TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第36話 四者面談

 コンコンコンと小気味よく扉をノックする。

 

 前前世で就活をする前は、ノックは2回するのが基本だと思ってたけど2回ノックはトイレノックだ!って面接担当に怒られた思い出がある。

 2回でも3回でも別にええやん……と何度思ったことか。

 

「入って良いぞ」

 

 変な思い出に浸っているとすぐに扉の奥から声が聞こえてきた。

 

 声の感じからするとみーちゃんの言っていたとおり若そうな女性だ。声色は若いけれど、なんていうか妙に色気のある可愛らしい特徴的な声だ。

 

「失礼しまーす」

 

 支部長室へ入っていくと、小さな女の子が品定めをするようにこちらを見てきた。

 

「ほほぅ…… お主がレインじゃな。そして後ろの魔物がナヴィか。やはり今日ギルドに来るという予感(・・)は当たったようじゃのぅ」

 

 ツーサイドアップの栗色の髪に、猫のようにパッチリとして少し釣り上がった大きな瞳。赤を基調としたミニスカくらいの丈の着物に身を包み、妖艶(ようえん)な雰囲気を漂わせている。

 身長は確実にワタシよりも低い。

 ワタシの身長が150センチくらいだから、この子は130センチくらいだろうか。

 

 着物を着ているのと、妖艶な雰囲気があるせいで大人っぽく見えるが、普通の洋服でランドセルとか背負ってたら小学生に見えそう。

 支部長をやっているということはもちろん小学生じゃないし、何歳なんだろうこの人。

 

 

 そして女の子の隣には、狼をそのまま大きくしたような魔物が控えている。

 こちらをじーっと見て目を離さない。

 なんていう種類の魔物か知らないが、この子の使い魔だろうか?

 

「さぁ、そちらに座ってくれ。固いのはなしじゃ。くつろいでくれて()いぞ」

 

 女の子に勧められるがままソファに腰をかけ、女の子もワタシの正面に座る。

 

 それにしてもアレか。

 この女の子はいわゆる“のじゃロリ”なのか。初めて現実で見た気がする。

 

「ガルルルル……」

 

「ふふふ。アルフレッドもレインとナヴィに興味津々じゃな。

 おっとすまんのぅ。こやつはアルフレッド。(わらわ)の使い魔であり、家族じゃ。図体はでかいが、妾が言わぬ限り人を襲ったりはせんから安心せい」

 

 女の子が狼の魔物――アルフレッドの頭を撫でると、アルフレッドはそこらへんのペットの犬っころのようにクゥ~ンと甘えるような声を出して女の子に擦り寄る。

 

「さて、と。自己紹介がまだじゃったな。

 妾の名前は猫屋敷(ねこやしき)(つむぎ)。ここ水々市冒険者ギルド04支部の支部長をしておる」

 

「えっと、ワタシのことはもう知ってるようだけど、ワタシはレイン。んでこっちの不思議立方体生物がナヴィ」

 

「“不思議立方体”は余計ですマスター。

 はじめまして、Ms.猫屋敷。ナヴィと申します」

 

「話は聞いておったが、本当に流暢に人の言葉をしゃべるのじゃな。もちろん、ナヴィだけではなくレインも色々と噂は聞いておるぞ?

 二人に会えて光栄じゃ。よろしくの」

 

 女の子――猫屋敷さんが握手を求めてきたので“こちらこそ”と握り返す。

 

「でじゃ、今日お主らをここに呼んだのは他でもない。妾がお主らに会いたかったというのもあるのじゃが、キメラについて一つ依頼をしようと思うてのぅ」

 

「依頼?」

 

「そうじゃ」

 

 猫屋敷さんは(あで)やかに微笑(ほほえ)むと、話を続けた。

 

 簡単にまとめればキメラ事件の解決に協力してほしいという内容だ。

 

 現在、特殊機動隊と冒険者ギルドは共同戦線を張って事件の解決に尽力している。事件の被害拡大を防ぐ意図でキメラ討伐者と討伐協力者に報奨金がでるようにしているのもその一環だ。

 だが、防戦一方であまり事件解決の糸口が掴めていない。

 

 そこで、主にAランク以上の冒険者を特別に選定して、事件解決に協力してもらうという方針が打ち出された。

 

 

「つまり、お主がその一人に選ばれたわけじゃな」

 

 ウンウンと得意げにうなずいて猫屋敷さんは語る。

 

「たぶん猫屋敷さんは勘違いしてると思うんだけど、ワタシ、Aランク以上じゃないよ? ついでに言えばCランク。そんな冒険者に依頼して大丈夫なの?」

 

