「『謎の少女、かがりんの動画で判明していることまとめ 正体はSランク冒険者!?』、ねぇ…… このサイトの管理人はちゃんと調べて書いてるんですかねぇ? ワタシまだCランクなんですけど。
ま、悪い気はしないけどね。
やはりワタシってば崇拝される存在だしぃ? 隠しきれぬオーラに皆気が付いてしまったわけだな。ムフフ」
「マスター。先程からスマホを見てニヤケ顔が止まっていません。
Ms.美卯のみならず、周りには他のお客もいます。はしたない顔をなさるのはお控えください」
「は↑、はしたなくないし?!」
ワタシ達は今、受付嬢のみーちゃんと一緒にスターバックレというおしゃれなカフェに来ている。
何を隠そう、今日は魔法少女ナナニカ・ニカナの数量限定8分の1プレミアムフィギュアの発売日なのだ……!
もちろん予約開始日に爆速で予約したが、ついに発売日を迎えたわけだ。今か今かと待ちわびたぞ。
ちなみに、同じ魔ナニカファンであるみーちゃんももちろんフィギュアは予約済みで、販売開始の11時まで一緒にカフェに行こうと誘われたのでここに来ている。
普段は①極力働きたくない、②オタ活資金がいる、という2つの理由のためにワタシはこういったお店には来ないのだが、なかなかどうして良いお店だ。
元魔王であるワタシにふさわしいシャレオツ感と言うべきか。
否、ワタシのために存在する店といっても過言ではないだろう。
……この抹茶クリームフラペチーノ美味しいな。
「まぁまぁナヴィちゃん。実際、レインちゃんは凄いのですよ!
サンダーコボルトや通常コボルトの群れをあんなにもダダダダっと気持ちよく倒す様はまさに『無双』! 魔ナニカのような一幕に私脱帽でした! 何度あの動画を見たか分かりませんね!
して、ときにレインちゃん!
個人的な興味と、ギルドの職員としての興味で、あの動画に出てきた未確認魔法のこと教えてほしいなぁ、なんて…… チラッ」
「うーん、あれはちょっと教えられないというか… そもそも魔法体系からしてちょっと違うというか……
まああれはワタシにしか多分使えないよ。一応闇属性の魔法かな」
「フムフム。一見すると光属性の魔法のようですが、あれは闇魔法なのですね……!
たしかに、光と闇は表裏一体。いわば同じコインの表と裏。魔法の見た目が似ていても何も不思議ではありません。うーむ興味深い……
たしかにアレほど強い魔法は他に使える人も限られるでしょうね。……まあ、これ以上無理に聞くのもマジシャンにタネを聞くがごとく野暮なことですしここまでにしましょう」
どちらかと言うとあれは本来人が使う魔法じゃないしね。
試したことはないけれど、多分純粋な人間にはそもそも使えない。それにとんでもなく魔法力を消費するので並の人には使えないだろう。発動しようとしただけでぶっ倒れるのが落ちだ。
……あっ、このアメリカンアップルパイ美味しい。
サクサク食感のパイ生地が実に美味だ。シェフを呼んで直接褒めてやりたいくらいだ。
「そういえば、かがりんがあのアーカイブ動画を消しちゃうんじゃないかと思いましたが、レインちゃんがそのまま残していいと許可を出したんですね。この前かがりんが動画で言ってました」
「まー、別に減るものでもないし、ほら、ワタシの勇姿を皆に見せつけなくてはならないからね。もう二度とぐーたら姫なんて言わせない」
「ぐーたら姫って愛称、なんだか可愛くて私は好きなんですけどねぇ。
そうそう! あの動画のおかげでレインちゃんのこと、ギルドの中でも結構話題ですよ! 職員はアレがレインちゃんだってすぐに分かりますし、レインちゃんと仲がいい私によく色々聞いてきます」
「マジ?」
「レインちゃんのことは冒険者だけでなく、ギルド職員にも名が知れ渡っていますからね! 普段のレインちゃんがどんな人か聞かれるので、私と同じ魔ナニカを愛する御仁だとお答えしてあります」
「それは草」
