TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第40話 調査初日

「さて、今日から本格的にキメラ事件の調査が始まるわけだ。

 改めてよろしく頼むよ、レインさん。そしてナヴィ」

 

「よろしくな、レイン、ナヴィ」

 

 ブルーさんはメガネをくいっと上げ、ブラックさんはニカッと笑う。

 ブラックさんって金髪でチャラチャラした見た目だし最初会ったときは完全に不良感満載だったけど、普通にいい兄ちゃんなんだよなぁ。改めて思う。見た目とのギャップが激しすぎて風邪引くよ。

 

 キメラ事件のクエストの会合が終わって、結局ワタシはこの二人と組むことになった。

 支部長の猫屋敷さんは一応相性をみてチーム分けをしているって言ってたし、この二人とは戦い方の相性とかが良いのかな? よく分からんが。

 

 彼らとは昨日の会合が始まるまでに少し話した程度の間柄ではあるけれど、全く知らない人と組むよりは全然いい。二人ともいい人そうだしね。

 

「うん、よろしくね」

 

「ええ、こちらこそよろしくおねがいします。Mr.ブルー。Mr.ブラック」

 

「それじゃあ出発しようか」

 

 ちなみに昨日の会合はワタシにとって目新しい情報はそれほどなかった。

 内容としては現在判明しているキメラの種類とその特徴、確認された出現地点、キメラによる被害状況などが主なものだった。

 

 ニュースでも報じられているが、やはりここ最近のキメラの発生数は増加傾向にあるらしい。

 昨日会場でスクリーンに映し出されていたグラフは面白いように右肩上がりだった。出現数増加に伴って被害の数も増えているというわけだね。

 

 報酬の台本のためにも、そしてワタシの行きつけのオタクショップが被害を被らないためにもこのクエストを頑張らなくては……!

 ワタシのオタクライフはワタシが守る!

 

 あと昨日の会合はギルドマスター――水々市の支部を含めた冒険者ギルドで一番偉い人――が自ら説明していた。

 そう、あの寿司をおごってくれたオジサマだ。

 ハスキーボイスでテキパキとクエスト内容を説明していたが、これができる大人かと感心したものだ。

 

 

 ちなみに、ワタシはこのキメラクエストに臨むモチベーションが意外とそれなりに高い。

 

 激レア報酬も手に入るし、銀行強盗のときみたいに良い成績を修められたらまたギルマスのオジサマが高級寿司おごってくれるんじゃね?的な。

 まじ中トロ美味しいからね、モチベが上がるのも仕方のないことだ。

 

「そういえばブルーさんたちは04支部が活動拠点じゃなくて本部周辺が普段の活動区域なんでしょ? 04支部まで来てもらったけど良かったの?

 ここまでの転送(テレポート)料金結構かかると思うし、なんだかワタシに合わせてもらったようで悪いんだけど……」

 

「問題ないよ。このクエストの受注中はギルド間の転送にかかる料金が免除されるからね」

 

「あ、そうなんだ」

 

「マスター…… 昨日配布された資料にちゃんと書いてありましたよ。一通りくらい目を通しておきましょうよ」

 

 ブルーさんは快く応えてくれたのにナヴィのジト目がひどい。

 ごめんて。

 たしかに昨日資料をもらったけどまだ全然読んでない。ていうか何ならあんまり読む気なかったわ…… クエストに臨むモチベーションが高いとは何だったのか。

 

 A4の紙に印刷された数枚の資料なんだけど字が小さくてあんまり読む気になれないんだよね…… ライトノベルとかゲームのフレーバーテキストとかなら全然読めるんだけどなぁ。同じ活字なのになぜなのか。

 

「それに今日の調査で行くところは04支部が一番近いからね。少し歩かないといけないが、パトロールも兼ねられる」

 

「あー、そう言えば会合前からあたりを付けてた場所に行くって言ってたけど、具体的に今日はどこに行くの?」

 

