TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第29話 かがりんとお食事回 2

「ぇあ~、食べた食べた!」

 

「良い食べっぷりでしたわ」

 

 中世風の大豪邸の2階のテラス。

 ぽかぽかとした気持ちのいい陽気に照らされながら昼食を楽しんだ。

 

 出てきた料理も素晴らしいものばかり。

 

 前菜、スープ、そしてメインのお肉――

 すべてが一級品だった。

 特にね、お肉!お肉! 異世界(あっち)でも散々良いお肉は食べたが、とても良かった! 口の中に入れた瞬間にとろけるような柔らかさに、噛んだ瞬間に口へ広がる旨味。かがりんに聞いたら松阪牛の中でも一番良いものとのこと。

 さすが松阪牛。異世界(あちら)で言うならトライデントボアの特上ロースくらいには美味かった。

 

 ギルドの酒場の大衆料理もいいけれど、やはりワタシにはこういう高級料理が似合うな。うんうん。

 

 料理もさることながら、それを楽しむこの空間も素晴らしい。

 ワタシが住んでいる1DKのアパートのベランダとはわけが違う。心地の良いそよ風がそっと肌をなで、テラスから見るかがりん邸のきれいな庭園が心を癒やしてくれる。植物が少ない岩石地帯にあった魔王城とは少し趣が違って、これまたいいものだ。

 

 そして今は珊瑚さんが持ってきてくれた食後のデザートと飲み物でまったりしている。

 

「デザートも美味しい」

 

 食後のデザートは杏仁豆腐。

 杏仁豆腐なんてコンビニで時々買って食べるくらいだったが、高級品はやはり違う。旨味も濃厚だし、舌触りも絹みたいだ。

 

 うま~!

 

「うふふ。レインさんったら、本当に美味しそうに食べますのね。

 気に入ってくださって何よりですわ」

 

「そりゃあ、本当に美味しいからね。最高」

 

「自分が大好きなものを友人も好いてくれる、というのはこんなにも嬉しいのですわね」

 

 杏仁豆腐を丁寧にスプーンですくって一口ひとくち大切に食べるワタシの様子が微笑ましかったのか、かがりんはこちらを見て優しい笑顔になる。

 

「かがりん、杏仁豆腐が大好物なの?」

 

「ええ、いろいろなデザートを食べてきましたが、杏仁豆腐に勝るものはありませんわ!」

 

「確かに美味しいもんね。うま~!」

 

 かがりんも自分の杏仁豆腐を上品にすくってぱくりと食べ、幸せな顔をした。

 

「そういえばレインさんにお聞きしたかったのですが…… 最近、水々市に現れた未確認モンスターを討伐したり、なんてことなさっていますか?」

 

「ん? つい3日前に倒したけど……? あれ、かがりんに話したっけ?」

 

「やはりそうでしたか……

 実は注意喚起と情報収集のために、ギルドと特殊機動隊からある動画が公開されていますの。わたくしも見たのですが、その動画に載っている声の喋り方や声質がどうも聞き覚えのあるものでしたから」

 

「あー、そういうことか」

 

 ギルドの藤宮の姐御に売った動画があるからそれのことだろう。

 特殊機動隊からも公開されているということは姐さんが言っていたとおり、ギルドと特殊機動隊の間でやり取りがあって、売った動画が特殊機動隊にも渡ったということかな。

 

 ていうか動きが割と素早い。

 

 未確認モンスターを倒して動画を売ったのが3日前で、既にかがりんが知っているってことは、売ってからすぐに公開に踏み切ったんだろう。

 

 まああの変なモンスターは普通の人が出遭ったら結構やばいし、注意喚起の意味で公開するのは手としては割とありか。未確認モンスターはたぶん個体ごとに姿が違うだろうけど、未確認モンスターがどれくらい恐ろしいかわかれば興味本位で戦いに行く人も減るだろうし、多少は効果ある……かな?