「あ、あとそうです。ウチのギルドマスターから直々に感謝の言葉をいただいた話も話題になってますね。ギルマスから直々にお褒めの言葉なんて滅多にありませんし」
「あ~、アレね」
ギルドマスターという単語を聞いてワタシは数日前のことを思い出した。
あの日、動画の影響でいろいろな人からお褒めの言葉を頂いたわけだが、その中でも特筆するのであれば、みーちゃんの言うとおりギルドマスターだろう。
ギルドマスターとはその名の通り、水々市のギルドのトップのことで、みーちゃんが働いているギルドの支部長よりももう一つ偉い人。
そのギルドマスターがワタシがよく通っている水々市04支部までわざわざ来てお褒めの言葉をくれたわけだ。
ちなみにお褒めの言葉だけでなく、高い寿司屋につれてってくれた。
美味かった。
値段は知らないが、寿司のネタが書かれた壁掛けの板には『時価』と書いてあった。時価ってなんだよ時価って。算用数字でちゃんと書いておいて。まあもちろん全部ギルドマスターが払ってくれたけど。
ギルドマスターはなんというか貫禄のあるイケオジだった。
眉間にシワを寄せていて厳つい感じだが、寿司をおごってくれるのできっといい人だ。
大トロも良かったが中トロが一番美味かった……
「いい人だったな~。また寿司おごってくれないかな」
『マスター』
中トロの味を思い出しながら独り言を言うと、ナヴィが耳元に近寄ってきて異世界言語で話しかけてきた。
『あの日も言いましたが、あまりあのギルドマスターに心を許してはいけません。
あの人はおそらく、マスターの冒険者カードに私が施した偽造工作を見抜いています』
『分かってるって大丈夫大丈夫』
ナヴィは心配性だな。
ワタシの冒険者カードに載っているステータスは、本当はすべて『999』でカンストしている。そりゃ魔王の力を数値換算したらカンストもするだろう。
で、ナヴィからの進言でそのステータスの数字を偽装してある。
今はだいたいのステータスを『500』~『600』くらいの数値にしてあり、誰かに見られても、『お、こいつ結構強いやん』くらいになるようにしている。
別に偽装しなくても良い気もするが、ナヴィ曰く、すべてのステータスがカンストしている人は日本には存在せず、そんなところであまり変な風に目立つのは良くないとのこと。
たしかに冒険者カードをみーちゃんに作ってもらったとき、みーちゃんは結構驚いていた。「バグですかねー?」なんて言っていたような気がする。
そうなると今回のかがりんさんの一件で目立ったのは良いのかという話になるが、ナヴィ的にそれは別に『良い目立ち方』とのこと。よく分からん。
『ギルマスにバレてるって言っても、どうやって偽装したのかとか、ましてや証拠を握られているわけでもないんでしょ?』
『当然です。私が異界の最高の技術を用いて施した術式です。術式の中身まで、あんな
『さっすがナヴィ。愛してるぜ。
じゃあ何も心配いらないよ』
『愛しているのは私もですが、もっと感情を込めて愛しているを言ってほしいものです。――っと失礼。兎にも角にも、この世界はまだ我々の知らないことに溢れています。用心に越したことはありません』
「あー! また異世界の言葉で話しています! ずるいです! 仲間はずれは私、泣いちゃいますよ!?」
ナヴィと異世界言語で喋っていると蚊帳の外にされたみーちゃんが頬をぷくーっと膨らませて抗議してきた。
「ごめんごめん。別に大したこと話してないから」
「マスターの言うとおりですMs.美卯。心配ありません。
ただ私とマスターが互いに愛し合っていると再確認しただけです」
「ちょわ!? ここここ、これは種族を超えた禁断の恋! いや愛!」
何故そこで愛ッ!?
おいナヴィ。
なんかみーちゃんが盛大に勘違いしているぞ。
ほのぼの日常回
……スターバックス?
ああ、あのAppleのパソコンを広げてドヤる場所のことね。
(スターバックスなんて1回しか言ったことねぇです…)