TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第38話 もちもち大福

「いやぁ、すまんすまん。意地悪をするつもりはなかったのじゃが、お主は実に良い反応をしてくれるのぅ。予感(・・)通りじゃ」

 

「モグモグ…… 別にワタシは台本が手に入れば何でも良いけど、モグ… ちゃんとモグ… クエスト引き受けたら報酬でその台本くれるんだよね?」

 

「ふふふ。もちろんじゃ。

 この台本はお主を参加させるためにわざわざ手に入れたのじゃからな。クエストクリアの(あかつき)にはちゃんとお主に渡す。他に使い道も無いしの」

 

 猫屋敷さんはころころと鈴を転がしたように笑う。

 ちょっとしたイタズラとドッキリが成功してとても楽しそうだ。

 

 結果的にワタシは猫屋敷さんに一杯食わされたみたいな状態になってしまったが、ワタシとしてはこんな展開も悪くない。

 こんなに美味しいぶどう大福も食べられたしね。

 

 入手不可能と思われていた幻の台本が手にできるなんてこの上ない幸せだ。

 手に入るのであればキメラの100体や1,000体、いや、1万体くらいなら軽く屠ろう。どこかの村々を焼き尽くせと言われれば燃やしつくそう。世界征服をしろというのであれば喜んでやってやろう。

 

 あぁ――! 高まる――!

 

 ちなみに、猫屋敷さんに断って念の為台本の中身を確認させてもらった。

 この台本は本物で間違いない。

 表紙に書かれているサインも魔ナニカの主人公声優の"みどりん"こと緑川(みどりかわ)(みどり)さんの直筆サインでまちがいない。

 

 それにしてもこのぶどう大福美味しいな……

 

 茶菓子としてぶどう大福を頂いているのだが、実に美味い。

 

 ぶどうは食べるときに種が邪魔で個人的に少し苦手意識のある果物なのだが、このぶどう大福に使われているぶどうは種無しの品種のものですごく食べやすい。

 それにこのぶどうはたぶん糖度も普通の品種よりも高くて美味しい。酸味も絶妙だ。

 

 ぶどうを包む白(あん)(もち)生地の皮も美味しい。それ単体で出されても満足できそうだ。

 

「わざわざワタシを参加させるためにモグ…台本を手に入れたって言うけれど、モグ… どうやって手に入れたのかとか、どうしてこれ(台本)を手に入れたのかとか色々気になるんだけど? モグ…」

 

「別に大したことではないぞ?

 特殊機動隊の隊員にお主の友達がおるじゃろう? そやつに“レインを誘うにはどうしたらよいか”と聞いたのじゃ。そしてそやつはレインはお金よりもアニメのグッズで動くと言うた。

 ちょうど妾の友人にお主の好きなアニメの制作会社の社長がおっての、頼んだのじゃ」

 

「すご…… 何その人脈……」

 

 ワタシがアニメ好きで特に魔ナニカに目がないという情報は、いっちーこと一条さんからの情報提供というわけか。

 このキメラ事件は特殊機動隊とギルドの合同作戦だし、たまたま顔を合わせる機会がきっとあったのだろう。

 

 まあそこまでは割と分かるんだけど、アニメ制作会社の社長の友人がいるって凄いな。どんな人脈よ。

 やっぱり支部長をやっているだけあって色々な偉い人とのつながりがあるのかな。

 

「もしかしてこのバチクソに美味いぶどう大福も誰か凄い人に頼んで作らせたとか?」

 

「ふふふ、いやそれは妾が作ったものじゃ。

 実家が和菓子屋でのぅ、妾の趣味でもあるから休日とかにときどき作るのじゃ。気に入ってもらえたようで何よりじゃな」

 

 猫屋敷さんは少し頬を紅潮させて微笑む。

 

 かわいいかよ。

 

「魔ナニカの超貴重台本も手に入るし、生活費も稼げるし、ぶどう大福もごちそうになれたし、結果的にワタシにとっては凄いありがたいんだけど、そんなにもワタシのことクエストに参加させたかったんだ?

 ぶっちゃけた話、ワタシ抜きでも事件解決できると思うよ?」

 

「たしかに事件を解決するだけならお主抜きでも良いじゃろうな。

 しかしな、お主をクエストに参加させれば幾分か解決までが早くなる、そんな予感がしたんじゃ」

 

「ふーん……

 予感だけでそこまでできるんだから大した行動力だね」

 

「まあの。妾の予感は結構当たるんじゃぞ? 予感を大事にしてきたからこそ今の妾があるといっても過言ではない」

 

「まあ直感は大事って言うしね。

 それで、事件の調査は今日すぐに始める感じなの?」

 

「そうじゃのぅ、早めに動いてもらうと妾としてはありがたいんじゃが、さっきも言ったとおり、このクエストは不測の事態に備えるために基本的に二人一組(ツーマンセル)以上のチームでやってもらう。

 で、お主以外にも何名かこのクエストを受けてもらうからの、顔合わせと全体説明のために2日後に集まることになっておる」

 

 

 あぁ、そう言えばそんなこと言ってたな。

 二人一組か三人一組くらいでチームを組んでもらうって。

 

 ワタシにはナヴィもいるし、万が一にもワタシがキメラごときに負けることなんてないからナヴィとワタシの二人?一組でもいいが、他にも多くの冒険者がこの事件にあたるのであれば例外的な扱いは基本的にしたくないだろう。

 ここはおとなしくチームを組むのに従うとして、ワタシは誰と組むことになるのだろうか。

 相性はある程度考えてくれるって言ってたけど……

 

 04支部によくいる冒険者ならたいてい顔見知りだから良いけど、全然知らない人と組むことになったら嫌だなぁ。知らない人でも美人さんとか可愛い子なら許す。

 

 このクエストに参加できるのはAランク以上の冒険者で、ワタシみたいに声がけされた人だ。

 04支部のAランク以上って誰が居たかな?

 

 たしかワタシがこの世界に戻ってきて初めて会って色々サポートしてくれた赤坂さんはAランクだから組むこともありそう。かがりんも一応Aランクか。

 

 ガンさんとテツさんたちはどうだったかな…… あの人達はBか?

 04支部の酒場でいろんな人と飲み食いするけどみんなのランクなんか気にしたことないから他の人のランクあんまり分からん。 

 

「とりあえずりょーかい。2日後に集まるのは04支部(ここ)?」

 

「いや、水々市冒険者ギルドの本部(・・)じゃ。

 お主はまだ行ったことないじゃろうが、水々市の中心地にそびえ立つどでかいビルじゃ。楽しみにしておれ」

 

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