「なんじゃそんなことか。

 大丈夫に決まっておろう。ランク制限はあくまでも目安じゃ。お主は既に1体キメラを討伐しておるし、撮影した映像を見ればその実力は一目瞭然。サンダーコボルトの群れを1人で(ほふ)り、銀行強盗をも退ける。そんなお主に()を唱えるものがおれば妾がぶっ飛ばしてやろう。

 妾としてはお主に(はよ)う昇格試験を受けてほしいのじゃが…… まあ今は良い。

 このクエストはきっとお主にとっても良いものじゃ。結構良い報酬がでるぞぉ? ほれ、見てみぃ」

 

 ふーむ、褒められているので悪い気はしないな。

 

 どれどれと、猫屋敷さんからクエスト内容が書かれた紙を受け取る。

 たしかにいい金額が記載されている。事件解決の有力な手がかりを見つければ更にプラスの報酬もあるようだ。

 

「どう思うナヴィ?」

 

 ざっと書類に目を通した後、一緒に見ていたナヴィに問いかける。

 

「悪くない内容です。Ms.猫屋敷が言うようにマスターの実力があれば何ら問題なく依頼を遂行することができるでしょう。

 ただし、マスターの懸念材料になることが一点あります。

 事件解決まではこのクエストに時間的に縛られることが多くなるでしょう。つまり、家でダラダラする時間が減る可能性が高いです」

 

「やっぱそうだよなー」

 

 クエストの書類には“この時間からここまでの時間は必ず調査にあたること”的な内容が書いてあり、時間的に拘束される内容が盛り込まれている。

 

 ある意味当然といえば当然だ。

 

 “キメラ1体討伐するごとに○○円!”みたいな分かりやすい歩合制にできるのであればそれに越したことはないが、このクエストは“事件解決”というゴールこそ明確なものの、そこに至るまでの道筋や方法、労力がまるで分からない。

 ある程度時間で縛らないと、“適当に依頼を受けて後は何もしませ~ん”ってなる冒険者が出てくるだろう。

 

 まあ、このクエストを任せる冒険者は選定していると言っていたから、そんな信義誠実の原則に反しそうな人は選ばないのだろうけど。

 

「ちなみにさ、猫屋敷さん。クエスト内容は“事件解決のための調査”っていうざっくりしたものだけど、具体的に何をやるの?」

 

「自由を売りにしている冒険者に依頼するのじゃ。調査の内容は各々(おのおの)に任せるようにしておる。組織()った調査は特殊機動隊がやるしのぅ。

 あとそこにも書いてあるとおり、基本的には二人一組(ツーマンセル)三人一組(スリーマンセル)以上で行ってもらう。キメラは未知の部分が多い。もしものための保険じゃ。

 お主も誰かと組んでもらうが、まあ、相性の良いやつを選定するからそこは安心してくれて構わん。

 

 ……どうじゃ、やるか?」

 

 

 うーん……と口に手を当てて考える。

 

 たしかにこのクエストの報酬は良い。

 それこそキメラ討伐の報奨金を目当てに、現れるかも分からないキメラを求めて街中を彷徨(さまよ)うよりは効率的だろう。ワタシがやる気を出してやる普通のダンジョンのクエストとも時給換算で比べて悪くないと思う。

 

 けれどやっぱり時間拘束が気になる。

 

 この事件が直ぐに解決すればもちろん大丈夫だが、そんな保証はどこにもない。

 流石に事件解決まで未来永劫このクエストに従事しなければならない、なんてことはないだろうが、1日やってみて飽きたので明日から辞めまーす、というのは無理だろう。

 

 放映中のアニメはなるべくオンタイムで見たい派のワタシにとってはこの点はかなりマイナスポイントだ。

 

 このマイナスポイントを打ち払うくらいの魅力がこのクエストにあれば受けるのも(やぶさ)かではないが、報酬金額もアニメオンタイム視聴を犠牲にしてまで欲しい額かと言われればそれは違う。

 

 ……うん、そうだな。

 

 直々に支部長から依頼されたクエストだが、やはりここは断ろう。

 オタクを楽しむために生きているのに、オタクを犠牲にして仕事をするのはやっぱり違う。

 

 よし、これがワタシの答えだ。

 猫屋敷さんにはすまないが、これがワタシの生き様だ。生半可な材料ではこの意志を曲げることはできない。

 

 そう――、この意志は鋼よりも固いのだ!

 






 ロリがのじゃ口調なら“のじゃロリ”で良いけど、20歳代くらいの見た目の女性がのじゃ口調の場合はなんて言えば良いんだろう? ……のじゃ女?
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