 昨日の会合でチーム分けが発表されてすぐにブルーさんから“調査で行きたい場所がある”と言われて二つ返事でOKをしてしまったのでどこに行くか実は知らない。

 ギルド本部の周りにあったアイテムショップやら武器屋に早く寄って色々見たかったからね、聞いてないのは仕方ないね。

 

 まあ、ブルーさんってメガネかけててインテリ風な感じだからたぶん変なところには行かないだろうし問題ないという素晴らしき判断の上での行動だ。つまりワタシってば英断。

 

「今日行くのは“日本魔物研究機構”だ」

 

「何でもその研究所には生け捕りしたキメラがいるらしいぜェ。

 レインとナヴィはキメラ倒してるからいいだろうけど、俺らはまだ1回もこの目で見てねェからな。見に行きたいってのは俺がブルーに言い出したことなんだが、まァ、こんくらいのわがままは許してくれや」

 

「日本魔物研究機構は文字通り魔物の研究機構だ。

 魔物の専門家から話を聞くのは決して悪い手ではない。キメラの実物を見て感じることもあるだろうしな」

 

「ふ~ん…… なるほどね」

 

 日本魔物研究機構というのは初めて聞いたけど、名前からしてちゃんとした公の施設っぽい。国の機関なのかな。

 キメラを捕獲して研究しているならなにか新情報があるかもしれないね。まあ基本的には新情報があるなら少し遅れてギルドを通してワタシたちにも情報が来そうだけど。

 

 それよりもブルーさんの言うようにキメラの実物を見るというのは悪くない。

 

 百聞は一見に如かずというし、敵を知れば戦でも大いに役立つものだ。

 かくいうワタシもキメラの実物は自分で倒したあの1体だけだ。キメラは個体によって見た目や能力が違うという話だし、ワタシも倒したヤツ以外にも見ておくべきだろう。事件解決の糸口が見つかるかもしれん。

 

「その研究所にいくのは全然良いというか大賛成なんだけど、アポはちゃんと取ってあるの?

 突撃隣の晩ごはんのノリではちょっと厳しいと思うんだけど……」

 

「晩ごはんはよくわからないが、アポイントは問題なく取ってある」

 

「そそ。約束とるのも結構簡単だったぜェ。なにせ俺らの同級生がそこの研究室の室長をしてんだ」

 

「え、すごくない? 同級生ってことはブラックさんたちと同い年くらいなんでしょ? そんな若くてトップなんだ。めっちゃ頭良さそう」

 

「日本魔物研究機構は政府が設置する研究所ですし、研究室長ということはマスターの仰るとおりお二人のご友人はとても聡明な方なのですね」

 

「そうなんだよ! ほんと学生時代もテストはいっつもぶっちぎりであいつが1位でさ、ブルーよりも頭良かったのめっちゃ覚えてるぜ!」

 

「悪かったな万年2位で」

 

「にししッ そう拗ねんなって! なッ?

 あ、そうそう。実はその室長様は何を思ったのか最初は冒険者やっててな。あれはマジでビビったぜェ。てっきりお医者先生にでもなると思ってたからな」

 

「まあ結局すぐに辞めて研究職に就いたがな」

 

「冒険者から研究職への転身か…… ぜんぜん違う業種に飛び込むってすごいなぁ」

 

 ワタシも前前世のサラリーマンのときに転職は何回か経験したけど全く違う業種に行くのはすごい尊敬する。そんな勇気はあのときなかったし、業界によっていわゆる“常識”ってぜんぜん違うからね。

 

「そういえば二人ってすごい仲いいよね。昔から友達なの?」

 

「ああ。コイツとは小学生からの腐れ縁だ」

 

「ちなみに研究室長様は高校ん時の同級生だぜ。なんだかんだ気があって昼飯はよく一緒に食べてたな。

 ……お!

 話している間に見えてきたな。あのおっきい白い建物が日本魔物研究機構だぜ」





エルデの王にならなくては……
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