TS美少女魔王さま、オタクが再発する   作:波土よるり

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第4話 まおうさま、つおい

「おいちょっと、ナヴィちゃん、止めなくて良いのか?! オークの危険度はBだ! つまりギルドの基準に照らせば戦うにはランクがB以上の冒険者が推奨されてるんだぞ!

 ああえっと、ギルドって言っても分からんか…… とにかくオークは強いんだ!」

 

「まったく問題ありません、Mr.赤坂」

 

 赤坂さんがワタシを心配してまだ後ろで渋っているが、ナヴィも言っている通り全く問題ない。

 なにせワタシは魔王なのだ。いや、もう()魔王か。

 

 なんにせよ、多少世界が違ったとしてもワタシが負ける可能性など毛ほどもない。

 

 赤坂さんと出会う前に軽く魔法を試し撃ちしていたが、魔力量や魔法の威力に問題はない。魔力のめぐりも、魔王をやっていたワタシそのままだ。

 

「さて、と。赤坂さんが心配しているが…… オークよ、ワタシと少しダンスを踊ろうか?」

 

 オークの前まで悠々と歩いていき、ニヤリと笑う。

 

 そんな態度が(しゃく)(さわ)ったのか、オークは聞くに堪えない咆哮を上げると、右手に持つ大きな棍棒でワタシを潰そうと、それを大きく振り下ろした――

 

 が、ワタシは右手でそれを軽く止める。

 

「ほらどうした、もっと力を入れんか」

 

 しょせんオークの膂力(りょりょく)などたかが知れている。別に振り下ろされる棍棒を止めなくても、ワタシにダメージを与えることなど到底無理だろうが、まあ、()的にちょっとダサいからな。

 顔面で棍棒を受け止めるなんてナンセンス。

 

 ふふふ、品を気にするワタシってばマジ魔王。

 

 

 オークはワタシに攻撃が止められるとは微塵も思っていなかったのだろう。

 

 驚愕の表情を浮かべ、ワタシの右手で止められた棍棒をすぐさま引き下げようと棍棒を持つ左手に力を込める。

 

 しかし、何も起こらない。

 

 まるでワタシの右手に固定されているかのように微塵も動くことはなかった。

 

「なんだァ? ワタシにくれるのか?

 そうかそうか、じゃあもらっておこうかな」

 

 挑発気味にそう言って、ひょいっと力任せにオークの棍棒を取り上げる。

 

 オークの知能は猿並みだといっても、魔物として生存に必要な知能は最低限備わっているのだろう。身の危険を感じたのか、自分の棍棒をすぐに諦めてワタシと距離を取った。

 

 オークから取り上げた棍棒を改めて見るが、随分とボロい。

 

「重いだけで安っぽい棍棒だな。

 やっぱりいらないからお前に返そう。そら、受け取れッ」

 

 距離をとったオークめがけて、棍棒を投げる。

 

 ワタシの手から放たれた棍棒はジェット機もかくやというような速度で飛んでいき、オークの胴の中心を貫く。棍棒はそのままダンジョンの壁にあたり、大きな窪みを作った。

 

 オークは自分に何が起きたのか理解できなかったのだろう。

 痛みを感じる暇すらなかっただろう。

 

 声を荒げるでもなく、自分のお腹にあいた空洞を左手で擦ると、そのまま力なく倒れた。

 

「いっちょ上がり、だな」

 

 地面に伏したオークはしばらくすると先程のスライムやオークのように光の粒子になって消えた。

 やはりこの世界のモンスターはゲームの敵キャラのように、ぱあっと消えるらしい。

 

 ただ、地面に飛び散ったオークの血は、粒子になって消えた箇所と、そのまま残っている箇所がある。粒子になって消えるものとそうでないものの違いがいまいち分からないな。

 まあ、些細な問題か。

 

 

 オークが消えた場所には、こぶし大の紫色の宝石が落ちていた。

 

 このアイテムがどれほど有用なのかは知らないが、一応拾っておこうか。

 ポータルを開いて、その中に宝石をポイッと入れておく。

 

 

「ほら、赤坂さん。大丈夫だっただろう?」

 

 赤坂さんのところまで戻り、ニシシとちょっといたずらっぽく笑ってみる。

 

 赤坂さんは少し放心していたが、フー……っとため息を付いてやれやれと肩をすくめた。

 

「こりゃまいったな。心配する必要まったくなかったじゃないか。いや、うん。すごいな嬢ちゃん」

 

「ふっふっふ。マスターはすごいのです」

 

 赤坂さんの言葉にナヴィが抑揚のない声で返す。

 ナヴィは基本的に起伏のない喋り方をするが、かわりに意外と表情に出やすい。今もすごいドヤ顔をしている。

 

 なぜワタシではなくお前がドヤ顔するんだというツッコミは野暮だろう。

 

「こりゃ地上までなんの心配もいらなさそうだな」

 

「ああ、任せてくれ。ワタシは魔法も得意だからな、次から今みたいにザコ敵が出てきたら炎で一掃しよう」

 

「ザコ敵ねぇ…… 一応オークは冒険者の壁の一つなんだけどねぇ……」

 

 少し引きつった笑いを赤坂さんがしているが、まあ、魔王とただの冒険者を比べるのは比較対象を少し間違えているとしか言いようがない。

 

 ああ、そうだ。

 

 ポータルを開いて、亜空間にしまった先程の紫色の宝石を赤坂さんに見せる。

 

「赤坂さん、貴方を真似して拾っておいたが、これは一応持って行けばいいか?」

 

「道具なしにアイテムボックス使えるのか…… まあいいや、ちょっと見せてみろ」

 

 赤坂さんに宝石を渡すと、赤坂さんは”ほぅー…”と感心する。

 腰に挿していたペン型のライトを取り出し、宝石に照らして様々な角度から一通り見るとワタシに返してくれた。

 

「かなり純度の高い魔石だ。

 俺がさっきオークを倒して手に入れた魔石よりワンランク上のものだな」

 

「なるほど。これは魔石というのか」

 

「ああ、説明がまだだったな。

 モンスターは倒すとドロップアイテムを落とす。大抵は純度の低い魔石や素材だが、時々純度の高い魔石や貴重な素材を落とすことがある。いわゆるレアドロップだ。

 魔石はいろいろな機械の動力源になっていたりするからギルドでいつでも買い取ってもらえるぜ」

 

「ふむ、そうなのか。ちなみにこれはいくらくらいになるんだ?」

 

「そうだな…… それ1個だけできっと豪華な食事が数日は楽しめるぜ」

 

 

 今の日本の豪華な食事がどういうものか分からないが、銀座の寿司くらいを想定しておけばいいかな?

 

 そんなことを考えながらワタシ達は再び歩みを進めた。





ザギンのシースーはいくらくらいするんですかね?(貧乏人)
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