感のある言葉遣いだが、不思議としっくりくる。

 

 腰まであるきれいでつややかな白銀の髪。こちらを見る、宝石のように美しい紅の瞳。雪をも(あざむ)く白い肌。

 死んだ自分を迎えに来た天使と言われたら納得してしまいそうなほど綺麗な女の子に少女はすこし見惚れてしまった。

 

「なんで……」

 

 少女からこぼれたその言葉は、別に何かを問いたくて出た言葉ではなかった。

 

 ただ、なぜここにこんな女の子がいるのか。

 なぜ自分を助けてくれたのか。

 なぜそんな簡単にコボルトの攻撃を止めているのか。

 

 そんないろいろな考えがつい言葉に出ただけだった。

 

「ふっ」

 

 白髪の女の子は不敵に笑い、こう答えた。

 

 

「ダンジョンの中で困っているきゃわいい女の子を助けるとか当たり前でしょ常考(じょうこう)! 美少女の命が失われることがあってはならないって、それ一番言われてるから」

 

 先ほどまでのミステリアスな雰囲気から一変。

 銀髪の女の子はなにを言っているのだろう? 日本語……ということはかろうじて理解できたが、意味をすべて理解できたかが不安だ。

 

「あーあー、マスター。ハードボイルドなアニメを見たお陰でせっかくかっこよく決まっていたのに、今の一言で台無しですよ。

 すーぐネットスラング(ネットの俗語)を使うんですから……

 なんですか? ついついハードボイルドな雰囲気を出してしまったことに対する照れ隠しか何かですか?」

 

 するといつからいたのか、薄いピンク色をした立方体の生物が現れた。

 立方体の生物には、側面にパタパタしている耳のようなものがついていたり、正面には目もついている。

 

 初めて見るが、モンスターだろうか?

 

 そんな立方体の生物に女の子は口をとがらせて“いいんだよこれがワタシなんだからー”と言っている。

 

 この女の子は一体何者なのだろう?

 

 少女がいろいろ頭の整理がつかず混乱していると、ふいに銀髪の女の子がこちらを向いて、安心させるようにニコリと笑う。

 

「ちょっと待ってて。すぐに片付けるから」

 

 女の子はコボルトたちのほうを向くと、およそ先ほどの柔和な笑顔をしていた人物と同じ人間だとは思えないほど獰猛な目つきをした。

 まるで狩りをする獅子のように、あるいは殺戮を楽しむ悪魔のように。

 

 しかしそれは恐ろしくはなかった。

 むしろ頼もしく見え、少女は女の子が繰り出す蹂躙劇に時を忘れ見惚れてしまった――。

 

 

 

 

 

 





《主人公ちゃん》

【挿絵表示】


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