TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第39話 出社

「はぇ~、すっごい大きい……」

 

 水々市の中心街にそびえ立つ大きなビルを見上げる。

 何階あるんだろう? パッと見た感じ30階くらいはありそう。

 

「確かにとても大きな建造物ですね。

 ちなみにこの中央のビルだけでなく、周りにある武器屋や道具屋もギルドが管理・運営しているものだそうです」

 

「へ~。ギルドが運営している店ならボッタクリは無いだろうからビギナー冒険者も安心だな。まあその分規格品しか置いてないから面白味は少ないかもだけど。

 試しに帰り寄ってみる?」

 

「会合はそれほど時間が掛からないと思いますので寄るのは構いませんが、マスターに見合うものがあるのかは疑問です。マスターの仰るとおり所詮はただの汎用品を取り扱う店ですから」

 

「まあそうだけど意外とウィンドウショッピングも楽しいもんだぜ」

 

 今日は水々市で最も栄えているところにある冒険者ギルドの本部に来ている。

 ワタシがよく行く水々市冒険者ギルド04支部も割と大きな建物だと思っていたけど、スケールが違う。本部は一見すると大手IT企業が入っていそうな全面ガラス張りの大きなビルだ。

 

 2日前に支部長の猫屋敷さんからキメラ事件のクエストを受けたわけだが、その説明会とクエスト参加者の顔合わせがここで行われる。

 たしか会場は最上階の大会議室だったはずだ。

 

 

***

 

 

「ここか」

 

 会場の大会議室についた。

 

 ちなみにエレベーターのボタンで確認したが、この冒険者ギルドの本部は33階建てだった。でかい(確信)。

 最上階は会議室が4つあり、会場はそのうち一番広い会議室だ。

 

「トビラ閉まってるけど普通に開けて入って良いんだよね? もしかして時間間違えてたりする?」

 

「いえ、集合時間までまだ余裕があります。案内表示の看板も出ているので入ってよろしいかと」

 

「んじゃ入るか」

 

 トビラを開けて会議室に入ると入り口近くに居た人達が一斉にこちらに注目してきた。

 

 あれ? 既に結構人が集まってる気がする。

 冒険者って時間にルーズだと勝手に思ってたけどそうでもないんか? あ、あれか。ここ日本だから普通にみんな時間守る人が多いのか。異世界(あっち)の感覚とは違うんだ。

 

「お、なんだァ? また随分とちんまいのが来たな。

 迷子か? おいおい、パパとママはどうしたんだァ?」

 

 会議室入るなり男が声をかけてきた。

 

 チャラチャラとした全身黒コーデの金髪の男。耳にピアスもあり随分とチャラい印象を受ける。もしかしてヤンキーってやつ……?

 まあただ、ここに居るということは風体はどうであれちゃんとした実力のある冒険者なのだろう。

 

「ここはお子様が来る場所じゃねェぞ」

 

 チャラ男は少しかがんでニチャリと笑う。

 

 瞬間、ワタシは気がついた。

 これはライトノベルとかでよく見る展開だと。

 

 異世界転生物のラノベでは序盤に冒険者ギルドにいって冒険者登録をしようとすると、先輩冒険者に絡まれる展開がテンプレとして存在する。

 “おいおい、そんなひ弱な見た目して冒険者登録ぅ? 笑わせるぜギャハハハ”という展開だ。

 そしてなんやかんやあって主人公との決闘になり、主人公が瞬殺して勝つ。“な、なんだこの強さは!”と周囲の人間からちやほやされるわけだ。

 

 今のワタシの状況はその状況に非常によく似ている。

 間違いない。昨日読んだ異世界転生物のラノベで勉強したとおりだ!

 

 十中八九、目の前のこの金髪チャラ男はワタシを子どもだと思って(あなど)っている。

 ワタシの実力を推し量れていないのだ。

 

「どうした、だんまり決め込みやがってェ…… 帰り道が分かんねぇなら1階の総合案内所まで案内するぜぇ?」

 

 このあとなんやかんやあって決闘になる展開に違いない。

 “俺様がこんなお子様に負けるわけないんだよギャハハハ”と。

 

「おいブラック。その子は迷子じゃないぞ」

 

 ワタシに目線を合わせて(がん)を飛ばす黒ずくめコーデの金髪チャラ男に、待ったをかける声がした。

 

「お前も見ただろキメラを倒す動画。あれ、その子が撮影したものだぞ。

 他にも銀行強盗を捕まえたりもしているし、お前より強いかもしれないぞ」

 

 カツカツと少し早足気味でこちらに近づいてくるメガネを掛けた男性。

 こちらの男は落ち着いた青色を基調とした服装、というか装備で、金髪チャラ男と違い落ち着いた印象を受ける。

 

「あァ? 何いってんだブルー。このガキがあの動画撮ったってのか? 小学生か中学生か知らねえが、こんなお子様にできるってのかァ?」

 

「見たことのない不思議な使い魔を連れた、白銀の髪の女の子。……間違いない。最近話題の女の子だ。

 冒険者ランクはCランクだが実力はAランク以上だと聞く。

 あとその子は普通に成人の女性だぞブラック」

 

「まじかよ。あの動画撮ったのがこんなちんまいヤツだったのか……」

 

「まったく…… お前はもう少しニュースやギルド情報ネットを見ろ。

 

 すまなかったね。えっと…… レインさんとナヴィで間違いないかな?

 僕はブルー。本名は公表していなくてね、“蒼穹(そうきゅう)のブルー”という冒険者ネームで活動させてもらっているよ。一応、ブラック(こいつ)の相棒だ。よろしくね」

 

「あー、うん。よろしく」

 

「こちらこそ、Mr.ブルー」

 

 握手を求められたので握り返す。

 

 相棒には少しあたりが強そうだが、他の人にはすごく丁寧に対応してくれるんだな。

 相棒のブラックと呼ばれていた男はザ・チャラ男の印象だが、随分と対照的だ。なんで正反対な性格なのに組んでるんだろ。気になる。

 

「ほらブラック。お前もちゃんと挨拶しろって」

 

「分かってるよ。

 あー…… すまなかったな勘違いしてガキ扱いしてよ。謝罪する。人を見た目で判断するなっていつもブルーから言われてんのにな……

 俺は“漆黒のブラック”。気軽にブラックって呼んでくれていいぜ。よろしくな」

 

「よろしく」

 

 ブラックさんはワタシを子供扱いしたことに頭を下げて謝ってきた。

 ……あれ? 普通にいい人じゃね? チャラチャラした見た目でちょっと身構えたけど、この人いい人やん。

 

 思い返してみればワタシを迷子の子どもだと思って親はどうしたのかと聞いてきたし、1階の総合案内所まで送ってくれようとしたり……

 

 ……ワタシのほうこそ見た目で人を判断してごめんやで……

 

 

 その後もブラックさんたちと世間話をしてしばらくすると会合が始まった。

 

 最終的に会場にいる冒険者はぱっと見で100人に少し満たないくらいだろうか。

 この100人という数字を多いと見るか少ないと見るかは人によりけりだろうが、水々市は他の都市と比べても大きな都市なのでもう少し人員が多くても良い気はする。

 まあただ、Aランク以上の冒険者の絶対数がそもそも少ないのでしょうがない部分でもある。

 

 ワタシにはナヴィという相棒がいるがナヴィは使い魔扱いなので、ワタシは一応ソロの冒険者という扱いになる。

 猫屋敷さんの話では誰かと組むことになると言っていたが、はてさて誰と組むことになるか。

 

 ワンチャンこのブルー・ブラックコンビと一緒でも全然いいぞ。いい人たちそうだし。

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