 

 ワタシもあの後なんとなく特殊機動隊のホームページにアクセスしてみたら「現在確認されている街中に出現したモンスター」みたいなページがあって、写真とかが公開されてて情報求む!みたいになってた。

 動画の資料はその時になかった気がするので、ワタシの動画はそこそこ有用認定されたのだろう。

 

「まったく。レインさんには驚かされてばかりですわ。

 レインさんの実力でしたら問題ないとは思いますけど、友人が危険なことに巻き込まれているのは肝が冷えますわ…… 確か先日の銀行強盗の一件もレインさんでしたし」

 

「まあワタシなら大丈夫だよ。そもそもワタシが死ぬようなことが起きるなら、人類なんてとっくに滅んでるからへーきへーき。

 ていうかさー、LIMEでもちょっと愚痴った気がするんだけど、かがりんと女の子助けたときとか銀行強盗のあととか、結構いろんなネット記事が書かれたんだけど、みんな適当なこと書いてるんだよね~。

 実は冒険者のSランクだー、とか、特殊機動隊の隠れたエースだー、とか。あとは違う世界からきたエイリアンだ!とか。まあこれは若干あたってなくもないけど…… ワタシ、Cランクのただの冒険者なのにね」

 

「そうですわね……

 レインさんの場合はある程度しょうがない部分もありますわ。レインさんはわたくしみたいに顔を出して配信をしているわけでも、テレビに出ている有名人でもありませんもの。とても強くて素顔の分からない、ミステリアスな女の子――。そんなフレーズに惹かれる大衆は少なくありませんわ。

 というかレインさんは確実にAランク以上の実力があるのですから、昇格要件を早く満たせばCランクじゃなくなりますわよ?」

 

「えぇ、試験受けるの面倒だし……

 でもあんまりにも突拍子のないこと書かれるから、単発で動画でも撮ってYootubeとかトゥウィッターに上げるかとも思うけど、準備が大変なんだよね。軽く調べたけど機材揃えるところから大変だし、動画編集とか無理ぽよだし……

 かがりんもそうだけど、動画配信者ってすごいよね…… 改めて思ったわ……」

 

 ワタシが机に力なくうなだれると、かがりんが少し考え込んで口を開いた。

 

「それでしたら、わたくしの配信に“ゲスト”という形で出演なさいますか?」

 

「そりゃ願ったり叶ったりだけど…… いいの?

 自慢じゃないけどワタシ、リスナーに対して愛想を振りまくとかたぶんできないよ?」

 

「レインさんでしたら大歓迎ですわ。未だに“動画に写ったあの女の子とダンジョンコラボしてほしい”なんていうコメントもありますし。

 ただ…… 登録者数1,000万人超えの超々(・・)人気配信者の動画に出るわけですから、レインさんのお顔が日本中に知れ渡ると思ってくださいませ」

 

「やっぱり自分で超人気って言っちゃうんだ……

 まあそれは別に大丈夫。有名になるのも別に悪くないし、そもそもネットに顔を出すってそういうことだし。それに、ワタシという存在をみんなが崇めてくれるわけだしね! ナヴィも別にワタシが良いなら問題ないって言うだろうし無問題。

 ね、ナヴィ? ……あれ、ナヴィは?」

 

 ナヴィに声をかけると、周りにいない。

 あれ? いつもならワタシの右後ろでふわふわ浮かんで控えているのに。まったく。主人を放り出してどこにいったんだ。

 

「ナヴィさんなら、珊瑚(さんご)と気があったようで奥の部屋で話し込んでいるようですわ。(あるじ)に仕えるもの同士、なにかと話があうのでしょう。

 一応、離れる前にレインさんにも断ってみえましたわよ?」

 

「食べるのに夢中で気が付かなかった……」





もう大晦日なんですね。
早い…早すぎるッ!

来年も本作をよろしくおねがいします。良いお年を~!
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